Re:SYMPHONIA
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旅路の途中
Re:SYMPHONIA
#5 旅路の途中
一行はマーテル教会へ向かい、祭司に再生の書について聞く
祭司長「神子さまではありませんか! 私を覚えておいででしょうか。
大聖堂で修業しておりました マーチでございます」
コーネリア「もちろん覚えております。お久しぶりです。今は祭司長になられたのですね」
マーチ「はい、おかげさまで。聖地へ続く救いの塔が出現したことで、神子さまのおいで
を待ちわびておりました。この地に残る導師スピリチュアの伝説がきっと神子さまのお役にたちましょう・・・」
コーネリア「確かスピリチュアさまはここで最初の説法を行われたのよね」
マーチ「はい、その通りです。 当時の世界再生伝説は再生の書として時の王家に収められました。そこには全ての封印なる場所が記されていると言います」
リリーナ「その再生の書の内容はこちらで保管していないのかしら」
マーチ「いえ、あれは教会で編纂したものではございませんので・・・
必要でしたら、ドア総督に提出を求めますが・・・?」
コーネリア「それが・・・だめなの。私たちの偽物が現れたみたいで、その偽物に渡して
しまったらしいの」
マーチ「な、なんと罪深きことを! ですが、再生の書以外に導師スピリチュアの足跡は
記されておりませぬ・・・お役に立てず、申し訳ございません・・・」
頼みの綱の教会ですら再生の書の内容は残されていなかった・・・。
だとすれば、残された道は・・・
コーネリア「どうしよう。このままレミエルさまの言葉を頼りに封印を探す?」
リリーナ「私は再生の書を手に入れた方がいいと思うわ」
スザク「姉さんは封印の場所より再生の書自体に興味があるんだろ?」
アクセル「ちくしょう・・・こうなったら仕方ねぇ。あの偽物を追いかけよう」
コーネリア「でも、どうやって?」
アクセル「あいつらの話を聞いてなかったのか? 奴ら、再生の書を売りさばく気でいるんだ」
リリーナ「ハコネシア峠へ行くのね」
コーネリア「すっご~い!さすがアクセル!」
スザク「こういうときだけは物覚えがいいよね」
アクセル「一言余計だ、アホ! さあ、早く奴らを追いかけようぜ」
リオン「ふむ、では行こうか」
ハコネシア峠はパルマコスタから北にある。一行はそこを目指す
アクセル「ちくしょー、あいつらムカつくなぁ!」
スザク「ニセ神子の奴らでしょ? ボクもくやしくって」
アクセル「そうだよな! 世界を救おうとしてるのはコーネリアなんだぜ!?」
コーネリア「え?」
アクセル「コーネリアは悔しくないのか?」
コーネリア「えっと、神子が沢山いたら世界が救われる可能性も増えて、いいよねぇ」
アクセル・スザク「・・・はぁ」
・・・・・・・・・・。ともかく、ハコネシアへ向かう。
ハコネシアまでは少し距離がある。なので、道中にある救いの小屋で休憩をする。
―House 3 救いの小屋 パルマコスタ領―
神子の世界再生の休憩所として世界各地に設置されている場所。施設そのものはイセリアのそれとなんら変わりはない。
救いの小屋のスピリチュア像に例の女忍者が祈っている。
?「・・・ラのみんなを救えるように どうぞお助け下さい」
アクセル「! おい、何を祈ってるんだ」
?「みんなを助けられるようにって・・・・あ!!」
いまさらアクセルたちに気付く。
アクセル「いい心がけだな」
?「う、うるさい!!」
アクセル「俺、アクセルっていうんだ。お前の名前は?」
?「・・・は?」
スザク「アクセル?」
コーネリア「私はコーネリアです。まだ神子としては半人前なんですけど、頑張って世界再生してみますね」
?「お前の名前なんか聞いてない!」
コーネリア「あ、そうですよね。ごめんなさい・・・」
コーネリアはしょんぼりして下をうつむく
?「あ、ご、ごめん・・・じゃなくて! あ、あたしはお前を殺そうとしてるんだ!」
コーネリア「知ってます。でも話し合えばきっとお互いわかり合えますよ」
?「お前、人の話を聞いてるのか!?」
コーネリア「聞いてますよ~。だって、えっと・・・殺し屋さん」
かえで「かえでだ! 藤林(ふじばやし)かえで!!」
コーネリアに負けて、とうとう女忍者は名乗った。
コーネリア「かえでさん、お祈りなさってました。 祈ることは心が豊かになることです。
私もお祈りします。だからきっと、分かり合えます~」
かえで「あ、あたしは、お前をちゃんと殺せるようにって・・・もういい!
