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ネギまとガンツと俺

作者:をもち
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第30話「麻帆良祭~戦うタケル~」



 学園祭最終日。

 超鈴音の計画は既に始まりを迎えていた。

 時刻は夕方から夜へと傾き始めている。

 初日、2日目と同様に人ごみで溢れているこの麻帆良に、だが昨日までとは違い、その半分ほどのスペースには人が全くいなくなっていた。
いるとすれば、それは。

「うわっ!?」
「しまった!!」

 強制時間跳躍弾に被弾した何人かの魔法教師達がタケルの目の前からいなくなり、この世界から一時的にその姿を消した。
 
 これをくらえば3時間後、つまりは超鈴音の計画が完全に終了した時間に飛ばされることになる。
要するに被弾したその人は完全に無力化されることになるということだ。

 しかも、この弾は厄介なことにぶつかった対象から直径1Mほどの存在を取り込む特徴があり、ギリギリで回避したのでは意味がないという厄介極まりない弾丸でもあった。

「――あっちゃ~、これはまずいね」

 苦笑しながら言うタカミチの声に

「まずいですね」

 無表情に頷くタケル。

 パッと見て危機感ゼロだが、それは単にそう見えないだけで実際には彼らも本気で危機感を覚えていた。

 既に状況は最悪。

 完全に油断していた教師陣は超の先手を易々と許し、いかんともしがたいほどに追い込まれていた。

 戦力として期待されていたネギや刹那たちも、全く連絡がつかず行方も知れない状態になっている。

 超の計画は全世界に対する強制認識魔法によって魔法の存在を認識させること。

 告白阻止ポイントでもある6箇所の魔力だまりを占拠し、直系3キロもの巨大魔方陣によって発動。それを地球上に存在するこの麻帆良と同等の魔力地と共振、増幅させることで強制認識魔法を全世界に駆け巡らせるといったものだ。

 魔力ポイントには既に超 鈴音と葉加瀬 聡美の両名によって手を加えられた2000体以上のロボと巨大生体兵器6体がそれぞれの箇所に陣取っている。

 魔法教師側にとって唯一の幸いは、全ての告白阻止ポイントを超が占拠しているおかげで、告白阻止に人員を裂く必要がなかったということだった。

 既に人払いの結界は済ませてあるので、ここにいるのは超関係者か魔法教師陣のいずれかということになる。

「これだけ広いと、超さんを探すだけでも一苦労だね」
「そうですね。別れて探しましょうか」

 襲い掛かる小型ロボを蹴散らし、反対方向に分かれる。

 タカミチの姿が見えなくなったところでタケルが一人呟く。

「さて……ここまでは俺の予想通りといったところか」

 今回、タケルが知っている限りで超側の主要人物は3-Aの葉加瀬 聡美、同じく絡操 茶々丸、そして龍宮 真名の4名。

 この内、葉加瀬に関してはあくまでも超のサポートであって対処する必要はあまりないとタケルは踏んでいる。

 彼にとっての問題は残りの3名。

 超の魔法発動に際し、マナがロボたちに紛れて魔法教師達を確実にしとめ、茶々丸が魔法に関する情報面の操作、漏洩、流出を担当している。


 今現在、本来学園結界によって封印されて動けなかったはずの巨大生体ロボが活動しているのは茶々丸が学園結界を落としたことに他ならない。

「――良く出来た作戦だ」

 天才たちが長年の歳月を経て温めてきた作戦なだけあって、戦略的にも人選的にも、タケルの頭脳では隙らしい隙をみつけられずにいた。

「とりあえずは――」

 タケルは小さく呟き、軽く目を閉じた。

 ――ロボ軍たちの戦闘は学園側に任せておくとして。先生方にも実力者がいるらしいし、タカミチ先生がいればそうそう後れを取ることもないか。

 つまり、今の内に対処しなければならないのは龍宮でも超でもない。というか、何よりも真っ先に対応しなければならなければならない人物がいた。

 情報を操っている絡操 茶々丸だ。

 情報というものは何においても慎重に、俊敏に対処しなければならないもの。

 例え強制認識魔法の発動を防いだとしても、彼女の流した魔法情報が対処できないほどに流布されてしまってはそれだけ魔法の存在を信じようとする人間は必ず出てくるはず。

 彼女を落とせば、それだけで後は学園側が勝手に結界を再結成し、情報の漏洩も上手く対処されることになる。その結果、巨大ロボも動きを停止して、学園側の戦力もまた持ち直すことになる。

