真剣恋にチート転生者あらわる!?
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第17話
前書き
2日続けて投稿です。
悠斗side
テレビ出演した日は偉いめにあってしまった。
具体的にはマルギッテにはトンファーで殴られまくるし、セレンにはお仕置きされるなど散々だった。まあ、ダメージは一切無かったんだけどな。 あれから一夜明けた。
俺達は首都決戦に向けてのテレビ演説を聞いている。演説をしているのは反政府組織の総司令官だ。演説は世界中のマスコミが一斉に発信している。俺達は壇上に横1列に並んで演説を聞いている。並び順はフランク中将、マルギッテ、俺、ヤン中尉、ロイ曹長、セレンだ。向かい側にも反政府組織の上級将校が並んでいる。
会場には一般兵達が整列して演説を聞いている。
『我々は真の独立を求めて今日(こんにち)まで戦ってきた!政府の非道な抑圧により、我々は自由を奪われてきた!政府は自由を求める我々に銃を向けてきた!諸君らの、父も!子も!兄弟も!親族も!政府の弾圧によりその命を奪われてきた!』
総司令官が右手を握り拳にして、右胸の辺りで強く握り震わせる。
左手を横に振り払った。
『彼等は勇敢に戦い散っていった!我々は今、かの英霊達に顔向け出来るであろうか?否!それは否だ!今はまだ、我々は彼等に顔向け出来ない!』
総司令官が演説の為にある台を左手で強く叩く。 右手の握り拳を前に出した。
『今こそ首都を奪還し、この暗黒の時代に幕を降ろして、初めて我々は顔向け出来るのだ!ならば、我々がやることはただひとつ!先に散った英霊達の為に独立を取り戻す事だ!聞け!独立を運命付けられた子らよ!』
総司令官が左手を机に追いたまま、右手の握り拳を震わせる。
『我々は今、勝たねばならん時であーるー!』
『おお!!』
『明日の未来を!祖国の平和を!友と誓った約束を果たす時だ!行け!独立を運命付けられた子らよ!勝利を我等が手にするのだ!』
『おおおぉぉぉぉ!!!』
兵達が武器を上に掲げる!中には祖国の国旗を振るう者もいる。兵達の士気は最高潮に達した様だ。そのまま、総司令官はHQに向かうため演説会場を後にした。上級将校達も退席して行った。
俺達も指示された突入場所に移動した。
突入場所に到着すると、既に猟犬部隊と傭兵部隊は準備が完了していた。隊員達は最後の戦いを前に皆、緊張した面持ちをしている。俺はフランク中将に話しかける
「フランク中将」
「うん?なにかね悠斗君?」
「先鋒は任せてください。今回は武器は使いません。己が拳で敵を殲滅します」
俺は、握り拳を作る。フランク中将はニヤリと笑いながら答えた。
「ほう?久しぶりに本気で行くのかね?ならば、我々は後方から支援するよ」
「お願いします。では」
「ああ。諸君。これより、作戦を開始する。我々の任務はただ1つ!敵、総司令官を捕獲する事だ!敵の防御は堅牢だが、悠斗君がいるから安心して戦え!良いな!」
フランク中将が全員の顔を見る。全員の目にはやる気に満ち溢れている。
「良し!作戦開始だ!悠斗君。派手な狼煙を上げてくれたまえ!」
「分かりました!じゃあ、先に仕掛けて来ます!」
俺はそれだけ言って、地面を蹴り空中にジャンプして首都に向かう。敵は、首都を囲む様にして防衛陣地を構築しているため、先ずは防衛陣地を突破しなくてはならないが、敵は戦車を大量に配備して待ち構えているのだ。更に、首都にある空港からは敵の迎撃戦闘機が発進してきている。
首都に向かって空中を飛んでいると、迎撃戦闘機が4機此方に向かって来ているのを肉眼で確認した。
「(良し!先ずは派手に1発行きますか!)我流奥義!獅子殲滅派!!」
俺は迎撃戦闘機に向かって獅子殲滅波を放つ。迎撃戦闘機は回避しようとも、間に合わずに闘気の獅子の口に喰われ餌食になり大爆発を起こした。俺の獅子殲滅波で撃破した戦闘機の爆煙が合図となり、各戦線で反政府組織の兵士達が攻勢を開始した。
(良し!先ずは友軍の為に、防衛陣地を撃破しますかね!)