気がそがれた!次こそ覚えていろ!!」
そしてかえでは煙幕に乗じて姿を消した。一般人には馴染みのない、忍法というものだ。
シルヴァラントには忍者などという文化は知られていない。かえでは何処に住んでいるの
だろう。そもそも、アクセルたちには、かえでが悪い奴な気がしなかった・・・
遅くなったが、ここで「シルヴァラント」についての解説をする。
シルヴァラントというのは世界であり、地球である。つまり、『シルヴァラント各地』と
いう意味は『世界各地』ということになる。
因みに、シルヴァラントの世界において、月はテセアラという。
もう日も暮れてきたので今日は祈りの小屋で宿泊をする。その晩、リリーナはリオンに
真意を問う。
リリーナ「ねぇ、リオン」
リオン「どうした?」
リリーナ「あなたはどうしてコーネリアの護衛を引き受けたの?」
リオン「フ・・・私は傭兵だからな、それで食っている」
リリーナ「つまり、仕事だからってこと?」
リオン「ああ、そうだ」
リリーナ「本当にそれだけ?」
リオン「それだけだ・・・」
リオン・マクベス・・・。彼の真意は分からない。彼もまた、何かの秘密を持っているの
だろう。同様にスザクもコーネリアもリリーナも、アクセルも・・・。
―House 4 ハコネシア峠―
ハコネシア峠は様々なガラクタで埋まっている一軒の小屋のある、なんとも不思議な場所
である。ここにすむコットン爺さんはなかなかの曲者で、ハコネシア峠を越えようとする
ものに無理難題を押し付けて通せんぼする、なんとも面倒な人なのだ。
コットン「通行証なら、一人100,000,000ゴールドで発行するぞ」
(ちなみにゴールドの価値 1ゴールド≒1円)
アクセル「な、何だその金額は!? 横暴だ!!」
コットン「黙れ小僧! わしゃあ、男が大っ嫌いなんじゃ!」
リリーナ「これじゃあマーテル教の旅業をする者までここで足止めされてしまうわ」
コットン「おお。お前さん美人じゃのう。 お前さんが旅業をしているのなら
パルマコスタの旅行代理店でアスカード遺跡ツアーにでも参加するといい」
スザク「ずるい! 代理店と結託して儲けるな!!」
ガンコで、がめつく、エロジジイ・・・救えない爺さんである・・・。
コットン「うるさいのう! 金のない奴はとっとと帰れ!」
コーネリア「あれ?ずいぶん大きな教典・・・」
コーネリアが古い教典を発見する
コットン「おお、清純派の嬢ちゃん。お前は見る目がある!
これはのう、マナの神子さまから買わせて頂いたものじゃ。大変珍しい教典で
導師スピリチュアの伝説が記されているんじゃよ!」
全員「!!」
一行が探し求めていた再生の書はまさにコレだ!
