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久遠の神話

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第百二話 教会にてその一

                 久遠の神話
             第百二話  教会にて
 教会においてだ、大石はというと。
 今は二人だった、シスターと共にいた。そのうえで彼女に対していつもの優しい微笑みでこう言ったのだった。
「お願いがあるのですが」
「何でしょうか」
「今夜貴女は普段より早く寝て頂けますか」
「いつもよりもですね」
「そうです、そして」
 そのうえでだというのだ。
「そのまま朝まで寝ていて下さい」
「今夜はですね」
「今夜だけは起きないで下さい」
 そうして欲しいというのだ。
「そうして頂けますか」
「わかりました」
 断らなかった、すぐの返事だった。
「それでは」
「はい、そうして頂くと何よりです」
「今夜私は少し夜更かしをします」
「神父様はですね」
「一人でやるべき仕事がありますので」
 だからだとだ言うのだった。
「ですから」
「左様ですか、それでは」
「申し訳ありません」
 大石はこうシスターに言ったのだった。
「それでは」
「神父様には神父様の行われることがありますね」
「そうです。ですがそれでも」
「神にはですね」
「背いていません」
 このことは間違いないというのだ。
「私は。絶対に」
「それでしたら」
 シスターは彼の言葉を受けた、そしてだった。
 そのうえでだ、彼女も優しい声でこう言ったのだった。
「いいと。私は思います」
「神に背いていなければ」
「親父様は誰かを傷つけられる方ではありません」
 このことをよく知っているというのだ、シスターもだ。
「そして己の為に何かをされる方ではありません」
「では私の言葉を」
「嘘も吐かれません」
 それが彼、大石だというのだ。
「私はそのことをわかっているつもりです」
「だからですか」
「私は神父様を疑いません」
 そこまでだ、彼を信じているというのだ。
「ですから」
「有り難うございます」
「お礼には及びません」
 それはいいと返したシスターだった。
「ありのままのことを申し上げただけなので」
「だからですか」
「はい、では今夜は」
「お休み下さい」
 早く、というのだ。
「そうされて下さい」
「お言葉に甘えさせてもらいます」
「それでは」
 こう話してだ、そしてだった。 
 シスターは夕食の後すぐに自分のベッドに入った。丁度夕刻から夜になった時にだ。少なくとも彼女の部屋に入って出なかった。
 そして大石はだ、どうかというと。
 一人教会の礼拝堂に入った、そしてそこで。
 十字架のキリストの前に跪き祈りを捧げた、そのうえで。
 立ち振り向いた、するとだった。
 そこにだ、聡美がいた。聡美は深刻な顔で礼拝堂の中に立っていた。
 そのうえでだ、こう大石に言ってきたのだった。
「いよいよですね」
「はい、私にとってのですね」
「最後の闘いになります」
 このことを彼に告げたのである。 
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