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曹操聖女伝

作者:モッチー7
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曹操聖女伝第5章

 
前書き
趣旨は封神演技を題材とした作品やPSPのJEANNE D'ARC等の様々な作品の様々な設定をパクリまくる事で、曹操が三国志演義内で行った悪行の数々を徹底的に美化していくのが目的です。
モッチーがどの作品のどの設定をパクったのかを探すのも良いかもしれません。

この作品はpixivにも投稿しています→http://www.pixiv.net/series.php?id=376409

この作品は星空文庫にも投稿しています→http://slib.net/30572 

 
その頃、今上帝・劉協は洛陽に逃げ込んでいた。
かつては漢の都として繁栄していたが、この当時残っていたのは、木の皮や草の根を齧る事でどうにか生き延びるのがやっとという極貧だけだった。
ここで機敏に動いたのは曹操であった。
曹操は臣下達を呼び出してこう告げた。
「天の声が“急ぎ洛陽に向かい、劉協を救い出せ”と言っているのだが、これについてどう思う」
荀彧が即答。
「正義無き覇道は混乱と滅亡への道!人心を掴む事は出来ますまい」
程昱もこれに続く。
「さよう。漢王朝衰えたりと言えども、その影響力はまだまだ大きい。大義名分こそが最大の武器ですぞ!」
曹操はやはり天の声に従うべきと判断した。
「荀彧と程昱の意見、最もである。よって、直ちに今上帝の迎え入れの準備に取り掛かる!」
だが、これはある意味競争であった。洛陽に向かっていたのは曹操軍だけではなかった。
「くそー!董承の野郎!ふざけた真似を!」
李傕・郭汜らが今上帝・劉協を傀儡にする事で長安の実権を独占していたが、董承の策で仲違いを起こして劉協を手放す結果となった。そして、劉協奪還の為に洛陽に乗り込んだ。

曹操軍が洛陽に到着したのはその半日後であった。
哪吒が悔しそうに舌打ちをする。
「チッ!遅かったかー!」
だが、曹操は諦めない。
「大丈夫だ。これが李傕の仕業なら向かうは長安。しかも今上帝を奪われてからまだ日は経っていない」
すると、曹操は突然神兵化した。
「七星剣にたっぷりと日光と月光を吸わせた。宝玉7個分は神兵でいられる!」
そう言うと、曹操は長安に向かって飛び立ってしまい、典韋と曹仁が慌ててそれを追った。

李傕・郭汜は劉協を無理やり馬車に乗せ、董承達を牢馬車に無理やり押し込め、長安に凱旋しようとした。
「いいか劉協!お前は俺達の道具だ。道具は持ち主を裏切ってはならない。持ち主の指示に忠実且つ的確に動くのが道具の美徳だ。解ったか!?」
李傕・郭汜が劉協に行っている説教に董承が真っ向から反論した。
「お前達はそれでも人間か!天子を敬う心を失い、庶民を虐げる!これ―――」
郭汜が牢馬車を思いっ切り叩いた。
「黙れ貴様らー!てめーらのせいで劉協は自分の正体が俺達の道具である事実と道具の美徳を忘れちまったんだよ。死んで見せしめとなって償わないとな!」
董承達は愕然とした。この様な外道に漢王朝を乗っ取られ、それに対して何も出来ない。これがこの世の正しい姿なのか?だが、天は彼らを見捨ててはいなかった。神兵化した曹操が漸く追いついたからだ。
圧倒的な力で李傕・郭汜の配下を蹴散らすと、神兵化を解き、劉協に膝を屈する曹操。
「この戦乱の中で洛陽を修復するのは困難です。そこで、我が勢力圏内にある許の地に御移り頂きます。許には既に城郭宮殿全てが備わっておりますれば―――」
李傕・郭汜の配下の兵士を鼓舞するための怒号が曹操の言葉を紡ぐ事を阻むが、肝心の兵達は既に逃げ腰だ。
「下がんな!行けよお前ら!下がんな!行けっておい!」
李傕が慌てて牢馬車に無理やり押し込めた董承達を人質にとる。
「退けよアマ!でないとこいつらを殺すぞ!」
しかし、曹操は再び神兵化し、李傕を空中に浮かべてしまった。兵達が慌てて曹操を攻撃するも圧倒的な力の差に加え、一方は逃げ腰、もう一方は責任感と大義の塊。これではどうあがいても曹操には勝てない。
郭汜が曹操に斬りかかる。曹操の良く鍛錬された、バレエのように優雅でさえある武術に対して、郭汜のそれは野蛮な山賊スタイルであった。
「出直せ」
曹操にアッサリ叩きのめされた李傕・郭汜はそのままほっとかれ、その後、山賊に成り果ててしまったという。
まあ、その統治能力は皆無といってよく、民が苦しむ一方で、李傕と郭汜は互いに酒宴を開き、豪奢な生活を送っていたので、政治家より山賊の方が性に合っていると言えなくもない。