コットン「ずっと手に入れたかったんじゃがドアさまは手放す筈もないと諦めておったと
ころじゃ。まさか神子さまが譲って下さるとは、ありがたや~」
アクセル「それ、譲ってくれよ! いや、見せてくれるだけでもいい!」
コットン「何をいっとるか! どうしてお前らなんぞに見せてやらねばならんのじゃ」
スザク「いいじゃないか!コーネリアはマナのみ・・・」
ゴン!! リリーナの鉄拳がとぶ。
リリーナ「だめよ。 こちらが偽物扱いされてしまうわ」
コットン「? マナのみ・・・?」
リリーナ「マナの神子さまの持ち物を見せて頂きたいという信仰心のあらわれですわ
コーネリアは天使言語をおさめた立派な信者ですのよ」
コーネリア「あ、そうです。小さい頃から習ってました~」
コットン「そんなにいうならその清純派の嬢ちゃんと、美人の姉ちゃんには見せてやらんこともない。 わしはな、ここに来る道中の救いの小屋に飾ってあるスピリチュア像が欲しくて仕方ないのじゃ。
アレを貰ってきてくれたら考えてやらんこともない」
スピリチュア像とは、かえでが祈っていたあの像である。
スザク「けちだなー。見せるぐらいなんてことないのに」
コットン「うるさい! 金もない像もないじゃ話にならん! もう帰ってくれ!!」
コットンに言われるがまま像を手に入れに小屋まで戻る。一行がコットンの家から出た時、
外にはたくさんの人が集まっていた。
アクセル「・・・ん? どうかしたのか?」
村人A「あんた、知らないのかい?」
村人B「あんたたちも、ここにいた方がいい。間違ってもパルマコスタの方にはいかない
方がいい」
アクセル「パルマコスタで何かあったのか?」
村人C「ディザイアンたちがパルマコスタへ向かったらしいんです!」
アクセル「なんだって!?」
村人B「しかも、この近くの人間牧場の主、マグニスまで一緒だったって話だ」
アクセル「マグニス・・・」
村人B「ほとぼりが冷めるまでわしらはここで足止めさ。あんたらも、しばらく遠出は
控えた方がいいぞ」
パルマコスタにディザイアンが進行している。その情報を聞いたアクセルたちは祈りの小屋のほかに、もう一つやることが増えた。
道中
アクセル「なんだよ、あの強欲ジジイは!」
リリーナ「まあ!!」
アクセル「ど、どうしたんだよ先生・・・」
リリーナ「あなたが強欲なんて言葉を知っていたなんて!」
アクセル「あのなー・・・」
リリーナ「・・・しかも用法を間違っていない! 素晴らしいわ!!」
アクセル「そ・・・そんなに誉めるなよ、先生」
リリーナ「だって、奇跡的なんですもの!」
アクセル「へへへ、照れるなぁ」
スザク「バカにされてるんだけど」
アクセルは誉められて伸びるタイプ・・・なのか?
ともかく、祈りの小屋に行く。 が、
祭司「スピリチュア像ですか? 確かにございますが。
祭司長さまがおられませんので、また後ほどおいで頂けないでしょうか」
仕方がないので後ほど訪れよう。一行はパルマコスタへ行く。
アクセル「ディザイアンの奴ら! パルマコスタで暴れやがったら絶対許さねぇぞ!」
リリーナ「アクセル、落ち着きなさい。 どうしたというの?」
アクセル「イセリアを出た時に誓ったんだ! これ以上、ディザイアンの奴らに好きには
させねぇって!」
リオン「冷静さを欠くと、誤った判断や行動をしかねんぞ」
アクセル「うるさいな!」
リリーナ「アクセル、あなたの気持ちはまっすぐな正しいものよ。
だからといって、仲間の言葉に耳を傾けないのはいただけないわね」
アクセル「!! で、でも・・・俺・・・」
リリーナ「パルマコスタは確かに心配だけど、私たちはあなたも心配なの。おわかり?」
アクセル「・・・ごめん。俺が悪かったよ・・・」
リリーナ「・・・素直でよろしい。でも、謝る相手が違うのではなくって?」
アクセル「・・・リオン。悪かった・・・。ごめん・・・」
リオン「気にしていない。 ともかく、パルマコスタに向かおう。 急ぐが、焦らずにな」
アクセルは諭され、また一つ大きくなる。 そして、パルマコスタに着く。
パルマコスタの広場でショコラの母が首をくくられ、公開処刑が行われようとしていた!