俺はそのまま、一番近い防衛陣地に向かう。
防衛陣地に近付くにつれて下から上空に向けて対空砲火が飛んでくる。それを回避しつつ、防衛陣地にあと少しの付近まで到達する。
「先ずは、1つ目だ!」
俺は上空から防衛陣地に突入する。一番近くに居た兵士の顎を右足で蹴り抜く。
「うわらば!?」
「こ、この!」
「くらえ!」
側に居た兵士がナイフで切りつけて来るが、ナイフを右手の指2本で挟んで白刃取りして、そのままへし折って切っ先を持ち変えて、兵士の首を切り裂く。兵士は血を吹き出しながら、倒れた。もう1人後から突撃銃を構えた兵士が俺を射とうとするが、俺は折ったナイフのを兵士に投げつけた。 ナイフの切っ先が相手の顔面を貫いた。兵士は絶命しつつ突撃銃のトリガーを引いていたため、辺りに銃弾が発射される。発射された銃弾が跳弾して、近くにあった燃料タンクに命中したため、タンクの燃料が引火して爆発した。爆発に気付いた兵士達が慌てて、俺に向かって殺到してきた。キュラキュラと音も聞こえてきた。
「おいおい。戦車も来るのかよ」
前方から戦車が1台やって来た。しかも、周りには敵兵が大量にいる。
「まあ、余裕だけどな!」
俺は拳を握り地面を蹴り、戦車の真っ正面に右ストレートを放つ。戦車の装甲は意図も簡単に貫かれた。そのまま、戦車の中に居た兵士の顔面を吹き飛ばし、砲弾を貫いた。砲弾が衝撃で爆発したまめ戦車は爆発して仕様不能になった。俺は爆発に巻き込まれるまえに、戦車から離れたため損害は無かった。流石にこれを見た、敵兵達がガタガタと震え始めた。だが、勇敢な兵士は俺に突撃銃を構えて発射してくる。
「うおぉぉぉ!」
「死ね!死ね!」
「援護だ!援護する!」
「く、クソォォ!」
突撃銃の弾丸が俺に迫って来るが、俺はそれを全て回避しつつ間合いを詰める。左側にいた兵士の顔面を左手でアイアンクローをして片手で掴む。
「ぎゃあああ!」
ギリギリと指に力を入れて兵士を持ち上げる。持ち上げる。持ち上げた兵士を右側で1ヶ所に固まっていた敵兵に投げつけた。
「がは!?」
「ごふ!」
「・・・・は!?がぁ?!」
人知を越えた速さで投げつけた兵士が命中して、数人が血を吹き出して上半身と下半身が真っ二つになっていた。投げた兵士は首がありえない方に曲がって絶命していた。俺は他の兵士を見る。
「か、勝てるわけがない!」
「お、俺は逃げるぜ!」
「化け物だ!」
「に、逃げろ!」
俺に背を向けて逃げて行く兵士達。
すると、逃げた兵士達が突然此方に向かって逃げてきた。
「ぎ、ぎゃあああ!」
「や、やめてく・・」
「う、うわああ!」
逃げてきた兵士達が血を吹き出して地面に倒れてゆく。倒れた兵士には、銃弾が命中した後があった。しかも、体に多数の大き目な穴が空いており、内臓等が吹き飛ばされていた。
(これは・・・・機関銃の弾か?しかし、それにしては穴が大きすぎる。どちらかと言うと、バルカン砲の様な大型の砲の弾の後に近い)
ドシンドシンと地響きが鳴り響く。戦車の残骸の横から、2mを越える巨漢の大男がやって来た。しかも、右手にはバルカン砲を持っているだけでなく、背中にはバルカン砲の弾薬のドラムを担いでいる。その男は口に葉巻を銜えている。しかも、その大男が現れてからは周囲に大量のカラスが現れた。
「はん。役にたたない兵士どもだな。足止めすら出来んとわな」
「お前、味方の兵士を射つなんて、どういった神経をしてるんだ?」
