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魔法少女リリカルなのはANSUR~CrossfirE~

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ここは海鳴、始まりの街 ~追憶の旅路そのにっ♪~

†††Sideなのは†††

私たちの記憶の旅はまだ続く。クリスマスを終えて、子ルシル君がシャルちゃんの手によって初めて女装させられた初詣。あの時は本当に驚いたなぁ。それと同時にショックだったよ。男の子に負けた。子ルシル君の女装は可愛くて、それでいて綺麗で。だけど可哀想で。

『うわぁ、なんか悔しいわ。その上ルシルの女装を推奨するあたしもどうかと思うわ』

アリサちゃんが頭を抱えて何か苦悩してる。すずかちゃんはすずかちゃんで、『すごく可愛い♪』って、記憶の中と違ってハッキリと大きな声で言っちゃった。

『ルシルパパ・・・泣いてるの?』

『泣いてないよヴィヴィオ。コレは心の汗だ』

涙を、心の汗、だって言う人初めて見たよ。しかもそれがルシル君から聞くことになるなんて思いもしなかった・・・。子ルシル君だけが被害を受けた初詣も終わって、その数日後のイベントが始まった。

『ルシル君。また入浴シーンがある思い出だから、今度からは事前に目を隠してね』

『当然。もう痛いのはごめんだ』

それは冬休みの終盤、高町家・ハラオウン家・月村家・バニングス家の四家合同旅行。はやてちゃん達が本局で忙しい時に私たちだけ旅行なんて、って思っていたけど、

『私らの事で遠慮されたらこっちが気を遣う。そやから気にせんで楽しんできてな。やったな』

はやてちゃんが、当時言った事をもう一度口にした。私ははやてちゃんに振り向いて頷き、流れる思い出の映像へと視線を戻す。子供の私たちは、海鳴温泉に着いてすぐに露天風呂へ直行。全員がルシル君へと視線を移してきちんと目を閉じているかを確認。
そのルシル君は、背にある翼で目を覆い隠していた。翼の上からさらに両手で目の部分を隠す徹底ぶり。なんかちょっぴり罪悪感が・・・。確かにルシル君は悪くなかったんだよね。で、露天風呂の入浴シーンはカットは割愛させてもらった。
大人になって当時を思い出すと、あの時は少し頭がおかしかったかも、って思えるほどの騒ぎっぷりだったから。子供の私たちは入浴(せんそう)を済ませて、昼食までの空き時間。温泉=卓球なんて安易な思考の下、卓球場に集まった。

「ただの卓球試合じゃつまんないし、何かルールを決めて、その上で罰ゲームっていうヤツにしない?」

シャルちゃんがシェークハンドのラケットをブンブン振り回しながらそう提案してきた。卓球場に集まってるメンバーは、私、アリサちゃん、すずかちゃん、シャルちゃん、フェイトちゃん、ルシル君、アルフさん、ファリンさんの八人。ユーノ君とクロノ君は残念ながら仕事。二人にも悪い気がしてたけど、はやてちゃんのように笑顔で、行っておいで、なんて言われたらどうしようもない。

「いいわよ。その挑戦、受けて立とうじゃない!」

シャルちゃんの提案に真っ先に乗ったのは子アリサちゃん。子アリサちゃんはシャルちゃん同様シェークハンドのラケットを手に、ビシッとシャルちゃんに突き出した。運動神経の良い子すずかちゃんと子フェイトちゃんも、

「じゃあ私も参加しようかなぁ」

「みんながやるなら私も」

って、ラケットを手に取って行った。アルフさんは「あたしはそこんところはサッパリだから見学するよ」って不参加表明。参加するのはこれで奇数の7人。1人溢れることになる。残るは私と子ルシル君。子ルシル君は「じゃあ俺は審判でいいな」って言って不参加を表明。
先を越された! これじゃあ運動が苦手な私が参加することになっちゃう。何とかしてルシル君をその役割から引きづり降ろして、審判の座をどうにか奪い取ろうと考えていた時、

