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機動戦士ガンダムSEED DESTINY~SAVIOUR~

作者:setuna
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desire 2 シン・アスカ

 
前書き
シン視点の番外編みたいなのです。 

 
僕はあの戦争の時、地球の中立国オーブに住んでいた。
家の近くに攻撃を受けて避難している途中、家族は流れ弾で吹き飛ばされて僕だけが生き残った。
オーブは、その理念は守り通したかもしれないけど、僕の家族は守ってはくれなかったんだ。
家族の他に身寄りのない僕はプラントに移住することになった。
オーブには…もう戻りたくなかった。
その後世界は平和条約で結ばれたけど、僕はここである道を選んだ。
それが最も僕に向いているって言われたし…他に何をやれっていうんだ。
僕はMSのパイロットになる。
勿論、なるには相当の苦労もあったし、腹の立つことも沢山あった。
それでも僕は…俺は力が欲しかった…。
だけど俺の前にはいつもレイ・ザ・バレルっていういけ好かない奴がいる。
いつも無表情で人形みたいな奴だ。
次にいけ好かないのはクレア・トワイライトっていう男女(おとこおんな)だ。
目を合わせる度にいつも俺を馬鹿にする嫌な奴。
しかも女のくせに僕だとか男みたいな喋り方をする。
ルナマリアとかいう奴は…正直どうでもいい。
レイをご褒美のために動く人形だと思っていた俺は、レイとクレアとの訓練後言い放つ。

シン「でも、あんな風に怒鳴られるなんて驚いた。てっきりご褒美のために動くだけの人形かと…」

その後、レイに殴られ、俺はレイと初めて喧嘩した。
止めようとしたクレアを俺が押し飛ばすとクレアも喧嘩に加わる。
その後、教官から評価は無しにされ居残りの掃除をさせられた。
クレアの奴が愚痴っているが、無視した。
だけど、レイの口から出た言葉に俺は驚いた。

レイ「今回の結果はリーダーである俺の責任だ。自分の力不足への苛立ちを少々ぶつけてしまったかもしれないと…反省している。良い反面教師もいたしな。勉強になった。」

クレア「ははっ!言えてる~」

シン「っ!!てめ…っ」

クレア「少しは落ち着けば~?明日のMSの模擬戦で決着つければいいんじゃないの?」

シン「ええ!?」

レイ「望むところだ。…何だシン自信がないのか?」

シン「ち、違う!!やってやるさ!!見てろよ!!」

喧嘩して話してみれば、レイもクレアも悪い奴じゃなかった。
まあ、クレアは顔を見るだけで喧嘩になることがあるから喧嘩友達みたいなのになった。
だけど、しばらくしてアカデミーでの卒業が近づいた時を境にレイが少しずつ表情が豊かになっていった。
それはレイと長い付き合いである俺やクレアにしか分からないくらいだけの変化だけど。
気になった俺はレイに尋ねた。

レイ「……俺に兄が出来た」

しばらくレイは考えるそぶりをした後、口を開いて言い放つ。

シン「は?レイの親が再婚でもしたのか?」

レイの家族について何も知らない俺は一番可能性がありそうなことを口にしたけどハズレらしい。

レイ「いや…俺には父も母もいない。唯一の肉親であった兄も前の大戦で死んだ。今は養い親の元で暮らしている。今はその人と兄、姉のような人達と暮らしている。兄も姉も家族を失い天涯孤独だったのを俺の養い親に引き取られた。」

シン「そう…なのか…なあ、レイの義理の兄貴や姉貴ってどんな人なんだ?」

レイ「…そうだな、兄は優しすぎる人だ。少し悩みやすい性格だが…。姉は…明るく優しい…。性格は…ルナマリアに近いものがあるな。」

シン「ふうん…」

家族の話をしていた時、レイは少しだけ微笑んでいた。
俺は血の繋がりがなくても家族を持つレイが少しだけ羨ましかった。









































そして俺はアカデミーを赤で卒業して、ロールアウト間近の新造艦に配属されたことは勿論嬉しかった。
でも…。

「では先日のテストの結果に基づき…各パイロットの搭乗機体を発表する。シン・アスカ、ZGMF-X56S インパルス。」

シン「え…」

俺…?

