ドリトル先生と京都の狐
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。
ページ下へ移動
第五幕その四
「その素は薬を作り終えてからわしが大天狗に返しておく」
「そうしてくれますか」
「うむ、だからな」
それでだというのです。
「後のことの心配はむ様じゃ」
「すいません、何もかも手伝って頂いて」
「礼はよい、むしろ礼を言うのはわしの方じゃ」
「長老さんがですか。それはまたどうして」
「どうしてもこうしてもない、一族の者を助けてもらって礼を言わぬ筈がない」
長老は微笑んで先生に答えます。
「そういうことじゃよ」
「そうですか」
「ではな、今度は大江山じゃ」
「はい、では」
「また来るのじゃ」
大天狗はその赤い怖いお顔を綻ばせて先生に言いました。
「よいな」
「この山にですね」
「そうじゃ、来るのじゃ」
そうしてくれというのです。
「わし等をはじめて見て全く動じぬその心が気に入ったわ」
「それでは」
「うむ、また京都に来た時はな」
「色々とおもてなしをしますよ」
「山の幸を一杯用意していますからね」
烏天狗達もここで言ってきます、ここは山なので山の幸は一杯あるというのです。
「今度来られた時は」
「事前にご連絡下さい」
「先生よかったですね」
トミーは烏天狗達の言葉を聞いて先生に顔を向けて言いました。
「天狗さん達にも気に入ってもらいましたね」
「そうだね、どうしてかよくわからないけれど」
「先生は誰からも好かれますよ」
これも先生の人徳です、先生の性格はとてもいいので誰からもそれこそ天狗さん達からも好きになってもらえるのです。
トミーは先生と長い間一緒にいるからそのことをよく知っています、それで言うのです。
「いい人達なら」
「有り難いね、そのことは」
「そうですよね、本当に」
「さて、それではじゃ」
ここで長老が皆にまた言ってきました。
「別れ挨拶も済んだしな」
「はい、次の場所ですね」
「そこに行きますね」
「そうじゃ、次は大江山じゃ」
そこに行くというのです。
「ではよいな」
「わかりました、それでは」
「今から」
皆で長老のお言葉に応えてです、そのうえで。
天狗の人達と最後の別れの挨拶をして鞍馬山から縮地法で大江山に入りました。その大江山に来るとすぐにでした。
長老がです、こう皆に言ってきました。
「ここの酒呑童子の館の跡地にな」
「霊薬の素があるんですね」
「そこに」
「そうじゃ、そこにあるからな」
だからだというのです。
「そこに行くぞ」
「はい、わかりました」
「それでは」
「ここからすぐに上に登っていくとな」
そこにというのです。
「館の跡地があるぞ」
「それで今回の霊薬の素はどんなのですか?」
ガブガブが長老にそのことを尋ねました。
ページ上へ戻る