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Element Magic Trinity

作者:緋色の空
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激戦開幕


魔法都市フルール。
カトレーンの一族の本拠地であり、ティア達の故郷であるこの都市にナツ達はいた。
血塗れの欲望(ブラッティデザイア)とカトレーンについての情報を集める為だ。

「・・・」

そんな都市の路地に、ヴィーテルシアはいた。
金髪の三つ編みを揺らし、大きな白い襟が特徴的なノースリーブの黒いワンピースを纏った夕日色の瞳の少女へと変身したヴィーテルシアは、無言で前を見据えて足を進めていく。
カツ、カツ、とショートブーツのヒールが音を立てる。
その音が、ピタリと止まった。

「先ほどから一体何のつもりだ。気配を消しているつもりかもしれんが、足音が聞こえてるぞ」

ぴょこっとヴィーテルシアの頭から、見慣れたアイスブルーの狼の耳が飛び出す。
狼姿の時は本物の狼のように目が良くなり、耳もよくなるのだ。
ヴィーテルシアは常に狼姿であるからか、どの姿であろうと聴覚が優れるという特性を持っている。
振り返り、後ろを鋭く睨む。

「流石はティアの相棒だな」

声と同時に、ふわっと姿が現れる。
夕日色の目にその姿がハッキリと映った。

「私を付けているという事は、カトレーン側の人間という事か。街中で戦いたくはないんだが」
「いや・・・私はお前達側の人間だ」
「は?」

怪訝そうな表情になる。
妖精の尻尾(フェアリーテイル)側の人間だと言うが、見覚えがない。

「お前は、何者だ・・・?」












「撃たれてぶち抜かれてぶっ潰れてぶっ飛べっ!ライトニングショットォォォオオオッ!」

雷の魔力が込められた弾丸が飛んだ。
凄まじいスピードで飛んでいく魔法弾を放ったのは、スヴァル・ベルテイン。
愛銃エウリアレーとスバルのコンビの命中率はほぼ100%であり、容赦なく目の前に立つ敵を一掃していく。

「ふぅ・・・無駄に頑丈な奴等だなー、耐久性だけはあるみてーだった」
「そうか?私としてはもっと骨のある奴を期待したんだが」
「フン、闇ギルドなんざ魔法が使えるというだけで、他は盗賊と変わらん」
「期待するだけ無駄という事だな」

額に滲んだ汗を拭うスバルにヒルダが首を傾げ、ライアーがフィレーシアンを一振りして呟き、クロスが“飛燕の剣”を別空間へと戻す。

「お・・・お前等・・・今に見てろ・・・こんな事して、オレ等のマスターが黙ってねぇぞ・・・」
「マスター?・・・ああ、アイツか」

くいっと顎でとある先を示すクロス。
それに釣られるように、得意げに呟いていた男はそっちを向いた。
そして、クロス達にとっては勝利を意味し、男達にとっては絶望と敗北を意味する光景が目に映る。

「ガアアアアアアアアアアアッ!」
「お疲れ様、アイゼンフロウ。クロス君!マスター倒したよー!」

そこにいるのは召喚系魔法を扱うサルディアと、彼女によって召喚された黒地に銀色の模様の飛竜(ワイバーン)、アイゼンフロウ。
クラシカルロリータを着て桃色の髪をツインテールに結える少女と飛竜(ワイバーン)の組み合わせは美女と野獣という言葉そのまま。
満面の笑みで手を振るサルディアに軽く手を振り返し、クロスはにっこりと微笑んだ。
だが、その微笑みに優しさは欠片も含まれていない。