「あ、マスター命令でルシルは強制参加ね」

「・・・・は?」

シャルちゃんがニヤリって笑いながら、子ルシル君を硬直させるような事を言った。当然子ルシル君は「そんな下らない命令を下すな馬鹿マスター。そもそもいいのか? 男が混じって」って訊いた。外見が女の子っぽいルシル君でも実際は体力のある男の子だ。それに対してシャルちゃんは、

「運動神経の良い子が揃い踏みだから問題ないでしょ。ていうかルシル。アリサとすずかを甘く見てると火傷するよ?」

ルシル君を挑発するような事を言ってのけた。シャルちゃんはルシル君にハンデを与えるどころか普通にやっても負けるかもしれないって告げた。

「そういうことっ♪ ルシル、手加減なんかしたら負けるわよ♪」

子アリサちゃんも子ルシル君を挑発。さすがに子ルシル君も「上等だ。あとで後悔しても知らないからな」って不敵な笑みを浮かべた。やったよ神様っ。私は労することなく審判っていう見学者の席に座ることが・・・・

「あ、なのはももちろん参加ね。数は奇数になっちゃうけど、何とかしてみせるから気にしないで」

「何とかしないでいいし、気にしなくてもいいんだけどね・・・」

出来ませんでしたよ・・・トホホ(涙)。シャルちゃんは私にも言外に、出ないと許さない、ってプレッシャーを掛けてきた。誰にも聞こえないようにボソッと呟く。でも一人にだけ聞かれていた。

「なのは。うちのシャルが迷惑を掛けてすまないな」

ルシル君は小声で謝ってきて、私の頭をそっと撫でてくれた。私は「ううん。シャルちゃんは何も悪くないよ」って返した。シャルちゃんは常に友達を想って行動する。今回だって私を仲間外れにしたくないからだと思う。
でもねシャルちゃん。当時の私はお世辞にも運動神経が抜群に良いってわけじゃないんだよ?
今でこそ教導官とかやってるけど、ホント子供の頃の私は酷かった。卓球場の周りに立つメンバーの中では私が最下位だ、もちろん運動神経で。そこに子すずかちゃんが私とルシル君のところに来て、

「頑張ろうねなのはちゃんっ♪ ルシル君、私負けないよ♪」

屈託の無い笑顔で言われたらもう断れないわけで、私は「あはは、うん。頑張ろう・・・」って、苦笑するしかなかった。それぞれがラケットを手にし終え、シャルちゃんが仕切る卓球ゲームが幕を開けた。
ゲームは古今東西(山手線ゲームとも言われるアレ)で、ご丁寧にもここの卓球場には円形の卓球台が置かれてあった。私たちみたいな事をしようって人が他にも居たのかもしれない。ネットは十字に張られていて、一度に四人プレー出来るようになってる。

「じゃあまずは私、ルシル、なのは、すずかの四人ね」

ジャンケンで決まったシャルちゃん達がスタンバイ。うぅ、体力機動力、全員圧倒的に私より上だよ(涙)。

「なのはっ! お題によってはあんたでも十分にやり合えるはずよ」

子アリサちゃんの応援の声に、当時の私は、それもそうだな、って思った。そうだよ。コレは純粋な体力じゃなくて知力勝負だ。お題にしっかり答えて、ちゃんと球を打ち返せばいい。罰ゲームはやっぱり私かもって落ち込んでたけど、まだ私は天に見放されてない。それにメンバーに関しても私はツイてる。シャルちゃんとルシル君が居る。きっと二人で潰しあってくれるはずだ。