一方、予州潁川郡の許の地に都が移され、曹操は今上帝・劉協の後見人として司空・車騎将軍に任命された。
「国家の安泰は強力な軍隊と充分な食料にかかっている。ところが連年の戦乱の為に食糧不足は慢性化している。この打開策として屯田制と輪作制を導入しようと思う」
典韋は訳が解らず、哪吒達に質問する。
「屯田ってなんスか?」
「兵士に農耕をさせるのさ。そうすりゃ、兵力と食料の一石二鳥だろ?」
「そして輪作は同じ土地に別の性質のいくつかの種類の農作物を何年かに1回の周期で作っていく方法です。栽培する作物を周期的に変えることで土壌の栄養調和が取れ、収穫量・品質が向上します」
「かににて、連作にての病原御身・害虫などに依る収穫量・品質の低下の由々しき事態を防ぐこと、出来るでござる」
しかし、曹操の屯田は一味違った。辺境地帯でなく内地において、荒廃した田畑を一般の人民にあてがって耕作させるもの(民屯)で、当初は許都の周辺で行われ、のち各地に広まった。屯田制下の人民は、各郡の典農中郎将、各県の典農都尉によって、一般の農村行政とは別に軍事組織と結びついた形で統治された。
これによって潤沢な食料を抱えることになった曹操は、各地の民衆を大量に集めることができるようになった。この屯田制が、後漢の群雄割拠の中でそれほど出自的に有利ではない曹操が、他の群雄を退け勝ち残る理由の一つとなった。
また勢力圏の境界付近に住む住民を勢力圏のより内側に住まわせた。これは戦争時にこれらの人々が敵に呼応したりしないようにするためであり、敵に戦争で負けて領地を奪われても住民を奪われないようにするためでもある。
その後も占領区の人心を巧みに掴み、兵力を急増させながら勢力を拡大する曹操軍であった。

人間に転生した魔王その②が山賊に成り下がった李傕と郭汜を捕えて殴り倒した。
「余計な真似をしやがってこの野郎ー!」
袁洪が必死に人間に転生した魔王その②を宥めるが、人間に転生した魔王その②は聞く気は無く、李傕と郭汜を踏むように蹴り続けた。
「もうそろそろお止め下さい!このままではこいつらが死んでしまいます!」
「グッドんだよこいつらは死んバット。こいつらの御蔭でナウ上帝の身柄が 曹操のハンドに渡ってしまったのだからな!」
人間に転生した魔王その②の足の指が李傕の腹に深々と刺さったので、まるで大量の水を吐き出すマーライオン像の様に大量の血を口から発射した李傕。
「げほ、がは、ごほ、げほ」
郭汜が必死に命乞いをするが、人間に転生した魔王その②には邪魔者以外の何物でもなかった。
「そろそろこのワールドからグッバイして貰おうか!」
人間に転生した魔王その②が左手に握りしめられた弩から光の矢をマシンガンのように連続発射して李傕と郭汜を蜂の巣にした。
朱子真と呼ばれる中凶がやって来て、
「また派手に殺りましたなー」
「サッチな事はどうバットグッド。イットより曹操軍はどうなっている?」
朱子真の報告は人間に転生した魔王その②にとって都合の悪い物であった。
「かなり拙いですね。南陽郡の張繍が賈詡(字は文和)の勧めで曹操に降伏する気ですね」
だが、人間に転生した魔王その②は事態を悲しむどころか邪な微笑みを浮かべた。
「そうかー……張繍が 曹操に降伏するのかー。面ホワイトそうだねぇー」

数日後、大慌てで張繍を探す賈詡の姿があった。
「張繍様!張繍様は何処か!?」
漸く張繍を発見した賈詡が問い詰める。
「曹操の野営地に奇襲を行おうとしているとは真か!?」
「いかにも!あの者は最早許せぬ!あの者と組むべきと貫かすお主の方がおかしいのだ!」
賈詡は直ぐに張繍の異変に気付いた。怒気を孕んだ非常に強い口調にも係わらず、瞳が光沢が消えて表情の無い状態でまるで人形の眼であった。
(目と口調が全く釣り合わん!魔性の者にでも誑かされたか!?)
張繍を諌める意味が無いと判断した賈詡は、自軍の強襲部隊に直接命令した方が早いと考えたが、時既に遅く、既に淯水に向かった後であった。
「なんという事だ!このままでは曹操軍との全面対決は避けられんぞ!」
慌てて馬に乗り、大急ぎで奇襲部隊を追う賈詡の姿があった。

