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少年と女神の物語

作者:biwanosin
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第六十話

「そんなことが起ころうとしているのですか・・・」
「ああ。そう言うわけだから、アテは十分に気をつけてくれ」

 俺は夕食の場で今日知ったことを話していた。

「にしても、ねえ・・・確かに、教主さんはそう言うの許しそうにないけど」
「だからって普通、直接日本まで来る?」

 崎姉とマリーの言葉はもっともなのだが、

「あの人は理不尽だし、滅茶苦茶だからな。何をしてもおかしくない」
「自身満々に言うのだな。その自身はどこから来るんだい?」
「一回手合わせした経験から。会話が通じてるのか通じてないのか、怪しい人だったな」

 その言葉に、ナーシャは驚いたような表情になる。
 そこまで驚くことか・・・?

「武双君は、教主と手合わせした経験があるのか?」
「・・・知らなかったのか?魔術側の業界ではそこそこに有名なことのはずだけど」
「ボクは基本、そういったことは知らされなかったからな。あの時も、最低限名前くらいしか知らされていなかった」

 ナーシャが言うあの時、というのはシヴァ退治の際のことだろう。
 ふぅん、あの場に同席させたのに、最低限しか知らせてない・・・なんかひっかかるな。

「まあ、俺はアイーシャ以外のカンピオーネ全員と戦って、勝ってるんだよ」
「・・・なあ、武双君は本当に無茶苦茶なんだな。いっそ、その神様とも戦ってきたらどうだい?」
「やだよ、二連戦なんて面倒くさい」

 心の底からそう言いながら、一気に夕食を平らげる。

「さて・・・で、どう?何か新しく分かったこととかってある?」
「私のほうは、特にないかな~。一個分かったけど、今更なことだし。氷柱ちゃんは?」
「私も特にないわ。一個分かっただけよ」

 俺の問いかけに対して、立夏と氷柱はそう返した。
 二人ともが、一個新たに何かを掴んだのか・・・気になる、な。

「じゃあ、教えてくれ。この地震の原因について、新しく分かったこと」

 そう、俺は二人にこの地震について何か分からないか、霊視をえられないか聞いていたのだ。
 俺の予想では、この地震は神によるもの。だとすれば、いつ日本がぶっ壊れるか分かったもんじゃない。
 だから、こうして調べてもらっていたのだ。

「私がわかったのは、蛇。だからあんまり重要な情報じゃないんだよね~」
「あ、私も。蛇とか、龍とかが霊視できたわ」
「蛇、か・・・パロロコンから考えても、蛇と地震は関連深い存在だからな。あまり特定が出来る情報ではないか」

 リズ姉のいうとおり、蛇くらいは当然のように連想していた事柄だ。
 まあ、あの話を聞いた後だとあんまり嬉しいことじゃないんだけど。

「となると、どうにか居場所を特定して戦いに行くしかない、か・・・封印が解ける原因にもなりそうだし」
「確かにそうねぇ・・・じゃあ武双君、今度の三連休に私と一緒にその神様がどこにいるのか、捜しに行かない?」

 林姉からそんな提案をされてその瞬間に二名ほどが反論をする。

「ストップ!その役目は私でもいいと思う!」
「むしろ、依林姉様一人で行くんじゃなくて、何人かで行くべきだと思う」

 まあ、俺も立夏と氷柱に賛成だ。
 どんな神様なのか分からない以上、少人数での行動は好ましくない。
 でも、多分二人にしたのには理由があるんだよな・・・

「でも、私のバイクに何人も乗るわけには行かないじゃない?」
「ああ、やっぱりそう言うこと」

 その返答は、俺の予想通りのものだった。

「・・・なんでバイク?飛翔の術でも跳躍の術でもいいじゃん」
「いや、それは目立つ。今回はどこに神が顕現してるかわからない分、日本中を回ることになりかねないからな。そう考えると、一目のあるところを移動する際のことを考えても、何か乗り物があったほうがいいだろう」

