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とある物語の傍観者だった者

作者:パズル男
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22話:セロリ君

 
前書き
『一方通行は学園都市最強のレベル5だぜ。

 最強であるからボッチだぜ。

 最強であるから恐怖する者もいれば腕試しに挑む者もいて、とても迷惑だぜ。

 だから、どうすれば争いはなくなるのか、どうすれば誰も傷つかず済むのかをセロリは考えたぜ。

 最強ではなく無敵になればいいぜ、と答えは出たぜ。

 誰もが恐怖し、勝負をすること自体が馬鹿げているほどの存在になればいいぜ。

 そうすればもう誰も殺さなくていいんだぜ。そうなれば心を痛める心配もなくなるぜ。

 だからセロリは少女たちを虐殺するんだぜ。

 しかし、そんな殺戮ショーも9982番目でお終いだぜ……』

 ――――――とある物語の傍観者だった者の言葉。 

 
 実験場、一方通行により殺戮ショーは起きていなかった。

 逆に、ミサカ妹の手によってフルボッコされ地べたに転がってはゲシゲシ足で踏まれていた。

 それは転地がひっくり返ってもありえない光景だった。

 オレはコンテナの陰に隠れてその光景を目に焼き付けた。

「ほら、一方通行。顔よりもこっちを踏まれる方がご褒美ですよね、とミサカは貴方に確認を取らなくても踏んでさしあげましょう」

「アァ…ゴ、ゴホウビジャナイデス……」

「………」

 ミサカ妹が超ドSで男の大事なところを執拗に攻めていた。

 おいおいおい、18禁にするつもりかよ……

 まさかの展開だった。

「な、何してんのよ、アンタ……??」

 美琴が偶然そこにいた。

 否、彼女はこの実験を知ってオレよりも先に来ていたのだ。

 しかし、手に入れた情報と目の前にある光景が違っていたんだろう。もの凄く興奮……もとい、困惑していた。

 美琴の反応は当然である。顔を逸らしたい気持ち、オレもよーく分かるぞー。

 そして、そんな少女が精一杯顔を赤らめて質問を投げかけ、質問されたミサカ妹はこう答えた。

「何って、ナニですが…お姉様もご一緒にこのロリコン粗チ〇ン野郎を懲らしめましょう、とミサカはお姉様に手招きをしてみます」

「どこを伏字にしてるのよ……って、そうじゃなくて、そんな恥ずかしくていやらしいこと私がするわけないでしょ!」

「アァ……ゴホウビ、モッドォォォ…………」

「………」

 もう家に帰っていいかな……

 アニメとは違い、ミサカ妹が偶然にも奇跡的に一方通行を撃破した。

 これにて実験は、最強超能力者はレベル2orレベル3の欠陥電気な少女に負けるロリコンで変態であるからしてレベル6シフト計画は中止であったらいいな。

 あとは、もう彼女らだけで対処できるだろうか。

 だから、オレの出番はもうないだろう。

「ここが気持ちいいのでしょう、この早〇野郎とミサカはさらに足のグリグリを強くしてさしあげます」

「ちょwwアンタいい加減にしなさいってば!!」

「プギャァァアアアアアアアア」

「………」

 カ、カオスだ。

 オレはこの場に来たことに後悔した。

「ア、アンタ達、ふざけてるの? なんで今そんなことができるの??」

 美琴がキレた。心配だな、おい……

「残念ながらフザケてはいませんし大真面目です…まぁまぁ落ち着けよとミサカはお姉様を宥めてみます」

「いや、落ち着いていられないわよこんな状況で!! 私、アンタがここで実験するっていうから心配して駆けつけたっていうのに本気でナニしてんじゃないわよ!! 本気でキレるわよ!!」