「ふふふふ」

「あの、なのは? ちょっと怖いんだけど・・・」

シャルちゃんが低く笑う私を見て引いてた。今こうして観てる大人の私でも、子供の私が見せたあの笑みは無い、って思う。

「それじゃあゲームスタートね。誰かが三回アウトになったら終了ね。古今東西、聖祥小の先生の名前! 宮崎先生」

シャルちゃんがルシル君に向かってピン球を打つ。けどシャルちゃん、そのお題はどうかと思うよ今でも。だって、

「そんなの知るかっ! とりあえず伊藤!」

聖祥小に通ってないルシル君が圧倒的に不利だよ。律義に答えてるけど。しかも伊藤先生って確かにいるし。もしこの時、シャルちゃんがフルネームで答えてって言ってたら、ルシル君はきっともっと怒ってただろうなぁ。ただでさえちょっと怒ってるんだもん。乱闘になってたに違いない。ピン球は子すずかちゃんのところに行って、「坂野先生」っていう答えと一緒に私のところに来た。私は「高木先生」って答えながらラケットを振った。

「・・・・はい、なのは1アウト」

ラケットは空を切って、ピン球は私の背後に落ちた。答えが判ってても打ち返さないと意味ないよね・・・やっぱり。落ち込む私を放って、シャルちゃんと子ルシル君が衝突する。

「・・・・おい、シャル。一体どういうつもりだ。俺が答えられないお題って、随分と舐めたことをしてくれるじゃないか。偶然、伊藤先生がいたらしいから良かったものの・・・」

ルシル君は私をチラッと見てきた。私がちゃんと打ち返して、あのまま続いていれば、きっとルシル君がアウトになってた。そこを喜びたいけど、私がアウトになったことで素直に喜べない。そんな顔してる。私はそこはかとなくエヘッと笑って、気にしないでと言外に伝える。

「適当に名字を言っておけば当たるじゃない。あなたの記憶力なら日本人の名字くらい完全網羅、答えられるでしょ?」

「馬鹿か。そんなモノを記憶してどうする。友人知人の名字だけで十分だ。もう君はお題を出すな。俺となのはとすずかの三人で出題する。いいな?」

「ええーーー。どうせ私に答えられない奴出すつもりでしょ? 卑怯者ぉー」

「どの口が言うか。じゃあアウトになった、なのは。君がお題を出してくれ」

子ルシル君が私に勧めてきた。それに首肯して、それぞれ定位置に戻る。向かいに立つシャルちゃんから無言のプレッシャー。向かって右側に立つ子ルシル君が近寄ってきて、小声で、

「なのは、シャルのことは気にせずに思いついたお題でいいんだ。大丈夫。どんなお題を出そうともシャルには何一つ文句は言わせない」

安心出来る事を言ってくれた。

「あ、うん。じゃあ・・・古今東西、漢数字の一のつく四字熟語で。一期一会っ」

一の付く四字熟語で好きなモノを言って、すずかちゃんに送る。すずかちゃんは「一致団結♪」ってルシル君に送って、ルシル君は「夷険一節」とシャルちゃんに送る。シャルちゃんは「一攫千金$」とそれは笑顔で、私へソフトに返してきた。
私は「一意奮闘」って、また意味の好きな四字熟語を答えて返す。意味は、心を一つのことに集中し、奮い立って戦うこと。また、力いっぱい努力すること、だ。子すずかちゃんは「一生懸命」、子ルシル君は「一意専心」ってまた難しい事を言ってシャルちゃんに打つ。
シャルちゃんは「ホントにあるんでしょうねソレ? 一挙両得$」と私に戻す。私は「一家団欒☆」と、また好きな四字熟語を答える。

ラリーを眺めていたすずかちゃんが『何かシャルちゃんって、お金とか利益とか言う意味を持った四字熟語を答えるね』って呟いた。そしてアリサちゃんは『ルシルはルシルで、自分に何かを課す様な事ばかりよね』ってルシル君を見て肩を竦めた。
今の私なら判る気がする。シャルちゃんはどこか“何かを得たい、変わりたい”って感じ。子ルシル君は“ただ役目を全うすればいいっていうある種の諦観”めいた感じ。“界律の守護神テスタメント”としての時間、大戦という哀しい時間を過ごした二人。答える四字熟語には、そんな二人の無意識的な想いが込められてた、と思う。