 リズ姉の言葉に、二人は納得したようで座る。
 他にも何人か不満そうな顔をしていたのだが、そいつらも納得したようだ。
 さて、林姉とか・・・色々と不安だな・・・



◇◆◇◆◇



「と、いうわけでこの三連休で地震の原因と見られる神を捜して、ちょっと戦ってきます」
「そうですか・・・やはり、この地震は神が原因なのですね」

 俺が生徒会の集まりの後、副会長が帰ってから再び集まったメンバーに三連休のことを話すと、会長がそう返してきた。

「まあ、立夏と氷柱も霊視をしていますし、祐理も霊視はえてるみたいですからね。間違いないでしょう」
「確かに、それなら間違いないですね」

 副会長がそう同意してくれたところで、話を本題に移す。

「なので、何かあったらすぐに対処できるようにしておいてください・・・って、委員会の方に連絡してもらえますか?どこで暴れるか、まだ全く分からないので」
「分かりました。・・・ただ、いくつかお願いを」
「なんでしょう?」

 俺は、真剣な様子で行ってきた言葉に対してそう返した。
 何かあったのかな・・・?

「まず一つ目に、西天宮の神を必要以上に刺激しないでください。ただでさえ、今度見学なんてされるんですから」
「あー・・・まあ、努力します」

 実際には、翠蓮がたたき起こしに行くんだけど・・・まあ、わざわざ言っても変わらないか。

「次に、あなたの異名・・・あれを広めたりするような真似は、絶対にしないでください。修復が難しすぎますから」
「異名?」

 あれ?俺にそんなものあったっけ?
 全然心当たりがないな・・・

「あのぅ・・・会計さんは、自分に付けられた異名を知らないのですか?」
「ええ、知りません。なので教えていただけませんか、庶務さん?」
「え、あの、その・・・これって、言ってしまってもいいんでしょうか・・・?」

 俺の問いかけで何か困ることがあるのか、周りに聞いている。
 何故だ・・・?

「何を悩んでいる?別に気にすることじゃないだろう」
「で、でも・・・自分が自分の知らないところでどう呼ばれてるかとか、話しづらいじゃないですかぁ」

 ああ・・・そう言うことか。

「気にするな。会計さんはそんな人じゃない。それくらいは分かっているだろう?」
「それはまあ、そうですけど・・・」
「あの・・・いいづらいなら、わざわざ言わなくてもいいですよ?」

 俺は、ついそういったのだが・・・

「い、いえ。言わせていただきます。・・・雷撃の王、です。他にも、天災の王、というのも、少数ですけど・・・あります」
「・・・え?」

 そういう類の呼び名!?

「ちなみに、原因としては出雲大社を破壊したこと、ゼウスの権能の完全開放があります。一番の原因は出雲大社ですが」
「あそこを雷で破壊したのがよっぽどありえないことだったらしくて、そう呼ばれるようになったんです」
「それで、ですね・・・出来ることなら、破壊とかはなしで終わらせていただけたら、と・・・」

 なるほどなぁ・・・まあ、切実な願いだよなぁ・・・

「分かりました。出来る限り、頑張りたいと思います」
「いざとなったら、遠慮なく破壊してくださいね。本来、神を殺していただければ私達に何も文句を言う権利などないのですから」

 ・・・そういわれると、どうにもぶっ壊してしまいそうになる。

「あ、そうだ。えっと・・・これ、お二人の衣装です。一度着てみて、きつかったりしたら言ってください。(りん)が直しますから」

 そう言いながら庶務さんが今になって思い出して取り出したのは、文化祭の劇で着る衣装。
 題目は『ロミオとジュリエット』に決まり、俺がロミオ役だ。
 有志の人たちも参加するのだが、さすがにメインキャラを生徒会がやらないわけには行かない、という理由で俺がロミオ役になった。

 ちなみに、ジュリエットは会長がやることになっている。
 書記さんとの壮絶なじゃんけんがあったんだけど・・・まあ、それについては特にいわない。
 なんであそこまで本気のじゃんけんだったのか、よく分からないけど。

「さて・・・では、これで解散としましょう。衣装については今度学校に来るまでに私と副会長は試着、会計さんはこの三連休で全部終わったら、あわせてきてください」
「「「はい、会長」」」

 そして、その日の生徒会は終わり、解散となった。
 
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