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魔法少女リリカルなのはANSUR~CrossfirE~

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ようこそ☆ロキのロキによるお客様のための遊戯城へ~Ⅲ~

 
前書き
三回目にしてアンスール2人目とバトル。駆け足ですいませんです。
ですが、バトルだけじゃないですよ。馬鹿をさせたいですよ。アインハルト達にですよ。

VS????戦イメージBGM
テイルズオブエクシリア『己を信じて』
http://youtu.be/Qj5c7E6EbHE 

 
†††Sideなのは†††

ルシル君と同じ“アンスール”のメンバーだったカーネルさんとの戦いも終わって、あまりのとんでもバトルに戦慄しているヴィヴィオ達に同情。そういう私も、実際に地帝カーネルという大英雄と戦い、未だに体の震えが止まらない。ルシル君の記憶で見て知っていたけど、体験して改めて理解出来た。アンスールは確かに最強だ、って。

「おーい、カーネル! 次に進ませてあげてくれーーっ!」

16マス進んだ先にポツンと居るルシル君が大声でそう言う。するとカーネルさんは「まだルールを言い終えてないぞーーーっ!」と返す。

「ルシルはしばらく放っておくとして。このスンベルはいくつかのエリアに分かれていて、俺のような管理人が居る」

ルシル君に聞かれたようで、「放っておくとはなんだぁぁーーーーーっ!」ってルシル君が叫ぶ。カーネルさんは「うっっせぇぞ、ルシル! お嬢さん達にルールの説明中だ! 少し黙ってろっ!」とまた叫び返す。

「コホン。なんだっけ? あー、そうそう。さっきのようにお題を拒否ったりすると、様々なペナルティーを科せられるっていうのは話したな。そのペナルティーの一つに管理人とバトル。だがこれはある種のチャンスなんだ。負ければそのエリアのスタート地点に戻されるが、勝てばエリアをクリアせずとも次のエリアへ進む事が出来るってわけだ」

「え? それじゃあルシルはカーネルさんに勝ちましたから・・・」

フェイトちゃんがそう言うと、カーネルさんは「うぐ。そうなんだよなー、勝つ自信はあったんだがなー」って肩を落としながら黙ってるルシル君の方へと向き直り、右手の中指を立てて見せた。当然、ルシル君もいきなりそんな挑発めいた事されたら怒るわけで・・・

「上等だコラァ。さっきの続きをやろうってか、おい!」

まず使うところを見ないやんちゃな男の人口調を使ってノってきた。一触即発の気配。さすがにこんなところで、あんなデタラメな戦闘をまたされたら命がいくつあっても足りない。

「まあまあ。ルシル君もカーネルさんも落ち着いて、な? 子供の前で、そうゆう大人げない事するんはどうかと思うよ?」

はやてちゃんがカーネルさんの前に立ちはだかった。すごいよ、はやてちゃん。カーネルさんは「そうだな。すまないな、お嬢さん」と素直に謝る。遠く離れたルシル君は「離れろ、はやて! ソイツに近づくなっ。何をされるか判らないぞ!」なんて、まだやる気を見せてる。ルシル君。どれだけカーネルさんを陥れたいの? というか仲悪いの?

「フッ。無駄だぜ、ルシル。俺は大人だからな。そんな挑発には乗らないぜ。さて。それじゃあ1stエリアは、俺を倒したという事でクリアとなった。次のエリアへ移動させるから、ちょっと集まってくれるか?」

「あの、ルシルパパはどうなるんですか・・・?」

ヴィヴィオがおずおずと訊ねる。するとカーネルさんは「パパ?」って目を見開いた。ルシル君とヴィヴィオを交互に見回して、「ルシル! お前、いつ子供なんてつくりやがった!?」と怒鳴る。ルシル君がそれに対して何か言い返そうというのを無視して喋り続ける。

「母親は!? この中に居るのかっ!? だったら羨ましいぞ、おい!というかあまり似てないな・・・? オッドアイだけは受け継がれてるが。ん? そういやそこのお嬢さんもオッドアイだよな。おいおいおい、まさか二人も子供をつくって――」

ヴィヴィオとアインハルトちゃんに詰め寄って、顔を近づけて二人を眺めるカーネルさん。さすがにそこまで女の子をジロジロ見るのはどうかと思うんだけど・・・。二人も引いてるし。シグナムさん達がカーネルさんの行動を止めるために動こうとしたところで、

「ヴィヴィオとアインハルトが怯えるからその辺にしておけ、馬鹿者ぉーーーーっ!」

全力疾走で戻ってきたルシル君のドロップキックが、見事カーネルさんの側頭部に直撃。「げべらっ!?」って妙な苦悶も漏らして、カーネルさんは床をズリズリ滑って行った。ルシル君は「そんなプライベートな問題に楽しげに首を突っ込むな、ボケ!」ってヴィヴィオとアインハルトちゃんを守るかのように、カーネルさんと二人の間に割って入る。

「話は聞いていたぞ。お前を倒した事で、このエリアをクリアしたんだな。ならもうお前と関わっていられないな。というわけでさっさと次のエリアに飛ばせ」

「痛っったいなぁ。ああ、もう行っちまえ。バーカバーカ、ルシルのアホー。だが忘れるな? ここで俺を退けたとしても、この奥には俺以上の魔術師が居るってことを」

あ、あれ? カーネルさんてこういうキャラだったの? 記憶の中だともっとカッコ良かった気が・・・?
ううん、それより。それは他のアンスールのメンバーが居る事を示している、という事でいいんだよね?
アンスールの事を知るみんなと顔を見合わせて、最後にルシル君を見る。

「アンスールと戦うのはどうせお題を拒否した場合だけなんだろ? なら警戒する必要はないな。お題をきっちりクリアすればいいだけなのだから」

ルシル君は冷静に告げる。確かにそうだ。戦うのはペナルティーの時だけみたいだし。たとえ戦う事になって負けたとしてもスタート地点に戻されるだけ。みたいなんだけど、カーネルさんは肯定も否定もしない。あの顔。隠し事してる顔だ。そう思ったところで、足元に光の円陣が生まれた。

「とにかく遊べば判る。じゃ、お嬢さん達を2ndステージへ転送するぜ」

光の円陣がゆっくりと上がってきて、足元から消えていく。そこでルシル君が「おい、私はどうなるんだ!?」って、カーネルさんの胸倉を両手で掴んで揺する。見ればルシル君だけ何も起きてない。カーネルさんがニヤリって口端を歪めた。

「わーっはっはっはっはっ! ルシル。お前は一人で歩いて次のエリアへ行けい!」

「お、お前ってやつは・・・!」

そんな二人のやり取りを見ながら、私たちは次の2ndエリアへと転送された。えっと、ルシル君。待ってるからね? クロスカウンターを決めた二人がうっすらと見えたけど、大丈夫かなぁ・・・?