「レイ・ザ・バレル…ZGMF-1001 ザクファントム。ルナマリア・ホーク…ZGMF-1000 ザクウォーリア」

俺なんだ…。
みんなとは違う特別な機体のパイロットに選ばれたことはもっと凄く嬉しかった。




































そして俺は用意された車両に乗り込んでMS格納庫に向かった。

シン「(マユは…何て言うかな?MSなんて怖いって…嫌いだって言うかもしれない…でも、俺は…)」

俺は格納庫の中に案内されて、俺の機体がある方に向かった。
扉を通るとそこにはメイリンより少し暗い朱色の髪の女の人がいた。

ナオト「あれ?君は?」

シン「え…?」

俺は少し驚いて呆然となったけどこの人の胸元にあるFAITHのバッジに気づいて、急いで敬礼する。
FAITH…議長直属のエリート。
女の人は俺が敬礼するのを見て苦笑した。

ナオト「そんなに畏まらなくてもいいのに。あなたもGのパイロットに選ばれたの?」

シン「は、はい…あなたもってことはあなたもGのパイロットなんですか?」

ナオト「ううん、私じゃないけど私も新しい機体を受領するの。」

シン「はあ…」

FAITHのこの人じゃないならGは誰に受領されるんだろう?
赤なのは確定なんだろうけど。

アレックス「すまない。遅れてしまった。」

ナオト「遅いよアレックス」

俺が後ろを振り返ると赤服を着た藍色の髪で、俺より年上そうの人がいた。
多分先輩だろう。

アレックス「ああ、すまない。彼は?」

先輩は申し訳なさそうに笑うと俺の方を見た。
女の人も急いで俺の方を見た。

ナオト「あ、そういえば名前聞いて無かったね。私はナオト。ナオト・フジワラ」

女の人がナオトさん。
珍しい名前だな。

アレックス「アレックス・ディノだ。よろしく」

男の人はアレックスさんと言うらしい。
どちらも本当に軍人なのかと思えるくらい優しそうな容貌だ。

シン「シ、シン・アスカです」

俺も慌てて自己紹介を済ませると俺達は自分達の機体の所に向かう。

「では、まずは見てもらおうか。来たまえ」

ナオトさん、アレックスさん、俺の順で扉を潜るとライトアップされた3機のMSが立っていた。

「まずは左から…ZGMF-X56S インパルス。従来の概念を覆す斬新な換装システムを実現させたザフト最新鋭のMSだ。次にZGMF-X23S セイバー。性能は異なるが他のセカンドステージとほぼ同時期に開発された変形機構を備えた最新鋭のMS。そして最後は…ZGMF-X2000 グフイグナイテッド。元々ザクにザフトの次期主力MS選定コンペティションに負けた機体だが機体自体の完成度は高く、それを惜しんだ上層部の根強い力添えで1機だけロールアウトされることになった」

アレックス「これが…」

シン「俺のMS…!!」

「早速だが、明日からは実機訓練だ。君達には議長も期待しているとのことだから頑張りたまえ」

シン、アレックス、ナオト「「「はい!!」」」

マユ…。
この“力”があれば俺はきっと…。








































機体の受領が終わった俺はアレックスさんとナオトさんと一緒にみんながいる場所に向かった。

アレックス「そういえば、ナオトはどこに配属されるんだ?俺、何も聞かされてなくて…」

ナオト「私は最新鋭艦ミネルバに配属されることになったの」

ミネルバ?
ミネルバは俺が配属される艦じゃないか。
ということはナオトさんは俺達の隊長になるのかな?

アレックス「ナオトも?俺もミネルバに配属されることになったよ。」

アレックスさんもミネルバに?
あ、でもセイバーもインパルスと同じセカンドステージだから当たり前か。

ナオト「セイバーはセカンドステージだもんね。アレックスがミネルバに配属されるのは当たり前か。シンは?」

シン「俺も…いえ、自分もミネルバです」

危うくタメ口をきいてしまいそうになり言い直す。

ナオト「へえ、同じ艦に配属される何て凄い偶然だね。後、シン。敬語はしなくていいから」

敬語なしって…。
あなたFAITHだし先輩だし年上だからタメ口なんてきけませんて!!

シン「でも」

ナオト「じゃあFAITHの命令」

シン「…分かりました」

笑顔で言うナオトさんに俺は引き攣り笑いを浮かべて頷くしかなかった。
って、ちょっとアレックスさん。
あんた何で俺を睨むんですか!?
後ろに何かうごめいていて、すげえ怖いんですけど!?













































レイ「アレックス!!それにナオトも!!」

俺達がレイ達と合流すると、レイが嬉しそうにアレックスさんとナオトさんに駆け寄る。
知り合いなのかな?

