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緋弾のアリアGS  Genius Scientist

作者:白崎黒絵
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イ・ウー編
武偵殺し
  23弾 銃弾の声

 俺は混乱している(フリをしている)フライトアテンダントを落ち着かせる(相手は元々落ち着いているが)と、アリアの部屋に案内してもらった。

 アリアの近くにいれば、『武偵殺し』に襲撃されたとしても素早く対処できるからな。

 そんな打算は、アリアの部屋のドアの前で吹っ飛んだ。

 この飛行機は全席スイートクラスで個室制の超高級機。当然、プライバシー保護などのため防音性も高いため、かすかにしか聞こえなかったのだが……

「………いよぉ…………キぃ」

 泣いていたのだ。アリアは。

 アリアの声が聞こえた瞬間、俺は計画も計算も忘れて、ただアリアの傍にいてやりたくて。ドアを開けた。

「よお、アリア。昨日ぶり」

 俺が現れたのがよっぽど驚いたのかアリアは目を丸くしていて、その目の端には涙が溜まっていた。

 俺はそんなアリアが見ていられず、少しおどけた感じで接することにした。

「おいおい。無視とかやめてくれよ。俺のガラスのハートが傷ついたらどうしてくれるつもりだ」

 笑って、わざと少しアリアを非難するように言って、ふざける。

「あ……あ、んた……なん、で……ここに……?」

 まだ驚きは抜けきっていないようだが、アリアが俺に問う。

「何でも何も、ドレイが主人についていくのは当然だろ?」

 俺がまたもふざけて言ってセリフで、アリアの眼がさらに丸くなる。

「でも、あんたとの契約はあの時――――っ!」

「契約の内容は『事件を1つ解決するまでパートナーになる』だからな。バスジャック事件については、犯人が捕まってないからまだ解決していない。そうだろ?」

「そ、それはそうだけど……」

「なら、俺とおまえはまだ契約で結ばれた、パートナーだ。武偵憲章2条『依頼人との契約は絶対守れ』……だろ?」

 やれやれ、柄にもなく武偵憲章なんて引用しちゃって。本当、アリアと出会ってからの俺は変だな。

 本当は、契約のことや武偵憲章の事なんて全然関係なく、ただ助けたくて来ただけなんだが……恥ずかしいから黙っておこう。

 俺が1人で脳内会議を行っていると、アリアが俯きがちに話しかけてきた。

「でも……あんたはそれでいいの?あたしと組むの、あんなに嫌がってたのに」

 そう言うとアリアは俺を見つめてきた。その瞳には、不安げな色が浮かんでいる。

「いいんだよ。嫌だったら、こんなとこまでわざわざ来ないだろ」

「でも、あんたってその、優しい、し。もしかしたら我慢してるんじゃないかって。本当は嫌なのに、契約のせいで嫌々来てくれたんじゃないかって」

 こんだけ言ってまだ信用されないとは。日頃の俺の行いの悪さがわかるな。

 よし、どうやらアリアにはもう少しストレートに言葉にして伝えないとダメみたいだな。俺のキャラじゃないからあまり気は進まないんだが、今はそんなつまらないプライドなんて捨てるべきだ。

「そんなことないって言ってるだろ。俺は、俺自身がおまえと一緒にいたいって、そう思ったからここにいるんだ。それとも、こんな理由じゃだめなのか?」

 俺が自分の気持ちをストレートに伝えると、

 ボンっ。

 と、音をたててアリアが赤面した。何故にこのタイミングで赤面癖を?

「そ、それって、もしかして、こ、こく、こくは――――」

 アリアがあわあわしながら何か言っているが、声が小さすぎていまいちよく聞き取れない。視力は異常に高いが、聴力は平均くらいなんだよな、俺。

「おい、アリア。なんて言ったんだ?よく聞こえなかったからもう一回――――」

 ガガン!

「うおっ!」

「みぎゃ!」

 大きな音がし、機体が揺れる。

 今のは……音から察するに、雷か?そう言えば、今は台風が来てるんだったか。

『――――お客様に、お詫び申し上げます。当機は台風による乱気流を迂回するため、到着が30分ほど遅れることが予測されます――――』

 機内放送が流れ、600便はまた少し揺れながら飛ぶ。というか、避けるんなら最初から避けてくれよ。ビビるだろうが。

 俺が心の中で機内スタッフやら何やらに文句を言いながら、改めてアリアの方を見てみると、

「も、もふもふ」

 何かどっかのラノベで見たことがある変な物体がいた。妖怪ス○キ○だった。E.T.だった。電波女だった。

 というか、よく見ると布団からピンクのツインテールがはみ出していた。なんだ、ただの布団に(くる)まったアリアじゃないか。

 ま、まさかとは思うが、アリアってもしかして――――

「アリア。おまえ、もしかして……雷が怖いのか?」

「もっ、もふもふもふ!もふもふもふ、もふもっふ!」

 いや、何言ってるかわかんないから。もふもふとしか聞こえないから。

 でもきっと、布団が左右に動いていたってことは否定していたんだろう。まあ、天下のSランク武偵、『双剣双銃(カドラ)のアリア』が雷なんかを怖がるなんて、そんなことあるわけ――――

 ガガン、ガガーン!

