ドリトル先生と京都の狐
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第六幕その一
第六幕 お薬を作って
先生達は霊薬の素を全て手に入れました、それからすぐにでした。
長老の縮地法で母娘のお家に行きました、すると娘狐が先生達に笑顔で尋ねてきました。
「まさかと思いますけれど」
「はい、そのまさかです」
先生はその狐に笑顔で答えました。
「後は作るだけです」
「そうですか、有り難うございます」
「すぐに出来るからのう」
長老も先生に穏やかな笑顔で応えます。
「待っておいてくれな」
「そのお薬を飲めばですね」
「すぐに治る」
お母さん狐の結核は、というのです。
「では待ってくれ」
「わかりました、それでは」
こうしてです、先生達は狐のお家の台所に入りました。そのうえですぐに霊薬の素を全て細かく刻んでからすり潰して混ぜていきました。
お薬は順調に出来ていきます、先生のその見事な手際を横から見てです。
先生は目を瞬かせてです、こう言うのでした。
「先生は薬の調合も出来るのじゃな」
「はい、そうなんです」
先生は素を混ぜて潰していってお薬を作りながら答えました。
「こうして」
「そうか、薬剤師でもあるのか」
「そちらの資格も持っています」
そうだというのです。
「医師と獣医とそれと」
「三つも持っておるのじゃな」
「そうなんです」
「凄いのう。しかしじゃ」
「しかし?」
「そんな先生がイギリスでは貧乏だったのか」
そこまで色々な資格と腕を持っていて尚且つとても素晴らしい人だというのです。先生が生活に困っていたことが長老にとっては不思議だったのです。
それで、です。首を傾げさせて言うのでした。
「そこがわからぬ」
「ああ、それはですね」
「先生は世間のことに疎いですから」
「病院の中に鰐がいたりでしたから」
「それでなんです」
ここで動物達が長老にお話してきました、ここでも先生と一緒にいるのです。それでトミーと一緒に先生のアシスタントをしているのです。
「患者さんが怖がって」
「それで誰も寄りつかなくなったんですよ」
「妹さんも呆れてお嫁に行っちゃいましたし」
「それでなんですよ」
「イギリスじゃ先生ずっと貧乏だったんです」
「宣伝もしませんし」
「宣伝もねえ」
このことについてはです、先生は微妙なお顔で言いました。
「僕はそういうのが苦手だからね」
「そうそう、だからね」
「先生って世渡りとか知らないからね」
下手なのではありません、知らないのです。先生はそうしたことには本当に造詣がありません。とてもいい人なのですが。
「それでなんだよね」
「いつも貧乏だったんだよね」
「患者さんが来てくれなくてね」
「それでなんだよね」
「ふむ。事情はわかった」
長老も先生がイギリスでどうして経済的に困っていたのかがわかりました。そういうことならというのです。
「それならな」
「おわかりですよね、先生が困っていた理由が」
「そういうことなんですよ」
「先生って本当に世の中のこと知らなくて」
「家事も全然出来ないんです」
「それは困るのう」
長老は動物達の言葉にしみじみとして述べました。
「しかし日本では大学教授になってじゃな」
「収入は安定しています」
先生から長老に答えました。
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