「さて・・・誰が黙ってないって?」

表面上だけ笑みを浮かべるクロスの姿はさながら悪魔のよう。
そんなクロスにこれ以上の抵抗など出来るはずもなく、男は力なく項垂れた。

「よし、俺の質問に答えろ」
「へっ・・・誰が答えるかよ・・・」
「そうか・・・」

最後の抵抗と言わんばかりに笑みを浮かべて呟く、サルディアとアイゼンフロウによって倒されたギルドマスター。
その答えに、ライアーは残念そうに俯いた。

「答えた方が、身の為だと思ったんだがな・・・」
「へ?」
「どうやら答えるつもりはないようだ、サルディア」

嫌な予感がした、と後にギルドマスターは語った。
その時、自分の目には長い黒髪を1本に結えた異国風の服を着た男と、その背後に立つ自分より一回りは年下であろう少女と黒い飛竜(ワイバーン)が見えたという。
そして―――その少女は、あくまでも優しい笑みを崩さなかったとか。

「そっかぁ・・・私としては、これ以上の怪我を負わせるつもりはないんだけど・・・答えてくれないなら、仕方ないかな。ねぇ、アイゼンフロウ?」
「グルルゥ」
「やっぱりそう思う?ごめんねアイゼンフロウ・・・“もう一仕事”、お願い出来るかな?」
「ガウッ!」
「ありがとう!それじゃあお願いね」

先ほどまで自分を恐怖へと陥れていた黒き鱗の飛竜(ワイバーン)は、大人しそうな少女の言葉に、飼い主に懐く犬のよう―――気のせいか、返事も犬っぽい―――に、素直に返事をする。
その、猛る炎のように赤い目が真っ直ぐにギルドマスターを見つめていた。

「ひっ・・・いぎっ・・・」

サルディアの言う“もう一仕事”が何を意味するか、ギルドマスターは直感で解った。
このアイゼンフロウと名付けられた飛竜(ワイバーン)が自分に危害を加えるという事は、その赤い目を見ればすぐに解る。
どこまでも主に忠実な飛竜(ワイバーン)は、容赦なくその鋭い爪を構えた。

「こ、答えますっ!答えますから・・・っ!命だけは!」

そう言うしかなかった。
今は抵抗するより命が大事だ。

「何だよ、この程度で怖気づいちまうのか?」
「随分弱い奴だ、いろんな意味で」
「まぁ仕方ないと言えば仕方ないがな。サルディア、アイゼンフロウを停止させろ」

クロスに言われ、サルディアは素直に頷く。

「アイゼンフロウ、止まって」
「グウ?」
「ほら、その人怖くてもう何も出来ないみたいだから。ありがとね、アイゼンフロウ」
「ガルアアアアッ!」

展開した魔法陣に吸い込まれていくアイゼンフロウ。
それを笑顔で手を振ってサルディアは見送る。

「さーてと・・・そろそろ本題に入ろうぜ、クロス」
「だな。お前達、血塗れの欲望(ブラッティデザイア)の本拠地や、奴等についての情報はないか?」

クロスの問いに、ヒルダによって縛られたメンバー達がざわつく。
バラム同盟の一角を担う闇ギルドの名前が挙がったのだから当然だろう。
その問いに対し、アイゼンフロウの恐怖に未だ立ち直れないギルドマスターに代わって、先ほどスバルのライトニングショットを喰らった男が口を開く。

「本拠地は知らねぇ。そもそも、バラム同盟のギルドの本拠地を知ってるギルドなんてそうそうねぇんだ。それにオレ達は血塗れの欲望(ブラッティデザイア)の傘下じゃねーしな」
「そういうものなのか・・・」
「だけど、だ」
「?」

これは予想以上に大変な事かもしれないと考えたライアーが溜息をつく。
が、それを遮るように、男が続けた。

災厄の道化(ミスフォーチュンクラウン)なら、話は別だ」
災厄の道化(ミスフォーチュンクラウン)?」
「奴等は血塗れの欲望(ブラッティデザイア)の傘下ギルドっつーか、支部って感じだ。当然本拠地は知ってるし、血塗れの欲望(ブラッティデザイア)災厄の道化(ミスフォーチュンクラウン)はセットで動いてる。当たるならまず災厄の道化(ミスフォーチュンクラウン)を当たるべきだな」
「なるほど・・・」

