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ラーメン馬鹿

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第四章


第四章

「ほお、あんた達が俺達の相手か」
「容赦はしないわよ」
 見れば二人は兄妹であった。一方が端整な青年でもう一人は爽やかな美少女である。その二人が不敵に笑って雄大達と対峙しているのであった。
「ラーメンの本場北海道で最高と言われた俺達の力」
「ここで見せてあげるわ」
「田中光、舞姉妹です」 
 あのアナウンサーが雄大達に対して説明する。よりによってその関ヶ原の真ん中でそれぞれ屋台を持って来て対峙するという異常な舞台になっていた。
「その北海道の荒熊の」
「あんた達がか」
「うち等の相手は」
 二人はここでも全身に燃え上がる炎を帯びつつ言うのだった。
「おいどん等に倒されるのは」
「覚悟はよかとね」
「あんた達、できるな」
「それもかなりね」
 北海道の二人は雄大と麗を見て言ってきた。
「どうやら俺達の相手をするのに相応しいみたいだな」
「これはやりがいがあるわね」
「それはこっちの台詞じゃ」
「そうたい」
 二人も同じ調子で言葉を返すのだった。
「伊達においどん等の相手になるわけじゃなかとね」
「かなりできるとね」
「何でそんなのわかったんだ?」
「さあ」
 スタッフ達はそれが不思議で仕方がなかった。何時の間にか互いを認めそのうえで対峙するようになっていたのである。
「あれか?超一流にしかわからないっていう」
「それかな、やっぱり」
「むう、これは」 
 ここで審査委員長のとある料理学校の校長が唸るのだった。豊かな白髪に見事な口髭を生やした袴の男である。外見は見事だがその物腰も重厚なものである。
「この勝負は恐ろしいものになるな」
「恐ろしいですか」
「かつてこの関ヶ原では天下分け目の戦いが行われた」
 この校長はまず歴史から入った。
「今またそれが行われようとしているのだ」
「ラーメンのですか」
「左様。四百年の時を経て」
 話がさらに壮大なものになった。
「今ここに!日本で最高のラーメンが決まるのである!」
「そんな大層な話だったんだ」
「意外だよな」
 スタッフ達も実はそこまでは考えていなかったのだ。関ヶ原という舞台にしろそこまでは、なのであった。少なくともこの委員長程ではない。
「さあ諸君!」
 委員長は勝手に場を仕切りだした。
「はじめるのだ!完全にして最高の勝負を!」
「何で究極とか至高って言わないんだ?」
「そういう表現が嫌いらしい」
「というかあの漫画が」
 微妙に俗に言われるグルメ漫画が嫌いな委員長であった。
「勝負、はじめ!」
 こうして運命のラーメン対決がはじまった。雄大達も光達も一斉に勝負に取り掛かった。対決メニューは当然ラーメンである。
「さて、勝負がはじまりましたね」
「見事だ」
 とりあえず普通の番組進行をしようとするアナウンサーに対して委員長はそんなつもりは全くなかった。あくまで彼の世界のことを考えているだけだ。
「この流れ。実にな」
「流れですか」
「見るのだ」
 委員長はここでまた言った。
「あのスープ」
「スープですか」
「どちらもただ濃厚なダシを取っているだけではない」
 委員長の言葉が続く。
「豚骨にプラスアルファを入れているな」
「プラスアルファですか」
「野菜や生姜も入れてただの豚骨だけの風味にはしていない」
「豚骨だけじゃないんですか」
「その通り」
 委員長はまた言った。
 
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