少年少女の戦極時代Ⅱ
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オーバーロード編/再
第41話 援軍
『まずは話し合いだろ!』
『馬鹿馬鹿しい!! 言葉などでお互いが分かり合えるわけない! 俺と貴様がいい例だ!』
鎧武とバロンは、ヘルヘイムの遺跡で声を張り合っていた。
『俺たちのケンカと一緒にするなよ! 人類の未来が懸かってんだぞ!?』
『そんなこと! 俺には関係ない』
『関係あるだろ! 人類だぞ人類! ザックやペコだって含まれてんだぞ!』
戒斗が、ぎり、と歯を食い縛った音が聴こえた気がした。
『――やはり貴様は目障りだ。ここで引導を渡すべきかも……なッ!!』
バロンが弓を振り被り、鎧武に斬りつけようとした。
『そのケンカ、すと~~っぷ!!』
だが、バロンと鎧武の間に、赤と緑の影が落ちてきて、弓の一撃を代わりに受けた。
『貴様……!』
『咲ちゃん!』
影は、チューリップホッパーに乗った月花だった。
月花はチューリップホッパーから飛び降り、両者の間に立った。バロンが弓を引き間合いを開ける。鎧武は立ち上がった。
『戒斗くん! 何でこんな大事な場面でナカマワレなんかしてるの!』
『そいつなど仲間でも何でもない!』
『ウソ! 前いっしょにいたの知ってるんだから!』
『っ――貴様も大概、小うるさい――!!』
バロンがソニックアローを番え、月花に向けて放った。鎧武はすぐさま月花の前に出て、大橙丸と無双セイバーを交差させて受け止めた。
『いい加減にしろよ、てめえ……!』
百歩譲って自分に対する敵意ならいい。だがそれを室井咲に向けるのは許せない。例え駆紋戒斗であっても。
しばらくは睨み合った。先に変身を解いたのは戒斗のほうだった。
「貴様らは今は『邪魔者』だが、いずれ『敵』になるかもしれないな」
射殺さんばかりのまなざし。月花は竦んだが、鎧武は戒斗を強く見返した。
時間にすれば一瞬だっただろう。戒斗は鎧武たちから視線を外し、遺跡から出て行った。
紘汰は変身を解いて溜息をついた。初めて会った日から、きっと戒斗とはとことんやり合う仲になると思ったが、ここまでになるとは。
「ごめん」
下から小さく高い声。咲も変身を解いていた。
「光実くんがケガしたって聞いて。紘汰くん、一人になっちゃってたらタイヘンだと思って……」
紘汰を純粋に案じて駆けつけてくれた。嬉しくないわけがない。紘汰は咲の頭に手を置いた。
「ありがとな」
咲は驚いた顔で紘汰を見上げたが、すぐ笑顔を浮かべた。
「うんっ」
「よっし! じゃあ改めてあの赤いの探すか」
「おーっ。あ、じゃあちょっと待って」
「?」
咲はロックビークルに戻していたチューリップホッパーを再び展開し、それによじ登った。咲は上の座席で何かを操作している。
「何してんだ~?」
「レーダーに引っかからないかなって思ったんだけど……だめだ。この辺、反応ゼロ」
よっと、と咲がチューリップホッパーから飛び降り、それをロックビークルに戻した。
「しゃーない。地道に歩いて探すか」
「ジミチ、ジミチ~」
紘汰と咲は遺跡を出て“森”を歩き始めた。
「ところでさ、よく分かったな。ミッチがケガしたって」
「ん~、正確にはヘキサに連絡が行って、ダンススクールにいたからあたしも近くにいて、そんでヘキサは光実くん、あたしは紘汰くんのとこに行こうってヤクワリブンタンしたの」
待て、と頭の奥が警鐘を鳴らす。咲の話はどこかがおかしい。
(そもそも俺たち以外の『誰』がミッチのケガのことを知って、ヘキサちゃんに連絡できたんだ? ここ、ケータイなんて通じねえし、ミッチが自力で“森”を出た? いや、それなら俺に一言言ってくはずだ。じゃあやっぱり誰かが。戒斗、はありえねえから、まさかユグドラシルに……味方がいる?)
きゅう。
可愛らしい音が上がって、紘汰の思考は中断された。
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