†††Sideなのは⇒ルシル†††

「はぁはぁはぁはぁ・・・本当に私だけ居残りか・・・」

カーネルと遊び半分の殴り合いを終え、二人揃って仰向けに倒れている。私の愚痴に「ざまぁーみろぉー」と笑うカーネルを小突いてやる。

「あーもう痛いなぁ。お返しだ・・・!」

食らう前に跳ね起き上がって回避。仰向けに寝転がったままのカーネルは私を見上げる。その不満そうな顔に向けて、このゲームが創りだしたキャラクターであると解っていてもある質問を投げかける。

「なぁ、カーネル。お前の知る情報を全て教えてくれないか」

「・・・・俺がルシルの記憶から抽出された単なる幻だっていうのは理解しているだろ? だったらその質問に意味はないよな? だから答えは、なんにも知らないぜ、だ」

そうだよな。邪神ロキの遊戯場(スンベル)内のキャラクター。外界の事情など知るわけもないよな。まったく。グロリアは一体何を企んでいるんだ。外界関係の情報はもう得られそうにないな。ならもう一つの質問と行こうか。

「そう言えば、先程の戦い。お前、固有能力を使わなかったな。手加減か?」

「石化の魔眼か? そりゃ使わないだろ、やっぱり。魔眼系の固有能力は抑えが効かないからな。オリジナルでもフェイクでもそれは同じ。というかあのお嬢さん達を相手に、俺たち魔術師の固有能力はキツ過ぎるだろ? たぶん他の固有能力持ちのアンスールも使わないと思うぞ。フノス様とカノンの空間干渉。セシリスの灼現の魔眼。ま、レンとアリスは使わざるを得ないと思うがな」

万が一フノスが出てきて戦闘するとなれば、たとえ空間干渉を封じる事が出来たとしてもまず勝てないな。レンとアリスは・・・まぁ仕方ないか。あの二人にとって固有能力イコール魔術だからな。カーネルも立ち上がり、このエリアの奥へと指差した。

「行けよ。お前の現在(いま)の仲間が待ってるぞ」

「そうだな。カーネル、お前・・・お前たちには悪いが未来(さき)に行くよ。だがいつか必ずみんなの元へ逝く日が来る。それまで待っていてくれ」

「あいよ。気長に待ってるわ。でも生き急ぐようなことだけはするなよ。無様でも良いから生きようとしろ。いいな?」

「・・・・ああ。ありがとな、カーネル」

感謝を告げ、このエリアの奥を見据える。ゴール地点が見えそうにないな、うん。仕方ない。剣翼アンピエルを出して空を飛べば・・・・

「あ、言い忘れてたが、ズルが出来ないようにここボードフィールドじゃ魔術も何も出ないぞ~」

「・・・・はは・・ははは。本当に歩いて行けってか!」

私もフェイト達と同様に転移させるように頼もうか(もちろん力づくで)!

†††Sideルシル⇒はやて†††

転送された先、そこはさっきと同じような煌びやかな街中やった。唯一の違いは、さっきは夜やったけど、今度は空が青いということや。周囲を見回してみる。やっぱりルシル君の姿がどこにもないなぁ。

「ルシルパパ、やっぱりおいてけぼりを・・・?」

「そうみたい。ルシルさん、大丈夫かなぁ・・・」

「歩いてここに来るみたいだから、どうなんだろう?」

「カーネルさんってどこかイジワルしそうな感じだったし、何か妨害とか?」

「あーあるかも。なんか仲良いのにちょっとしたことでケンカする悪友みたいな?」

ヴィヴィオとキャロ、エリオとスバルとティアナがここに居らんルシル君を心配中。カーネルさんのエリアがどんだけ広いか判らんけど、歩いて来るんやったらどんだけ時間がかかるか。

「主はやて。周辺を探索してみましたが、危険性のあるトラップなどはありませんでした」

「そうか。ありがとな、シグナム、リエイス」

いきなり変な事態に陥る事態はないとゆう事やな。なのはちゃんとフェイトちゃんに視線を送って、頷き合う。フェイトちゃんが「みんな、集まって」って、みんなを集合させる。


「ありがとうございます、そこのお方。手間が省けました」


と、鈴の鳴るようなとても綺麗な声。一切の気配がないから気付かんかった。一斉に声のした方へ振り返る。そこには一人の女性が居った。
とても艶やかなカーディナルレッドの長髪を1本のおさげにしてる。透き通るほどに真っ青なウルトラマリンブルーの瞳に見詰めらた私は、つい視線を逸らしてしまう。それほどに綺麗な瞳やったから。
ルシル君やさっきのカーネルさんと同じアースガルド同盟軍の軍服姿やけど、色はちょっと目に痛い真紅。あぁ見たことある顔や。そう、確か名前は・・・

「ようこそ、スンベルの第二領域へ。この領域の管理人のセシリス・エリミング・ムスペルヘイムです」

炎の世界ムスペルヘイムの王女で、炎熱系最強の魔術師の片翼。炎帝セシリスさんや。
コロナとリオが「髪がきれー」てうっとりしながらセシリスさんを見詰めとる。セシリスさんはその褒め言葉が聞こえたんかコロナとリオに「ありがとう、お嬢様方」て微笑み返す。それだけでコロナとリオは顔を真っ赤にしてふにゃってなる。

「では、早速ゲームの開始と参りましょう。カーネルよりルールの説明を聞いていますね?」

私たちはただコクリと頷く。アカン。カーネルさんとは別格に緊張してまう。“アンスール”のリーダーのフノスさんが出てきたら私、緊張のしすぎで倒れるかもしれへん。セシリスさんは「それは重畳。では、どなたから賽を振りますか?」て十六面体のサイコロを創り出す。そこに、フェイトちゃんが緊張した面持ちで「あの、ルシルがまだ来てないんですけど・・・」と言う。

「・・・・気にしないでください。さあ、始めましょう」

(ん? どうして目を逸らすんや? やっぱり何か問題が起きとるんやろか?)

そんなセシリスさんに「でも」と食い下がるフェイトちゃんやったけど、「しばらくすれば到着します」てピシャリと言われたことで押し黙るしかない。こうしとっても先に進まんし、しゃあないな。サイコロを振る一番手として挙手。

「貴女が一番手という事でいいのね?」

セシリスさんがコツコツとブーツを鳴らしながら私の元へ来て、「どうぞ」ってサイコロを手渡してきた。それにしても、どうゆうマスがあるか判らへんから怖いわ、このゲーム。子供の頃に遊んだボード版やったら上から見るだけでどんなお題があるか判るし、ある程度そのマス目を狙ってサイコロを振れる事も出来たんやけど。そんなちょっとしたズルが出来へん。

「気を付けてね、はやてちゃん。あと出来れば簡単なお題を出して」

なのはちゃん。それは無理な話や。判っとるやろ? 手を合わせてお願いポーズをしとるなのはちゃん達に、一応努力するという意味を込めた力強い頷きをしてみせる。深呼吸を数回。よっしゃ。行くよ、どうとでもな~~れ♪ ポイっとサイコロを放物線上に放り投げる。コキンて床に落ちて転がるサイコロを眺める。

「・・・・8、やね」

出た目は8。セシリスさんが「でははマス目までどうぞ」と道を開けてくれる。私はみんなに「じゃ、先に行っとるな」って手を振って、トントンとスキップ気味に先へ進む。そして8マス目で立ち止まって、マスに書かれとるお題を見る。そこには・・・

『ラッキーマス☆ もう一度サイコロを振る権利があなたに与えられるのですっ♪ さぁ、そのマスに止まりしラッキーなプレイヤーよ。再びその歩みを進めたま~え!』

セシリスさんの振り向いてみると、同性でも惚れそうなニコリと笑みを見せてきた。そういえばアンスールの女性メンバーは全員美人さんやったなぁ。私のところにまで転送されてきたサイコロをキャッチ。今度は16を出したろか。一気にマスを進めて、速攻でゴールへ。そやけど狙って出すんは何か怖いなぁ。妙なペナルティーを科せられそうや。

「はやてちゃーん! 16を出しちゃえー!」

みんなの声援に、「任せてなーーー!」と腕を大きく振って応える。よっしゃ。ポーイとサイコロを放り投げる。コロコロ転がるサイコロ。そんで出た数字は・・・「16やーーーーっ!」やった。最高の運やな。これならこのエリアを早々にクリアできそうや。で、16マス進んで・・・

『あー残念。突然のサイクロンに巻き込まれちゃった。振り出しに戻る。ごめんね~』

足元から竜巻が発生。てゆうか、ごめんね~、ちゃうわっ! なんやムカつく! そう思うても竜巻に勝てるわけもなく、

「ひゃあああああああっ!」

吹っ飛ばされた。マリ○ブラザーズ3の笛使用時みたいな。気が付けばスタート地点。私を見とるみんなに「ただいま・・・?」と挨拶。少しの沈黙の後、みんなから優しい「おかえり」が返ってきた。アカン、泣きそうや。めっちゃ意気込んでの予期せぬ帰還。私、今日の運悪いんやろか?