「そんなに怒らなくても、とミサカはお姉様に怒られしょんぼりして見せます。もちろん演技ですが」

「あ??」

 ………。

 まぁ美琴に怒られて当然の展開ではあるが、そもそもミサカ妹のその態度が美琴の勘に触っているということを本人は理解しているのだろうか。

「この男はアンタや他の皆を殺そうとした相手よ。ご褒美あげる暇があるんならアンチスキルに通報して引き取ってもらいましょう」

「……うわー、お姉様はそれで本当に学園都市第三位の頭脳をしているんですか、とミサカはお姉様の低脳っぷりに心配してしまいます」

「う、うっさいわね、私何か間違ったこと言った??」

 まぁ、普通の事件ならアンチスキルに通報して引き取って事件解決ってなるんだろうけども……

 そもそもクローン人間を殺して法律で罪に問われるのかさえオレには分からないけども。

「アンチスキルに引き渡せばまた実験は繰り返されますよ、とミサカは断言してみせます」

「そ、そんな……」

 まぁ、アンチスキルが対処できる一件なはずもなく、裏でいろいろ工作されるんだろうな。

 そして、闇に生きる研究者たちによって再検討なされ、数日、あるいは数週間後、もしくは数ヵ月後、もっと時間が掛かって数年後に悪夢の実験は再び開始されるかもしれない。

「そう考えれば今ここでこの人の息の根を止めた方が懸命かと、とミサカはお姉様に懇切丁寧に説明しとりあえず実行してみせます」

「ちょ、ちょっと待って……ッ!!」

 言うや否や美琴の制止など全く聞く耳を持たないミサカ妹は実行した。

「プギャァァアアアアアアアア」

「ん~ん、良い声で鳴いてくれましたね、とミサカは満足です」

「な、なんて酷いことを……」

 オージーザス………。

 なんてことだ、オレが見たのはミサカ妹が一方通行の股間を亡き者にと、今までグリグリしていたのを止めて思いっきり踏んづけやがった所だった。

 オレが聞いたのはあまり悲痛な叫びであり「プギャァアア」と脳内変換された断末魔にも似たソレ。

 セロリの息子は無事では済まないだろう……セロり自身は泡を吐いて失神してやがる。

 ムゴすぎる。鬼だ、ミサカ妹の姿をした悪魔や……

 しかし、当の本人はオレたちの気持ちを察しては不思議がる。

「何を仰るのですかお姉様。彼は今以上に酷いことをして他のミサカを今日の今日まで9981回も虐殺してきたのですよ、そんな大罪人が子孫を残せるとでも?? とミサカはまだ目の前で地獄を見たこと無いお姉様に論します」

「うっ、確かに許されないことだけども……」

「お姉様は甘ちゃんですね。けっ、ゆとり世代はこれだから……とミサカはツバを吐きます」

「……アンタ、そんなに性格悪かったっけ??」

 態度も悪いがな。

 アニメのイメージと全然違、わないかもしれないが。

 それよりも、これ以上こいつら2人だけにしとくのが怖い。

 今までのやり取りからあのミサカ妹に口で勝てそうにない美琴がこれ以上追い詰められるのも危険な気がする。

 だから、気が進まないが、オレは2人の間に割って入った。

「ちょろっと~、こんな夜中にお前らみたいな女子中学生がこんな所でいったい何を言い争ってるんd……って、ちょwwおまっwwミサカ妹っwwwwその銃危ないだろうがっ、没収だよコノヤロウ!! それにあそこで倒れている人がいるぞ、おい少年大丈夫か!! 玉キンは大丈夫かっ、救急車呼んでやるからなっ、もう少し我慢しろよッ!!」

「「は??」」

「ウケケ、ゴホウビデスー」

 ちとワザとらしすぎたか、もの凄く怪訝な顔された。

 しかし、オレは怯まない。

 ミサカ妹の手から銃を没収。

 美琴をミサカ妹から距離を取らせた。もうちょっと詳しくいうと、オレの背後に美琴を立たせる。

 つーか、セロリが壊れていた。ウケケ言ってやがる。目も逝ってやがる、どう見ても重傷だった。

「いやいや、アンタが何故このタイミングで現れるか!?」

 何はともあれ、美琴ちゃんがビックリしてらっしゃいます。

「えーと、ちょっと夜の散歩していたら偶然お前らを見つけてな。だから、心配になって駆けつけてきたわけですたい。何か揉め事のようだが、力を貸すぜミコっちゃん」

「ミコっちゃん言うな! それとアンタん家からここまでどれだけ距離あると思ってんの? 随分長いこと街を徘徊してたんでしょうね、このロリコンが!!」

「な……っ!??」

 ひ、酷い言われようだ。ロリコンに罪は無いのに。

 しかし、ミコッちゃんの今の心理状態から察するにオレに当たってしまうのも無理はない。

 ならばよかろう、オレの精神ライフが削られようが構わないさ。

「補足しておきますと…今朝方から人通りの少ない通りに小さい女の子を連れてきては如何わしい店に入っていた所を目撃しています。どうやら、夕方までニャンニャンしては一度店を出て、夜にもう一度戻ってきては延長戦してきたらしいですぜ、とミサカはお姉様に犯行現場を捉えた証拠写真を渡します」

