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魔法少女リリカルなのは~過去を捨て今を生きる者~

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それから
  引きニート街道まっしぐら

 
前書き
明日クソ親父が帰ってきてしまうという悲劇。
しかしついでに帰ってくる兄貴がノーゲーム・ノーライフを返してくれるという喜劇。
感情的にどっちのが大きいかなーと検討した結果、やっぱ兄貴とクソ親父両方帰ってくるからマイナスだったという最終的な悲劇。
とりあえず決定しているのは犬の世話は全て兄貴にやらせるということだけ。
やったねっ!

それではっ
 

 
たとえ一方通行であったとしても俺は美愛のことが好きだ。
だから一方的に話しかけたりする。
いつもだったらめんどくさそうな雰囲気を隠そうともせずにいたとしても会話をしてくれる。
その過程でごく自然に罵倒されたりもするけど。
それでも肉体的な暴力は・・・まあほとんどなかった。
たまにラリアットとかジャーマンスープレックスとか卍固めとかされたけど。
たまにムカついて切替(チェンジ)して構い倒したこととかあるけど。
その度に戻った時に倍返しされるんだけど。
でも俺の中でそれは友達だからできるんだと思っている。
流石の美愛も赤の他人にそんなことはしないだろう。たぶん。
仲がいいからこそ、自由にできるんだと思う。
そんな風に思っている俺は少なくとも美愛の友達として、いつもの調子でない美愛が心配だった。
だから俺はいつもどおりに美愛に話しかける。
けど、地球にきてからの美愛は生返事をするだけで一切会話を続けてこない。
この状態になったのは地球(こっち)にきてからだから、ミッドに戻れば元に戻るかもしれない。
でも、何も知らずにじっとしていることが、俺にはできなかった。
タイムリミットは今日の午後三時くらいまでだから、あとだいたい六時間。

「美愛」

俺はリビングのソファの上で体育座りをしながら戦隊ものをボーっとみている美愛に話しかける。

「んー・・・」

予想通り、適当な返事をされる。
というかスカートで体育座りはやめろと言っているだろうがアホ。

「下スパッツ履いてるからだいじょーぶー」

俺の話を聞かないくせになぜ地の文を読んでくるし。

「あのさ、慎吾に聞きたいことがあるんだけど」

ここ数日間あまり話さなかった美愛が急に話しかけてくる。

「慎吾ってさ、はやてのことが好きなの?」

丁度飲もうと思っていた牛乳を豪快に落とした。
いやいやいや、え、なに、なんでそうなった。

「何日か前に話してたじゃん。小学生の時に一目惚れして、今は同じとこで働いてるって。あ、だったらアリシアとフェイトとなのはも同じか。でもフェイトにはおにぃがいるし、なのはは・・・なのはだし、やっぱはやてかアリシアのどっちかか」

・・・いや、やっぱおかしいだろ。
なんで選択肢の中にお前の存在がないんだよ。
しかもえ、フェイトと陽龍って付き合ってたの?
なのはだけなんか適当だし。
なぜ他人の色恋沙汰には鋭いくせに自分に対しては鈍いってなんだよそれ!

「俺が好きなのはどっちでもねぇよ!俺が好きなのは・・・!」
「・・・いいか、よく聞けよ、美愛」

軽くその場の雰囲気に飲まれている気もしないが、俺は覚悟を決める。

「俺が好きなのは、」
「ただいまー」
「・・・すき、なのは・・・」

とても丁度いいタイミングで帰宅してしまった我が弟。

「あれ、兄貴と美愛さん、まだこっちいたんだ・・・って、あれー?もしかしてオレ、やっちゃった?」
「ああもしかしなくてもやっちゃっていますですよー?」
「あっはっは。じゃ、そゆことでッ!」
「逃がすかッ!」

脱兎のごとく逃げ出そうとする謙吾の首根っこを引っつかむ。
勢いづいていたこともあり見事に首のしまった謙吾は踏み潰されたカエルのような声を出す。
よし、計 画 ど う り。

「げほっ、げほっ・・・ちょ、兄貴マジゴーインすぎ。うえぇ」
「吐くならトイレいけよ?」
「心配すんのそこかよっ!てかなんでオレを引き止めたんだよ。オレいらなくね?」
「特に意味はない。あえて言うならそのまま逃がすのは癪に障るから。ほら、ぱっぱと彼女さんのとこ帰れ」
「えー、アンズとは喧嘩したしーって、あ、アンズって彼女ね。しゃーない、ミサキんとこ行くか」
「誰だ突然出てきた第二の女!?」
「別にミサキは女じゃねーし。男でもねーけど。ミサキはオレの親友。最近知り合ったんだけど趣味合いまくってさー」
「類友かよ!」

謙吾はそれだけ言ってまた家を出ていった。
もう、別に彼女さんも類友も反対しねえけど・・・けど・・・え、あれ?
さっきミサキさんのこと女じゃねーし。男でもねーけどって言った?
・・・それって所謂・・・オネェ?