「では二番手に参りましょうか。どなたが振ります?」

†††Sideはやて⇒ルシル†††

なんとか2ndエリアに到着(何とか転送させてやった)したのはいいが、到着した直後に強制転送。そこは晴天に恵まれた、全てが白い石畳の大きな広場だ。何かしらのお題を行うための場所だろうか?

「ルシル君!」「ルシルパパ!」

背後から声をかけられた。なのはとヴィヴィオだ。振り向けば、シグナムとアギト、ティアナとキャロとレヴィ以外が居た。みんなの元へと駆け寄り、そして話を聴くまでもなく現状を理解した。

「まさか・・・セシリスと戦うのか・・・!?」

今居るこの石畳の広場の中央が数mと窪んでおり、その窪んだ底には円形の、まるで闘技場のような広場が広がっていた。その闘技場の中、片刃の刀身(峰が向かい合った)が二つ並んでいる真紅に輝く大剣、“煉星剣レーヴァテイン”を携えたセシリス。すでに臨戦態勢に入っている、アギトとユニゾンしているシグナム、そしてティアナ達が居た。

「レヴィが出したそのマス目の内容が、ボーマスっていうものだったんだけど」

ボーマス? ボーナスとマス目をかけたダジャレか? フェイトの口からそんな間抜けな単語を聞く日が来るとは。いやいや。そんなことより、だ。

「そのボーマスというのが出て、このエリアの管理人のセシリスと戦うハメになったわけか」

聞けば、ボーマスでの相手は管理人だけではないらしい。管理人はもちろん、私たちの中から誰か、そして謎のゲストキャラ、という3つの選択肢があったらしい。決定方法はルーレット。そして運悪く管理人を引き当てたという事だった。そんなルール、カーネルの奴言ってなかったぞ。あの馬鹿。ルールを説明するならちゃんと最後までしろよ。

「そうなの。あと、管理人側のキャラクターと戦う場合、一度戦闘に参加した人は、味方が全員戦ってからじゃないと出られないんだって」

「だから私やはやてちゃん、ヴィータちゃんにルシル君は、他のみんなが戦闘しないとずっと出れなくて」

「つまり、セインテスト君たちがもう一度戦うためには、ヴィヴィオちゃんやアインハルトちゃん、それにコロナちゃんとリオちゃんとイクスちゃんが戦ってからじゃないとダメって事よね」

シャマルのその言葉に一番反応したのはコロナとリオとイクスだ。私とカーネルとの戦いが余程ショックだったらしく、少し怯えている。だから、もしかしたら自分たちもあんな馬鹿げたレベルの戦いに出ないといけないと判り、

「わ、私は無理ですっ。あ、あんなすごい戦いを自分たちもやれって・・・!」

「あんなの負け戦じゃないですか。あたし、勝つ自信が無いです」

「わたしは一切の攻撃魔法を習得してないですから、一番足手まといかもしれません」

ずーんと沈む三人。だが忘れていないか? 別に“アンスール”と絶対戦わなければならないって事はない。それに、仲間内での戦闘やゲストキャラが居るみたいだしな。もし万が一にも“アンスール”と戦う事になった時、アインハルト達にはカノンと戦ってもらえばいいだろう。
ひとつ問題があるとすれば、カノンが出てくる前にアインハルト達が参戦しなければならない事態に陥った場合。そうなったら・・・・すまない、諦めてくれ。

「ルシルさん。セシリスさん相手に、シグナム一尉たちのメンバーで勝てるでしょうか?」

エリオが心配そうに訊いてきた。シグナムとアギトのユニゾン。中遠距離のティアナ。オールレンジのレヴィ。サポート力のあるキャロ。かなり良い布陣だが、シグナムを出したのは失敗だ。ここはフェイトかエリオの方が良かった。
ステアとセシリスの扱うムスペルヘイム王家式魔術の一つに、シグナムとアギトの火力を無力化する術式が存在している。それを使われたら、いくらシグナムとアギトとはいえ遅れを取ることは間違いない。

「あのメンバーを選んだのは誰だ・・・?」

「ルシル君とシャルちゃんの記憶の内容を思い出して相談して、最終的にはシグナムさんが決めた」

シグナムの事だ。おそらくティアナ達は全員サポートに回すだろうな。それもかなり危険な状況になったしてもだ。騎士としての誇りがそうさせるはずだ。騎士というのは誇りがあればどこまででも戦いを貫こうとする。つまり、自分を支える誇りを失わない限り諦めない。途轍もなく厄介だが、しかし憧憬を抱ける対象だ。

「シグナムの奴。同じ炎熱の剣士としてやる気みてぇだったぞ」

「扱う武器の名前もレーヴァテインとレヴァンティンという共通点だし。やっぱり関係とかあるのかな?」

私は、そう首を傾げているスバルに「ミッドとベルカは大戦時代から確立している世界だから、名前くらいは伝えられていてもおかしくないだろう」と答えておく。はやての使う古代ベルカ魔法には、大戦時、私の魔術にも存在する名称、ヘイムダルやフレースヴェルグが使われているしな。

「それでルシルさん。エリオの質問の答えはどうなんですか?」

「そうだな。こう言っては悪いが、シグナムではなくフェイトを出した方が良かったかもしれない」

リインの問いにそう答えると、全員が息を飲んだ。そう言えば、魔術師など知らないアインハルトやコロナ、リオは付いて来れているのだろうか? ここまで巻き込んでおいて騙し続けるというのも気が引けるが・・・。

「ムスペルヘイムの魔術師は、全ての炎熱系を統べる術者と言っても過言じゃない。炎熱系魔力には耐性があるし、セシリスやステアのような王家術式を扱う術者にはもっと高位の炎熱封じがある。だから相性的にはシグナムは間違いなく劣勢。それを覆すには、魔法に頼らない純粋な剣技で上回り、尚且つ味方のサポートを上手く利用するしかない」

「そんなにまずい相手なんか・・・セシリスさんて」

「あの、ヴィヴィオさんのお父様。先程から聞き覚えのない単語が幾つか出てきているのですが。付いて行けていないのは私とコロナさんとリオさんだけのようですし、その、教えていただいてもよろしいでしょうか?」

アインハルトのその問いに、魔術を知る全員が私を見詰めてくる。教えていいのか、と。私は頷くことで、教えてもいい、と応える。

「まず、今から話すことは全て真実だ」

そこまで言ったところで、闘技場内にカーマインの魔力光が生まれたため中断。一斉にセシリスへと向けられる視線。
セシリスの足元に、ムスペルヘイム魔法陣が展開されている。正五茫星と逆五茫星を合わせた十茫星。その中央には円があり、小さな十茫星が描かれている。そして十茫星を囲う二重円の間にいくつものルーン文字が描かれている。そういう魔法陣だ。

「始まるな・・・。話はこの戦いが終わってからにしよう」

炎帝セシリスを相手にどこまで戦えるのか。シグナム、アギト、ティアナ、キャロ、レヴィ。頑張ってくれ。

†††Sideルシル⇒シグナム†††

我々が対峙するのは、遥かに古き時代の英雄“アンスール”の一人、炎帝セシリス。私と同じ炎熱の術式を扱い、しかも携える武器の名称も似通っている。時代的に見れば、私のオリジナルとでも呼べる相手だ。