 あっ、超絹旗と一緒に観に行った映画館の写真だー。

 でも美琴やミサカ妹には如何わしい店にしか見えなかったようだ。さらに、オレが超絹旗を店に連れ込んだと思い違いをしているらしい。

 いや、それ以前になんでオレはミサカ妹に盗撮されてんだよ……

「ア、アンタッ、私達がたいへんな目にあってる時にナニ犯罪犯してんのよ!!?」

「うげーーー!??」

 相当ショックらしい美琴に胸倉を掴まれ思いっきり睨まれた。

 ……涙も出ていた。

「アンタ、どこまでロリコンなのよ、もう絶交よ!! 顔も見たくないわ!!」

 ……別にそれでも構わない。

「あぁ、お姉様が本気で泣いてます。しかし、ミサカは空気を読まず、お姉様にさらにショッキングな真実をお伝えしてさしあげましょう」

 もうなんか嫌な予感しかしない。

「な、何よ、真実って……っていうか、アンタら知り合いなの??」

「数日前に知り合っただけです。それよりも、とミサカは真実をついに暴露します。このロリコン野郎、ここの実験の事、知ってましたよ」

「「………」」

 少しの数秒間の沈黙。

「……は?? 何言っているの、アンタ??」

「これが事実ですよ、お姉様」

 ………。

 本当に何を言っているのだろうか、このミサカ妹は。なんか、暴露された。

「そこのロリコン野郎、ここの実験のことも実験の全貌もお姉様が知るよりも以前に知っていました。なので、ここに通りかかったことは偶然ではありません。それに、先ほどまでのミサカ達のやり取りも、ずっと物陰から様子を窺っていましたよ。自分の出番はまだか、って」

「う、うそ、でしょ??」

 ……なんか、凄いバレてる。

 なんで、この子がそれを知っているんだ??

「ア、アンタ、なんで私に何も言わなかったの??」

「ぐっ、そ、それは……」

 などと、美琴がオレの胸倉を握る力が強まっていく。

「アンタ、それを知っててなんで他の女とあんな楽しそうにデートできんのよ……」

 ミサカ妹が撮った写真のことだろうか……

 もう何も答えられない。

「知ったフリもいいところよ。サイテーよ、アンタ……」

 ……やっぱりサイテーなのだろうか。サイテーなんだろうな。

「まぁ一応フォローしておきますが、お姉様。このロリコン野郎だって本当はお姉様やミサカ達のことを助けたいとは思っておられ悩んでいましたけどね。しかし、相手が悪すぎたのです、非力でマヌケなロリコン野郎が学園都市の闇に1人で立ち向かったって結果は見えていましたから、彼はお姉様を助けることを諦めたのです」

「1人じゃないわ、私もいるわよ……」

「じゃあ、たかが2人で立ち向かったところで、お姉様方ではどうすることもできないのです、と訂正しておきましょうか」

「うっ……」

 ………。

 だから、なんでミサカ妹が語る。数日前に会っただけなのに、オレの何を知っているっていうんだ。

「さらにフォローしますと、彼は本来ならお姉様も含めてミサカ達を全員見捨てるはずだったんです。ですが、今日の映画に心を動かされ、今日の一回だけ、ミサカを一方通行から守ろうと駆けつけたのです」

「そう、なの……??」

 あぁ、その通りだよ、クソッタレが。

「でも勘違いしないでくれ、美琴。オレはミサカ妹を助けるためにここまでやってきたが、これはオレの自己満だ。ほとんど気まぐれなんだ。それにそいつの言ったとおりオレはお前たちを当の昔に、学園都市に来た時からすでに見捨てている。この意味がわかるよな?」

