少年少女の戦極時代Ⅱ
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オーバーロード編
第32話 軋みゆく
そして告知の準備が整ったその日。西のステージを使って、集会が開かれた。
チーム鎧武を中心に、チームバロンからザックとペコ、リトルスターマインは咲、ヘキサ、ナッツ、チューやんで。さらにインヴィット、蒼天、レイドワイルドが集会に協力を申し出てくれた。
スタンドマイクを通した舞の声が、他の者たちのメガホンからの声が、道行く人々に呼びかける。
宣言開始予定時刻前には、それなりの群衆がステージの前に出来上がっていた。
「咲~」
ステージ左寄りにいた咲を、反対側の舞台袖からナッツとチューやんが手招いている。咲は舞台袖に降りた。
「なに?」
「あたしの見間違いかもだけど、いちおー言っといたほうがいいと思うから言うね」
ナッツが内緒話の体勢。こういう時のナッツの観察は外れない。咲は耳を寄せた。
「ヘキサのお兄さん、わりと後ろのほうにいるじゃん」
「うん。一番うまくセツメイできそうなのに、前に出ないのかな」
「――ぶっちゃけ、目がイッちゃってる。今からひとアバレしてやるって感じのハンザイシャ的な目」
「……集会に、反対」
「――マジ?」
ナッツもチューやんも大きく肯いた。
咲は光実を改めて見やった。咲の目にはいつも通りの光実に見える。だが、ナッツが言うならそれは99%当たることを、今日までの付き合いで知ってもいるのだ。
(どうしよう。もう始まっちゃうよ。今にも舞さん話し始めますってふいんきだよ。ああ、ええっと、も~!)
「チューやん。光実くんがヘンなことしようとしたら、いっしょに止めて。ナッツはこのことヘキサにも教えてきて」
「あいよ」
「……らじゃ」
ナッツが舞の後ろを横切って反対側のステージ袖に駆け込んだ。慌ただしいステージ上では誰も気にしない。
マイクのノイズ。それを合図にしたように、舞が語り始める。
《皆さん、聞いてください。沢芽市は危険に曝されています》
愛らしく、それでいてよく通る声は、人々の耳を傾けさせるには充分な威力があった。
《これからこの街に起きていることを説明しますので、足を停めて聞いてください》
反対側の袖に入ったナッツからOKサインが出た。ヘキサにも話が伝わったということだ。咲は同じくOKサインを返し、チューやんと厳しく肯き合った。
(おねがい、光実くん。はやまらないで)
ザックたちが、この日のために作ったビラを配るためにステージを降りた時だった。光実が動いたのは。
「! チューやん!」
咲とチューやんは舞台袖から飛び出し、一目散に光実めがけて駆けた。
光実も気づいたが、遅い。ガタイだけなら光実より大きいチューやんが光実を羽交い絞めにし、咲は光実の左手首を掴んで表に出した。
光実の手には、多くの低ランクロックシードが握られていた。
後書き
皆さんご存知、例のミッチがやらかした回パート……もう数えきれねえ!orz お前何回やらかす気だよミッチ!
原作でのこの回のミッチは本当に背筋ぞわぞわしながら観ました。
そしてインベス召喚自体は阻止した咲。ですが……というところで次回!
こぼれ話。
チューやんが背が高い男子だという点は第一部番外編でしか書かなかったので、驚きの方もいらっしゃるかもしれませんが、いるんですよ。本当に。小学生なのにすんごいでかい男子。作者の小学生時代にまさにそんな男子が友達にいたんです。
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