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ラーメン馬鹿

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第六章


第六章

「さあどちらでしょうか」
 自分も食べていたアナウンサーがここで言った。
「誰が勝つのか。それは」
「だから俺達だって言ってるだろうが」
「おいどん達ばい」
 やはりどちらもこの状況でもそれぞれの勝利を信じて疑ってはいなかった。
「俺達の北海道ラーメンこそが」
「おいどん達の九州ラーメンが」
 そんな調子だった。そして今。その判定が下された。
「九州!」
 委員長は右手を高々と掲げて宣言した。
「九州ラーメン桜島!」
「当たり前ばい!」
「うち等のラーメンは無敵とね!」
 二人はその言葉を聞いて思いきり力瘤を作るのだった。
「それでこれは当然の結果とね」
「それでも誇らしいことは誇らしいとね」
「多くは言わない!」
 委員長はここでも己の美学を徹底させていた。
「最高の味だった!以上!」
「そうか、最高の味か」
「そうなのね」
 そして光も舞もそれだけでわかったのだった。
「なら俺達はその最高の味を超えてみせる」
「今度こそね」
「またおいどん達に勝負と挑むとね?」
「そげんつもりとね」
「ああ、そうさ」
「やってやるわよ」
 光達も勝負に負けたとはとても思えない堂々とした調子であった。
「今度戦う時は」
「私達の勝利だからね」
「おいどん等は最強たい」
「その最強ばラーメンは常に進化するとね」
 二人はその挑戦の言葉を正面から受けてそれぞれ言うのであった。
「そげんこったから」
「何時でも誰の挑戦でも受けるとな」
「そうだ、そうあるべきなのだ」
 また委員長が言い出すのだった。
「それこそが最強!それこそが最高!」
「そうなんですか」
「料理とは何ぞや!」
 アナウンサーの言葉を聞いてはいないが勝手に宣言を続けるのだった。
「それは進化すること!」
 またこんなことを言うのだった。
「進化しさらなる上を目指す!それが料理だ!」
「ラーメンもなのですね」
「そうだ。ラーメンもまた然り」
 老人は遥か彼方を見据えつつ述べた。
「だからだ。さらに上を目指しそこに突き進むのだ」
「そういうものですか」
「見よ!」
 今度は天を指差してきた。
「天に一際白く輝く星」
「赤じゃないんですね」
「巨人の星は撃ち落とすべし!」
 この委員長も巨人が嫌いなようである。
「あの白い星こそが料理人の星なのだ!」
「ええと、あの北極星がですよね」
「その通りだ。北極星は帝王の星」
 今度は世紀末救世主の如き話になっている委員長だった。
「その帝王の座は決して温まることはない」
「恒星なのにですか」
「帝王!それは永遠に遥か彼方へ邁進する者!」
 あくまでこの委員長の主観である。
「料理人とは全てそうなのだ!」
「おいどん達の戦いはまだはじまったばかりたい!」
「そうばい!」
 二人は二人で力瘤を入れて叫んでいた。
「これからもラーメン道を突き進むとね!」
「この果てのないラーメン道を!」
「なら俺達もまた」
「そのあんた達を倒すよ」
 光も舞も同じだった。
「それも全力でな」
「それであたし達がラーメンを極めてみせるさ」
「何か凄いことになってるよな」
「何だ?こりゃ」
 スタッフ達はこの気温を十度は確実にあげていそうな熱さに閉口しつつ言い合うのだった。
「帝王とかラーメン道とか」
「話が変な方向にいってるよな」
「どう見てもな」
「これにてこの戦いは終わった」
 またしても場を仕切りだす委員長だった。
「だが勝負は!終わりではない!」
 マイクなぞ一切不要の大音声であった。
「料理の対決に終わりはないのだから!」
 その通りだった。料理人の歴史にその名を残す城嶋雄大、麗夫婦が永遠のライバルである北海道の田中兄妹との初対面でありその壮大なラーメン道のはじまりであった。これからも二人は最高のラーメンを目指し精進していった。そのはじまりのエピソードがこの話だ。


ラーメン馬鹿   完


                   2008・12・30
 
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