「………」

 美琴は黙って頷いた。

「いつかはお前にすべてを打ち明けて絶交される覚悟だ。お前が気が済むまでオレをサンドバックにしてくれたらいい。病院送りにしても構わない。まぁ、死ぬのだけは嫌だけども……」

 いろいろ考えすぎて頭の中がこんがらがってきた。今、上手いこと言えない。

「でも、ちょっとだけ待ってくれ。先にこっちの問題を解決しておきたいんだ……」

「それはそこに倒れて泡吹いてるセロリ君の対処についてですか、とミサカは分かりきったことを確認してみます」

 いや、違う。

「いや、お前の対処についてだよ、ミサカ妹」

「ミサカ、がですか??」

 そうだよ、お前だよこの性悪女。

 オレはこいつに訊きたいことが山ほどある。

 頭がこんがらがるほどに、どうしても訊かなきゃならないことがあるんだよ。

 しかし、オレが質問して真実を確かめるまでもなかった。

「ぐ…ふ、ふざけんじゃねェぞォォォ……この俺がたかが三下如きに負けるワケがねぇぇんだよぉぉおおおおおおおおおおオオオオオオオオオオッ!!」

「なっ、一方通行はまだ立ち上がるっていうの!??」

「さすが第一位だぜ、玉キンを失ってもまだ立ち上が、りますか……と、ミサカは少し驚きました」

「ちっ、邪魔を……面倒だ。美琴、こっから離れるぞ」

「え、ちょっと……っ!??」

 なんか復活した一方通行。

 ので、オレは美琴の手を引いてその場を離れた。正確にはセロリ君のターゲットであるミサカ妹からだが……争いに巻き込まれたくないからな。

「クカカキクケコカカキキククケコカカキククケコココカカカカァァッ!!!!」

「「ッ!??」」

 もう人語じゃない言葉を発狂するアクセロリーターはミサカ妹の所までベクトル操作で詰め寄っては……

「おいおいおい、そんなスピードで素人なただパンチでこのミサカは倒せねぇぜ、とミサカは逆にカウンターを食らわせ引導を渡してさしあげます」

「プ、プギャァアアアアアアアアア!?」

 ゴギッ、と鈍い音がしたのも一瞬だった。

 ありえないことがオレ達の眼の前で起きたんだが、あの学園都市第一位のレベル5が超スピードで少女を亡き者にせんと襲ったのに、逆にカウンターを食らってお星様になっちゃった。

 なんか面白いほど吹っ飛んでいった。

「あばよ、セロリ君。当分の間、病院で寝ておけよボケ」

「「………」」

 ………。

 いやいやいや、オレじゃないからな、今のキメ台詞。

「な、何が起きたの?? 私の力を超えていたわよ、今の……」

 な、なんであの子が、と困惑する。

 超電磁砲ですら一方通行は傷一つ付かないっていうのにな。

 それがこのミサカ妹の仕業だっていうのがあまりに嘘だ。ありえない。

 だが、これではっきりした。

「もういい加減ミサカ妹の真似をしないでくれるか、反吐が出る」

「あはん、バレてた??」

「……!?」

 土御門がオレを止めたがっていたのも今わかった気がする。

 しかし、全てにおいて遅かった。

 こうなる運命だったんだ。

 ジャンヌ・ジェネロ。

 それが彼女の名前であり、変態魔女と呼ばれる人外であった。

 テスラといい、なんなのお前ら……思い出の中でじっとしといてくれよ、マジで。

「おぇっ、オロゲ……」

 思わずトラウマを思い出して吐いてしまったわい!

 もうやだー…… 
 

 
後書き
えーと、さらに雲行きが怪しくなってきた展開ですが続行です

最初に考えていたシナリオはミサカ妹のピンチに駆けつけた主人公がセロリ君をぶっ飛ばし、カミやんがミサカ妹と出会うまでの数日間の平和を手に入れるというストーリーを考えていましたが、前話で変にシナリオ変更したから、こうなっちゃいました
まだ変態魔女を登場させる気なかったんですがねー
もう知りません

作中の描写では、たぶん作者が勝手に納得して説明不足な部分とかあると思いますが、それに関してはごめんなさい、と先に謝っておきます 
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