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デート・オア・アライブ

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十香アライブ
  1.ダイブシスター 《いもうととあそぼう》 前編

漏れ出る朝日や朝の音、それと腹の虫によって俺は目が覚めた。

目が覚めた朝っぱらから申し訳ないが余談である。

腹の虫とはいったいどんな虫なのだろう。

現在進行形で鳴っている「グウウゥゥ…」という音で鳴く虫はこれまで生きてきて全く見たことがない。(知らないだけかもしれないが)

又、俺の腹から「すいっちょん」「ガシャガシャガシャ」などの愉快な音が聞こえてきたこともこれといってないことから身近にいる虫でないこともわかる。

まあそんな音が腹から聞こえたら、即病院へ行くが。

まあこの「腹の虫」については色々と諸説があるだろうが、ここで俺の個人的見解を述べておこう。


結論を言えば「腹の虫」などという存在はいないのではないか、ということだ。


1度も観測されていない未確認存在を、さもこの音だけで「腹の虫」というものを存在していると錯覚させるために刷り込みを行ったんだ俺は思う。

何のためにそのような行為をしたのかはまだ説明はできないが……

だが俺はこの腹の音について一つの仮説を立てた。

この音は俺の体の異常によって発している特殊な信号なのではないか、ということだ。

「腹の虫」が鳴る時は不定期ではない。

必ずある特殊な条件の下に発生しているのだ。

1.現在のように強い空腹の状態にある時
2.腹部にかかわる何らかの病状を(わずら)ってる時

基本的に「腹の虫」が反応するのは、この二つの状態である時が多い。

だが俺はここにあえて第3の条件を提示したいと思う。

3.腹部に関する何らかの危険を予知したとき

虫の知らせ、というものをご存じだろうか。

この虫とは、人間の体内に棲み、意識や感情にさまざまな影響を与えると考えられていたもので、潜在意識や感情の動きを表すものと言われている。

この「人間の体内に棲み」というところから、この虫と「腹の虫」は同一存在であると俺は考えている。

これまでの事を鑑みてみると、腹の音や痛みはこれから腹に起こる災厄に対しての危険信号と言えるだろう。(餓死、えんがちょ等)

よって、俺は腹の音は腹に関する何らかの危険信号であると提唱する!

………………

俺、ヤバくない?


バアァーーン!!


この気持ちいい朝をぶち壊すほどの勢いで、部屋のドアが開けられた。

「お~にぃ~ちゃーん!!」

甘い声とともに開け放たれたドアから現れたのは自分よりいくらか背が低い女の子であった。

赤色の髪を白いリボンで留めていて、その下には天真爛漫な笑顔が覗かせている。

先ほどお兄ちゃんと言っていたが、はてさてその真偽は

「い~……はあぁー!!」

「げぶぅらあああ!」

この謎の妹(仮)はあろうことか寝ている俺の前で飛びあがり、俺の腹に向かって自分の腹部から体を浴びせてきた。

俗に言うボディ・プレスである。

「まだ独白の最中だっただろうが!空気読めよ!」

「おー?お兄ちゃん琴里に告白してたのだ?いや~、照れちゃうのだ」

琴里……それがこの子の名前らしい。

状況的に考えると、どうやら妹であるこの子がお兄ちゃんである俺を起こしに来た、と考えるのが妥当だろう……

「それでそれで!?早く聞かせてほしいのだ。お兄ちゃんの愛の言葉を!」

「……ああ、そうだな。俺の一世一代の告白だ。誰もが顔面蒼白卒倒すること間違いなしだぜ!」

ここはあえてそっちのペースに乗ってやろう。だがいずれ盛り返す。

覚悟するがいい。これは先のボディ・プレスで今も重傷を負っている我が腹部の仇討ちとさせてもらおう。

「実は……俺……」

「ドキドキワクワク」


「……本当はお兄ちゃんなんかじゃないんだ!」

琴里はその言葉を聞いて愕然としている。

事実、たった今転生から目覚めたばかりだからお兄ちゃんと呼ばれえてもしっくりこないわけで。

「そ、そんな!お兄ちゃんがお兄ちゃんじゃないだなんて一体どういうことなのだ!?」

「ふっふっふ、言葉どおりの意味よ!今までお前のお兄ちゃんとして務めてきたが、それは全て仮の姿!俺の正体は……


              お前の 弟だぁあああ!」


「な、なんだってー!!」

大口を開けて驚愕する琴里。

それでも俺は間も開けず、口から出まかせに語っていく。

「黙ってて悪かった!今まで何とか誤魔化してきたが、この時期になって罪の意識に耐えられなくなったんだよ。許してくれ琴里、いやさ、琴里お姉ちゃん!」

「う……うう……で、でもおかしいぞ。お兄ちゃんは今年から高校生だし、琴里は中学生だし矛盾しているぞ」

「その高校っていうのはどこだ?」

「え、ええと……確か都立来禅高校っていうところ」

「あそこは高校に扮した中学校だ」

「えぇー!?じゃ、じゃあお兄ちゃんは中学生?」

「ピッカピカの1年生だゾ♪」

きゃぴるん、という効果音と共に決めポーズをする自分は、正直言ってキモかった。

「でもでも、お兄ちゃんは琴里よりも体格が一回りも二回りも大きいぞ」

「男は成長が早いものなのさ。お前が遅いだけかもしれんが」

「むぅ~琴里はこれからもっと成長するもん!」

そう言ってブーたれる琴里。できればグラマラスなナイスバディになってほしいところだけど、中学生の時点でこれじゃああまり期待できるものじゃあないな。

「じゃ、じゃあ本当にお兄ちゃんはお兄ちゃんじゃないの?」

「そうさ、その通り!だからもうお兄ちゃんなんて呼び方はやめよう琴里お姉ちゃん!これから俺たちの関係は一新するんだから!」

「え……えと、それじゃあ……その……


                   ……りゅ……りゅうじ」


顔を赤くさせながら体をもじもじさせて俺の名前を言う琴里。

それを聞いて、俺は自然と満面の笑みが浮かぶ。そして……



「なに兄を呼び捨てにしてんだ、はっ倒すぞ」



「…………え?」

「まったく、まだ寝ぼけてんのか?いい加減春休み気分もここまでにしとけよ。明日から学校なんだからな」

「え、ええ?」

俺はベッドから起き上がり、タンスの中から手ごろな服を数着見繕う。

「ちゃんと顔洗ってこいよ。目え開けたまま寝言言うのはホラー以外の何物でもないからな」

そう言い捨て、俺は颯爽と部屋から出る。

部屋のほうから怒声の様な叫び声が聞こえるが気にすることもないだろう。

さて、まずはまだ残っている眠気を洗い流すために顔を洗いたい。ここは2階になっているから、おそらく洗面所は1階のどこかのはずだ。

俺はまだ半ボケの頭を撫で、欠伸を噛み殺しながら階段を下りて行った。 
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