この頃、淯水では曹操の命で引き上げの準備が進められていた。天の声の御蔭で張繍軍の奇襲を事前に察知したのだ。
「私も随分腑抜けになったな……もう直ぐ降伏する者に奇襲を許すのだからな」
「なんの。偉大なる改革に反発は付き物です。この世に真の平和をもたらした時、反発は感謝に変わるでしょう」
何故か今回の撤退に不吉な気配を感じた二郎真君は、曹操に暇を貰い、単独で調査を開始した。
そして、張繍軍の夜襲が始まった。最後尾を買って出た典韋の怒号が木霊する。
「裏切り者めが!曹操様に指1本触れさせやしねえぞーーー!」
典韋が凄まじい剛勇であっと言う間に張繍軍の兵士達を屠るが、典韋隊の前に圧倒的な数の兵士が次々に向かってくる。
「必ず……守り抜いてやる……」
その時、何者かが1匹の水牛を張繍軍に投げつけた。
「な、何だー!?誰だよあんな凄い芸当をしたのは?」
其処へ、山賊風の男性が馬車の荷台を右手で引っ張りながらやって来た。
「随分卑怯な真似をする連中じゃないか。これはぶっ飛ばし甲斐がありそうだぜ」
男はそう言うと、片手で荷台を持ち上げてそのまま張繍軍に投げつけた。
「な、何者!?」
男は張繍軍の質問にそっけない態度をとる。
「名乗る気ねえな!」
男は呆れた事に敵兵を凶器代わりに振り回し始めたのだ。
が、典韋や山賊風の男性が凄まじい剛勇を魅せ付けたのも此処までだった。張繍軍が遠巻きにして矢を射かけた。複数の矢が典韋に突き刺さる。
「おいーーー!」
山賊風の男性が慌てて典韋に駆け寄る。
「あんたが何者かは知らんが……おめえが俺の代わりに……曹操様を御守りしてくれ。頼んだぜ!」
其処へ更に矢を射かけられる典韋。一瞬倒れかけるが、
「な、ならねぇ!俺は曹操様の退路を確保する為にも、此処で倒れる訳にはいかねぇ!」
典韋は槍を自らの足に突き刺し、目を怒らせ口をあけ大声で罵り不動の体勢で死んだ。
「曹操様……おさらばです……」
典韋の死を見届けた山賊風の男性の怒号が飛ぶ。
「おのれらぁーーー!」
漸く自軍の強襲部隊に追いついた賈詡だが、立ったまま絶命した典韋を見て顔面蒼白となった。
「なんて事を!あれは曹操軍の剛将・典韋ではないか!優れた人材をこよなく愛する曹操に知れたら大変な事になるぞ!」
そこへ山賊風の男性が賈詡に食って掛かる。
「貴様が親玉かー!?」
慌てる賈詡。
「ち、違うのだ!我が主君は魔性の者に誑かされ―――」
「嘘を吐くならもっとマシな嘘を考えておけ!」
「う、嘘ではない!本当なら我々は曹操軍に―――」
其処へ年老いた老婆が現れ、2人の間に割って入る。
「先程の魔性の者、詳しく聞かせてくれまいか」
怒りに身を任せた山賊風の男性は聞く耳持たない。
「下らねぇ理由で真の漢が1人死んだんだぞ!どう責任をとる!?」
老婆は袖口から大量の泡を噴射して山賊風の男性を惑わし、その隙に賈詡を連れて逃げた。

曹操は舞陰で典韋の死を聞くと涙を流し、その遺体を取り戻すために志願者を募った。
「典韋よ、お前の死は決して無駄にはしないぞ!この曹操、お前が命を張って護っただけの女になってみせる!」
建安3年(198年)、曹操軍は張繍を穣に包囲した。その際、哪吒が張繍を挑発した。
「おい!お前達は夜襲が無いと真面に戦えない屁垂集団かー!?そんな軟弱でよく典韋を斃せたなー!?悔しかったら今直ぐ出て来い!」
其処へ、典韋の死を見届けた山賊風の男性がやって来て哪吒にこう告げた。
「その台詞は俺の物だ。俺が張繍に言い放つ筈だった台詞だ」
山賊風の男性の殺気に敏感に反応した曹操が駆けつけた。
「お主は自分が張繍を挑発する筈だったと言ったな?何故張繍を敵に回す?」
山賊風の男性の表情は何処か寂しげにも見える。
「曹操を護れ……それがあいつとの約束だからな」
自分に声をかけた美少女こそが典韋が言っていた曹操だと気付かない山賊風の男性は、曹操に背を向け、ゆっくりと張繍が立て籠もる城に近付いて行った。
「我こそは許褚!字は仲康なり!アイツの無念を晴らしてくれるわーーー!」
獣の様な雄叫びを上げ、悪鬼の如き形相をもって張繍軍の兵士達を屠る許褚。
「おおおおーーーーー!」
張繍軍の兵士達は恐れおののき、隊列を崩してしまう。
「正に獅子欺かざるの力だな」
許褚は自分の後を追う曹操に質問する。
「お前さんは何者だ?何故俺に付いて来る?」
曹操は悲しげに答えた。
「貴方は典韋の約束を守りたいのであろう。なら、この曹操が貴方の傍にいるのは当然の事だろう」
許褚は驚きを隠せない。当然だ。典韋が命懸けで護った主君が実は何時まで経っても肉体年齢と外見年齢が15歳の美少女のままなのだ。
「あんたが曹操ぉー!?アイツにあそこまで言わせた者ならもっと厳ついかと思ったぞ!」
曹操は微笑みながらこう答えた。
「私が欲しいのは見た目の厳つさでは無い。同志なのだ。不義と戦乱を憎む志だ。私の理想に殉じて戦える者なら、例え昨日まで敵であろうとも、今日より私の部下だ!」
許褚は曹操の見た目に騙され曹操を侮った事を恥じた。そして、かしこまり、手を前につく。
「殿、と呼ばせて貰いましょう」

