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第二章


第二章

「法整備が弱い」
「法律?」
「それ?」
「そんな悪いの?」
「連合軍も日本軍も」
「それを何とかしなければ駄目だ」
 彼はまた言った。
「法整備をしなければならないのだ」
「法整備ねえ」
「そんなに悪いのかしら、我が国って」
「連合軍も」
「千年前よりましだろ?」
 地球にあった頃の話もされる。
「確かあの時って誇り高き大日本帝国陸海軍の時代?」
「文民統制が出来ていなかったっていうあの」
「あれはかなり問題だけれど」
 軍は政府に指揮権はなく国家元首である天皇陛下にあった。最初は陛下を補佐する元老達がいてそうした問題は起こらなかったが彼等、とりわけ陸軍を統率する山縣有朋が去ってからそれが問題になってきたのである。また憲法においても大日本帝国憲法は十九世紀末の憲法であり二十世紀、第一次世界大戦の頃から軍が文民統制が強くなってきた時代にそぐわないものでありそれが何のチェックも受けてこなかったことも問題であった。
 しかしだ。彼の演説はここではそれを言わなかった。
「そう、あの自衛隊」
「ああ、あの自衛隊ね」
「文民統制が強過ぎて法整備全然していなかった」
「あの自衛隊ね」
 この時代では軍と認識されているのである。自衛隊は自衛隊で中央集権的な硬直した文民統制が問題になっているのである。
「あっちの方が酷いか」
「暴走するのと動かないのとじゃね」
「どっちが悪いかだけれど」
「自衛隊もねえ」
「問題あったし」
「それを誰も言わない」
 そうだというのである。
「これも問題だ。誰も何もわかっていない」
「何も?」
「誰も?」
「そう、それが問題だ」
 まさにしてそうだという彼だった。
「法整備もできていなければ無関心でもある」
「無関心も問題って」
「一応議論されてるけれど」
「それでも言うか」
「問題はまだある」
 その主張は続く。
「勝利に驕ってはいないか」
「ああ、エウロパとの戦争か」
「それか」
「それは敗北への道だ」
 驕りは慢心、そして油断を生むというわけである。これも正論だった。
「それによって油断すればまさに死あるのみだ」
「それもその通りだけれどな」
「確かにな」
 このことには誰も異論がなかった。
「しかし。それにしても」
「あえてここで言うか」
「何か意固地にもなってない?」
「なってるよな」
「そうよね」
「しかし。それで」
 さらに話していく彼等だった。
「だが。それにしても」
「何かあまり重要な話じゃないよな」
「そうだよな」
 多くの人間は彼の主張をそう捉えていた。
「結局軍隊はな」
「そうだよな。必要なだけあればいいしな」
「今で充分だよな」
「そうだよな」
「何の不安もないだろ」
 彼等の多くはそう考えているのだった。これが連合という勢力の実情である。軍事はここではどうしても優先順位が低いのである。
 
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