シン「知り合いなのか?」

レイ「アレックスやナオトは俺の兄や姉のようなものだ。」

シン「へえ…」

じゃあこの人達がレイの義理の兄弟なのか。

メイリン「え?でもこの人って…」

ルナマリア「ねえ?」

メイリンとルナがアレックスさんをまじまじと見ながら呟いている。
何なんだ?
確かにメイリンもルナも面食いなところはあるけど、今回はそれとは違うようだし。

レイ「アレックス、ナオト。すみませんが先に行ってもらえませんか?」

アレックス「え?あ、ああ…」

ナオト「OK。じゃああそこの店で待っているから。」

レイの顔を見て、ナオトさんは何かを悟ったのか、アレックスさんの手を引いて、店の中に入る。
レイは辺りを見回して誰もいないことを確認する。
本当に何なんだ?
するとルナがレイに尋ねる。

ルナマリア「ねえ、あのアレックスって人…もしかしてアスラン・ザラじゃない?」

シン「え!?アスラン・ザラ!?あの人が!?」

アスラン・ザラ
前大戦で英雄と称えられたMSパイロット。
イージス、ジャスティスというMSを駆っての驚異的な戦果は、今もなお伝説として口の端にのぼる程だ。
そんな人が何で?

メイリン「アカデミーを卒業した人達を調べていた時に出た写真とそっくりだったし」

ヴィーノ「あの人、英雄なんだろ?だったら何で名前なんか変えてんだろ?」

ヨウラン「俺が知るかよ…」

ヨウラン達の会話にレイは眉間に皴を寄せながら口を開いた。

レイ「彼は確かにアスラン・ザラだ」

ルナマリア「やっぱり!!でもアスランってオーブにいるって噂で聞いたんだけど…復隊したの?」

“オーブ”という単語を聞いた瞬間、俺は少し怒りを感じたけど次のレイの言葉を聞いた時、それが吹き飛んだ。

レイ「彼は…アスランはオーブを追い出された…今のオーブの国家元首、カガリ・ユラ・アスハを敬愛するオーブの軍人達に私刑に等しい暴行を受けてな」

シン「え…!?」

アレックスさんがオーブの軍人に痛め付けられていた…!?
何で…!?
ルナ達ですらその事実に目を見開いていた。

レイ「彼が発見されたのはプラント付近でだ。偶然、議長とその護衛をしていたナオトが彼が乗せられていた救命ポッドを発見してな。救出された時の彼は生死の境をさ迷っているような状態だった」

シン「何でそんなことに…」

レイ「オーブの軍人達にとってカガリ・ユラ・アスハは神に等しい存在だ。それに近づく彼はオーブの軍人にとって邪魔以外の何者でもない」

神?アスハの奴が神!?

シン「…っ!ふざけるな!!何が神だ!!理念ばっか振り回す綺麗事が御家芸のアスハの何が神なんだ!!誰のおかげで地球が滅びなかったと思ってるんだ!!それなのに…!!」

理念や綺麗事だけの奴が神のような扱いを受けている。
俺の家族を守ってくれなかった癖に…!!
あの人がジェネシスを破壊したおかげで地球は助かったのに、恩を仇で返すなんて何を考えてんだよオーブは!?

レイ「シン…俺も同意見だ。だが、これが真実なんだ」

シン「…っ」

淡々と言うレイの言葉には深い怒りが込められていた。
俺も思わず拳を握り締める。

レイ「後、彼には記憶がない。医師が言うには一種の防衛本能らしいが…」

ヴィーノ「記憶喪失…?」

ヨウラン「無理ないよな…裏切られて一方的に殴られて、俺だったら発狂する」

ヴィーノとヨウランも深刻そうな顔で呟く。

レイ「とにかく、彼に関してはこれで終わりだ。アレックスにアスラン・ザラのことは絶対に言うな。ただでさえ彼の心は傷ついている。それでも必死に前を向いて生きようとしているんだ」

シン「………」

傷か…。
心に傷を負っているのは、俺も同じだ。
あの人と話してみたい。
レイと一緒にアレックスさん達の入っていった店に向かう。





































その後、俺達は些細な話をして、寮に帰ろうとした時、アレックスさんに止められた。
何だろう?

アレックス「今日はもう遅いし、今日は家に泊まっていかないか?」

アレックスさんの提案に俺達は顔を見合わせる。

ナオト「そうだね。」

レイ「ギルは今日は帰れませんから、いいと思います」

俺達はアレックスさん達の好意に甘えて、今日はアレックスさん達の家に泊まることになったんだけど…。









































シン「…………」

アレックスさん達の家を見た瞬間、俺は絶句してしまった。
多分それはルナ達も同じだと思う。
だってすげえ豪邸だよ!?
どう考えたって俺達不釣り合い過ぎるよ!?