その頃、賈詡は謎の老婆と共に魔性の者に誑かされた張繍を正気に戻す方法と、自軍を包囲している曹操軍対策を思案していた。
「とりあえず曹操軍は劉表(字は景升)殿に援軍派遣を要請したので何とかなりそうだが、問題は張繍様じゃ。あれはかなり重症ぞ」
「して、どの位変わったのですかな?」
「……見れば解るよ」
賈詡と謎の老婆は人間に転生した魔王その②の傀儡と化した張繍に謁見した。
「何をしておる!早く曹操を討ち取らんか!」
「……賈詡殿……これは……」
賈詡は溜息を吐きながら話す。
「私がちょっと目を離した隙に魔性の者が張繍様を誑かしたのじゃ」
謎の老婆が手を2回叩くと、張繍が急に正気を取り戻した。どうやら人間に転生した魔王その②の傀儡の時の記憶まで消し飛んでしまったらしい。
「ん?此処は……おい!曹操軍が我らを攻撃しておるぞ!曹操軍に降れば曹操に乱暴される事は無いは嘘か!?」
賈詡は溜息を吐きながら話す。
「張繍様は魔性の者に誑かされた後の事を覚えておられぬ故に曹操が我々を裏切った様に見えますが、先に夜襲を仕掛けたのは私達です」
慌てる張繍は事態を上手く飲み込めない。
「や、夜襲ー!?儂が何時!?」
謎の老婆が手を2回叩くと、張繍が冷静さを取り戻した。
「あ、あれ?儂は何を焦って……」
謎の老婆が張繍に質問をする。
「それより、賈詡殿が申された魔性の者について何か知らぬか?」
「魔性の者?……あ、そういえば、なんか妙にチャラチャラした若造がいきなり儂の前に現れて……あれ?その後の記憶が無いぞ」
「それだ!その者が張繍様の正気を奪ったのです!」
「え?と言う事は……儂は誰かに操られていたの!?」
「どうやらその様です」
謎の老婆が口を開く。
「そして、2000年前に滅んだと信じられている無秩序と悪徳を司る生き物達・“邪凶”に天下を譲らんとしている」
賈詡は驚きを隠せない。
「では、あの伝説は真実だと言うのか!?」
「左様。曹操は仙界が遣わした使者じゃ!」
「不味いぞ……劉表軍はもうそこまで来ている!」
謎の老婆が首を横に振りながら、
「心配は無用。曹操はこの程度の窮地は慣れっこじゃ」

劉表は援軍を送って曹操軍の背後を脅かすと、張繍とともに挟撃しこれを破った。しかし敗走する曹操を追撃する際、伏兵にかかって両軍とも敗れ、張繍軍は劉表の許に落ち延びた。

張繍の許にいる筈の謎の老婆が曹操の許を訪れた。許褚にとっては賈詡への止めを妨害した敵である為、許褚が趙公明に羽交い絞めにされた。
「落ち着け!あの者は同志じゃ!」
「うおー!放せー!あの者は張繍の裏切りに加担した―――」
謎の老婆の口から若い男性の声が発せられた。
「やはり見てくれ通り見た目に騙されやすい性格の様ですね。そんな事では仙人に騙されてしまいますよ?」
謎の老婆は変装を解き、いつもの額に縦長の第3の眼を持ち、鎧をつけた美青年の姿となった。
「やはり顕聖殿であったか」
目を白黒させる許褚をからかう哪吒。
「あんたは七十二変化の術を見るのはこれが初めてだったんだな。すげぇーだろ!?」
曹操が二郎真君に質問する。
「して、張繍と邪凶との関係は?」
「やはり邪凶に操られていたようですね。正気に戻った途端に何故我々の襲撃を受けているのか解らず混乱していましたよ」
それを聴いた許褚が怒り狂う。
「向こうが先に仕掛けておいて、何が襲撃を受けている理由が解らないだ!ふざけるな!」
「哪吒殿合力とは!そこの棒にて許褚の尻を、尻をぶっ叩ゐて!」
曹操が呆れる。
「また賑やかな生活に逆戻りか」