 茶々丸を落とすとはいってももちろん、電子戦でタケルに勝ち目があるはずもない。出来ることなどただ一つ。

「ガンツ……居場所を」

 即ち、本体をとめること。




 一人の人間が近づいてきている。

「……?」

 電子戦に没頭していた茶々丸だがその異常にいち早く気付いていた。

 だが、すぐに気にするべき事由ではないとして思考回路の片隅に追いやる。

 何せこの場所には辿り着くには十重二十重に仕掛けられたトラップとフェイクを見破る必要がある。熱源探知も赤外線も魔法も気も、ありとあらゆる全てを騙しきるほどにダミーが存在している。

 さらに、もしもここに辿り着くことが出来たとして人が知覚できないとされる6次元にまでこの空間をずらして絶対に見つからないようになっている。

 そうして物理的に断絶されたこの空間内では、さらにいくつもの魔法防壁、科学技術による防御回路が組み込まれており、この防壁を破るのにはほとんどバケモノ級の攻撃能力を有している必要がある。

 つまり、その人間がここに近づくことは不可能。勝手にダミーやフェイクに騙され続けて迷路のような道をさまようことになるのが関の山。

「……」

 支障は無いだろうと茶々丸は判断した。そして仕事を進めようと、再度電子世界に身を委ねようとした時だった。

 室内に赤いランプとブザーが響いた。

「!」

 驚くべきことに、その人物はフェイクもダミーも罠すらもいとも簡単に抜けてきたのだ。

「……なっ」

 さすがに驚きを隠せない茶々丸の目前にタッチ式パネルが出現。その画面に映し出された侵入者に、さらに目を見開いた。

 
「……猛先生」

 ――いいか、もしもタケルがお前を追い詰めたら早々に降参しろ。お前は機械製な分、下手したら粉々にされかねん。

 彼女のマスターの言葉を思い出す。

「やはり、あなたですか」

 魔法も気も、一切用いることが出来ない凡人。いや、それどころか未来永劫それらの力を手に入れる素養すらもない凡人以下の非凡人、大和猛。

 だが、その凡人はあらゆる魔法使いをものともせず、かの真祖の吸血鬼にすらその実力を認められている、おそらく最強の凡人。

 理屈もなく、なぜかただ強い。

「ですが、私もただ黙ってやられるわけにはいきません」

 まだ、タケルは探索中。彼女が追い詰められたわけではない。こういった時のために予め用意してあった通信パネルを開き、すぐに送信。

「……あとはどちらが早いかですね」

 まるで本当の人間の如く、いやそれ以上の美しい笑みを浮かべて。

 彼女は呟く。




「罠か……厄介だな」

 迫り来る強制時間跳躍弾をXガンで相殺し、道を進む。

 フェイクもダミーも、結局はガンツのコントローラーに表示される地図と赤点だけを目指していれば方向音痴だろうが惑わされることはない。

 だが、入り組んだ迷宮のようなこの地下道で、所々に設置された罠を見破ってかいくぐる技量は残念ながらタケルにはない。

「っと」

 壁の影に設置されていた無人兵器が実弾を吐き出した。すかさず銃弾の合間を縫って身を翻しながらもガンツソードを投擲。寸分の狂いなく命中したソレは火を噴き、床に四散した。

 どうもここまで来ると実弾が装填されているようで、逆に対処が楽になっている。

「……あの強制的に飛ばされる弾がなければここまで慎重に進むこともないんだが」

 こんな地下に人が来ることを想定しておらず、強制時間跳躍弾を用意していなかった可能性が高いのだが、それすらも罠で大雑把に進んだ所に強制時間跳躍弾を食らってしまえば元も子もない。