子すずかちゃんが「一日一善」、子ルシル君は「一心精進」、シャルちゃんは「一粒万倍$」、そしてまた私。結構長く続くなぁって思った。もう少し早く終わると思ってた、自分自身が三アウトで。
でもそろそろ知ってる四字熟語が少なくなってきた。だから一番有名な「一石二鳥」って答えて返すことしか出来なかった。
子すずかちゃんは「一世一代♪」で返して、子ルシル君は「一刻千金」って答えてシャルちゃんに打つ。そしてシャルちゃんは「一家心中☠」って答えて、私に打ってきた。耳を疑った。

「アウトッ!」

ルシル君のアウト宣告。シャルちゃんが「ええーーー」って不満そうに言うけど、さすがにそれは違うよ。そもそもどうしてソレをチョイスするのかなぁ?

「だって、一、付いてるし、ちゃんと漢字が四つじゃん」

「確かにそうだが、一家心中を四字熟語に括るのはやめろ。しかも俺たちはいま家族旅行に来てるんだよ。そこで、一家心中、はないだろう。なぁ」

ルシル君が本当に呆れ果てていた。結局、この後国語関係のお題が続出して、子ルシル君0、子すずかちゃん1、私2、シャルちゃん3ということで、

「第一回戦はシャルの負け。ザマァみろぉ♪」

子ルシル君が私たちの第一回戦を締めた。シャルちゃんは「うっさい」って子ルシル君にドロップキック。下着が見えただの何だのって騒ぎになって、子ルシル君はシャルちゃんにボコられた。二回戦は、子アリサちゃん、子フェイトちゃん、ファリンさん、そして敗者シャルちゃんとなった。

「ファリン頑張って(ドジで怪我しないように)♪」

「あ、はいっ。任せてくださいすずかちゃんっ(頑張って勝ちますね)♪」

そして始まる古今東西第二回戦。今回の古今東西卓球の自称ゲームマスター・シャルちゃんを差し置いての、

「そんじゃお題は簡単なモノからね。球技の種類でいきましょ♪」

子アリサちゃんからのお題提示。シャルちゃんは「まぁいいけど。手加減しないからねアリサ」って、子アリサちゃんに宣戦布告。子アリサちゃんは不敵に笑って「返り討ちにしてあげるわ」って、ビシッとラケットを突き出した。子フェイトちゃんは「球技球技」って、お題の答えを必死に思案中。フェリンさんはニコニコしながら、ゲームが始まるのを待ってる。

「じゃあ始めるわよ。古今東西、球技の種類。野球」

子アリサちゃんがファリンさんへとピン球を打つ。ファリンさんはいきなり自分のところに来るって思わなかったようで、

「わわっ? サ、サッカーッ!」

お題に答えながら、あろうことかラケットをフルスイングした。打ち返されたピン球はすごい勢いで子アリサちゃんの眉間を強襲し、ファリンさんの手からすっぽ抜けたラケットは、シャルちゃんの右頬をビンタするかの如く襲撃、パチーン!っていい音させた。

「「・・・痛っっっったあああああああっ!?」」

絶叫が卓球場にこだまする。子アリサちゃんは額を押さえてその場で蹲って、シャルちゃんは右頬に手を添えながら床をゴロゴロ転がった。

「ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい!!」

涙目でひたすら頭を下げて謝るファリンさん。付き合って謝る子すずかちゃん。お腹を抱えて大笑いする子ルシル君とアルフさん。軽く呼吸困難に陥ってる。子フェイトちゃんはどうしようかとオロオロしていて、それはすごい騒ぎ。なんとか落ち着いて、