「ああ?こんな、役たたずどもなんて死んで当たり前さ。俺のバルカン砲の的になれただけでも、感謝して欲しいもんだぜ」
「お前何者だ?」
大男は自身を親指で指して、名を叫んだ。
「俺の名は!バルカン・レイヴン(大烏)!不動悠斗!貴様と同じ戦いに身を捧げた男よ!さあ!最強の傭兵よ!俺の前に骸を曝すがいい!」
バルカン・レイヴンがそう名乗ると、周りの建物に止まっていたカラスが飛び立った。
俺の無線に緊急通信が入る。
「悠斗。気を付けろ!奴は西部戦線で反政府組織の民兵を、1000人以上殺害している強者だ!バルカン砲の火力はバカにならん。遮蔽物に身を隠しながら戦え。バルカン砲の火力は凄まじいが、初弾の発射までに時間が掛かる。その辺りの弱点を上手く突くんだな」
「了解だ。セレン。まあ、衛星からの映像を見ていてくれ」
セレンのアドバイスを聞いて通信を切る。
互いの距離は20m程だ。バルカン・レイヴンが話しかけてきた。
「フフフ。フハハハハ。久しぶりに、殺りごたえのある相手と戦えそうだな!。貴様の様な強者と戦えることに感謝するぞ!」
「悪いが、お前をノンビリ相手にしている暇はないのでな。さっさと殺らせてもらう!」
俺はバルカン・レイヴンを睨み付ける。バルカン・レイヴンは俺の眼を見た後笑いだした。
「いい眼をしているな。闘志に溢れた戦士の眼だ!その様に、闘志に溢れた眼を見るのは久しぶりだ!やはり貴様は極上の獲物の様だな!」
「御託はいい。来ないなら、俺から行かせてもらうぞ」
「ククク。俺を倒して、此処を突破したところで、首都は簡単には攻略出来ないぞ」
「なに?」
バルカン・レイヴンは左人差し指で首都を指差した。
「この先には、通常軍から引き抜かれた選りすぐりのエリート部隊が展開している。更にそこには、俺の様な個々の技量に長けた人間で構成された特殊部隊の隊員が待ち構えているのだ。仮に此処を突破したところで、簡単には首都には到達出来ない様になっているのだ!」
「そうかい。まあ、俺には関係ないな。俺はただ打ち貫くだけだ!」
「ふん!まあ、良いさ。最も此処を通してやることは無いがな!」
バルカン・レイヴンがバルカン砲を構えて、発射してきた。俺は素早く地面を蹴ってジャンプしてその場から離れ、遮蔽物の中に身を隠す。
「さあ!戦いの始まりだ!不動悠斗!俺を、このバルカン・レイヴンを倒して見せろぉぉぉぉ!!」
バルカン・レイヴンが雄叫びを上げる。
その、雄叫びが辺りに響き渡ると共にバルカン砲の発射音が木霊する。
(さて、戦いを始めるとしますか!)
俺は遮蔽物の間を移動しながら、バルカン・レイヴンに攻撃を仕掛けるのであった。此処に、首都決戦での激戦が開始されたのだった。
悠斗sideout
セレンside
総司令部のHQで、私は悠斗の戦いの状況をモニター画面で見ている。
他のオペレーター達は忙しそうに指示を出している。私には関係ないがな。
(さて、悠斗。何時まで遊んでいるんだ?そんな雑魚など、さっさと倒してしまえ!貴様はそんな所で止まっている男では無いだろう!)
バルカン・レイヴンのバルカン砲の弾幕を回避しつつ、悠斗が接近してパンチを放つ。バルカン・レイヴンの身体がくの字に曲がるが、バルカン・レイヴンはその巨体をもって耐えた。バルカン・レイヴンはバルカン砲の砲身を振って、悠斗に反撃する。悠斗の脇腹にバルカン砲の砲身が粉々に砕け散った。
(相変わらず化物だな。バルカン砲の砲身が、体にぶつかっただけで粉々なるとわな。これで、バルカン・レイヴンは武器を失ったぞ。さあ、どう動く?)
