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野菊

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第一章

                    野菊
 夏越紗友里は結婚することになった、いつも黒縁眼鏡をかけていてホームベース型の顔は白く口は大きめだ。茶色の髪を長めにして綺麗に整えている。眼鏡の奥の目は小さめで奥二重の黒い綺麗なものだ、睫毛も長い。
 背は普通位ですらりとしている、その彼女が職場で同僚達に言われていた。職業は証券会社の事務員である。
「あんた今度結婚するけれど」
「式は結婚式場でするのよね」
「そこでよね」
「そう、八条会館でね」
 そこで式を行うとだ、笑顔で答える紗友里だった。笑顔であるのはやはり式が間もなくで幸せに満ちているからだ。
「洋風でね」
「じゃあウェディングドレスね」
「それ着てよね」
「もう衣装合わせはしたわ」
 それも済んだというのだ、ミルクをかなり入れたコーヒーを飲みつつ話す。
「だから後はね」
「本番ね」
「それだけね」
「そう、その日が待ち通しいわ」
 こう言うのだった。
「もうね」
「いや、ちょっと待って」
 ここでだ、同僚の一人が紗友里に問うた。
「一つ聞きたいことがあるけれど」
「聞きたいことって?」
「ブーケよ」 
 聞きたいのはこのことだった、その同僚は紅茶を飲みながら紗友里に尋ねる。
「それはあるのよね」
「ええ、あるわ」
 満面の笑みで答えた紗友里だった。
「洋風だからね」
「そうよね、ウェディングドレスならね」
「ブーケは絶対だから」
「あれを受け取るとね」
 このことはよく言われることだった。
「その人が次に結婚するのよね」
「そう言われてるわね」
「それじゃあいいわ」
 同僚は笑顔でこう言った、紗友里の話を聞いて。
「私もまだ独身だしね」
「そう言うあんたも今度結婚するじゃない」
 紗友里は笑顔で言う同僚にこれまた笑顔で返した。
「そうじゃない」
「そうだけれどね」
 それでもだとだ、こう返したその同僚だった。
「私にしてもね」
「まだ独身だからなのね」
「受け取れたらいいわね」
「予定だからもういいでしょ」
「いやいや、そうはいかないのよ」
 そこはというのだ。
「これがね」
「そうなの?」
「確かに私も式の日取りまで決まってるけれど」
「じゃあいいじゃない」
「縁起は欲しいじゃない」
 ブーケを貰うことでだというのだ。
「だからね」
「いや、もう決まっている相手は受け取らないでね」
 紗友里は笑って彼女に言った。
「いいわね」
「ううん、じゃあ決まっていない娘ね」
「そうよ、わかったわね」
 ブーケを投げても受け取るなというのだ。
「そこは」
「仕方ないわね。まあ私は次になるでしょうし」
 殆ど決まっている、だからこの同僚も引っ込んだ。
 そして紗友里は一同の仲の黒い短い、おかっぱではなく綺麗に斜めに切り揃えた感じの髪に黒く細い綺麗なまゆ、楚々とした素朴な二重の黒目がちの目が印象的な後輩を見た。顔の色は白く鼻は高めだ。背は紗友里より少し低いが小柄という程ではない。胸が目立つ。 
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