「とんだハプニングがあったけど、ゲーム再開ね」

リンゴみたいに赤くなってる右頬を擦りながら、シャルちゃんが再開を告げる。そしてメンバーに変化が。自責の念でファリンさんが退場、代わりに子ルシル君が卓球台に立つ。

「じゃあさっきと同じお題でいくわよ。古今東西、球技の種類。ビリヤードッ」

子アリサちゃんが子ルシル君へと打つ。子ルシル君は「ゴルフ」って、子フェイトちゃんにそっと打つ。子フェイトちゃんは「ドッジボール」と初めての卓球だからか、また子ルシル君に打ち返した。子ルシル君は気にすることなく、「ラクロスッ!」って、それはもうフルスイングでシャルちゃんへと打った。

「ふざけんなっ馬鹿ルシルッ! ボウリン、グッッ!」

シャルちゃんも負けじと全力返し。そこから始まっちゃったシャルちゃんと子ルシル君の目にも留まらない応酬。

「テニスッ!」

「バスケッ!」

「ゲートボールッ!」

「バドミントンッ!」

なかなか終わりそうにない二人だけの古今東西。だけど六周くらいの応酬を終えて、

「はい、ハンドボール」

二人のその応酬は突然終わった。子ルシル君がシャルちゃんから打ち返されたピン球の勢いを完全に殺して、暇そうにのんびり構えていた子アリサちゃんへと送った。

「なっ!? この・・・!」

子アリサちゃんがその突然さに焦るけど、ギリギリで打ち返した。そこにシャルちゃんと子ルシル君の「アリサ、アウト」という宣告。そう、子アリサちゃんは返球に気を取られて、お題に答えてない。子アリサちゃんが「ルシルぅぅーーーーッ!」って怒りに吼える。
記憶を観てるアリサちゃんも、ルシル君に向かって『それでも男なのっ!?』って怒ってる。ルシル君は『油断してる君が悪い』って取り合わない。で、記憶の方も大体同じやり取りをしてる。

「アリサの頭の良さは聞いている。だから搦め手で落とす」

子ルシル君は子アリサちゃんに向かって堂々と言った。子ルシル君の考え、それは理系文系共に成績優秀な子アリサちゃんをターゲットにして、3アウトにすること。
シャルちゃんと子フェイトちゃんは文系が苦手ってことは知ってる子ルシル君。運動能力は高いけど、その辺りを突けば勝てると踏んだ。
でも子アリサちゃんは二人のように一筋縄じゃいかない。だからシャルちゃんに仕掛けて二人だけの闘いを行った。で、子アリサちゃんの注意力を散漫にさせたところで子アリサちゃんに奇襲。見事奇襲は成功。子アリサちゃんに1アウト取らせた。

「ふ、フンッ。ネタが判ればもう油断なんてしないんだからっ! 次のお題! 体の部位の入った慣用句でいくわよっ! あたしが負けるなんて有り得ないわ。このお題で、シャルかフェイトを負かすッ! さぁ覚悟なさい! 血も涙もない!」

子アリサちゃんは、まさに今の自分を明確に表してる慣用句を言って、ピン球をシャルちゃんへと打った。ゲームを私と同じように見学してる子すずかちゃんが「血も涙もないって、今のアリサちゃんの事だね」って苦笑。私と同じ事を思っていた。そうだよね、あれはちょっとひどいよね・・・。シャルちゃんは、

「最悪だっ。白い目で見るっ」

って、子アリサちゃんに反撃。でもピン球は子ルシル君の元へ。あー、子アリサちゃんと子ルシル君に向けてのメッセージか。

「胸糞が悪い」

子ルシル君のバッドメッセージ。それは誰に宛てたものか、それとも単なる偶然か判らないけど、今言うようなモノじゃないよね? ピン球は子フェイトちゃんの元へ。子フェイトちゃんは、