男の言葉に頷くクロス。
そしてライアー達に目を向けた。

「となれば災厄の道化(ミスフォーチュンクラウン)を探すのが手っ取り早いな。行くぞお前達!」
「はい!」
「うん!」
「おうよ!」
「了解!」

主の号令に返事をすると、5人は闇ギルドの建物から姿を消した。
その姿を、先ほど情報を喋った男が見つめる。

「さて・・・これだけ情報を与えれば十分ですかね」
「は?お前、何言って・・・」

突然喋り方が変わった仲間を見て、別の男が首を傾げる。

「あの人は私だけで十分だって言ってましたけど、私だって皆さんの為に何かしたいんですよ」
「お、おい、お前・・・」
「だから態々闇ギルドの人に変身して、スバルさんの魔法弾を喰らって・・・思ったより痛かったなぁ」

ぱさっと縄を解き、男は立ち上がる。
その姿がゆっくりと煙がかっていき――――――煙が晴れた時、そこに立っているのは少女だった。
キャラメルカラーのセミロングに黒いウエストコート、白いシャツに黒いフレアスカートを着て、足元は黒いショートブーツ。
その手に見慣れた手作り感満載のパッチワークのバッグはないが、代わりにその右手には血塗られたように赤黒い鍵が1本握られている。

「な、な・・・!」
「お前・・・さっきの正規ギルドの奴か・・・!?」
「違います。私はどこのギルドにも属してません。存在的には正規ギルド側ですけど」

思わず声を震わせる男達に、少女―――――メープルは微笑む。
だが、彼等は知っている。
この微笑みの裏に何があるかを。

「だけど・・・闇ギルドの存在を知って、許しておけるほどいい人じゃありません」

微笑みはそのままに、メープルはゆっくりと鍵を構える。
赤黒い事と美しい形を覗けばどこにでもありそうな鍵なのに、男達はその鍵に対して一言じゃ言えないほどの恐怖を感じていた。

「久々に召喚しますか・・・彼を」

ニタリ、と。
メープルが笑う。
先ほどまでの優しげな微笑みではなく、悪を煮詰めたような黒い笑み。

「美味しい血があるといいですね」

その呟きが、戦慄に覆われた闇ギルドに、静かに響いた――――――。













「あー・・・退屈だー・・・」
「もうすぐみんな来るよ、ナツ」

魔法都市フルール。
その宿の中にある酒場では、ナツとハッピーが大きいテーブルを陣取っていた。
酒場はそれほど混んでおらず、テーブル1つを陣取るナツとハッピーを鬱陶しげに見る客もいない。

「ナツー!ハッピー!」
「おー、ルーシィ」

最初に戻ってきたのはルーシィとエルザだった。
酒場に入ってきた2人に軽く手を振る。
2人はナツの向かいに腰掛けた。

「どうだった?」
「ダメ・・・カトレーンについては“名家”って事ぐらいしか解らなかったわ」
血塗れの欲望(ブラッティデザイア)の方は名前すら聞いた事がない人達ばかりだった。中には名を知る人もいたが、本拠地までは・・・」

ハッピーに聞かれ、ルーシィとエルザは首を横に振る。
思ったような成果は得られなかったようだ。

「そっちもダメだったの?」
「ルー!・・・あれ、グレイは?」
「道端で服脱いじゃって通りがかった女の人に不審者扱いされて現在進行形で事情聴取中だよう」
『・・・』

そこにルーが現れる。
空腹だったのだろう。その手にはメロンパンが握られている。
ルーシィの隣に腰掛けたルーははむっとメロンパンにかぶりついた。

「ったくよォ・・・気ィ付けろよな」
「うっ・・・スマネェ」

続いてアルカとグレイがやってきた。
申し訳なさそうに呟くグレイにアルカは「ま、いいけどな」と笑い、空いている椅子に座る。

「あ、グレイ解放されたんだ」
「運よくアルカが通りがかったんだよ」
「そっ♪で、何か『サインください!』って言われたから適当に名前書いといたらグレイを放ってどっか行っちまった」