その頃、徐州の車冑は窮地に立たされていた。
袁術は勢力を巻き返しつつあった曲阿の劉繇の攻略を孫策に委ね、自身は徐州の車冑を攻撃することを決め、徐州に出征した。車冑は迎撃するために出撃したが、一方でこれ以前に曹操に敗れて流れてきた呂布を庇護していた。
袁術は呂布の参謀の陳宮にこう告げた。
「漢に代わる者は当塗高なり!もはや漢王朝の命運は尽きた。今の今上帝は只の後ろ盾役の傀儡にすぎん」
「成程成程、と言う事は今上帝に変わる新たな皇帝をと」
「いかにも!その役目を果たせるは我以外あるまい!」
「それが宜しゅうございます」
(漢王朝という後ろ盾が無い曹操か……ふふふふふ……)
建安2年(197年)正月、袁術は漢王朝の終焉を認め、寿春を都として仲王朝の皇帝に即位した。さらに、袁術は呂布に、20万石の兵糧を提供する事を条件に、車冑の背後を衝くように持ちかけ、車冑の本拠地の下邳の守将の曹豹・許耽が車冑を裏切り呂布を迎え入れたため、本拠地を奪われた車冑は退却した。
無論曹操は承認を拒否し、車冑に援軍を送った。だが、意外な所から袁術の瓦解は始まっていた。
「袁術様を裏切れと……」
袁術軍部将の韓暹は耳を疑った。突然やって来た陳珪(字は漢瑜)を名乗る老人が好条件を餌として説得しに来たのだ。
「いや、逆賊を滅ぼせと言っていますのじゃ。そうすれば、帝の覚えもめでたいし、呂布殿も丁重にお迎えすると申しておりましたぞ」
陳珪の堂々とした言い分に完全に飲まれた韓暹。
「しかし、これだけの大軍、我々だけでは……それに、最早袁術様が今上帝。これでは帝に刃向う事になるのでは?」
「ならばもう1人仲間に加えれば良い。楊奉殿なんかは如何ですかな?あと、孫策(字は伯符)殿が袁術を離反しようとしておりますぞ」
「マジで!?寵愛を一身に受けたあの孫策が……」
その結果、韓暹と楊奉が袁術を裏切り、徐州は呂布に取られぱなしの状態となった。これに焦った陳宮が韓胤と謀って呂布の娘を袁術の子の嫁に迎え入れて袁術軍と呂布軍の仲違いを解消しようとしたが、呂布と袁術の同盟を恐れる陳珪が呂布の許を訪れ、
「何ー!袁術がそんな事を!?」
「左様です。帝の配下の者達の中には曹操を気に入らぬ者がおりまして、その者達と謀って曹操を亡き者にせんとしておりますぞ」
「嘘だろ?」
「いいや、陶謙の様な輩が帝の配下の中におるやもしれません」
呂布は陳珪の説得に従って娘を連れ戻し、韓胤を曹操に引き渡してしまった。韓胤は曹操の命により斬首され、許の市場で梟首された。
更に陳珪は孫策の許を訪れ、袁術が仲王朝の皇帝に即位した事を告げた。
「あの馬鹿!皇帝即位を諫める書簡を送たぞ俺!」
「他の諸侯も同じ事を言っておりましたぞ」
孫策は武力をもって袁胤を追放し、ついに袁術に対して独立を宣言する。孫策の独立に応じ、一時袁術の配下にいた周瑜(字は公瑾)は魯粛(字は子敬)を連れて孫策の元へ合流する。また、呉景、孫賁も袁術を見限り、孫策に従う事となった。
「おのれ孫策!恩を仇で返しおってー!許さんぞー!」
これに憤った袁術や陳瑀は丹陽郡の宋部一揆の首領の祖郎らを扇動して孫策を攻めさせたが、孫策は孫輔や程普らとともに祖郎と戦い、激戦の末に祖郎を生け捕りにした。祖郎は孫策の部下となり、門下賊曹に任命された。
また、韓胤の死に激怒した袁術は楊奉と韓暹と共同戦線を結び、自身が任命した大将軍の張勲らを派遣して呂布を攻めたが、この時既に陳珪の説得を受けて楊奉と韓暹が呂布に寝返っており、陳珪の合図で袁術軍を攻撃し袁術軍を大敗させた。

正に踏んだり蹴ったりな袁術だが、陳珪の本当の目的は呂布の敗死にある。その為にもこれ以上袁術軍の拡大強化はなんとしてでも阻止なければならない。
もし、袁術軍と呂布軍が手を組めば呂布は無敵となる。そうなれば袁術が真の今上帝となり、呂布を敗死に追い込むチャンスは永遠に失うのだ。
しかし、陳珪は何故此処まで呂布を追い込もうとするのか?

呂布軍は陳珪の策略によって袁術軍と対立している最中に曹操軍と戦う羽目になった。
焦る陳宮であったが、最早巻き返しは不可能に思われた。だが、陳宮は諦めてはいなかった。
(何か手はある筈じゃ!このままでは曹操に徐州を盗られ、袁術は斃され、曹操軍の後ろ盾である劉協が今上帝に返り咲いてしまう!急げ陳宮!急ぎ策を捻り出すのだ!)
その後、曹操軍が小沛に攻め込んだと言う報告を受け、呂布自ら出陣したが、此処でも陳珪が呂布の足を引っ張った。彭城の城門を閉じて、呂布を入れなかったのだ。
陳宮が陳珪を叱りつける。
「これは何事か!?この方は彭城の城主・呂布様で在らせられるぞ!」
が、陳珪は城門を開けるどころか、逆に呂布軍に矢を浴びせたのだ。
「ふふ、この彭城の城主は、呂布などと言う賊ではない」
「おのれ陳珪!袁術を陥れたのは全て徐州を我が物とする為か!」
陳珪はしれっとこう言い放った。
「陳宮よ、血迷うのもいい加減にせよ。この城の主は儂でも呂布でもない、曹操殿じゃ」
陳珪はよりによって曹操に徐州を明け渡すつもりなのだ。しかも、
「それより陳宮よ、曹操はあの者の本名を未だ知らぬらしい。これは不公平ではないですかな?」
陳宮は顔面蒼白となった。曹操に人間に転生した魔王その②に関する重大な情報を与えれば、必ずや曹操は喜び勇んで人間に転生した魔王その②を討ち取りに行ってしまうだろう。流石の人間に転生した魔王その②でも、神兵化した曹操が相手では無事では済まない。
だからこそ曹操軍以外の諸侯を強大にし、曹操を四面楚歌に追い込まねばならない。だからこそ……だからこその袁術の仲王朝皇帝即位と呂布軍と袁術軍の同盟であったのに、陳珪はそれをどんどん壊していく。
その後、陳珪は曹操軍を彭城に迎え入れ、徐州奪還の足掛かりにさせた。