兵士A「どけ! マグニスさまがお出ましだ!」
市民A「東の牧場のマグニスだ・・・」
マグニス「マグニスさま、だ。豚が・・・」
マグニスは市民の首を絞め、高々と持ち上げて言った。首を絞められ続け、市民は息絶えた。
マグニスは赤髪のドレッドヘアーが特徴的な、左目に傷のある大男である。その性格は極悪非道で、劣悪(にんげ)種(ん)を家畜とも思っていない。
兵士A「この女は偉大なるマグニスさまに逆らい、我々へ資材の提供を断った。」
兵士B「よって規定殺害数は超えるものの、この女の処刑が執り行われることになった!」
その場にアクセルたちは駆けつける。アクセルたちは野次馬たちの後ろにいる。
アクセル「くそっ! この街の兵士はどうしたんだ?」
野次馬「演習でほとんど出払ってるんだよ」
スザク「スキを狙ったんだな! ひどいや!」
ショコラ「お母さん!」
ショコラが広場に駆けつけ、処刑台の近くまで駆け寄った。
兵士B「動くな、そこの女!」
兵士C「下手に逆らうと死んだ方がマシな思いをすることになるぞ」
ショコラ「ドア総督がそんなこと許すもんですか!」
マグニス「ドアか・・・ガハハハハ!! 無駄な望みは捨てるんだなぁっ!」
マグニスは何か含みを持たせた言い方で高笑いし、ショコラの母の処刑の合図をする。
ショコラ「やめてぇーーーーっ!!!」
処刑の瞬間、子どもが石をマグニスに投げた。この子どもは、ドアに父の捜索を願っていたあの子どもである。
マグニス「この・・・薄汚い豚がぁっ!!」
子どもに近づくマグニスに、アクセルの斬撃が飛ぶ。
マグニスの暴挙にアクセルはもう我慢の限界だった。今にもマグニスに飛びかかろうとするアクセルをリリーナが諫める
リリーナ「ダメよアクセル! ここをイセリアの二の舞にしたいの!?」
しかし、アクセルは止まろうとはしない
アクセル「何言ってんだ! ここはディザイアンと不可侵条約を結んでる訳じゃねぇだろ! 目の前の人間も救えなくて、世界再生なんてやれるかよ!」
コーネリア「私もこんな処刑を見過ごすなんてできません!」
コーネリアも野次馬の波をくぐり抜け、前へと出てくる
兵士C「・・・お前は手配ナンバー0074のアクセル・バークライトだな!」
マグニス「お前が例のエクスフィアを持ってるという小僧か!ガハハハ!こいつはいい!
ここでお前のエクスフィアを奪えば五聖刃の長になれる
お前ら、あの小僧どもを狙え!!」
マグニスの命令で、兵士がアクセルに火の玉を放つ、が、スザクが指一本で相殺する。
スザク「まだまだ修行が足りないね」
マグニス「何やってんだ、このヘタレどもが!! もういい!まずはこの女の始末をつけてやる!」
処刑を執り行おうとする時、コーネリアはチャクラムを投げ、見事くくられている紐を切
った。それに気を取られているマグニスの間合いに一気に近寄り、リオンはマグニスに一
太刀あびせる。
リオン「・・・神子の意志を尊重しよう」
リオンの言葉がきっかけで、野次馬がざわつきだした。
「神子さま・・・?」 「あれが神子さまなのか?」
「神子さまがわしらに力を貸してくださるのか!!」
リリーナ「みんな、分かってるの? ディザイアンに逆らうと、この街もイセリアのように襲われるかもしれないのよ」
リリーナは皆に問う。
アクセル「そうさ、分かってる! 二度と同じ間違いは繰り返さない。
牧場ごと、叩きつぶしてやるさ!」
リリーナ「無茶だわ、そんな・・・」
アクセル「どのみち、俺もコーネリアも奴らに狙われてるんだ。 それに俺たちには神子がついてる。世界を再生する救世主がさ!
