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海の恐怖

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第七章

「噂以上のものじゃないからな」
「そうか」
「ああ、そうだよ」
 それ以上のものにはならないというのだ、決して。
「もっとも写真に撮っても本当かどうか議論になるだろうがな」
「こうした話の常でか」
「ああ、常でだよ」
 まさにそうなるというのだ、UMA即ち未確認動物の話の。
「そうなるけれどな」
「余計にか、写真はないと」
「まあそういうことだ、しかしな」
「しかし?何だよ」
「御前は運がいいよ」
 ここでコインブラは微笑んだ、それでこうカンターロに言ったのである。
「神様のご加護があるな」
「助かったからか」
「それもあるさ、けれどそれ以上にな」
「それ以上に?」
「恐竜に出会えたからな、運がよかったよ」
「そういう意味でもか」
「ああ、運がよかったよ」
 実にだというのだ。
「本当にな」
「そういうものか」
「ああ、狙って見られるものじゃ絶対にないからな」
 だからだというのだ。
「御前は本当に運がいいよ」
「そうなるか」
「まあまた見られるとは思わないがな」
「いや、二度と会いたくないからな」
 カンターロはコインブラに本音で返した。
「あんな怖い思いするのならな」
「まあ襲われたらそう思うよな」
「そうだよ、あんな思いはな」
 二度としたくないと言うカンターロだった。
「絶対にな」
「そうだろうな、けれどな」
「恐竜に会って助かったからか」
「御前は本当に運がいいさ、その運のよさを話して商売に使うか」
「そうするか、噂話と思われてもな」
「ああ、今以上に繁盛するからな」
 微笑んで話すコインブラだった、そして実際にカンターロはこの話を商売に使って家の仕事を繁盛させた。周りは嘘ではないかとかホラではないかとも思う人間がいたが仕事の客寄せにはなった。そうした意味でも彼は運がいいと言えるだろう。


海の恐怖   完


                               2014・1・19 
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