「それではそろそろ開戦と参りましょうか。コホン。アンスールが炎帝セシリス・エリミング・ムスペルヘイム。参ります」

VS◦―◦―◦―◦―◦―◦―◦
其はアンスールが炎帝セシリス
◦―◦―◦―◦―◦―◦―◦VS

セシリス殿が“レーヴァテイン”を正眼に構える。私も同様に“レヴァンティン”を正眼に構え、

『キャロ。私に強化を頼む。ティアナとレヴィ、お前たち二人には悪いがしばらく待機していてくれ。アンスールが炎帝セシリス。一度、一対一で闘ってみたかった相手なのだ』

思念通話で、共に戦ってくれる仲間にあまりにも身勝手な指示を出す。判ってくれ、とは言うまい。だが、かつてのセインテスト達の記憶で垣間見たセシリス殿の強さに心が震えた。そのような彼女に、私の騎士の魂(ツルギ)が届くか、届いたのならどこまで通用するか。その結末を見てみたいのだ。三人から返答が来る。

『了解しました。ティアナ・ランスター、待機します』

『えっと、了解です。レヴィ・アルピーノ、シグナムさんに託します』

『キャロ・ル・ルシエ、了解です。強化の方は任せてください』

三人は私の身勝手な我が儘を受け入れてくれた。『すまない、感謝する』と最大の感謝の意を込めて告げる。三人の力強い頷きを見、私は改めて待っていてくれているセシリス殿を見据える。

「我が乞うは、疾風の翼、城砦の守り、破砕の力。火炎の剣騎士に、駆け抜ける力を、清銀の盾を、力を与える祈りの光を」

――トリプルブーストアップ・スピード&ディフェンス&ストライク――

キャロの強化魔法が私を包み込む。セシリス殿が少し驚きの表情を見せたが、すぐさま消し去る。

「守護騎士ヴォルケンリッターが剣の騎士シグナム。参らせていただきます」

こちらも名乗りを上げたことで、決闘の準備は終わった。あとは戦闘開始の切欠だけ。だがその切欠はすぐに訪れた。私とセシリス殿の間に、白い何かが落ちてきた。石片だ。自然に落ちてきたものではないな。おそらくセインテストだろう。その石片が地面に・・・・・・落ちた。それを合図として戦闘開始。

「行くぞ、アギト! レヴァンティン!」

『応よ!』≪Jawohl !!≫

一足飛びで距離を詰める。先手は頂こう。キャロの強化のおかげで体が軽い。“レヴァンティン”のカートリッジを一発ロードし、刀身に炎を纏わせる。かの炎帝は私の炎熱斬撃を受けるかかわすか。さあ、どちらだ!

「『紫電・・・一閃!!』」

振り上げた“レヴァンティン”を全力で振り下ろす。セシリス殿の“レーヴァテイン”に動きは・・・・あった。「良い剣閃ですね」と涼しげに言い、振り下ろされる“レヴァンティン”を真っ向から退けるように“レーヴァテイン”を振り上げた。二振りの剣が衝突。衝撃波が途轍もなく、“レヴァンティン”の炎がすべて吹き飛んだ。

「おおおおおおおおおおっ!!!」

そのまま押し続ける。セシリス殿から「くっ」と苦悶の声が漏れる。しかし私は押し合いを終えて引く。直感が告げたのだ、距離を開けろ、と。再び一足飛びで後退。

――熱波震断刃(アセッソ・グーミ)――

「良い勘をしているのですね。騎士というのはいつの時代も素晴らしい」

セシリス殿の“レーヴァテイン”の様子がおかしい。ただでさえ真っ赤だった刀身が、さらに赤みを増している。まるで炎に熱せられた直後の鉄のようだ。

「貴女の紫電一閃でしたか? 炎を纏う術式。私のこれは・・・!」

説明の途中で突撃してくる。受けていいのか? いや、駄目だ。あの攻撃は受けていいものではない。横薙ぎに振られた一閃を避ける。避けきれそうになかった返しの一閃を防ぐために、

――パンツァーシルト――

障壁を展開するが、防ぐどころか私に攻撃が届くまでの時間稼ぎすら出来なかった。砕かれたのではなく斬り裂かれた障壁。ギリギリで身体を捻る事で直撃だけは免れた。

「数千度の高熱を纏うものでして、派手さはないですが、威力はありますよ? ただ効果時間はあまり長くはないですけど・・・!」

再度の襲撃に備えさらに距離を開けつつ、

『ブレネン・クリューガー!!』

アギトの炎弾が、迫るセシリス殿に殺到していき直撃、連続で爆発を起こしていく。さらに距離を開け、「アギト、烈火刃だ。火力を底上げしたい」と告げる。頭上にあるセシリス殿のライフゲージに変化は・・・ある。僅かだがダメージを与えられたようだ。

『おっしゃ! 任せろい! 炎帝だかなんだか知らねぇが、あたしらの炎を見せてやる!』

――烈火刃――

“レヴァンティン”の刀身に業火が纏う。見据えるは未だに晴れない爆煙の中に居るであろうセシリス殿。どのような事態が起きようとも対処出来るように意識を研ぎ澄ませた直後、

「さぁ、参りましょう・・・!」

――炎熱波神断刃(リベラサオン・プレーザ)――

カーマインに光輝く6m近い長さの光の剣閃が幾つも飛来してきた。横っ跳びで回避を行いつつ、回避しきれない剣閃には迎撃を行う。“レヴァンティン”を振るい、真っ向から切り捨てる。ふむ、大した威力ではないな。
一閃目を中央で裂き、二閃目も裂き、三閃、四閃と真っ二つに切り捨てていく。が、五閃目で異変。寸断出来ていたのが、明後日の方向へ弾き飛ばすことしか出来なかった。次いで六閃、七閃と弾くだけに留まる。そして終わりは唐突だった。八閃目を弾くことも出来ず、そのまま迎撃に振るった“レヴァンティン”と拮抗することになってしまった。

「どこまでこの術式に耐えられるのか、見せていただきますね」

さらに追加されていく剣閃が、“レヴァンティン”ごと私を後方へと弾き飛ばそうとする。少しでも気と力を抜けば間違いなく全ての剣閃に押し切られる。故に退けない。今さら捌くことも出来ない。防御を行おうともすでに懐に入られているため無意味だ。

――パンツァーガイスト――

念のための魔力バリアを纏う。どこまで威力を軽減してくれるかは判らないが、無いよりはマシだろう。

『シグナム! レヴィ達に援護を頼もう! 騎士としての誇りも解るけどよ、負けちまったらそれまでじゃねぇか!』

アギトの若干涙声の入った提案。それに対し何かを答える前に、私は目を見張った。今までの剣閃の真の狙い、この術式の本当の姿が目の前に存在していた。セシリス殿は猛る業火を刀身から伸ばした“レーヴァテイン”を頭上に掲げ、

これで終わりです(ダール・ア・センテンサ)!」

さらに一閃、今度は単なる光の剣閃ではなく業火の刃。手を離せないこの状況。動いたのはアギトだ。私の頭上に生み出される小さな太陽。

『相殺でなくてもいいっ。せめて威力を減らしてやる!』

――轟炎――

セシリス殿が放った業火の刃へと太陽が一直線に向かう。衝突。大爆発を起こし、迎撃に成功したかと思われたが・・・。アギトが『全然衰えてねぇっ!?』と叫ぶ。業火の刃が“レヴァンティン”と拮抗している幾つもの剣閃に触れた。

†††Sideシグナム⇒レヴィ†††

大爆発によって生まれた爆音で聴覚を潰された。ついでに視覚まで潰されたっぽい。目を開けているのか閉じてるのかも判んない。とにかく、『シグナムさん! アギト!』って念話で二人の確認を取る。だけど一向に返事が来ない。まさか今のバカみたいな攻撃で、シグナムさんとアギトが負けた・・・?