「慎吾、顔キモイ」

ずっと黙ってた美愛に毒を吐かれた。
そろそろ死にそう。

『慎吾くん慎吾くん、死にそうなら変わってよー暇だよー。どーせなら僕が告白してもいーんだよー?』

なかなか声をかけてこないもうひとりの俺、輝希が言う。
これは俺の問題だから変わらねえよ。てか暇ならテ○リスしてろよ。前に切替(チェンジ)した時にテ○リス置いてあったの知ってんだからな?
口には出さず、頭の中で話しかけてくる輝希に返す。
真っ白なのか真っ黒なのかわからない世界に置いてあったゲームの山の頂上にあったテトリスは今でも簡単に思い出せる。
なんかムカついたからその山壊してパッケージの中身入れ替えたなんて事実は知らないが。

『やっぱパッケージの中身変わってたの慎吾くんのせいだったんだー、ひどーい』

知るか。ちょっと黙ってろアホ。

『口悪いぞー?年上には敬語を使わないとねー。じゃ、僕は最近増えたグリザイア○迷宮でもしよっかなー』

それダメなやつ!18歳未満はダメなやつ!
神ゲーだけど!

『僕たち一応成人してるけどねー。しょうがない、果実にしてやんよ!』

輝希はそう言ってどこからかP○Pを取り出して全年齢の果実を始めた。
・・・俺の頭の中、一体どうなってんだよ。

「とりあえず話を戻そう。俺は別になのはもフェイトもアリシアもはやても、誰も好きなんかじゃない。いや、友達としてなら全然好きだけど」
「話ややこしくなるから簡潔に。別に嫌いなんて勘違いはしないし」

怒られた。
死にはしなくても泣くかもしれない。

『うっしゃー、共通終了!誰のルート入ろっかなー、やっぱマキにゃん?それとも甘ねえ?いや、あえて由美ちゃんかなー?』

うるさい!てか進むの早くね!?
最初のプレイで流し読みダメ絶対!
そんなのはゲーマーとしてありえない行為だかんな!

「俺が好きな奴は、いつも元気で明るくて、人一倍周りの空気や友達って存在を大切にするやつなんだ。まあ、人並み外れて馬鹿だけどな」

頭に浮かんでくるのはいつも無邪気に笑って、遊んでいる姿。
学生だった頃、赤点ばっかりとって補習の前日はギリギリまで陽龍とアリシアに勉強させられて目の下に隈をつくっている姿。
陽龍が墜ちたとき、周りが暗くても自分だけは明るくいた姿。

「そ・・・れって、」

美愛は口元に手を当て、どこぞの少女漫画のようなポーズを取る。
こ、これは・・・。

「おにぃ!?男に手を出そうとするなんて・・・慎吾、恐ろしい子ッ!」
「ガラス○仮面!?てかなんで陽龍!?」
「慎吾ごめん、別に偏見を持ってるわけじゃなかったんだけど・・・でも、双子の兄を相手にされるってのは、なんか微妙な気持ちだよ・・・」
「違うから!陽龍はただの親友!それ以上でも以下でもねえよ!」

なんでこいつの思考回路は斜め横にずれるんだよ・・・。
むしろ才能だよ、それ。

「うん、やっぱ遠まわしに言うのやめるわ」

これ以上変な勘違いをされるのは困る。
身近に噂になるような男子はあと冬弥と夏希と秋良くらい?
いや、秋良には春香がいるか。
アイツら堂々としすぎて爆ぜろすらも言えない。

「ずっと俺が片思いし続けてたのは美愛、お前だよ」

俺が言うと、美愛は最初はそーかそーか、みたいな顔をしていたのに、すぐに硬直する。

「・・・えと、み、美愛さんっていうんだー」
「そこで現実逃避されると本気で傷つくんだが」

マジな告白を無かったことにされるってのは辛いんだぞ!
まあこれが初めてなんだけどな!

「なん・・・だ、そうだったんだぁ・・・」

美愛はそう言って涙を流した。

「え、ちょ、うぇい!?なんで泣く!?とりあえず目こすらない!っと、確かハンカチ・・・」

焦りながらもポケットに入れていたハンカチを取り出し、涙を拭く。

「なんで泣くんだよ・・・それほど俺が嫌いか」
「ちがっ・・・そう・・・じゃ、なくって、嬉し・・・くて・・・!」

一度そこで言葉を区切り、大きく深呼吸をする。
その間も、まだ涙はポロポロと流れていた。

「・・・わた・・・しも、慎吾のこと好き・・・だから・・・!」

いつからかはわかんないけど、何時の間にか好きだって思うようになって。
輝希のこと、みんなに言う前に本人と変わって話してる時とか、なんか凄いなって思ったりして。
ここ一週間、慎吾に好きな人がいるってわかって、凄く嫌な気持ちになって。
親友なんだから応援しなくちゃいけないってわかってるのに、玉砕すればいいのにとか考えてる自分が嫌になって。
そのせいで慎吾に心配かけてるってわかってるのに、頭の中はそんなことでいっぱいになって。