な、コーネリア!」
コーネリア「・・・うん。私、戦うよ。みんなのために」
神子としてのプレッシャーなのか、世界再生の話題になるといつも哀しい顔をする。
アクセルには、まだ世界再生の本当の意味を知らなかった―。
祭司「おお! コーネリアさま! 偉大なるマナの神子さま!」
リリーナ「もう、本当にバカな子たちね。・・・心配だから私も手伝うことにするわ」
アクセル「先生! ありがとう!」
マグニス「くそっ、どいつもこいつも俺さまを馬鹿にしやがって・・・
お前たち!この連中の始末は任せたぞ」
マグニスは捨て台詞を吐き捨て、携帯型転送装置で牧場に帰る
兵士A「よくもマグニスさまを! さっさとくたばるがいい!」
リオン「蒼波斬(そうはざん) 瞬迅(しゅんじん)剣(けん) 風(ふう)神剣(じんけん)」
リオンは目にも止まらぬスピードでディザイアンを切り捨てる。今の俺じゃ束になっても
勝てない。そうアクセルに思わせる程リオンのそれは強かった。
ディザイアンを全滅させて、市民の神子コールが鳴り止まぬ中、ショコラの母のカカオを
連れてショコラの店に行く。
カカオ「みなさん・・・ありがとうございました」
ショコラ「お母さんを助けてくれて本当にありがとう!
お母さんまで殺されていたら私、どうしたらいいのか・・・」
スザク「お母さんまでって・・・」
カカオ「主人はドア総督の義勇兵に参加してディザイアンと戦い、戦死しました。
私の母も牧場に連行されて・・・」
ショコラ「うちの店は元々おばあちゃんが始めたの。だから、おばあちゃんが帰ってきた
時のためにもあの店を守らなきゃ・・・
ごめんなさい。そろそろ私、いかないと。次のアスカード旅業がもうすぐ出発
する時刻なの」
アクセル「アスカード旅業って?」
ショコラ「私、教会付きの旅行代理店で働いてるの。でも、別にマーテルさまを信じてる
訳じゃないのよ」
カカオ「ショコラ!なんてことを!」
ショコラ「分かってる。神子さまには感謝してるわ。 でもマーテルさまはお父さんもおばあちゃんも守ってくれなかった。 今だってお母さんを守ってくれたのは神子さまとお供の方だもの
私たちが苦しい時に眠っている神様なんてあてにできないじゃない!」
ショコラは、コーネリアにとって胸の痛い言葉を浴びせる
コーネリア「そっか・・・そうだよね。 でもね、やっぱり神様はいると思うよ」
ショコラ「そうかしら・・・」
コーネリア「うん。いると思うよ。・・・あなたにも、私にも」
ショコラ「神子さまがそう言うなら・・・私も一応信じてみる」
アクセル「こんなことがあった後も旅行なんか行くのかよ」
リオン「こんなことがあったから熱心な信者も、そうでない者も、救いを求めて旅に出るのだろう」
ショコラ「そういうこと。それじゃあ、本当にありがとう!」
二人の重ね重ねの謝礼を受けつつ、一行は店を出る。
アクセル「あの偽物たち、俺たちの真似をしてるんだよな」
リリーナ「すると、あの下品なリーダーがアクセルね」
スザク「あはははは! そっくりじゃない!」
アクセルはむすっとした顔で睨んでいる
リリーナ「あの少女がコーネリアで魔法使い風なのは、私でしょうね」
スザク「え・・・じゃあ、あの猿みたいなのは・・・」
コーネリア「スザクなの?」
スザク「違うよ!! きっとリオンだよ!!」
リオン「・・・・・・」
リオンも若干表情が険しくなった・・・・・・・気がする。
目的地もなくなった一行はせめてハコネシア峠を越えさせてくれとコットン爺さんに懇願
するためにハコネシア峠に行く。峠に着いたとき、パルマコスタの義勇兵が声をかけてき
た。
義勇兵「神子さま! ドアさまからの伝言です。再生の旅しばしお待ちいただきたいと」
リオン「どういうことだ」
リオンが尋ねる
義勇兵「実はマーテル教会付旅業案内人がディザイアンにさらわれたのです。これを機に
ドアさまはパルマコスタ軍総力をあげてマグニスの治める人間牧場を襲撃することになさいました」
スザク「それとこれと どういう関係があるのさ」
義勇兵「我々が襲撃をかけるのに呼応して、皆さまには誘拐された旅業案内人を救出して頂きたいのです」
コーネリア「誘拐された案内人ってどんな方なんですか?」
今仕事をしていた旅業案内人―。 いやな予感がする。
義勇兵「ショコラという娘です」
アクセル「ショコラが!?」
リリーナ「なんてこと・・・」
予感が的中した。さらわれたのはさっきまで一緒にいたショコラだった!
