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第四章


第四章

 彼もまた箸を手にしてそのタイ料理を食べる。食べて最初の言葉は。
「美味い」
「そうだよな、タイ料理はな」
「美味いよ」
「滅茶苦茶美味いよ」
 今では太平洋にその美味さを知られているタイ料理だ。彼等もその美味さはよく知っていた。食べると余計にであった。
「じゃあこれ食ってな」
「気分転換しような」
「そうしような」
「これで調子があがるか」
 チャクラーンは食べながらこんなことを考えていた。
「だといいがな」
「少なくとも気分転換にはなるな」
「それだけでもかなり違うだろ」
 周りはこうその彼に話す。
「だからな。ここはな」
「どんどん食べるといいさ」
「栄養もあるしな」
「そうだったな」
 栄養についてはだ。チャクラーンもわかっていた。
「魚に野菜にな」
「そうだよ。しかも脂肪も燃焼させるし。唐辛子でな」
「だからタイ料理はいいんだ」
「素晴しい料理だよ」
「カロリーも少ないしな」
「俺は忘れていたんだな」
 彼は食べながらまた言った。
「タイ料理のことを」
「そんな塩と酢だけの料理なんて美味くないだろ」
「それじゃああれだよ、イギリスだよ」
「そうだよな、あの国だよ」
「あの食い物のまずいな」
 彼等もイギリス料理のことは知っていた。今も尚塩と酢だけで味付けをしてしかも調理がなおざりもいいところのその国の料理をだ。
「そんなの食ってたらな」
「やっぱりなあ」
「何かよくないだろ」
「それよりもだよな」
「やっぱりこれだよ」
 その今食べているものをだというのだ。
「食わないとな」
「さあ、それじゃあな」
「食うか」
「それだったらな」
 こうしてだった。チャクラーンにさらにだった。
 食べるように勧める。そして彼もそれに応える。
 祖国の料理を貪る様に食べていく。その日は堪能した。
 その次の日だ。練習をしていると。
「あれっ、チャクラーンの今日の動きは」
「いいな」
「そうだな。キレがある」
「しかもメリハリがきいているな」
 周りはだ。その彼の動きを見てすぐに気付いた。
「いい感じだな」
「絶好調の時の動きだな」
「ああ、その時の動きだ」
「その動きが戻っているな」
 このことに気付いたのである。
「あれが試合まで続けば」
「ああ、いいな」
「前のチャクラーンだぞ」
「タイのストライカーの復活だ」
 期待を抱かざるを得なかった。そしてその試合では。
 
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