どうやらグレイを不審者だと勘違い(まぁ上半身裸の男がいたら不審者だと思って当然なのだが)したのは女性だったようだ。
通りがかったのが週刊ソーサラーの彼氏にしたい魔導士ランキング上位ランカーのアルカだった為、彼のサイン1つでどうにかなったらしい。
本人は「不審者だとか言ったくせに放ってどっか行くなんてヒデェよなー」とか何とか言っているが。

「で・・・ルーシィ達の方も、ルー達の方も情報はない、と」
「うん・・・アルカは?」
「残念だがこっちもねぇよ」

アルカは肩を竦めた。
ここまで見事なまでに全滅、残るはヴィーテルシアだが――――

「・・・来ないな」
「遅いね」
「1時間後っつったはずなんだけどな・・・」

姿を見せない。
ティアの相棒であるヴィーテルシアは、彼女同様に時間はきっちり守るタイプだ。
だから遅れるなど珍しい以外の何物でもない。

「変な事に巻き込まれてるのかなー・・・グレイみたいに」
「オレみたい言うなっ」
「腹でも減ったんじゃねーの?」
「ナツじゃあるめーし」

ルーの言葉にグレイがツッコみ(でも説得力がない)、ナツの言葉にアルカが思わず苦笑する。
すると、酒場に金髪の三つ編みが揺れ現れた。

「すまない、遅れたな」
「ヴィーテルシア!」
「珍しいな・・・お前が遅れるとは」
「色々あってな」

変わらず少女の姿のヴィーテルシアは、どこか嬉しそうに椅子に腰掛ける。
その口元は綻び、夕日色の瞳は笑うように細められていて、ぴょこぴょこと少女姿にミスマッチな狼の耳が揺れた。

「どうしたんだ?随分嬉しそうじゃねーか。つか、耳」
「当然だっ!」

指摘されて気づいたのか、ヴィーテルシアはパチンと指を鳴らす。
それに反応して耳がふわりと消えた。
普段クールなヴィーテルシアがここまで嬉しそうにしているとすれば、それは7割の確率でティアに関する事であり、因みに残りの3割は昨日の夕飯が好物だったとかぐっすり眠れたとかそういう事である。




血塗れの欲望(ブラッティデザイア)についての情報を手に入れたぞっ!」




『!』

破顔一笑するヴィーテルシアの言葉に、全員が目を見開く。
そりゃヴィーテルシアもここまでニコニコする訳だ。
ティアに関わる事なのだから。

「マジかよ!?」
「マジだっ!」
「で!?どんな情報だ!?」

ナツに問われ、ヴィーテルシアはこくっと頷く。
続くようにグレイが問う。

「まず、奴等の本拠地は・・・ここだ」

どこからかフルールの地図を取り出したヴィーテルシアは、それを広げる。
地図が丸まるのを防ぐために四隅をどこからか取り出したナイフ4本で留め、ピッと一か所を指さした。

「誰かペンを持っていないか?」
「オイラ魚しか持ってないよ」
「ペンならあるぞ、ほら」
「感謝する」

顔を上げたヴィーテルシアに、アルカは黒インクのペンを差し出す。
このペンは多分、先ほど女性に頼まれサインした時に使ったのだろう。
それを受け取ったヴィーテルシアは器用に右手だけでキャップを取り、指さす場所を丸で囲む。

「ここは?」
「カトレーン所有の土地だ」
『!』

首を傾げたルーシィにヴィーテルシアが答える。
その答えに思わず全員が目を見開いた。

「この土地の西部分、街中からも見える高い塔。そこが血塗れの欲望(ブラッティデザイア)の本拠地だ」
「そういえば、確かに塔が・・・」
「闇ギルドの本拠地に見えねぇから見落としてたが・・・」