義勇兵「神子さま、何とぞよろしくお願いします
詳しいことは牧場でニールがお話しします。 お願いします」
ニール。 ドアの秘書をしていたあの男だ
ショコラを見捨てる訳にはいかない。すぐに人間牧場に駆ける。
スザク「あのマグニスとかいう奴、品性の欠片も感じないね」
リリーナ「まったくだわ。 力で全てを支配しようとしている。
その力も所詮はエクスフィアに頼ったものだというのに」
アクセル「あんな奴・・・ぶっ潰してやる!」
リオン「・・・あの男にも命がある。 マグニスを倒すことは、一つの命を奪うことだ」
悪人でも命は命・・・。当然のことだが、アクセルには・・・
アクセル「じゃあ、パルマコスタの人たちが報復されるのを黙って見てろっていうのか!」
リオン「そうではない。敵を倒すということは、その命を背負うということだ。
それを忘れるなといっているのだ」
アクセル「命を背負う・・・か。 そうだな・・・
・・・俺はちょっとカッカしやすいみたいだな。気を付ける」
リリーナ「でもすぐに気付いて反省するのだからまだいいと思うわ」
スザク「で、すぐ忘れちゃうんだよね」
アクセル「うるせー! 混ぜっ返すな!」 スザク「いてててて」
こうして人間牧場を目指している道中に海が見える。港町が近いせいか、船がよく見える。
リオンがふと何かを思い出して言った。
リオン「この近くに間欠泉があったな」
リリーナ「ソダ島ね。観光名所になっているはずだわ」
アクセル「間欠泉? なんだそりゃ」
スザク「一定の周期で温泉が噴き出してるんだ。そんなことも知らないの?」
アクセル「し、知ってるよ! 当たり前だろ。ちょっとド忘れしただけだ」
スザク「ボク一度見てみたかったんだよね」
リオン「ふむ。立ち寄ってみるか?」
アクセル「すげー! 早くみてぇ!」
リリーナ「だめです!」
リリーナがなぜか怒っている
アクセル「な、何怒ってるんだよ」
リリーナ「・・・再生の旅が優先よ。ソダ島になんて行きませんからね!」
スザク「変な姉さん・・・」
頑なにソダ島へ行くのを拒否するリリーナ。何かを隠しているのだろうか。
そうこうしているうちに、人間牧場に到着する。
―Extra 6 パルマコスタ人間牧場―
人間牧場はイセリアだけではなかった。ここにもディザイアンに奴隷として虐げられている人はいる。施設そのものはイセリアと大差はない。
スザク「ア、アクセル・・・」
アクセル「ああ、この光景見たことあるぜ・・・
イセリアだけじゃなかったんだな。人間牧場ってのは」
スザク「もうマーブルさんみたいな犠牲者を出したくないよ」
アクセル「ああ、もう犠牲者はいらない。行くぜ、スザク!」
ニール「お待ちください、神子さま」
後ろの木陰から、秘書のニールが姿を現す
アクセル「ニール! ショコラがさらわれたんだって?」
ニール「・・・はい。そのことでお話ししたいことがあります」
リリーナ「・・・あまりいい話じゃなさそうね」
ニール「みなさんにはこのままパルマコスタ地方を去って頂きたいのです」
コーネリア「でも、そうしたらショコラさんはどうするんですか?」
スザク「そうだよ。パルマコスタ軍と連携を取ってショコラさんを助け出すんでしょ?」
ニール「いえ、それが・・・」
リオン「やはり・・・罠か」
リリーナ「・・・嫌な方の予感が当たっていたようね」
アクセル「リオン!それに先生も! どういうことなんだよ?」
リオン「ディザイアンが組織だった軍隊を持つ街をおとなしく放置していることが私には
疑問だった」
リリーナ「ええ。その通りだわ。 反乱の芽を潰さないのはそれが有害ではないから・・・