『ティアナさん! キャロ! そっちの状況は!?』

『最悪よ! 耳鳴りが酷くて気持ち悪いわ』

『わ、わたしも目が見えない・・・』

三人揃って視聴覚を潰されてしまったみたい。離れた位置に居てこの被害。ほぼ直撃と言ってもいいシグナムさんとアギトは絶望的だ。次はわたし達を撃破するために動くかもしれないセシリスさん。すぐさま“アストライア”を起動。防護服は近中距離用の“モード・コンバット”。

『一方的に負けるのは嫌だから、わたしは一矢報いたいんだけど。ティアナさんとキャロはどうする』

たとえ二人が手伝ってくれなくてもやる。負け戦であってもここまでやられたら黙ってられない。すると『あたしも乗った。援護は任せなさい』とティアナさん。『サポートは任せて、レヴィちゃん』とキャロ。

『そんじゃいっちょ魔導師の底力を見せてやろっか!』

二人からの承諾も得た。相手はルシリオンと同じ“アンスール”のメンバー。簡単に勝てる相手じゃないのは重々承知。視界が徐々に戻っていく。両拳を打ち合わせて気合充填。ってところに・・・

「うそ・・・シグナムさん・・・!?」

視界に入ったのは、ボロボロになりながらもセシリスさんと戦っているシグナムさんの勇ましい姿。遠目だから確信じゃないけど、シグナムさん・・・目、閉じてない?

『キャロ。あたしとレヴィが援護するから、シグナム一尉を召喚、すぐに回復して!』

ティアナさんの念話にわたしとキャロは『了解!』と応えて、わたしは陸戦用高速移動魔法・瞬走壱式を発動。ティアナさんもクロスファイアをスタンバイ。その間にセシリスさんの背後へ一気に距離を詰める。シグナムさんとのマジ斬り合いの最中だっていうのにセシリスさんはハッキリとわたしの姿を視認してた。防御か回避か迎撃か。どれが来るか判らないけど、もう後には引けない。

「はぁぁあああああああああっっ!」

――孤咬崩陣――

障壁破壊効果を持つ、弧を描く右蹴りを放つ。普通の相手だったらただの蹴りだと思って障壁を張るか避ける。障壁を張ったらそのまま突破してヒット。避けても次の攻撃に繋げればいいだけ。で、シグナムさんの目を閉じていても的確な斬撃の前に、セシリスさんは回避は出来ないって判断して、

「そんなハッキリと見える蹴りですから、何かしらの効果付与がある、ですよね」

シグナムさんの“レヴァンティン”と鍔競り合いしつつ、空いた左手でわたしの右足を掴んできた。何かを考える前に、「もらったっ!」と左足の蹴りをセシリスさんの頭部目掛けて放つ。だけどあと一歩遅かった。セシリスさんは蹴りが届く前にわたしをブンブン振り回して放り投げた。

――瞬走弐式――

でもまだまだ。空戦用高速移動魔法で、宙を蹴って再度セシリスさんを襲撃。キャロによるシグナムさんの召喚が始まるのを視認。セシリスさんそれに気付いて止めようとするけど、

「させない!」

――紫光連砲(ハーツイーズ・ストライフ)――

左腕を突き出して近接砲撃を照射。セシリスさんは回避に移った。よしっ。シグナムさんがキャロのところへ転移完了。あとは回復を待つまでだ。こっからは手加減無用。左足、右腕、右足と連続で突き出して砲撃をぶっ放す。

「面白い術式ですね。ですが、その程度の砲撃では通用しませんよ・・・!」

――轟煉甲冑(アルマメント・ヴウカオン)――

セシリスさんの足元から炎が噴き上がって、それを甲冑のように纏ってわたしの砲撃を全て燃やし尽くした。ベ、別にショックじゃないもん。想定していたしぃ・・・・グス。炎の中に佇むセシリスが“レーヴァテイン”の剣先をこっちに向けてくる。
これはまずいって思うね。そう思った矢先、『レヴィ! フルバースト、いくわよ!』とティアナさんから念話が入る。すぐさまシグナムさんを治療しているキャロやティアナさんを巻き込まないような位置へ退避。

――クロスファイア・フルバースト――

魔力弾の集中砲火。それを見つつ、中遠距離戦用の“モード・バスター”へ変更。わたしのように殴り合いの近接戦タイプじゃ危なすぎる相手だ。モード変更を終えてすぐ、

――紫光掃破(ハーツイーズ・ドライヴ)――

クロスファイアが炎の障壁に阻まれているところに砲撃をぶっ放す。“モード・バスター”時の砲撃は、“モード・コンバット”の時より当然威力が高い。だからストライフのように完全無効化されないと踏んでいたんだけど。
セシリスさんは何を思ったのか纏ってた炎を全部“レーヴァテイン”の二つの刀身の間に集束させた。直感が働く。すぐさまこっちに向けられている剣先の射線上から必死に離脱。

女神の陽光(ソール)

ボソッと呟いた術式が耳に届いた。ルシリオンの大炎熱砲撃と同じ名前。直後、二つの刀身をバレルのように見立てて、螺旋状の炎を纏ったレーザーが放たれた。衝撃が凄いのかセシリスさんが後ろによろけて、尻餅をついた。そんなのどうでもいいや。
レーザーはわたしの砲撃を瞬殺して、螺旋状に纏う炎で残りのクロスファイアを吹っ飛ばした。レーザーはそのまま壁に衝突。とんでもない大爆発を起こして、衝撃波やら爆風でわたし達を無様に地面に転がした。

「こっっわっ! 怖っ怖っこっわっ!」

すぐさま立ち上がって尻餅をついてるセシリスさんを見る。わたしの視線に気が付いたのか急いで立ち上がって「コホン」とか咳払いしてる。とりあえずみんなの無事を確認するために『生きてる人は返事プリーズ!』って念話を送る。

『けほっ、こっちは大丈夫。キャロ、シグナムさんは?』

『シグナムと『アギトだ』。私たちは無事だが、キャロが今のでゲームオーバーになってしまった』

『ごめんなさい。瓦礫が後頭部に当たってライフゲージがゼロになっちゃいました』

頭上を見れば、確かにキャロのゲージが黒に染まってる。って、わたしとティアナのゲージも3分の1くらい削れられてるし。うへぇ、とか思ってると、シグナムさんが『みなには迷惑をかけた。すまない』と謝罪してきた。

『い、いえ、あたし達も言う事を聞かずに手を出しましたし――』

『謝るのは私の方だ。それに、感謝もだ。ありがとう、お前達のおかげで助かった』

シグナムさんがセシリスさんと一番近いわたしのところに歩いて来る。そして“レヴァンティン”を構えて、『レヴィ、ティアナ。援護を頼めるか?』と。返答は決まってる。『任せてください!』だ。

「アレだけのダメージをそこまで回復させるとは。あの年端もいかない小さな少女は大変素晴らしい治癒術者のようですね」

遠くから「ち、小さくないもんっ、これでも十六歳だもんっ!」って必死に否定するキャロの声が。セシリスさんは律義にも「十六・・・ごめんなさい」って謝った。キャロが「素直に謝れるのもちょっとショック!?」って叫んでる。もう放っておこう。

「1対3。では、こちらも本気で行かせていただきます・・・ね!」

――疾駆せし業火の獅子(シャーマ・レアオ)――

「「く・・・っ!」」

巨大な炎を纏うことで炎塊となったセシリスさんが、倒れ込んでいるかのような低い体勢で地面スレスレを飛んできた。セシリスさんの突進を、わたしとシグナムさんは左右に分かれて跳び退いて回避。後方に通過していったセシリスさんに安心・・・なんて出来なかった。通過していった轍には炎がメラメラ燻ぶっていて、

「離れろレヴィ!」

――爆連柱波(エスプロザオン・ピラール)――

轍から炎の柱が幾つも連続で噴き上がって、その衝撃波で軽く意識が飛びそうになった。頭を振って、何とか持ち堪える。そこにドンっと胸を突き飛ばされて、尻餅をつく。驚いて顔を上げると、シグナムさんとセシリスさんが鍔迫り合いをしていた。