ルナマリア「すっご…」

レイ「何をしている?入らないのか?」

レイに促されて、俺達も急いで屋敷に向かう。
屋敷の中は広くて、凄い豪華な装飾品もあるから何か俺達が凄い場違い感がある。
緊張し過ぎてアレックスさんが作った夕食の味が分からなかった。
















































翌日の朝。
俺は目を覚ますと見慣れない天井に少し困惑したけどアレックスさん達の屋敷に泊まったことを思い出して、身支度をしてリビングに向かうともうみんなが席についていた。
ナオトさんがテーブルに料理を並べた。
朝食は俺がオーブにいた頃、よく食べていた和食だった。

シン「これ…」

ナオト「あ、おはようシン。朝食出来てるから座って」

シン「あ、はい。」

俺がテーブルに座るとご飯に味噌汁に焼き鮭に卵焼きが並べられた。
食欲をそそる匂いに俺は思わず唾を飲んだ。

アレックス「それじゃあ食べようか」

シン「あ、はい」

俺はついオーブにいた頃の癖で手を合わせてしまった。
だけどアレックスさんやナオトさん、それにレイも俺と同じ動作をした。
ルナ達は首を傾げていたけど。

アレックス「頂きます」

シン、ナオト、レイ「「「頂きます」」」

アレックスさんに続けて言うと俺は焼き鮭を口に運んで、炊きたてのご飯を口に運び、味噌汁を飲んだ。

シン「お……美味しい……ナオトさん、これすっごく美味しいです!!」

何度も口から“美味しい”と言う言葉が漏れ出す。
違う言葉を言おうとしても、同じ言葉になってしまう。
それでもその言葉がシンの心からの言葉だから、ナオトは発言の度に微笑みを深めて行く。

ナオト「まだまだおかわりあるから、いっぱい食べてね」

プラントでは滅多に見ないしゃもじ片手に微笑むナオト。

シン「はい!!」

久しぶりの和食に舌鼓を打つシン。
どこかナオトの料理は今は亡き母親の味に似ていた。

メイリン「………」

メイリン達はナオトさんの料理を一口も食べていない。
どうしたんだろう?

ナオト「あれ?君達は食べてないね。和食は嫌い?」

ルナマリア「え?あ、そうじゃなくて…」

困ったように言うルナに俺もアレックスさん達も思わず首を傾げた。

ヨウラン「これ…どうやって使うんですかね?」

ヨウランが箸を指差しながら言う。
そういえばプラントは洋食が主だから普通は箸なんか使わないよな。

ナオト「あ、ごめんね。気がつかなくて、今、スプーンとフォーク出すから」

ナオトさんがスプーンとフォークを出しに行く。
和食にスプーンとフォークって…。
前を見れば表情からしてアレックスさんもレイも同意見らしい。
食べ終わった後、俺達はルナ達に箸の使い方を教えた。
ルナ達は四苦八苦していたけど、こればかりは慣れるしかない。











































そして俺達はMSの慣熟訓練のために訓練所に来ていた。

ナオト「これから訓練を始めるけど、真剣に取り組むように。以上」

アレックス「まずはシンからだ。セイバーに乗れ」

シン「はい!!」

シンは、セイバーのコックピット裏に急ごしらえで作られたシートに腰をかけ、がっちりと体を固定させるベルトを締めた。

アレックス「じゃあ、行くぞ」
バーニアを吹かし、セイバーを空に駆け上がらせる。
適当な高度まで機体を押し上げると、セイバーをMA形態へと変形させる。

アレックス「舌を噛みたくなかったら、喋るなよ」

その言葉が合図となり、急速に空を舞い始める。

シン「うわぁあぁぁ!!!!」

アレックスの言葉も忘れてシンは絶叫した。
凄まじいGで体が強張りながら目の前のシート越しにモニターを見た。
自分が今まで限界まで引きだしていたスピードをあっさりと越えていたのだ。
アレックスは急降下、急上昇を繰り返しながらも、時折、制動をかけてMS形態へと変形する。
何回かその動きを繰り返して地上に降り立つと、シンの目は虚ろになっていた。
シンはコックピットから降りた途端に吐き気を催した。
苦痛には耐えられても、吐き気には耐えられなかったのだ。