「もふっ!?」

 また雷の音がした。ついでに驚いたような、怯えたような声が妖怪○マ○ンの中から聞こえてきた。

 やっぱりアリアって……

「なあアリア。やっぱりおまえって雷が――――」

「もふもふ!」

 またもや否定。しかも今度は返事がかなり早かった。怪しい。

 ガガガーン!

「もーふー!」

 一際大きな雷が鳴った後、一際大きな声で叫んでから布団の中からアリアが飛び出してきて、俺にしがみついた。その際、アリアのささやかながら柔らかさを備えた2つの物体が俺に密着した。役得役得。

「み、ミズキ~」

「やっぱり怖いんじゃないかよ、雷」

「う、うう~怖くないも~ん~」

 『もん』って。もはやキャラが原型を留めてないぞアリア。そんなに雷が怖いのか。

 アリアは未だに俺の身体にしがみついて震えていた。その顔は若干涙目だ。

 そんなアリアを見ていたら、俺はなんだか変な気分になり……

「え……?」

 気が付いたら、アリアの頭を撫でていた。

 これはさすがに恥ずかしすぎる。俺は即座にアリアに言い訳した。

「あ……いやこれはだな。別に変な意味じゃなくてな、その、あまりに撫でやすい位置にあったから撫でただけであってだな」

 我ながら苦しい言い訳。撫でやすい位置にあったから撫でたってなんだよ。

 一方のアリアはというと、顔をいつもの1.5倍くらいに赤らめて、下を向いていた。

 そ、そうだよな。アリアも一応女の子なんだし、好きでもない男に頭を触られるのは嫌だよな。

「す、すまん!すぐどかすから!」

 俺が慌てて手をどかそうとすると、アリアがその手を上から押さえつけた。

「……あの、アリアさん?そうされると、頭から手をどかせないんですが……」

「べ、別に嫌じゃないから。むしろ、その、もっと撫でてほしいっていうか……」

 顔を赤らめてそっぽを向きながら言うアリアを見て、俺が思ったことはただ1つ。

 なんだこの可愛い生物。俺を殺す気か。

 おおおおおおおおおおおお落ち着け俺。相手はあのアリアだ。ヘタなことをすれば風穴を開けられかねないんだからな。

「どうしたのよ……は、早く続き……」

「あ、ああ……」

 アリアが何を考えてんのかはわからんが、とりあえず今は従っておこう。後のことは後で考える。

 0.01秒で結論を出した俺が、もう一度アリアの頭を撫でようとすると、

 ~~♪~~♪~~♪

 俺の携帯から着信音が流れた。

 なんだよふざけんなよ折角いいところだったのにいったいどこのどいつだこうなったら無視だ無視。と思った俺だったが、この着信が誰からのものかに気付くと、慌てて電話に出た。

『もー!遅いですよ先輩!可愛い可愛い後輩からの着信はワンコールで出てくれないと』

 やはり、かけてきたのはミラだったか。

「悪い悪い。今ちょっと取り込み中だったんだ……で?このタイミングでかけてきたってことは、何かわかったのか?」

『はい!頼まれてた仕事の件ですが、大体のことは調べ終わりました!』

 いよいよだ。これでやっと……『武偵殺し』の正体があいつなのかどうかが確定する。

『結論から先に言いますと……2008年12月24日に起きた浦賀沖海難事故と『武偵殺し』の1件が関係しているなんて情報は、どこにもありませんでした』

 ミラがそう言い切った瞬間――――



 パン! パァン!



 ――――音。が、機内に鳴り響いた。

 隣で俺の身体にしがみついていて、自分を放り出して急に電話し始めた俺をジト目で見ていたはずのアリアも、俺から身体を放して呆然としている。

 音は音でも、今度のそれは雷鳴ではなく、俺たち武偵校の生徒がもっと聞きなれた音――――

 銃声だったのだ――――! 
 

 
後書き
Long time no see! Nice to meet you!白崎黒絵です!
今回はそれほど前回から間が空かないうちに投稿できました!頑張りました!これからもこういうのを目指していきたいです!

内容:アリアという名前のぐーかわ生物をミズキが愛でる話。この一言に尽きます。

それでは尺も無いのでハイスピード進行で行きましょう!
「GS!今日の一言誰でShow!」
今回はこの娘!ぐーかわ生物です!

「も、もふもふ!」

何言ってるかわかんねえええええええええ!!!!!!!!!でも可愛いから許す!!!

それでは今回はこの辺で。また次回のGSをお楽しみに!
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次回は遂にあの娘とのバトル!? 
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