†††Sideレヴィ⇒シグナム†††

『「はぁぁぁあああああああっ!」』

“レヴァンティン”を振るい、セシリス殿を若干押し始める。純粋な剣技では少しばかり私に分があるようだ。無論セシリス殿の剣技も素晴らしい。疾いのは当然として、一撃一撃が重く手が痺れ、“レヴァンティン”を取り落としそうになる。だが、「フライハイトの斬撃に比べれば・・・!」と、気合いの一撃を振るう。

「っづ! 剣神と刃を交えたことのある者とは・・・!」

弾き飛ばされたセシリス殿が微笑む。私と距離が開いたことで、

――紫光裂破(ハーツイーズ・クラッカー)――

――クロスファイアシュート――

レヴィとティアナの射撃魔法、計二十六基が全方位からセシリス殿を襲撃する。セシリス殿は“レーヴァテイン”を振るい、次々と魔力弾の迎撃に成功するが、

「ぅぐ・・っ!」

残り三基の内の二基の魔力弾が迎撃される前に炸裂し、無数の小型の魔力弾となってセシリス殿にダメージを与えた。残り一基はティアナの魔力弾だったが、クロスファイアではなくスタンバレットだった。感電したことでよろけたその隙を突き、「紫電・・・一閃!」と斬りかかり、セシリス殿に直撃させることに成功した。
セシリス殿は「づ・・あ゛ぅ、やってくれますね、騎士シグナム・・・」と、“レーヴァテイン”で体を支えるも片膝をついた。彼女のライフゲージは半分を切っている。このまま押し切れるのか・・・? いや、セシリス殿の表情にはまだまだ余裕がある。

『真技を使われる前に決めた方がいいな。ティアナ、ブレイカーの準備を頼む。レヴィはそのまま射砲撃での援護を頼む。アギト、隙を見て捕獲輪だ』

『『『了解!』』』

「作戦会議は終わりですか? なら、ファイナルラウンドと行きましょう」

――炎帝形態顕現(カパスィダーヂ・フォルタレスィメント)――

「な・・・っ!?」

炎のように揺らめくカーマインの魔力を身に纏う。ただでさえ艶やかなカーディナルレッドの髪がさらに煌き、ウルトラマリンブルーの瞳は黄金に輝いている。セシリス殿が「参ります」と告げ、私はその姿を完全に見失った。直感が働き、“レヴァンティン”を盾のように体の横に掲げた直後、途轍もなく重い“レーヴァテイン”の一撃が来た。

「ぐ・・・あ・・・!」

両腕がギシギシと軋みを上げる。何とか耐え“レーヴァテイン”を捌く。距離を開けるために後退しようとするが、彼女はそれを許そうとしない。ステップで接近してくる。苦し紛れの紫電一閃を振るうが、容易く“レーヴァテイン”に防がれた。

これで終わりですよっ(ダール・ア・センテンサ)!」

――火煉爆焔焼打(ヘキエィン・インフェルノ)――

私の身長を超すほどの半球状の炎の膜を前面に押し出す様に纏った左拳打を繰り出してきた。まずい、この直撃を受ければ間違いなく一撃で落とされる。パンツァーシルトとパンツァーガイスト、役に立つかは判らないが魔力付加した鞘を盾代わりとする。全力の防御に炎の膜がヒット。視界が炎一色に染まる。大爆発が起き、爆風と衝撃波を耐えようとはせず、吹き飛ばされるままに体を任せる。

――ホールディングネット――

「シグナムさん!」

レヴィの発動した網状の緩衝魔法のおかげで壁に叩きつけられることはなかった。「すまない、レヴィ」と感謝を告げ、痛む体を引き摺りながらもセシリス殿と対峙。セシリス殿は、目を覆い隠したいほどに眩しく猛る炎を刀身に纏わせた“レーヴァテイン”を上段に構え、

天壌滅する(レーヴァ)・・・・原初の劫火(テイン)!!」

振り抜いた。と同時にあまりにも巨大な業火の剣状砲撃が放たれた。全力で空へと上がり、回避に集中する。防御など無意味なことは出来ない。私という標的を失った剣状砲撃が壁へと当たり、根こそぎ吹き飛ばす。とんでもない火力だ。そこに、「もらったぁぁっ!」とレヴィの声。

――紫光掃破(ハーツイーズ)昇華(エクステンド)――

レヴィの集束砲だ。セシリス殿は技後硬直で動けないでいる。そのまま直撃した。スミレ色の魔力光が周囲を照らし出す。さらに、『スターライトブレイカー、行きます!』とティアナから連絡が入る。私とレヴィはすぐさま効果範囲から離脱。その直後に放たれるのは、

「スターライトォ・・・ブレイカァァーーーーッッ(ファントムストライク)!!」

橙色の極光。チラリと姿が見えたセシリス殿が、もう一度極光に呑み込まれた。セシリス殿のゲージはあと僅か。レヴィとティアナの攻撃は間違いなく通用している。ここで一気にダメージを与えるしかない。

「アギト!」

『応よっ! 剣閃烈火・・・!』

左手に剣を模した炎剣を創り出す。私の有する魔法の中で最大火力を誇る一撃だ。

「『火龍・・・!』」

左腕を振ろうとしたところで、セインテストの「ダメだ、シグナム!」との叫び声。一体何事かと思う前に、すでに私は左腕を振るっていた。

――火龍一閃――

炎剣が伸び、その一撃を煙幕の中から姿を現したセシリス殿へ向けて振るった。セシリス殿は防御も回避も行おうとしない。ただ空いた左手を迫る火龍一閃に伸ばすのみだ。

(まさか素手で受け止める気なのか? 火龍一閃を!?)

――原初煉界の炎王絶技(サクラメント・ヂ・ムスッぺル)――

だがそれが現実となった。セシリス殿は何の苦もなく炎剣を鷲掴んだ。私たちは絶句する。さらに驚愕の事態が起こる。火龍一閃の炎が、セシリス殿の左手に吸収されていく。まさかセインテストの先程の言葉は、この事についてだったのか?

「ル~シル♪ ちょっとダメじゃない? 私の事を教えよ~とするのは。私、騎士シグナム達の事をなんにも知らないというのに」

セシリス殿の吐いた溜息と共に纏っていた魔力が消える。“レーヴァテイン”を肩に担ぎ、今までの丁寧な口調とは打って変わり、気安い口調でセインテストを窘める。

「つい、な。しかし今はシグナム達の味方を――」

「私の味方でもあるでしょ? あるよね? あると思います」

ニコニコ笑うセシリス殿の微笑みにセインテストは少したじろぎ、降参の意なのか両手を上げた。

「まぁ今ので判ったでしょうから説明しましょうか。私の扱うムスペルヘイム王家式魔術には、敵の火炎熱を吸収し、自らの力へと変換出来る術式があります。つまり―――」

「つまり、シグナム一尉やアギトの火炎攻撃は、あなたには一切通用しない。それどころか、あなたを強化、そして回復させるファクターになる、ということですね」

「正解です。私のライフゲージ、ほぼ回復しているでしょう?」

確かに。まさかトドメとして発動した魔法が、セシリス殿を回復させる事になろうとは。これにはショックを隠せそうにもない。ここまで共に戦ってくれたティアナとレヴィとキャロに申し訳が立たない。

「騎士シグナム。貴女の炎熱魔法は、もう私には通用しません」

“レーヴァテイン”の剣先を私に向け、そう宣告した。そうだろうな。そうだろうが、私の攻撃魔法に全て火炎が付加されるわけではない事を見せてくれる。“レヴァンティン”を、ボロボロと崩れそうな鞘へ収め、カートリッジを三発ロード。
セシリス殿は「なるほど。炎熱攻撃ばかりではない、という事ですか」と言い、“レーヴァテイン”を正眼に構える。私も“レヴァンティン”を正眼に構え、「ファイナルラウンドの続きと参りましょうか、炎帝セシリス殿」と告げる。