下邳に籠城する事を余儀なくされた呂布軍。その後の展開について呂布と陳宮の意見が対立していた。
「俺が騎兵を率いて曹操の糧道を断つ!」
「お待ちください!出撃は不利で御座います!籠城をなされませ!」
「籠城をして何になる?只のジリ貧ではないか」
「我々にはまだ袁術がおります!今からでも遅くはありません!娘を袁術の許に送るのです!」
「曹操はそこまで馬鹿では無い。俺の娘を曹操にくれてやる様なモノだぞ?」

確かに呂布の予想通り、曹操は呂布が娘を背中におぶり馬で敵中突破して袁術に援軍を求めると踏んで下邳の全ての門を包囲した。さらに、
「確かに呂布は武勇と戦術に優れておりますが、戦略はまるで素人です。そこを明白にしてしまえば、呂布軍は内部から崩壊してしまうでしょう」
「されば水攻めは如何でしょう?幸い、この近くには沂水と泗水があります。この河の水を曳き込めば、必ず下邳城は水浸しになります」
曹操は少し考えてから決断した。
「……これなら袁術軍も呂布軍に援軍を送る気が萎えるな。よし!荀攸(字は公達)と郭嘉(字は奉孝)の策を用いて水攻めにしよう」
それにより水攻め用の堤を作る事になったが、この建築に参加して働くかどうかは人々の自由意志であり、働きたいと思う者には労賃を払うと布告したので、わずか1週間で作り上げた。
「決壊させよ!」
下邳城を包囲した堤に大量の水が流し込まれ、下邳城は湖の上に浮かぶ城となったのである。
このまま水攻めが成功するかと思われたが、なんと下邳城を豪雨が襲ったのである。これを見た陳珪は必死になって叫ぶ。
「今だ!誰か声を上げろ!上げてくれ!曹操殿に就き従えと声を発しろ!そうすれば曹操軍の逆転勝利は現実となるのだ!」
だが、郭嘉は冷静に陳珪を説得する。
「大丈夫だ。城が此処まで破壊尽くされれば、誰でも戦意を失うであろう!」

水攻めの効果は覿面であった。荀攸・郭嘉の予想通り、呂布軍では抗戦か投降かをめぐって仲間割れが生じ、密かに曹操軍に投降する者が続出した。
この後に及んでもまだ呂布軍にいる陳宮。本来の彼なら既に呂布を見殺しにして人間に転生した魔王その②の許へ逃げ帰る筈だが、陳珪の余計な一言のせいで下邳城から出られないのだ。
その事を人間に転生した魔王その②に伝える赤肌のハーピー。
「なんだと!?マイブックネームを曹操にレッスンるだと!?」
「はい。その為に陳宮は未だに」
「サッチな事されては……僕のライフラックが 尽きてしまう。朱チャイルド真Yesるーc!?」
朱子真が人間に転生した魔王その②の前に現れた。
「如何いたしましたか?」
「陳珪とセイ糞爺が 僕のブックネームを曹操にばらすと言っている。そのビフォーにその糞爺をぶち殺せ!」
「は!解りました」

その頃、袁術が送り込んだ援軍が下邳城に到着したが、此処でも水攻めの効果が曹操軍に有利をもたらす。
「これでは呂布軍は間違いなく全滅だ」
「帰ろう。これは勝てない」
「今回の出陣は兵糧の無駄遣いだったな」
朱子真も下邳城の現状を見て愕然とした。
「終わった……最早手遅れだ……」
この結果、陳宮は逃げる事も進む事も出来ない袋小路に迷い込んでしまったのだ。

