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妻の正体

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第四章

「有り得ない、それなら」
「じゃあここは」
「少し奥さんを見てみたらどうだ」
「あいつをですか」
「うん、何故食べないのをね」
「外に出て食べているかどうかですか」
 具体的にどうするのかをだ、マヤリームは社長に言った。
「探偵なり雇って」
「金は出す、若し御前が自分で確かめたいのなら有給を出すからな」
「自分で見て、ですか」
「確かめるか」
「そうですね、探偵を雇うよりも」
 こうしたことは自分で確かめたい、マヤリームはそうしたタイプなのでここはだった。
 社長にだ、自分からこう言った。
「自分で見てみます」
「そうするか」
「はい、そうします」 
 是非にだというのだ。
「ここは」
「では明日にでもな」
 社長も早速言った。
「見てみることだ」
「そうですね、それじゃあ」
 マヤリームも社長の言葉に頷いて応えた、そうしてだった。
 次の日彼は会社に行くふりをして隠れてシャラーナを見ることにした、物陰に隠れて家の玄関を見守ったが日中は何もなかった、外に出たが買いものをしてすぐに家に帰る。それで日中は何も動きはなかった。
 買いものにしても家の近くの店に行ってすぐに帰る、それだけだった。寄り道も何もせず実に平坦なものだった。
 それでだ、彼は夕方になり社長に携帯でこう言った。
「特に何も」
「おかしなことはなかったか」
「はい、男にも会っていません」
「そうだったのか」
「買いものも食いものとかですけれど」
「量はどうだった?」
「俺のだけですね」
 殆どだ、彼の分だけしか買っていなかったというのだ。
「店の試食コーナーにも」
「寄らなかったのか」
「本当にです」
 おかしなところはなかったというのだ、食べないということ以外は。
「何もなかったです」
「そうなのか」
「どういうことでしょうか」
「夜も見たらどうか」
 ここでだ、こう提案した社長だった。携帯の向こう側にいるマヤリームに。
「夜にな」
「夜ですか」
「ひょっとしたら御前が寝静まった時に何かしているかも知れないからな」
「俺がですか」
「夜の逢引とかな、あとこっそりとな」
「夜に食ったりですか」
「そういう話もあるだろう」
「ですね、夜にガツガツと」
 食べることはある、言われてみれば確かにだった。
「外に出て」
「何を食ってるかはわからないがな」
「そうですね、じゃあ夜も」
「まずは一旦家に帰ってな」
「はい、そしてですね」
「寝るふりをして奥さんの様子を見るんだ、いいな」
「わかりました」
 マヤリームは社長の提案に言葉で頷いて答えた、そうしてだった。
 そのうえでだ、何気なくを装って家に帰ってだった。それからは普通に二人で夕食を食べてシャワーを浴びて床に入った。そのうえで。
 ベッドの中で狸寝入りをしつつシャラーナ、隣で寝ている彼女を見張っていた、すると。
 そのうちにだ、夜もかなり遅くなると。 
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