ガシガシとアルカは頭を掻く。

「バラム同盟の一角を担うようなギルドだ、きっとここ以外の拠点も持っているだろう。だが・・・今はここに集結している」

はっきりと断言するヴィーテルシア。
ルーが新しいメロンパンの袋を開けながら首を傾げる。

「何でそんなに断言出来るの?」
「簡単な事だ。奴等はカトレーン側の人間、そして今奴等側にはティアがいる。それなのにカトレーンから離れる意味がない。白昼堂々私達のギルドに現れてまで連れ帰ろうとしたティアを放っておく理由がないだろう」

血塗れの欲望(ブラッティデザイア)は闇ギルドだ。それも、バラム同盟の一角を担う程の。
そんなギルドが白昼堂々正規ギルドである妖精の尻尾(フェアリーテイル)に現れたという事は、それほどの危険を冒してでもティアを連れ帰りたかったという事。
ならばティアから離れるとは考えにくい―――ヴィーテルシアはそう考えていた。

「奴等の目的が何なのか、何故今になってシャロンはティアを連れ帰ろうとしたのかまでは解らない・・・だが、奴等があの場所にいるという事は、私達は奴等を潰さねばならないんだ。ティアを助ける為に」
「・・・だな」

頷いたのはアルカだった。
全員の視線がアルカに向く。
カトレーンを敵に回すという事は、クロスにとっては自分の家族を敵とするという事。
それと同じで、血塗れの欲望(ブラッティデザイア)を敵に回すという事は、アルカにとって両親を敵に回すという事なのだ。

「一応言っておく・・・もしオレの親父と戦う事になっても、手ェ抜く必要はねぇ。アイツは親じゃなく、闇ギルドの人間だ。そう扱ってくれて構わねぇ」
「でもっ」
「オレはアイツを親だとは認めねー・・・絶対にだ」

ルーの言葉を遮って、アルカは告げる。
漆黒の瞳に、力強く猛る紅蓮の炎を燃やして。
その目は――――――本気だった。














「妖精達が拠点に気づいた?」
「はい、シェヴルからの報告です」

キャトルの言葉に、エストは意外そうに目を見開いた。
だがその表情はすぐに消え、深い愁いが現れる。

「そうか・・・そう、なんだね」
「統帥?」
「・・・何でもないよ、キャトル」

そう言ってエストは微笑むが、キャトルは知っていた。
自分が統帥と呼び慕うこの男のこの微笑みは、心からの笑みではないと。
ただ周りを安心させるだけの、表面上の笑み。

(・・・その笑みで、安心など出来ないのだけれど)

ふぅ、と小さく溜息をつき、キャトルは顔を上げた。
エストはキャトルに背を向け、空を見上げている。
ゆっくりと紺色を帯び始めた空を見つめ、エストは呟いた。

「描けない夢など、ないと思っていたんだけどね・・・」











「ザイール」
「何でしょう、マスター」

ここは血塗れの欲望(ブラッティデザイア)の本拠地である塔。
その塔のとあるフロアに、黒装束を纏ったザイールはいた。
同じフロアでザイールの正面に立つのは、1人の青年。
黒い髪に赤い右目と金色の左目のオッドアイが特徴的な青年は、マジシャンを思わせる服装の黒マントを棚引かせた。

「妖精が感づいたようだ。手の空いているメンバー全員招集してくれ」
「招集するまでもないよ~、マスター」

コツ、コツ、とヒールが鳴る。
現れたのは、ボサボサの髪に垂れ目の背が高い女性。
その後ろから、全身緑の少女やブロンドのカーリーロングヘアの女性、左目が青で右目が赤のオッドアイの青年、栗色の髪をお団子にまとめた少女、両目を布で覆った侍のような服装の青年も現れる。