呂布軍が立て籠もる下邳城を攻略するべく水攻めを行っていたが、曹操は色々と思う事があった。
(呂布よ……戦いだけしか知らぬ若い野望の持ち主よ……此処までされてもなお私との一騎打ちを所望するか?……何故……)
曹操は静かに神兵化すると、周囲の制止を振り切って飛翔。まっすく呂布を目指す。
「呂布よ」
呂布は喜びに打ち震えていた。漸く神兵化した曹操と戦えるのだ。
「待っていたぞ!曹操!」
曹操が突き出した七星剣を、呂布は見事な腕前で受け流して払い、変々戟で斬り込んで来た。今度は曹操が変々戟を払って再び七星剣を構えて振り下ろす。
鋭い金属音が鳴り響く。
「やりおる」
七星剣と変々戟を交差させたまま呂布が唸った。
「まだまだ!」
2人の動きは目にも停まらぬ速さで、その優雅な舞には踊りやアクロバットの名手でさえ平伏す程であった。
「あいつ、強ぇ!」
慌てて駆けつけた哪吒は、思わず息を呑んだ。
両者の七星剣と変々戟が目にも停まらぬ速さで激しくぶつかり合う。声にならない声で吼え、心の叫びをぶつけ合うような応酬が続く。
余りの激しさに、両軍は何時しか手を止めて2人の戦いに目を奪われた。
呂布が声を絞り出すように叫び、変々戟を突き出す。
「お前が悪いのだ!」
曹操は応戦しながら問い返す。
「呂布よ……私の何処にお前を此処まで追い詰める程の魅力があるのだ?」
「俺はお前のような奴を、お前の様な強敵を探していた!なのに何故!お前は俺との戦いから逃げる!?」
それが呂布の本心なのだろう。趙公明は呂布の人間らしさに触れた様な気になり、ドキリとする。
「俺の武勇は?俺の武功は?俺の力は曹操にとって無意味だと言うのか!」
呂布の心からの叫びに、曹操は全身から衝撃波を放つ事を答えとした。
「それだけでは人を測れぬ!」
曹操は富や権力、そのようなものだけが人間を計測する物差しではないと思っている。それだけは解っている。信じているのだ。
吹き飛んで離れる呂布。と同時に細長い光弾を何発も放つ曹操。光弾は、呂布の頬を掠めていく。だが、既に曹操は呂布の後ろに回り込んでおり、その首に七星剣があてられる。
「此処までだ!」
手にした変々戟を落した呂布は観念したのか座り込んでしまった。
「負けたよ……だが、満足だ!その返礼に張遼(字は文遠)をくれてやる!」
それを聴いた張遼が猛抗議。
「何を勝手に決めるんじゃ!」
呂布も言い返す。
「俺の人生は終わったのだ!もうこれ以上恥を掻かせるな」
呂布は自分の首に手刀を見舞いながら言い放つ。
「殺れ!」
此処で漸く神兵化を解く曹操。
曹操に斬首される直前に呂布は満足げな笑顔でこう言い放た。
「くだらない趣味に就き合せて悪かったな」
こと切れる呂布。曹操はこう告げた。
「呂布の武勇は美しい。だが、遠目に見ると、呂布と言う男は悲しいな」
曹操の顔は何処か寂しげだ。
それを聴いた張遼は考えを改めた。
「先程は曹操に降った者を侮辱するような事を申して悪かった」
曹操に膝を屈する張遼。
「もしまだ間に合うのでしたら……そなたを殿と呼んでも良いか?」
「良かろう!我が軍に残り、最強の武を求めよ!」
曹操の堂々とした態度と美しき美少女ぶりに周囲は敵味方の垣根を越えて見惚れていた。
己の野望を達成した筈の陳珪も喜びを忘れて立ち尽くした。
だが、2匹の邪凶だけは違った。
朱子真は体長170cm、肩高90cm、体重190kgで背中や側面に長さ56㎝程の針を約3万本も備える猪となって陳珪に突進する。
(せめて……せめてあの御方の本名だけは死守せねば!)
陳珪は朱子真の突進を受けて吹き飛んだ。そして、そのまま水攻め用の水の中へと落ちた。
「なんだあれは!?」
陳宮がガッツポーズをしようとしたが、趙公明が空気を読んで陳宮の口を槍の柄で塞いだ。
「暫くかを噛みてゐて下され」
曹操は水攻め用の水の中へと落ちた陳珪に向けてこう言い放った。
「満足かね?新たなる魔王よ」