力がないから放置されているのか、あるいは有益存在なのか・・・」
ニール「・・・おっしゃる通りです。ドアさまはディザイアンと通じ、神子さまを罠に
はめようとしています」
スザク「どうしてそんなことを」
ニール「昔はこんな方ではなかった・・・本当に街のみんなのことを考えておられたので
す。 五年前、クララさまを失った時もディザイアンと対決することを誓ってお
られたのに」
コーネリア「それなのに、どうして」
ニール「わかりません。とにかく、このまま牧場に突入しては神子さまの身が危険です
ショコラのことは私にまかせて、皆さまはどうか先にお進みください。
一刻も早く世界を再生するために」
リオン「・・・ふむ。確かに世界再生のためにはここを捨て置くべきだろうな」
コーネリア「ダメだよ! このまま見過ごすなんてできない!」
スザク「そうだよ。 もしこのままにしておいたらパルマコスタもイセリアみたいに
滅ぼされちゃうかもしれない。 そうでしょ、アクセル!」
リリーナ「そう。それはその通りよ。 でもあえて私はリオンの意見に賛成したいわね。
街が滅ぶのがイヤなら今後不用意にディザイアンと関わらないことだわ」
コーネリア「そんなのダメ! 世界を再生することと目の前の困っている人を助けること
はそんなに相反することなの? 私はそうは思わない」
リリーナ「コーネリアがそういうのなら私たちにそれを止める権利はなくてよ。
この旅の決定権を持つのは神子であるコーネリアなのですから」
アクセル「俺はハナからそのつもりさ。言ったろ? 牧場ごと潰してやるって」
ニール「しかし・・・」
スザク「いいっていいって。 コーネリアがイヤって言ってるんだから」
リリーナ「さて、これから取るべき方法は二つ。まずはこのまま牧場に突入してショコラ
と牧場の人々を救い出すこと。 こうなった以上牧場を放置しておくことは
第二のイセリアの悲劇を生み出すでしょうから
もう一つはドアの真意を確かめること。彼が罠を仕掛けたのなら、牧場の配置
もきっとよく分かっているでしょう
・・・少しだけおしゃべり好きにしてあげましょう」
ニール「ドアさまに、何をするのです?」
スザク「・・・聞かない方がいいよ。姉さんの折檻はすごいから」
ゴンッ!! これで何度目か、先生の鉄拳が飛ぶ
リオン「順当に考えれば、まずドアを押さえるのが正解だろう」
コーネリア「アクセルはどう思う?」
アクセル「パルマコスタに戻ろう。まずはドアの口から真意を聞こうぜ」
コーネリア「でもなるべく早くショコラさんを助けてあげようね。
きっと、一人で心細いはずだから」
リリーナ「まあ、アクセルもたまには冷静な判断をしてくれるのね」
ニール「私は・・・」
アクセル「あんたはここにいなよ。 これからあんたの上官を締め上げるんだぜ?
・・・見ない方がいい」
ニール「・・・はい」
あのドアがコーネリアを罠にはめようとしていた。一体、何の目的があってそのようなことをするのか?彼はディザイアンなのか?それとも・・・
一行はドアに真意を聞くためにパルマコスタへ戻る。封印の解放をひとまず中断して人間牧場にさらわれたショコラを助け出す。
慈悲の心失くして天使にはなれない。それは人間の創りだした偶像にすぎないが、それでもコーネリアはそれを信じ前へ進む。たとえそれが偽善だと言われても。
旅は続く。これからの遥かなる旅路に大いなる加護があらんことを―
To Be Continued
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