「ええ。徹底的に潰して差し上げましょう」

互いに微笑みあう。ティアナとレヴィが「怖い」とか言っているが、怖くはないだろう? 現状、セシリス殿を撃破する方法は一つ。レヴィの複数魔導師による連携集束砲ムーンライトブレイカーのみ。ティアナとレヴィの二人に、『ティアナ、レヴィ、おまえ達のムーンライトで決めてもらいたい』と提案する。

『時間稼ぎは私に任せてくれ。必ずおまえ達に繋げてみせる』

『了解しました。レヴィ、お願いね』

『おぉっしっ! やったるぜい!』

二人の承諾も得た。ならば、セシリス殿の隙を作るために頑張らなければな。

――疾駆せし業火の獅子(シャーマ・レアオ)――

セシリス殿が炎塊となって低姿勢で突進してきた。大きく横っ跳びし回避。先程と同じように轍から火柱が幾つも連続で噴き上がる。すでに効果範囲からは離れているため脅威ではない。セシリス殿は停止し、

「はっ・・・!」

――炎熱波神断刃(リベラサオン・プレーザ)――

カーマインに光輝く6m近い長さの剣閃が幾つも飛来してきた。今度は受けに回らない。回避し続ける。途切れたところで、鞘から“レヴァンティン”を抜き放つ。

――飛竜一閃――

シュランゲフォルムと化した“レヴァンティン”による砲撃級斬撃。セシリス殿が驚愕に目を見開き、だがすぐさま余裕の表情へと戻す。

「素晴らしいっ!」

――火炎龍天昇牙(エフピサオン・ヴルカニカ・ヂ・ドラガオン)――

“レーヴァテイン”の刀身に火炎を纏わせた状態で真っ直ぐ上空へ跳躍。炎の龍のように天へ昇るその姿。飛竜一閃を真っ向から上空へと弾き返した。

「まだだっ!」

――シュランゲバイセン・アングリフ――

弾かれた連結刃を操作して、宙空に居るセシリス殿を包囲しつつ突撃させる。「連結刃とはまた珍しいですね!」と迫る剣先を弾く。が、完全に破壊されない限りはいつまででもどこまででも追撃する。追撃しては捌かれ、追撃しては捌かれ、を続ける。

「これは意外と厄介な・・・ならば!」

セシリス殿は“レーヴァテイン”の刀身に連結刃を絡ませる。ギチギチと刃が擦れ合う音が響く。そして、

熱波震断刃(アセッソ・グーミ)・・・!」

数千度の高熱を発して攻撃力を上げる術式を使い、「次戦は出れませんし、壊れてもいいですよね」と刀身に絡ませていた連結刃を破壊した。そのまま私の元へと突撃してきた。“レヴァンティン”をシュベルトフォルムへと戻す。刀身が半分になってしまっているが、戦闘不能になったわけではない。まず迎撃するのはアギトの炎弾ブレネン・クリューガー、数は十一基。

「武器が折れてもやはり戦いを続行するんですね、騎士は」

余裕で炎弾を切り捨てていく。今度は私だ。着地したばかりのセシリス殿を紫電一閃で迎撃。拮抗はしたが、やはり攻撃力は断然“レーヴァテイン”が上回り、

「これでもう立ち向かっては来れないですよね?」

「くっ・・・!」

『レヴァンティンが!』

アギトの悲鳴。“レヴァンティン”がジュージューと音を立てて真っ二つに断ち切られた。切断面は熱せられた鉄の如く真っ赤。だが、まだだ!

――シュトゥルムヴィンデ――

ほとんど刀身の無い“レヴァンティン”を振るい、衝撃波を発生させ至近距離でぶつける。さすがに想定外の反撃だったのか、セシリス殿は「うぐっ?」と呻き声を漏らし、吹き飛んだ。だが両足で軽やかに着地し、

――疾駆せし業火の獅子(シャーマ・レアオ)――

炎塊となって低姿勢の突進攻撃。見るのは三度目。先程よりさらに速いようだが、それでも直線的な突進故に避けやすい。大きく横移動して回避・・・した矢先、セシリス殿の行く手にムスペルヘイムの魔法陣が生まれ、それを方向転換するための足場とした。
魔法陣を蹴る事での急な方向転換に対処できない私は、「がはっ!?」と、その突進の直撃を受けた。踏ん張る事も出来ずに弾き飛ばされ、背中から地面に叩きつけられる。

『シグナム!』

アギトの心配にも答えられないほどのダメージを受けてしまった。体内をめちゃくちゃにされたように気持ち悪い。だが倒れたままでいるのはまずい。

「シグナム一尉!」「シグナムさん!」

――ファントム・ブレイザー――

――紫光掃破(ハーツイーズ)昇華(エクステンド)――

ムーンライトをいつでも発動出来るように準備していたはずの二人からの援護砲撃。

――轟煉甲冑(アルマメント・ヴウカオン)――

足元より噴き上がる炎を纏い、二条の砲撃をかき消す。それと同時に立ち上がった私に、「今、楽にしてあげます」とセシリス殿が疾駆してきた。“レヴァンティン”はもう使えまい。ならあとはこの身一つでセシリス殿を止めるのみ。振るわれた“レーヴァテイン”を半身ズラして避け、ラリアットを放つ。首が閉まり呻き声を漏らすセシリス殿をそのまま腕で拘束。

「アギト!」

――捕獲輪――

ここで、アギトが捕獲輪を発動。セシリス殿の左腕と右足を捕獲した。突然の拘束に、セシリス殿は一瞬驚愕。しかし捕獲輪を破壊しようと拘束されている部分に炎を集中した。今こそ好機。セシリス殿の腰に両腕を回してしがみ付く。「一体何を!?」と驚きの声を上げているセシリス殿を、捕獲輪が破壊されるとほぼ同時にバックドロップ。ズドン!と後頭部から地面に叩きつけられたことで、一瞬とはいえ隙を生まれた。

『「「レヴィ!」」』

「任せてください!」

――紫光瞬条(マナクル)――

――チェーンバインド――

セシリス殿を拘束していくスミレ色の拘束条と橙色の鎖。抜け出そうともがいているが、もう遅い。セシリス殿を中央として、ティアナとレヴィが対角線上に立つ。準備は整った。巨大なベルカ魔法陣が三人の足元と頭上に展開される。

「「はああああああああああああっっ!!」」

二人の気合の咆哮と共に、頭上と足元の魔法陣から橙色とスミレ色の幾つもの閃光が断続的に噴き出し、セシリス殿を呑み込む。

「づっ――うぅがぁぁああああああああああああっっ!!?」

二色の閃光の中からセシリス殿の断末魔が聞こえてきた。だが、その閃光すら呑み込もうとする炎が生み出される。これには焦り、ティアナとレヴィが頭上の魔法陣へ跳躍。レヴィが魔法陣に手をつく。レヴィが集束役で、ティアナがトリガー役のようだ。魔法陣の直下にスミレ色の光球が発生、周囲の魔力を集束させて巨大化させていく。

「はぁはぁはぁ・・・・そんな魔力を、こんな至近距離で・・・!?」

セシリス殿が本格的に焦りだし、拘束を解こうとさらに炎を体から噴出させる。ブチブチと拘束条が焼き切れていく。急げ、レヴィ、ティアナ。そして、ティアナが“クロスミラージュ”の銃口を魔法陣の中央に当てた。後はトリガーを引き、魔法陣の直下にある巨大な光球に砲撃を撃ち込めば・・・。