「鼻をくじく」

って、これまた意味深な答えを言って、子アリサちゃんへ打ち返す。慣用句で会話っぽいのが出来てるよ。何か剣呑な雰囲気だけど。

「眼中にない」

おおっと。子アリサちゃんからまるで挑発めいた答えが飛び出す。

「血が騒ぐ」

その挑発を受けとったシャルちゃんが、目の笑ってない笑顔で子ルシル君に打つ。

「身の程を知らない」

さらにっ。子ルシル君の挑発めいた答え。

「胸騒ぎがする」

子フェイトちゃんは何やら不安がありそうだ。そう言う私と子すずかちゃんも同じような事を思ってますっ。ピン球はまた子アリサちゃんの下へ。

「歯牙にもかけない」

さらに挑発。今日の子アリサちゃんは随分とやる気だ。シャルちゃんと子ルシル君が鼻で笑うようなしぐさをした。

「舌が回る」

シャルちゃんが嘲り笑うように、子アリサちゃんのピン球を子ルシル君へ送る。子ルシル君は小さく溜息を吐いて、

「頭が痛い」

そう答えた。何かその気持ち解るよ子ルシル君。参加してない私でさえそう思うんだし。参加してる子フェイトちゃんと子ルシル君の苦労は計り知れない。子フェイトちゃんへと来るピン球。子フェイトちゃんは何も言わないで空振りした。
子フェイトちゃんが「もう出て来なかったよ」って恥ずかしそうに笑うと、卓球台を覆っていた不穏な空気が薄まってく。子ルシル君が子フェイトちゃんへ歩み寄って、何か褒めるように優しく頭を撫でた。
そして子フェイトちゃんの耳元に口を近づけて何かを言ってる。子フェイトちゃんは「え、でも、いいのかな?」って少し困惑気味。子ルシル君はただ微笑むだけ。

「さて。シャル、アリサ。フェイトが次のお題を発表するぞ」

「古今東西、世界の祝日。えっと、国名と一緒に答えて。あとクリスマスやお正月・新年っていう世界共通のはダメ。もう一つ、日本の祝日も簡単過ぎてダメ。日本の祝日を答えたら即アウト。最後に。一度出た国はもう使えないから。じゃあ行きます。ミャンマー・ダザウンモン月の満月」

子フェイトちゃんが子ルシル君へとピン球を送る。子アリサちゃんとシャルちゃんは「はい?」っと首を傾げる。見学してる子供の私たちもそんな感じ。大人の私たちも頭の上に?マークが浮かんでるはず。その間にも子ルシル君が「ノルウェー・精霊降臨祭」って答えて、呆けてる子アリサちゃんに送球。

「え? あ、ちょ、アメリカ・リンカーン誕生日!」

子アリサちゃんは焦りながらも何とかクリア。シャルちゃんは「そう来たか」って悔しげに呟いて、

「ドイツ・マリア昇天祭・・・!」

と、子フェイトちゃんに返す。子フェイトちゃんは一切の迷いなしで、

「ハンガリー・聖イシュトバーンの日」

全然解らない祝日をスラスラと答える。そして子ルシル君に送球。

「イタリア・聖アンブロージョの日」

これまた聞いたことの無い祝日を答えて、子アリサちゃんへ送球。子アリサちゃんは「えっとえっと」ってオロオロして、

「カナダ・英霊記念日!」

でもきっちりと答えて送球。こういうことに詳しいらしい子ルシル君と子フェイトちゃんから、アウト、って宣告が無いからあるんだろうなぁ。そしてシャルちゃんは、

「何かズルしてない? ブラジル・カーニバル!」

子フェイトちゃんと子ルシル君に疑いをかける。でも「証拠もないのに変な言いがかりはよせ」って子ルシル君に睨まれる。子フェイトちゃんは苦笑。そして、

「メキシコ・聖母グアダルーベの日」

そう答えて、子ルシル君へ送球。

「コロンビア・聖ペドロの日」

なんか子フェイトちゃんと子ルシル君の解答が似てる。やっぱりさっきのヒソヒソ話でお題と答えを事前に決めていたんじゃ。だって、子フェイトちゃんがいきなりこんな難しいお題を出すはずないし、しかもスラスラと即答できるはずもない。
当時、子供の私はそう考えてた。でも大人になった今・・・よぉく判ってる。さすがにシャルちゃんと子アリサちゃんも気付いて、でも子ルシル君の睨みが効いてるのか何も言わない。