「満足かね?新たなる魔王よ」
この言葉に朱子真も陳宮も理解に苦しんだ。張角と蚩尤は曹操に敗れ、董卓は呂布に殺された。残る魔王はもう人間に転生した魔王その②のみの筈。
だが、曹操はハッキリと陳珪を魔王として扱った。
(これはどういう事なのだ!?あの御方以外に地上の王に相応しき者がおる筈が無い!無いのだ!)
すると、水攻め用の水の中から藤色のツインテールをなびかせた前髪で目を隠しているのが特徴の美少女が全裸で出て来た。その体つきは控えめな胸元と相まって、華奢な印象を受ける。
「何時気付いていたんですか?」
哪吒が悪態つくように答えた。
「最初からだよ馬鹿!」
二郎真君が続けて答える。
「まさか幻影を身に纏うとは……中々面白い変装を見せてくれましたが、生憎我々には通用しませんよ」
許褚が困り果てる。
(また夏候惇に馬鹿にされそうだぜ……)
「して、何時頃から魔王に?」
さっきまで陳珪であった少女は素直に答えた。
「私は御爺様を呂布に殺され、王允に命を狙われました。でも、御爺様が私に力をくれました」
それを聴いた曹操は、さっきまで陳珪であった少女の正体を見抜いた。
「確か……董卓の孫娘に10歳ほどで渭陽君になった者がおると聞く。そうだな?董白」
董白は背中にトビウオの胸ビレの様な羽を生やし、自身の下半身を鯉の鱗で覆われたイルカの下半身に変えた。
「魔王董白よ!お前は何をしに来た。復讐か?欲望か?」
董白は内気で引っ込み思案な性格なりに力強く答えた。
「復讐です」
「して、この後どうする?私はまだ神兵化できるが……挑むか?」
董白は首を横に振りながら答えた。
「その様な事をすれば彼の思う壺となります。故に見逃してくれたら嬉しいと思います」
二郎真君も曹操が神兵化の無駄使いをして、未だに謎が多い人間に転生した魔王その②に付け入る隙を与えたらどうなるのかを懸念していた。
(確かに、七星剣に日光と月光をたっぷりと吸わせれば、曹操は何時でも神兵化出来る。しかし、七星剣に日光と月光を吸わせる最中に魔王級の邪凶に襲われれば一溜りも無い!)
朱子真が再び董白に飛びかかろうとするが、内気で引っ込み思案な性格とは言え魔王は魔王。中凶クラス如きが敵う相手ではない。
「静かにしてください!」
董白にこう言われた途端、朱子真が口を開けなくなりもがき苦しんだ。
「ガフッ!ガフッ!」
それを見ながら曹操は質問する。
「お主は何を企む?」
董白の答えは意外なモノだった。
「それは既に終わりました。呂布亡き今は」
「成程。復讐の事で頭が一杯か。あの頃の私同様に野望が若いな」
それを聴いた董白は自分が出来る最大級の力強さで曹操に問うた。
「曹操さん!だったらどのような野望が年老いたと言えるのですか!?」
曹操は静かに、そして自信満々に答えた。
「私が領主に求める物は3つだ。ひとつ、民を護る盾と成れ。ふたつ、兵を育てる道と成れ。みっつ、領土を肥え太らせる餌と成れ。この曹操、この3つの条件を兼ね備えた者しか領主と認めん!」
董白は納得しながらこう答えた。
「完璧だ。だがしかし、それ故に誰にも相手にされていない!何故なら、他の諸侯はその様な綺麗で完璧な野望は求めてない!自分が可愛いからこその野望!自分を良くする為に野望は在る!」
曹操は微笑みながら告げる。
「まあ道程は困難だろう。この先も多くの敵が私の前に立ち塞がるだろう。だが、だからと言って自分の信念を曲げる事に何の意味がある?それは最早逃げですらない。只の物だ。生命としての価値すら無い」
「所詮、民亡き国は国に非ずか」
曹操と董白の問答合戦を不安そうに眺める朱子真と陳宮。
(止せ!止めろ!これ以上口を開けるな!曹操が知ってはならない真実が白日の下に晒されてしまうぞ!)
だが、朱子真と陳宮の願いも虚しく、董白は人間に転生した魔王その②に繋がる言葉を口にしてしまった。
「劉備(字は玄徳)という方は知っていますか?」
このタイミングで出てくる名前。それが意味するモノは多くて大きい。
哪吒は恐る恐る尋ねる。
「誰だよ……そいつ……?」
朱子真と陳宮の焦りは既に限界値を超えていた。董白の返答次第では人間に転生した魔王その②の本名が曹操にばれてしまうからだ。
董白はまるで墓標の様に突き刺さる変々戟を見ながら独白する。
(劉備……この人が負けたら曹操を止められる人はいなくなる。けど、今更迷っても仕方がないよね?)
「劉備とは……天を知らずして天に背き、乱世に戦わずして乱世に乗り、欲を顧みて人心を惑わす!真に鬱陶しい男だ!」
「うがあぁーーーーー!」
陳宮が全長25m、体重625kg、胴回り直径75cmの猫耳大蛇になってしまった。
「貴様こそ黙れぇーーーーー!」
曹操は七星剣を抜くと、憎しみの塊の様な表情を浮かべた。
「陳宮!張邈を裏切り者に仕立て上げ、不要な戦を次々と作り出し、多くの死と悲しみを生み出した。その罪は許し難し!」
朱子真と陳宮が同時に曹操に襲い掛かるが、あっさり微塵切りにされた。その隙に董白は自身が巻き起こした豪雨を煙幕代わりにして逃げ去ってしまった。
後を追おうとする兵士達を制止する曹操。
「褒美だ。行かせてやれ。御蔭で私の本当の敵の名前を知る事が出来たのだからな」
(そうだろ?劉玄徳!決着の時は近いぞ!)
改めて邪凶から世界を護る決意を固めた曹操であった。
 
 

 
後書き
今回で最強の武将である呂布が退場となります。
この作品内では、曹操に付きまとうバトルマニアでしかなかったので、最期ぐらいはかっこ良くしても罰は当たりませんよね?

後、魔法少女まどか☆マギカ[新編]叛逆の物語に嵌りすぎて執筆の速度がもの凄く遅くなりました。しかも、完全生産限定版を買ってしまいました。
 
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