ナオト「吐いたらもう一度だからね」

非情とも取れるその言葉にシンは怒りさえ感じたが、先程の恐怖体験はしたくないと必死で吐き気をこらえた。

アレックス「大丈夫かシン?」

シン「…大丈夫じゃないです……」

ナオト「アレックス、少し遅すぎ。あれじゃあ訓練にならないでしょ?」

ルナマリア「あれで遅い…?」

ナオト「私がアカデミーにいた時は、これを1日中やらされていたんだけど…?下手すれば1日以上。」

ルナマリア「ええ……?」

ナオトの言葉に軽いショックを受けるルナマリアだった。

ナオト「まあ、君達は平時に入学したから無理もないよね……次はルナだよ」

ルナマリア「ええっ!!?」

ナオト「これに耐えれるようになって初めて一人前なんだよルナ。」

涙目になりながらセイバーの後部シートに座るルナマリアの姿に、シンとレイは飼い主に捨てられた子猫の姿を思い出した。

ルナマリア「キャアアアアア!!!!」








































3人の名誉の為に言っておくが、エースパイロットとして名を馳せたアレックスとナオトの機動は異常である。
2人は手を抜くという言葉を知らない。
訓練を終え、3人はボロ切れのように横たわった。

ナオト「一応君達、赤だよね?何でこんな初歩でボロ切れのようになるの?」

シン「初歩って…これも充分訓練ですよ……」

アレックス「そうか?」

ルナマリア「…ナオトさんの時のアカデミーってどんなことをしていたんですか?」

ナオト「えっと…廃棄コロニーで敵軍基地を仮定とした潜入訓練とか……そういえば、環境調査コロニーを借り切った砂漠演習は一番きつかったね。」

環境調節の完璧なプラントで生まれ育った彼らには体力を奪っていく容赦ない灼熱の太陽、夜になると急に冷え込む寒暖の差には参った。
二度とやりたくはないが、今思い返せば中々いい経験だとも思う。
あの頃を懐かしく振り返っていると、呆然とした視線が突き刺さる。

ルナマリア「私達、そんな無謀なことしませんでしたよ」

シン「潜入訓練とかはバーチャル体験でしたし」

ナオト「そうなの?まあ、あの当時のアカデミーは半年で卒業だったのに、今は2年だしね。駆け抜けるように過ぎていったから、あれぐらいじゃないとものにはならなかっただろうね」

シン「ナオトさん達はアカデミーをたった半年で卒業…?」

自分達とは比べものにならないくらいの早さで卒業した先輩達に驚きを隠せないシン。
けど同時にアレックスやナオトの強さにも納得した。
それぐらいこなせなければ、生き残れないんだと言うことも。

シン「訓練、お願いします!!」

ナオト「お?やる気だね?訓練続行!!」

そして最初はついていくのがやっとだったが、最終的には軽々とメニューをこなせるようになるくらいにまでシン達は成長した。






































そして最新鋭艦ミネルバの進水式の前日。

シン「………」

アレックス「ここにいたのか。どうした?シン」

シン「いえ、ミネルバを見てきたんです。」

アレックス「ミネルバを?」

シン「はい。あんなに沢山の人がこの艦に期待してるのを見て、俺達の働きが少しでも平和のためになるなら…」

アレックス「そうだな…ミネルバはプラントの人達の願いが込められた艦だ。その乗組員に選ばれたからには頑張らないとな…お前ももう一人前だ。いつかはお前も人の上に立つこともあるだろう」

シン「そ、そうですか?」

アレックス「ああ、ただこれだけは覚えておいて欲しい。力を持つならその力を自覚するんだ」

シン「え?」

アレックス「力を手にしたその時、俺達は誰かを泣かせる者となってしまう。それを忘れて勝手な理屈と正義で、ただ闇雲に力を振るえば、それはただの破壊者だ。お前は強い。それを忘れるなよ」

シン「…はい」

アレックス「さあ、行こう。屋敷でナオト達がご馳走を作って待っているからな。」

シン「はい!!あ、でもアレックスさん。青魚が料理に入ってたらどうするんですか?」

アレックス「え?だ、大丈夫だろう。流石にパーティーに青魚は…」

シン「分かりませんよナオトさんだし…」

アレックス「…ああ、そうだな。ナオトだし……。」


















































ナオト「クシュン!!」

ルナマリア「あれ?ナオトさん風邪ですか?」

ナオト「え~?そんなんじゃないと思うんだけど…」 
 

 
後書き
基本シン視点で本編が始まる前の話です。 
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