 つまり、タケルには慎重に進むという選択肢しか残されていない。

「さすがに天才コンビに本物の戦士と超高性能技術ロボの凶悪な組み合わせなだけがあるな」

 ――こうやって時間をかけさせることも、頭に入ってそうだな。

 唸りながらも警戒を緩めずに歩を進める。

 と。

「む?」

 扉らしきものを開けた途端、大きく開かれた一室に出た。様々な機材やらコードやらが並べられており、一時的に超たちが使用していたことが簡単に見て取れる。

「ここは?」

 ライトアップされており、今までの道のりに比べて一際明るい、だがそれだけ。何かがある様子はない。

「!」

 慎重に一歩ずつ踏みしめて進む。

 ――……いる。

 ちらりとコントローラーに目を配る。

 ――絡操さんの位置までは……まだ先か。

 どちらにせよこの先を突っ切っていかなければならないのは確か。

「……いや、そうだな」

 だが、タケルは一度、大きく息を吐き出し、ペースを落とす。こういう時こそ頭を働かせる必要があるからだ。

 敵の直接的主戦力はロボと龍宮さん。

 だが、ここの守護としてのロボならばおそらくこの空間に一歩足を踏み入れた時点で攻撃に出てくる。

 相手はもっと狡猾で実力者。

 つまり――

 ――龍宮さんか。

「厄介だな」

 タケルは彼女と一度だけ追いかけっこという形で手合わせに近いものをしたことがあった。が、もちろんお互いにほとんどお遊びに近い状態だったのでマナが相当な実力者だということを知ってはいるものの、まだまだ未知の域。

 それに加えて刹那・楓と並ぶ3-Aの最強トリオ―もちろん、エヴァンジェリンを除く―の中でも最も戦術的戦い方を心得ているかもしれない人物。

「……さて、どうするか」

 ここまで思考時間僅か一秒。徒歩にしてまだ一歩分も進んでいない。

 タケルには彼女ほどの実力者とここで争っている暇はない。いや、ここでマナの足を止めておくことは地上で戦っている教師陣からすれば大いに有利に働くのは確かだが、それでも超自身の時間跳躍の仕掛けを知らない彼等では―例えタカミチ先生がいても―少し危うい、という思いがタケルの中にはあった。

 ――……タカミチ先生くらいには伝えておくべきだったか?

 今更ながらに後悔する彼だが、それはもちろん一旦心の底に沈める。とりあえず目の前の問題から先に片付ける必要がある。

 相手が高知能生命体のとき、大事なことはいかに相手を油断させてその隙をつくか、その一点。
彼女にはステルスも効かないことをタケルは身に染みて理解しているため、簡単にはいかないことも分かっていた。

 ――……危険だが、アレでいくか。

 それはいくつもの時間跳躍弾をXガンで回避するうちに覚えた、一種の博打的避け方。

 ――となれば。

「龍宮さん、いるのは分かっている。姿を現したらどうだ?」

 大きな空間にタケルの声が反響し、木霊した。

「……」

 沈黙が流れること数秒。

「さすがだな、大和先生。気配は消していたつもりだったが?」

 スナイパーライフルを手放し、懐から2丁拳銃を取り出す。会話をしながらも油断する様子のない彼女に内心で舌を巻いて質問に答える。

「キミとは多分相性がいいんだろう」
「……相性?」
「ああ、俺は相手の殺気にだけは敏感だからな」

 タケルの答えに、だが龍宮は首を傾げる。

「私から殺気が漏れていたと?」
「いや、銃から」

 それは本気か、冗談か。

 本来、無機質な存在である銃からそんなものを感じ取れるはずがない。

 だが。

「……なるほど」

 彼女はまるで納得がいったように頷く。

 タケルがまだ子供と称される時から今まで3年間。その常を死地に赴いてきたように、マナもまた幼少の頃から死地を駆け巡っていた。そんな殺伐とした世界を誰よりも知っている二人だからこそお互いに通じるものがあるのかもしれない。