「あー・・・オーストラリア・女王誕生日!」

子アリサちゃん、何とかクリア。そして、シャルちゃんは・・・・

「・・・・知るかあああああっ!」

ピン球を思いっきり打って、子ルシル君の顔面目掛けて返した。でも子ルシル君はちょっと首を傾けるだけで回避。シャルちゃん、1アウト決定。子フェイトちゃんと子ルシル君がハイタッチを交わす。

『なぁフェイトちゃん、ルシル君。なんで二人の解答は似とって、そしてフェイトちゃんはあんなスラスラ答えられるん? あんなゲーム前の短いヒソヒソ話だけやったら、決めるんは難しくない? やっぱり・・・』

『そのやっぱり、だ。魔導師の特権、念話を使った』

はやてちゃんにそう答えるルシル君。ヴィータちゃん達は『卑怯だな』って呆れていた。当時の私たちは、まさか真面目な二人がそんなズルをするわけないって思いこんでたからこそ、念話を使ってるのを見逃していた。

『少し灸を据えてやろうって、な。だからこんな手段を講じた。当初はアリサを潰す予定だったが、やはりシャルも世界の祝日なんて知識はそう無かったようだ』

『むぅ、確かにあたしにも非があったかもね。下手に熱くなりすぎてた。でもあんたも似たようなことしてたよね?』

『フェイトに気を遣わせ、自らアウトを取りに行かせるような真似をさせた時点で、君とシャルは重罪だ。私のは単なる戦法。アリサ、君のやり方と一緒にしないでもらいたいな』

『えっと、あの時はホントに答えが出て来なかったって事もあったんだよ』

それから第二回戦は、星座、花の名前、十字架のある国旗等々って続いて、子ルシル君0、子アリサちゃん1、シャルちゃん2、子フェイトちゃん3で、子フェイトちゃんが負けた。
第三回戦に行こうかというところでタイムアップ。昼食にしようって、子供の私たちを迎えに来たお姉ちゃんとエイミィさん。お昼ごはんを楽しくお喋りしながら済ませて、午後はまた温泉に入って。
夜は夜で、子ルシル君がシャルちゃんの例のマスター権限で女装&お父さん達のお酌をさせられたり歌を唄わされたりと、子ルシル君だけ地獄だった。そんな楽しい時間を過ごした当時の私たち。色褪せることの無い大切な思い出だ。






†◦―◦―◦↓????↓◦―◦―◦†



シャル
「やっほーっ。この作品の神主人公シャルだよー♪」

ルシル
「漢字が違うぞ。神、ではなく、真、だろうが」

レヴィ
「もうそんな事どうでもいいけどね」

ルーテシア
「妹が出番が来ないからってなんかグレてる・・・」

シャル
「あはは、ごめんごめん。もうちょっとやらせてね。あと一話か二話。突き詰めればきっとあと一話で過去が終わるから」

ルシル
「その後はその後で、例のストーリーを持ってくる予定で、レヴィとルーテシアが出てくる可能性があまり無い」

レヴィ
「・・・・いいもん。ミニコーナーの支配者って名乗るから。
本編だけが全てじゃないもん。さっさとこのエピソード終わらせて、完結編でも始めれば。
第一話のプロットも書き終えて、あとは清書だけすればいいんだしさ」

ルーテシア
「拗ねてるレヴィ、なんか可愛い・・・。抱きついちゃお♥」

レヴィ
「おわっ? なになにっ? いきなりルーテシアがハグ魔になった!」

シャルシル
「いやぁ、姉妹愛?だな~」

レヴィ
「観てないで助け――ひゃぅっ? ど、どこ触ってんのルーテシア!」

ルーテシア
「よいではないか、よいではないか♪ む? わたしの妹のクセに出るトコ出るようになったねレヴィ」

シャル
「それじゃまた次回。そのさん、でお会いしましょう~」

レヴィ
「にゃぁぁぁぁあああああああああっ!」




 
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