「「ムーンライトォォ・・・ブレイカァァァーーーーーッッ!!」」

炎帝セシリスを撃破するための最後の一撃が放たれた。

†††Sideシグナム⇒ティアナ†††

決まった。レヴィのムーンライトは、発動に参加した魔導師の魔力をも使う集束砲。今回はあたしとレヴィ二人分の魔力、そして周囲の魔力、かなりの高威力になったはずだ。
スミレ色の閃光によって潰されてた視界が元に戻り始めて、ようやくセシリスさんのライフゲージを確認した。間違いなくゲージは黒く染まってる。それが示すのは、あたし達の勝利だという事だ。だけどまだ実感がわかず、勝利の喜び合う事もないままベルカ魔法陣から降りる。その直後、

「本当に負けるかもと思いました」

うそ・・・でしょ? ゆっくりと背後に振り向く。そこにはボロボロだけど、確かにしっかりと両足で立って、螺旋状に燃え上がる炎を足元に発生させてるセシリスさんが居た。ちょっと待ってよ。だって確かにライフゲージは黒に染まって・・・いない!? よく見れば徐々にゲージが黄色くなっていく。

「まさか、ずっと発生させてた炎を吸収して回復し続けてたの!?」

たぶんレヴィの言う通り。ムーンライトを受けてる間にも炎を吸収し続けて、ライフがゼロにならないようにしていたんだ。さっき見たゲージ、たぶんよく見れば僅かに残っていたのかもしれない。
セシリスさんがコツコツと軽い足取りで歩きだす。そして、それは一瞬。姿を見失ったと思ったらシグナム一尉の背後に居た。炎を纏った“レーヴァテイン”を縦一閃。炎の壁をシグナム一尉との間に生み出して、大きな半球状の炎の膜を纏った左拳で炎の壁を殴りつける。

「これにて貴女とは決着です!」

――真炎焦火煉爆焔焼打(アウテンチカ・ヘキエィン・インフェルノ)――

視界が大爆発によって真っ白になる。また視聴覚を潰された。だけど視界の方はすぐに回復。耳鳴りは全然治らないけど。そして一番に視界に捉えたのは、場外にまで吹き飛んだシグナム一尉の姿。シャマル先生とキャロとイクスに治癒魔法を掛けられている。

真技(セグレード)・・・!」

今まで以上の巨大な炎の竜巻を纏わせた“レーヴァテイン”を地面に突き刺した。セシリスさんから闘技場全体を覆い尽くそうとする炎の渦が拡がり始める。地面に足を付けていたら間違いなく呑み込まれると思って、宙にミッド魔法陣を展開、足場として避難する。
レヴィも飛行魔法で空へと避難。闘技場全体の地面を覆い尽くした炎の渦。それが宙に居るあたしやレヴィを呑み込もうと噴き上がってくる。さらに上へ上へと避難。高さはもう4mくらいまでになった。

顕現せよ劫火(オールデン・シャーヴィ)・・・!」

炎の渦がセシリスさんの居るであろう中心へと逆戻りしていく。炎の過ぎ去った所々には小さな炎の塊が燻ぶってる。セシリスさんの姿が視認出来た。“レーヴァテイン”を様々な軌跡で振るって、足元に在る炎の渦を振り上げつつ刀身に集束させていってる。
そして、

其は秩序を(インモルターウ・)再誕するもの(プルガトーリオ)!!」

“レーヴァテイン”の剣先を地面に擦りつつ思いっきり振り上げた。セシリスさんの足元から10数mくらいの火柱が立ち昇る。さらに炎の渦がもう一度広がり始める。その速さはさっきと比べられないほどに速く、地面に燻ぶっていた炎が炎の渦に触れた瞬間、巨大な火柱となってさらに天を衝く。炎の渦が壁へと当たり、壁を沿って一気に噴き上がる。

(闘技場の空陸全てが攻撃範囲なわけね、結局は)

防御も無意味だと判っているから、もう何もしないままに足元から噴き上がってきた炎の渦に呑まれることにした。これがゲームだけの魔術じゃなくて、実際に行われていた戦争に使われた魔術だなんて・・・。心底この時代に生まれて良かったとしか言いようがない。

†††Sideティアナ⇒フェイト†††

シグナム達が負けた。今は横にされて眠ってる。ただ気を失ってるだけで、どこにも外傷はない。そういう仕様だそうだ。カーネルさんの攻撃で負けたはやてとヴィータもそうだったし、ひとまず安堵。

「やり過ぎだセシリス! 真技を使うまでもなく、もう決着はついていただろうが!」

ルシルがセシリスさんに詰め寄って怒鳴り散らす。でもセシリスさんは「やるからには徹底的に、だよ。ルシル」と指で耳栓しながら告げる。

「さて。ではお題をミスしたペナルティーを発動します」

「話は終わってないぞっ!」

ルシルを無視してそう告げて、指を鳴らす。ポンっと間抜けな音と一緒にシグナム達が煙に包まれた。あれ? これ、なんかデジャブ。“機動六課”時代でも似たような事が・・・。

「・・・・キャロ?」

「あ、あれ? エリオ君たちが大きくなった!?」

一番最初にリタイアして意識のあるキャロが騒ぎだす。私たち全員の目はキャロとシグナム達に集中。

「き、キャロさんが・・・二頭身になってしまいました・・・?」

アインハルトが呟く。キャロ達は小さくなって、しかも二頭身の人形みたいになっていた。




†◦―◦―◦↓レヴィルーのコーナー↓◦―◦―◦†


ルーテシア
「今日のレヴィルーのコーナー!って、レヴィは今回はお休み。
ゲストとして、今回大活躍した炎帝セシリスさんと、前々回活躍した地帝カーネルさんです」

セシリス
「こんにちは、アンスールの炎帝、ムスペルヘイム軍の爆撃姫(バクゲキキ)のセシリスです」

カーネル
「そう言えば前々回の俺って、ほとんど喋れなかったよな。ま、いいや。アンスールの地帝カーネルだ」

ルーテシア
「セシリスさんって、相手によって口調が変わるようですけど・・・」

セシリス
「私は原初三大世界・煉生世界ムスペルヘイムの王家の王女として、本当に親しい友人以外には素顔を隠さないといけないと思うのです。王女としての威厳、厳格な姿勢。窮屈ですけど、それが王族としての姿ですから」

ルーテシア
「そうなんですかぁ。にしてはカーネルさんは陽気というか何というか、王族らしからぬ性格ですよね」

カーネル
「ちょっと聞き捨てならないな。王族だからと言って堅苦しい態度は肩が凝るだけだって。
それに、親しみを持てるような陽気な性格だと部下たちと結構良い関係になるんだぜ」

セシリス
「だからって砕け過ぎだと思うんだけどなぁ。むぅ」

カーネル
「ほら、そういう感じの方が人気出るぜ、セシリス」

ルーテシア
「わたしもその方がいいと思います。近寄りがたかった雰囲気が消えますし」

セシリス
「とはいえ、もうすでに手遅れよね。もう死んでるんだし」

カーネル
「だなぁ」

ルーテシア
「え、えっと、えっと・・・あ、ルシリオンとカーネルさんって仲悪いの?」

カーネル
「ん? いや、アンスールのメンバー十三人のうち四人しか男居ないんだぜ?
自然と仲良くなるし、しかもガキの頃からの友人・・・あぁ、悪友って感じか。仲が悪そうに見えても本当に悪いわけじゃない」

セシリス
「そう言えばそうね。男女の比率なんて気にしていなかったけど」

カーネル
「それはつまり俺たちを男として見ていなかったってことだよな。それはそれでショック。ルシルはまぁ女みたいだからどうでもいいけど」

セシリス
「別にそういうわけじゃ。戦時中なんだから男女の関係なんて夢のまた夢よ」

ルーテシア
「本当に大変だったんですね。えっと、もう時間ということで、今日はこれまで! バイバーイ♪」


 
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