「……こうやって生徒との意思疎通を交わすのは教師としては悪くないが・」

 言葉とは裏腹に武器を手に。

 右手にはYガン、そして左手にはXガン。タケルも2丁の銃を。

「……ほう、先生は刀を使うと把握していたが?」

 面白そうに呟く彼女に、言う。

「どっちも、だ!」

 言葉を皮切りに、龍宮の拳銃が火を噴いた。




「なに!?」
「これでキミも戦線離脱だな」
「……一体何を?」

 疑問で頭が一杯になっている彼女に、タケルは言う。

「……さぁ?」

 手品士がタネを明かさないように、戦略家がその手の内を見せないように。彼もまたおどけて笑う。

 その様子に「ふっ」と小さく笑みを浮かべて龍宮は時空の波に飲み込まれていった。

「……ふぅ」

 小さくため息を吐く。

 ――賭けは俺の勝ちだったな。

 結論から言ってしまえば、勝負は一瞬でついていた。

 ただ、これだけは言及しておかねばならない。

 龍宮マナはおそらくタケルが今までに相対した人間の中でも最も強敵だっただろう。ガンツスーツを加味した上でも下手をすれば負けてしまうこともあるほどに驚異的な実力者だ。

 だが、勝負が混戦することがなかったのは一重に情報量の差と、なによりも今回の状況が大きく関係していた。

 マナの主武装は強制時間跳躍弾。それには超鈴音の計画、出来るだけ怪我人を出さないようにという配慮があった。

 この武器は確かに相当に有効な代物といえる。着弾時周囲1Mを巻き込み無傷のまま転送。まさに防御不可。距離を取って回避するか遠距離で弾くしか防ぐ術がない。

 厄介すぎるその武器の、つまりは着弾=転送という特性をタケルは逆手に取った。

 そして、そのための最も大事な一役を担ったのがタケルの生命線ともいえるガンツ兵器。

 着弾後、威力を発揮するまでに数秒を要するXガンと一度捕縛すれば完全に四肢の動きを封じることの出来るYガン。

 後はこれらの武器と情報を上手く活用するだけだった。

 つまり、コトの顛末はこうだ。
 
 ――――――――――――

「どっちも、だ!」

 二人が駆け出したとほぼ同時に武器の引き金を引いた。

 龍宮からは強制時間跳躍弾が吐き出され、次いでタケルからは見えないXガンの銃撃が吐き出された。

 ――よし。

 タケルが彼女よりも銃撃の発射を一瞬だけ遅らせたのは計画通り。

 あとは。

 ――……3。

 心の中でカウントとすると同時に、マナの放った強制時間跳躍弾にあえて被弾。

「しまった!」
「なっ」

 どこかわざとらしい呆然とした声に、マナの驚いた声が重なった。

 ――……2。

「どういうつもりだ、大和先生?」
「くっ、油断した」

 ――1。

「……?」

 吐き出されたその言葉に怪訝な顔をして見せ、だがこの銃弾を一度食らえば誰であろうと脱出は不可能だという誰もが持つ認識が、当然マナの頭にもよぎった。

「私の買いかぶりだったか?」

 あまりにもあっけない幕切れに、さすがの龍宮も一瞬、戦闘態勢を解き――

「――ゼロ」

 言葉と同時、Xガンがその威力を発動。既に強制時間跳躍弾に取り込まれていたソレの銃撃は対象物をまきこもうと大きく広がった空間の内部から爆発。

 時間そのものに干渉するその跳躍弾は外部からの衝撃に関して一切の干渉を許さない。ただし、その空間を形成するエネルギーそのものが狙われれば話はまた別。デリケートな扱いを要する時間跳躍という現象は、些細な数値の変化すらも読み取り瓦解する。