バルカン・レイヴンが驚愕の表情を露にする。
だが、奴も戦場を生き抜いた熟練の戦士。直ぐに背中に背負っていた弾薬を破棄して、その太く大きい二の腕から繰り出されるパンチを悠斗に放つ。パンチは悠斗の顔面に直撃した。
「な?おい!ストレイド!しっかり知ろ!」
私は慌てて悠斗に無線を入れる。だが、悠斗からの返事は返って来ない。 だが、モニターを確認するとバルカン・レイヴンの方が手を押さえていた。
(ああ。そうか。悠斗が堅すぎたのか。よく考えてみれば、バルカン砲の砲身がぶつかっただけで、粉々に砕け散ったんだからな。普通に悠斗を殴ればそれだけで、相手の拳が砕けるな。ふふ。規格外な奴め)
バルカン・レイヴンが拳を押さえつつ、後ろに後退る。悠斗はただ拳を構えているだけだ。
そして、次の瞬間バルカン・レイヴンの身体が宙に舞う。悠斗の拳が視認出来ないほどの速さでバルカン・レイヴンの身体を捉える。空中でサンドバッグにされているバルカン・レイヴンの体には凄まじい速さで傷が出来てゆく。口から吐血し、血が地面を赤く染めてゆく。そして、悠斗の放った最後の一撃でバルカン・レイヴンが壁に激突した。バルカン・レイヴンが僅かに顔を上げて、悠斗に何か話している。
やがて、バルカン・レイヴンも力尽きてその生涯に幕を降ろした。奴が死んだ瞬間、辺りにいたレイヴン(大烏)が一斉に飛び立った。
私は悠斗に通信を入れる。
「ストレイド。良くやった。これで、友軍が安心してそこを突破出来る」
「そうだな。バルカン・レイヴン。奴もレイヴン(渡り鴉)だった。同じ傭兵としては、共に戦えたらさぞ良かっただろうな」
「そうか。ストレイド。だが、ifは所詮ifにしか過ぎん。つまらない事を考えるな。戦場では、余計な事を考えていると死ぬぞ。それを忘れるな」
「分かってるさ。さて、友軍の為にさっさと、他の防衛陣地を無力化しますかね」
「そうだ。それがお前に与えられた任務(ミッション)だ。それにな、悠斗・・・・・。だ」
「なんだ?シリエジオ?なんて言ったんだ?」
悠斗が首を捻る。私の言葉の続きが気になるようだ。
「さあな。さっさと任務(ミッション)を続行しろ」
「・・・・了解だ」
そう言って悠斗は通信を切る。通信をOFFにして私は背もたれに背中を預ける。
(悠斗。死ぬなよ。私が見出だした男なんだからな。愛しい人よ)
私はほんのりと笑みを浮かべつつ、モニター画面に映る悠斗を見つめているのだった。
セレンsideout
ロイside
ヤン中尉率いる傭兵部隊の俺達は、敵の防衛陣地を突破して首都の市街地での戦闘を開始していた。悠斗が戦端を切り開き、突破口を開いてからは敵は即座に防衛陣地を破棄して、市街地での戦いに戦法を変えてきたのだ。現在、首都の大通りを移動していたのだが、敵の待ち伏せにあったため近くにあった民家の壁沿いに姿を隠しつつ、突撃銃で応戦している状態だ。カニスとエイはマガジンを交換している。
「ロイ曹長!」
「なんですか!?ヤン中尉!」
「手榴弾を投げろ!敵を吹き飛ばしてやれ!」
「了解です!カニス!エイ!手榴弾を敵に投げるぞ!タイミングを合わせろ!」
「「了解(です)!」」
カニスとエイが手榴弾を取り出して安全ピンを引き抜く。俺も
手に持って安全ピンを引き抜く。敵の弾幕が一時的に途切れた。
「今だ!投げろ!」
「せい!」
「それ!」
「えい!」
で弾幕が途切れたタイミングでヤン中尉が指示する。俺達3人は一斉に手榴弾を投擲する。投げ終えて素早く身を隠す。少しして、爆発音と爆風が発生して、土煙が辺りに立ち込める。風が土煙を運んで行くと俺とヤン中尉が顔を覗かせて大通りを見ると、生きていた敵兵達により再び敵の銃撃が再開された。