「全員ー、手はー、空いてるー、よー」

全身緑少女が呟く。
マスターと呼ばれた青年は笑みを浮かべた。

「カトレーン宅に向かってくる妖精を1人残らず排除しろ。手段は自由、殺しても構わない」

大雑把な指令。
でも、彼等にはそれだけで十分だった。




「さてさて・・・誰を潰した時が1番楽しいかねぇ♪」

災厄の道化(ミスフォーチュンクラウン)
死の人形使い(ネクロマンサー)”マミー・マン


「殲滅ー、殲滅ー、わーい」

災厄の道化(ミスフォーチュンクラウン)
太陽の殲滅者(ヒート・ブレイカー)”シオ・クリーパー


「少しは落ち着いたらどうだ、お前達は」

災厄の道化(ミスフォーチュンクラウン)
氷爆(ひょうほう)”ザイール・フォルガ


「でも興奮するのも解りますデス♪」

災厄の道化(ミスフォーチュンクラウン)
天候を司る者(ウェザー・アドミニスター)”セス・ハーティス


「全員羽毟って骨も残らねぇ状態にしてやるよ」

災厄の道化(ミスフォーチュンクラウン)
極悪なる拘束者(ヴィシャス・バインダー)”ヒジリ・ファルネス


「了解しました、出撃します」

災厄の道化(ミスフォーチュンクラウン)
宙姫(そらひめ)”ルナ・コスモス


「・・・承知」

災厄の道化(ミスフォーチュンクラウン)
紅刀(こうとう)”ムサシ




集合したのは、災厄。
7人の災厄が妖精を迎え撃つ。

血塗れの欲望(ブラッティデザイア)の手を煩わせるな。我ら災厄の道化(ミスフォーチュンクラウン)が己の全てを賭けて妖精を血祭りにあげろ!」

そう叫ぶのは、災厄の道化(ミスフォーチュンクラウン)ギルドマスター。
大罪人(クライマー)”―――――――『ジョーカー』。

災厄の道化(ミスフォーチュンクラウン)、出撃だ!」













「あらあら・・・ジョーカーったら随分張り切っているのね」

魔水晶(ラクリマ)に映る映像を眺め、血塗れの欲望(ブラッティデザイア)ギルドマスター、シグリット・イレイザーは微笑んだ。
そして、パンパンと手を叩いて乾いた音を出す。

「準備は出来ているよ、シグリット」
「ふふっ、エストは相変わらず行動が早いわね」

現れたのは、5人。




「我らと統帥にお任せあれ」

血塗れの欲望(ブラッティデザイア)暗黒の蝶(ダークネスファルファーラ)
“金牛宮”キャトル


「全員潰せばいい・・・単純な事だ」

血塗れの欲望(ブラッティデザイア)暗黒の蝶(ダークネスファルファーラ)
“磨羯宮”シェヴル


三日月曲馬団(クレセント・サーカス)、開演開始ね」

血塗れの欲望(ブラッティデザイア)暗黒の蝶(ダークネスファルファーラ)
“処女宮”フラウ


「準備完了・・・駆逐を開始する」

血塗れの欲望(ブラッティデザイア)暗黒の蝶(ダークネスファルファーラ)
“天秤宮”パラゴーネ


「必ず勝利するよ、シグリット」

血塗れの欲望(ブラッティデザイア)暗黒の蝶(ダークネスファルファーラ)リーダー
星の長(ほしのおさ)”エスト・イレイザー




「さあ・・・始めるわよ?」

シグリットが、告げた。











ついに動き出す、欲望と道化。














妖精の尻尾(フェアリーテイル)の前に、12人の魔導士が立ちはだかる――――――! 
 

 
後書き
こんにちは、緋色の空です。
今回登場した募集オリキャラはこちら。

・ムサシ(ギルド様より)

・ジョーカー(ギルド様より)

ありがとうございます!
考えてたキャラと違う点があると思いますが、ご了承ください。

募集オリキャラに異名を付けました!
魔法そのまんまなキャラから「何でこうなった?」ってキャラまで・・・。
一気にこんな大勢の異名を考えた事が無かったから大変でしたが・・・いかがでしょうか?

感想・批評、お待ちしてます。 
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