嗚咽混じりに、美愛はそう言った。
本心を隠そうともしない美愛の言葉に、俺はつい笑ってしまう。

「バカだな、ほんと」

俺も、美愛も。

「そんなの、人として当然だろーが」

美愛の頭を撫でながら言う。

「まず最初に自分のこと考えて、それから周りに迷惑にならないように行動する。それが普通の人間なんだよ。自分より他人優先するなんて、そんなのは間違ってる」

誰かの犠牲の上に成り立つ幸せなんて、本当の幸せじゃない。
みんなが心から笑えるってことが、本当の幸せなんだ。

「我侭なくらいが、丁度いいんだよ。ほら、陽龍なんて人のことは散々甘やかすっつーか、最低限しか怒らないのに自分には割と厳しいだろ?だから、陽龍の分までお前が散々甘えてればいいんだよ」

丁度双子なんだから、いい感じに役割分担をすればいい。
料理が壊滅的な美愛の代わりに陽龍の料理が旨い。
運動能力がありえない程に凄い陽龍の代わりに、美愛の運動能力は平均。
攻撃魔法とかが苦手な美愛の代わりに、陽龍がバカスカ攻撃魔法を使いまくる。
学力カンストな陽龍の代わりに、悪い方の意味で学力が飛びぬけている美愛。
自分を犠牲にしようとする陽龍の代わりに、誰かを巻き込んで楽しくあろうとする美愛。

「それ、全体的におにぃの能力の方が高いじゃん」
「妹の方が兄より優れてちゃダメだろ?これで丁度いいんだよ」

そう言うと美愛は前までのように笑う。

「ねえ慎吾、甘える相手って、慎吾でもいいの・・・?」
「? ああ、いいぞ」
「ならさ、ちょっとこっち来てお座り」
「俺はペットか」

とか言いながらもソファの上で正座をする美愛の前に座る。
え、なに、何されるの?
この状態からまさかの腕拉ぎ逆十字固めとかされちゃうの?
それともラリアットに見せかけたジャーマンスープレックス?

「ちょっとその思考回路ストップ」
「な、なんのことか・・・っ!?」

頬に手を置いてなにをするとか思っていたら何時の間にか顔が目の前にあってズームアップ!?

「ん・・・」

不思議状態はほんの数秒で終わり、顔が離れてから何があったのかがわかった。

「ファーストキスはイチゴの味とか、レモンの味とかいろいろ言われてるけど、実際のとこしょっぱかった」

それお前の涙が原因だろとか言おうにも全身が固まって動かない。

「私のハジメテをあげたんだから、覚悟しといてね、慎吾♪」

目の前の美愛はそう言って悪戯に成功した子供のように、無邪気に笑った。


それからミッドへと戻るまでの間はソファに座ってだらーっとしたり、輝希が強制 切替(チェンジ)してきて「慎吾くんはヘタレだからどんどん尻に敷いてあげてね♪」なんて言ったりと大騒ぎ。
そろそろ行くかな、と思っている矢先に数日前に会ったギャルゲーにハマった友達二人に出会い、世間話。

「え、お前らやっと付き合ったの?」
「むしろ俺ら中学上がった頃からなんで付き合ってないんだよとか思ってたからなー」
「確かに確かに。違和感とか一切ないし、むしろ・・・なんつーんだろうな」
「リア充爆発しなくていいから男だけもげろ」
「あ、それそれ」

みたいな会話だったけど。
今回はそれに美愛まで加わってさらにカオス。
ちなみに二人はこの数日間で一通り積みゲーを攻略し終え、今日は新作を買いに出てきたらしい。
どうでもいいけどお前ら大学生なんだから家こもってレポートでもなんでもしてろよ。
そう突っ込もうと思ったけど根は真面目な二人のことだから既に終わらせていそう。

「じゃ、俺らはまた仕事戻んないとだから」
「おー、頑張れよー社会人!」
「今度休みになったら俺の嫁さんみせてやんよ!恥ずかしがり屋だから画面から出てこねえけどなっ!」
「真面目に就活婚活しないと引きニート街道まっしぐらだよー!」

と、そんな会話をしてミッドへと帰った。
 
 

 
後書き
目の前にあるのは真っ赤な翼を生やした愛しい少女。
彼女は紛れもなく人間だったのに、ほんの一瞬で人間ではなくなってしまった。
数十メートル離れた屋上からみる彼女の姿はまるで天使のような神々しさがあるが、やはり生物にあるはずの温かみが感じられない。

あぁ、これで何回目だろう…。

頭の中がぐちゃぐちゃに掻き回される感覚に身を任せてあの日に戻り、そして決意する。
今度こそ守るために。
見たことのない未来を掴み取るために…。
これは神に抗う、一人の少年の物語___。
 
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