「クソ!敵兵はなんて数だ!50人はくだらないぞ!」
「此方は12人しかいませんよ。此処で足止めを食らいますね」
「何とか大通りを制圧したいところだが、此方の戦力不足か。友軍か戦車が来てくれると助かるんだがな」
弾幕を展開しつつ、交互に交代しながら会話を続ける。ヤン中尉が下がり俺が前に出ようとした時だった。外を見ようとした瞬間、ドッカーンと爆発音が辺りに響き空気が震えた。俺達は慌てて伏せて爆風を回避する。直ぐに立ち上がり壁から顔を覗かせる。すると、地面に巨大な穴が開いており、煙が上がっていた。おそらく、爆発に巻き込まれたのか敵の兵士が全滅していた。
「よう。初めましてだな。大丈夫だったかい?」
「ん!誰だ!」
大通りの後ろ側から声をかけられる。俺達は銃を構えて振り替える。すると、そこには大柄の男性がバーズカを2丁肩に担いで立っていた。その隣には、渋い顔立ちの男性が立っていた。大柄の男性の後ろには、男性が率いているであろう部隊の隊員がいた。ヤン中尉が敬礼する。俺も遅れて敬礼すると、大柄の男が返礼した。
「救援感謝する。我々はドイツ軍指揮下の傭兵部隊長ヤン中尉だ」
「同隊所属の副隊長ロイ曹長であります」
「GA社所属の傭兵部隊の隊長を務める、ローディー・フィードバックだ。部下からは先生と呼ばれている」
「私はGAグループの一社である、有澤重工43代社長有澤隆文だ」
二人と挨拶を交わしていると、此方に一人の女性が走ってきた。彼女は、ローディー殿側に来る。私は彼女の姿を仰視した。緑色の美しく長い髪と圧巻な胸。そう胸の大きさが半端じゃないのだ。ヤン中尉やカニス、他の男性傭兵達も視線が釘ずけだ。
(なんてダイナマイトな淑女(レディ)だ!メイの非じゃ無いぞ!)
そんなことを考えたのが悪かったのか、次の瞬間右足に激痛が襲った。足の方を見ると、メイが思いっきり右足をかかとでグリグリと踏んでいた。俺は声を出さないように思いっきり耐えるしかなかった。
(今日は厄日だ!)
「ローディー先生!敵が前方から来ました!大部隊です!」
「うん?スマイリーか。敵の増援だな!そう来なくちゃな!」
「なに、暢気な事を言ってるんですか!早く、迎撃の準備をしないと!」
「だと、社長。雷電使えるかい?」
「任せておいて欲しい」
それだけ言って、有澤隆文社長は後ろに下がって行った。彼女が此方を向いた。
「あら、初めまして。貴方達は何処の部隊かしら?」
「ドイツ軍指揮下の傭兵部隊ロイ・ザーランド曹長だ」
「同じくドイツ軍指揮下の傭兵部隊カニスです」
「エイ・プールです」
「あ、これは失礼しました!GA社所属の傭兵部隊のメイ・グリンフィールドと申します。部隊の皆からはスマイリーって呼ばれてます!」
彼女が笑顔で挨拶すると、彼女のたわわと実った果実が激しく自己主張する。男性陣の視線が再び釘ずけになる。
次の瞬間、俺の右足を激痛が襲った。隣を見るとエイが物凄く冷たい視線を向けてくれた。
思わず全身に寒気が襲った。
(ヤバい!俺、戦争中なのに、戦争以外で死にそうだ!)
俺が周囲に視線で助けを求めるとカニスはそっぽを向き、エイの絶対零度の視線に気が付いたヤン中尉が、慌てて後ろを振り返った
「な、なんだ!?あれは!?戦車なのか?」
ヤン中尉が大声を出したので慌てて全員が振り替えると、大通りを走る姿があまりにも大きく巨大であり、遠くからでも巨大戦車と良く分かる程の、超大型戦車が接近してくる。
(いや、これは……戦車か?ドイツ軍の正規戦車の3倍以上の大きさがあるぞ!?GAの作る戦車は化物か!?)
