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帰る場所

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第五章


第五章

「だからだ。君に譲ろう」
「そうして頂けるのですか」
「そうだ。どうするのだ」
「いえ、そういう訳にはいきません」
 李は誇りを出した。武闘家としての誇りだ。
 それ故にだ。彼は劉に言ったのである。
「優勝したのは二人です。ですから」
「賞金を一人占めにすることはか」
「それはできません。ですから」
「そうか。そう言うのだな」
「はい、賞金は半分です」
 それでいいというのだ。このことを言ってからだ。
 そのうえでだ。彼は劉にこうも述べた。
「しかし次はです」
「次はだね」
「俺は一人で優勝します」
 今回の様にだ。二人ではなくだというのだ。
 このことを述べてからだ。彼は賞金を半分受け取りだ。そうしてだ。
 故郷に帰ろうとする。しかしここでだった。
 多くの者が彼の周りに集まりだ。こう誘いをかけてきたのだった。
「どうだろうか。我が大学の体育学部の教授に」
「いや、我が寺の師範に」
「道場に入ってくれるだろうか」
「是非来てくれ」
「どうか」
 こうだ。彼に誘いをかけてきたのだ。だがその言葉にだ。
 彼は落ち着いてだ。こう述べたのである。
「いえ、俺はまずは帰ります」
「帰る?何処に」
「何処にだというのだ?」
「俺の家に帰ります」
 そうするというのだった。そしてだ。
 周りの誘いを後にしてだ。彼の家、河南省のそこに戻った。そしてだ。
 家に入るとだ。笑顔で妻と娘に言ったのだった。
「只今」
「あなたお帰りなさい」
「お父さん優勝したんだって?」
「そうだよ。お父さん優勝したよ」
 まさにそうだとだ。李は白娘に笑顔で述べた。
 そしてそのうえでだ。彼女にこう言ったのである。
「賞金貰ってきたからよ。だからこのお金で」
「私の服買ってくれるのね」
「好きなもの買ってやるからな」
 屈み娘の頭を撫でながら笑顔で言う。
「さあ、今度の休み服屋さんに行くか」
「それじゃあお休みの時にね」
「行こうな、それにな」
 妻のだ。明花も見てだ。彼女にも声をかけた。
「留守の間有り難うな」
「御帰り為さい」
 明花は微笑みまた述べた。そうしてだ。
 彼女はだ。夫にこう言ったのだった。
「頑張ってきたのね」
「それじゃあこれからも」
「ここでずっとね」
「一緒にいような。三人で」
「そうしましょう」
「私このお家大好き」
 白娘も笑顔でだ。父に言ってきた。
「このお家でないと何か落ち着かないの」
「そうか。じゃあお父さんもずっとここにいるからな」
「だってここ私達の村だから」
 白娘がこの家にいたいと思う理由はそこにあった。そのことを話してからだ。
 明花もだ。こう言うのだった。
「じゃあこれからもこの村でずっとね」
「暮らしていこうな」
 李は妻にも述べてだった。そのうえでだ。
 彼はだ。こうも言った。
「それじゃあね」
「ええ、お料理ね」
「作ってくれるか」
「わかったわ。じゃあ何にするの?」
「豚肉がいいな」
 笑顔でだ。彼の好物を話に出した。
「それを炒めて」
「わかったわ。じゃあ早速作るから」
「家が一番だよ」
 これが李の言うことだった。
「落ち着くよ」
 こう笑顔で言ってだった。彼は家族と共にその料理を楽しむ。そしてそれからもだ。嘉族と共にこの村で暮らした。平凡な農夫として穏やかに過ごしたのである。


帰る場所   完


                    2011・12・27
 
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