 タケルを包み込んでいた強制時間跳躍弾が霧散し、ソレと同時にYガンが発射されていた。気を抜いた瞬間という最も致命的な隙をつかれたマナにそれを避ける術はない。

 いや、正確にはどうにか飛び跳ねることでそれを避けることに成功していた。しかしロックされていたソレは例えかわされたとしても追跡する。

 飛び跳ねるという無茶な体勢で避けたこともあって今度はなす術がなかった。彼女の懐にある転移札を使用しようと手を伸ばしたところで捕縛。
 
 地面に縫い付けられる形となった。

 Yガンによって動くことの出来ない彼女に、彼女自身の強制時間跳躍弾を放てばあとは知っての通り。

 ―――――――――――――

 というわけだ。

 つまり、ガンツ兵器という相手が知りうるはずのない存在と強制時間跳躍弾を使わなければならないという相手の状況がタケルに大きく味方をした。

 タイミング勝負と相手の不利が存在していたからこそとれる最速で片をつける手段。

 それが上手く功を奏したこととなった。

「次」

 誰もいなくなった空間に小さな声と足音がコダマしていく。




「……駄目でしたか」

 センサーが探知していた生体反応が一つ消えたことを確認した茶々丸は長めの息を吐いた。

 そのまま外へ出ようとせずにこちらへ向かってくるということは勝ったのはタケルということに、当然なる。

「超 鈴音に報告して……? ……!」

 パネルを走査。マナの敗北と自身の危機的状況を送信した瞬間だった。
 
 誰にも立ち入れぬはずの空間そのものに亀裂が生じ――

「まさか……本当に空間を?」

 空間を破るなど人間業ではない。ありえないものを見るようにそのヒビを見つめて。

 ――鋭い光が空間を貫いた。

「あ」

 呟いた時には既に遅し。

 断絶された場であるがゆえに逃げ道はない。物理と魔法障壁を共に完璧にめぐらせていたからこそ、手ぶらの茶々丸には動くことさえできない。

 つまり。

 ――龍宮 真名さんからの戦利品ですね。

「……さすが大和先生です」

 自分を包む時空間を分析しながらも抵抗する瞬間すら与えなかった彼の手際を素直に褒める。

 茶々丸の言葉には答えず、日常の放課後のように、彼は告げた。

「さよなら、だ」

 そして。

 茶々丸はこの空間、この時間から消えた。

 ――これで龍宮さんと絡操さんはいなくなった。

 つまりそれは地上の巨大生体ロボが止まり、学園側にとって最も厄介であっただろうマナの狙撃すらもなくなったということ。

 ――勝ちの目が大きくなった。

 とはいえ、相手にはまだ超鈴音と大群の雑魚型ロボが残っている。

 薬莢に残っていた最後の強制時間跳躍弾を懐に入れて、彼は歩き出す。




 そして、地上。

 タケルが最も頼りにしていたタカミチ。

「どうカナ、高畑先生。私の仲間にならないカ?」
「……!」

 そもそもタカハタが持つ僅かな迷い。そのほんの一瞬の隙をつかれて、超に敗北していた。

「では、また高畑先生。また3時間後、私の計画の成功後の世界で」
「……」

 成す術なく飛ばされたタカミチを見届けて

「さて」と小さく呟く。

 ――これで残りの主力はあと一人ネ。

 ポケットに忍ばせていた情報端末を取り出し「龍宮さんと茶々丸が沈んだカ」

 ――これで情報面での流布が大幅に遅れるカ……この魔法に成功すれば遅かれ早かれ計画は成就する。問題はないネ。

 だが、しかし。

 驚きと感心と。

「ふむ……予想以上に手ごわそうネ、大和先生は」

 そして少しばかり楽しそうに笑った彼女は強制認識魔法を発動するため、葉加瀬の下へと向かうのだった。




 超鈴音が歩き出した時、まだ学園結界は落ちたままだった。そのため巨大生体ロボは動いていることになんら不思議はない。

 茶々丸がその場から消えた後、学園結界内が復活したことにより巨大生体ロボはその活動を停止させた。

 ――ただの一体を除いては。

 既に、彼女は場所を移していた。

 そのため、その異常に気付くことはない。


 イレギュラーとイレギュラーが重なり合い生まれたソレ。動こうとしていることをまだ誰も知らない。

 
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