俺達が呆然としていると、超大型戦車から外部マイクを通じて戦車内の通信が聞こえてきた。声の主は有澤隆文社長だ。
「ふん。匹夫どもが。たかだか通常の戦車12台ごときでこの、雷電の相手をするつもりか」
「社長!正面から相手をするなよ!相手の方が数が上なんだからな!」
ローディーさんが、有澤隆文社長に注意を促す。しかし、有澤隆文社長は静かに言い返した。
「正面から行かせてもらおう。それしか能が無いのでな」
キュラキュラと超大型戦車が前進してゆく。ローディーさんがため息を吐いた。
「はぁ。またかよ。たく、お前ら!援護するぞ!」
「「「「「「「「「了解!(です)」」」」」」」」
ローディーさん達も超大型戦車に続いて前進して行く。俺はヤン中尉の方を見ると超大型戦車の姿を見たせいか、唖然とした表情で立っていた。
ヤン中尉の肩を掴んで力強く揺さぶる。
「中尉!ヤン中尉!確りしてください!」
「は!?俺はいったい何をしていたんだ?」
「GAの超大型戦車を見て唖然としてたんです。どうしますか?GAの傭兵部隊は先に進軍しましたけど?どうしますか?」
「そうだな。彼等に続くぞ!全員、進軍再開だ!GAの傭兵部隊と連携して敵を叩く!進め!」
「「「「「「「「「了解!」」」」」」」」」
俺達も彼等の後を追うように続く。大通りを進軍していた大型戦車が戦車砲を発射した。
南下してきていた敵の戦車に直撃して、大爆発を起こす。
ローディー殿がバーズカ砲を発射して、戦車を仕止める。メイ・グリンフィールドもFGM-148ジャベリンを使用して、戦車を仕止める。俺達もすかさず、浮き足になっている敵兵を仕留めてゆく。すると、迂回してきた敵兵がメイ・グリンフィールドの背後の建物から出てきた。
「いかん!メイさん!後ろだ!」
「え?きゃあ!」
俺が叫ぶもメイの背後から現れた敵兵のナイフが迫る。だが、次の瞬間建物の壁が吹き飛んで敵兵の頭を吹き飛ばした。
「な、なに?何が起きたの?」
「お嬢さん。大丈夫かい?ケガは無いか?」
砂ぼこりが晴れると、そこには先行している筈の悠斗がメイに手を差し出している姿があった。
「大丈夫です。あ、あ、ありがとうございます」
「なに、気にする必要はないさ。ただ、周囲にもう少し気を配ろうね」
悠斗を見て、顔をほんのりと紅く染めているメイ。悠斗の手を取り立ち上がる。
俺、カニス、エイは悠斗の側に移動する。
「悠斗!何故、お前が此処にいるのだ?任務はどうしたのだ?」
「無線を聞けば分かるさ」
「無線?誰か、カニスはいないか?カニス!無線機を寄越せ!」
「はい!此処に!」
無線を背負ったカニスがやって来た。私は無線の電源を入れる。スピーカーから音声が流れてきた。
『こちら、猟犬部隊だ!敵の総司令部に突入し制圧した!敵の総司令官は、既に自殺していた。作戦は成功だ!首都は解放された!』
スピーカーから、勝利宣言が流れてきた。何時の間にか上空にはヘリが飛んでおり、停戦を命令していた。
「分かったか?俺は残党の処理の為に動いていたのさ。だから、此処に来たのさ」
「俺達の勝ちか。なら、残党狩りで給金アップを狙うとするか!」
「ああ。あとは残党狩りが仕事だ。追撃に移るぞカニス!ヤン中尉に通信を入れろ!敵の司令部は陥落したと。後は残党狩りに移行するとな!」
「了解だ!此方カニスです!至急ヤン中尉に連絡を!」
カニスが通信機を通してヤン中尉に連絡始めた。俺が振り替えり正面を見ると、悠斗と頬をほんのり赤く染めたメイ・グリンフィールドが話をしていた。
(ありゃ~あれはどう見ても、メイ・グリンフィールド嬢は惚れてるな。まあ、自分の窮地をあんな風に救ってくれれば惚れるよな)
「あの、助けていただいて本当にありがとうございます。お名前を教えて頂けませんか?」
「俺か?俺の名は不動悠斗だ」
「私はメイ・グリンフィールドと言います!もし、よかった電話してください!」
「分かった。ありがとうメイ・グリンフィールドさん」
悠斗は助けたメイ・グリンフィールド嬢から、電話番号を渡されていた。 歴戦の英雄は昼の戦いと夜の戦いも常勝無敗らしい。そんなことを考えながら、ふと横を見ると通信を終えたカニスが膝と手を地面に着けて、ガックリと項垂れていた。
「チクショウ!世の中顔なのか!?イケメンじゃなきゃ駄目なのか!?」
「いや、カニス!なに言ってるんだ!?落ち着け!」
「チクショウ!うわぁぁーん!」
俺は落ち込むカニスを宥めるのに、暫く時間を要するのだった。
この日この国の独裁政権は打倒され、この国は民主化を迎えるのだった。
ロイsideout
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