DQ4 導かれちゃった者達…(リュカ伝その3)
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第6章:女の決意・男の勘違い
第32話:頭で解っていても、心は複雑……
(天空城)
アリーナSIDE
「シ、シンシアー!」
目の前に突如現れた美女……
その美女に歓喜の叫びを上げながら抱き付くシン。
「うわぁ~どうしようウルフ。あの娘がビアンカじゃないのは解ってるんだけど、シンが抱き付くのを見てるとブっ飛ばしたくなるよ!」
「お前の嫁さんは、隣で手を握ってる美女だろが! 我慢できないのであれば、嫁さんに抱き付いて心を静めろ!」
シンが間違えるだけあって本当に似ているビアンカさんとシンシア……
欲張りな男は、衝動を抑えきれないらしく弟子に愚痴る。だからウルフも突き放す様に嫁に抱き付く様言い放つ。
そんな遣り取りを見て混乱気味なシンシアが、
「な、何なの!? 私は……死んだはずよね!? え、どういう事なのよ!? ちょっとシン……これはどうなってるの、教えてちょうだいよ!?」
と、状況を問うてくる。
「うん! あのね……世界樹でね……マスタードラゴン様がね……死んでも生き返らせてくれてね……あのね……」
最もシンが興奮してる為、整然とした説明が出来ず何を言ってるのか不明……
「ちょっと退きなさいシン!」
「あ、リューノちゃん……」
業を煮やしたリューノが、シンシアに抱き付くシンを押し退け説明に入る。
押し退けられたシンは凄く残念そうな表情だが、これで話が進んでくれると大助かりだ。
アリーナSIDE END
(天空城)
ウルフSIDE
「なるほど……理解できたわ。ありがとうリューノちゃん」
この顔は男を惑わす……シン君の非常識行動もビアンカさんに会ってからで、本命のシンシアさんに再会してからは抑えが効かなくなったらしい。
その他に唯一の顔見知りであるリューノが率先してくれなければ、何時まで経っても事態は進まなかっただろう。
「リュカさん……と言いましたか? シンを導き、私の命までも復活させてくれた事を心から感謝致します」
同じ顔のビアンカさんに抱き付いているリュカさんに、礼儀正しく深々と頭を下げてお礼を言うシンシアさん。
結構胸元の大きく開いた服を着てるので、俺の位置からでも谷間が観賞でき釘付けになる。
「あぁ……ダメ! 君は僕に近付いちゃダメだ! 頭では解っていても、あまりにもビアンカに似すぎる! 理性が保てないから……君はシンの側から離れちゃダメだ」
あのエロエロ大魔神が、美女の胸の谷間から目を逸らし、隠れる様に奥方様の後ろへ逃げて行く。
「お、お前ふざけんなよ! シンシアに手を出したら絶対に許さないぞ!」
慌てたシン君がシンシアさんを引き寄せ、エロエロ大魔神から守る様に抱き締める。
俺達も気を付けないとならないだろう……リュカさんとシンシアさんを二人きりにしてはいけないし、近づけてもダメだ!
「ん~……まぁシンの彼女も生き返った事だし、ここに居る理由も無くなったから帰るか!」
一仕事終わった様な爽快感を顔に出し、ヒゲメガネの前から退散しようとするリュカさん。
「ちょっと待て! お前等は勇者とその一行だろう……何か使命を忘れてないか?」
大丈夫ですよヒゲメガネ……リュカさんも100%憶えてて言ってますから!
「その使命って、シンが背負ってる物だろ!? 僕には関係ないじゃんか! 何で僕を呼び止めるんだよ!?」
あんだけお偉いさんの鼻を突き刺しといてソレは無いだろうに……
ヒゲメガネも天空人達も驚きの表情を隠せない。(でもルーシアさんは笑ってる……大丈夫かコイツ?)
「流石にリュカ……それは……」
俺はリュカさんの死角からビアンカさんを突き、何とか説得する様に合図を出す。
それに堪える様にビアンカさんは何とか口を開くが……
「ビアンカ……この世界を救うのは、この世界に住む者達の使命だと思うんだ! 僕達は僕達の世界を救った……頼りになる勇者と共に、魔界まで赴いて魔王を倒したんだ。何故なら僕等の住むべき世界は、僕等が平和にした世界だったから! そしてそれはここじゃない」
「で、でもリュカさん……リュカさんは俺等の生まれた世界も救ってくれたじゃないですか!? このこの世界はリュカさんにとっては過去の世界なんですから、俺等の世界より重要性が高いですよ! シン君と共にこの世界を平和にするべきじゃないですか!」
「ウルフの生まれた世界を平和にしたのは僕じゃない……勇者アルルとその一行だ。大魔王を倒したのだって偶然……つーか、うっかり光の玉を奪われちゃったから、仕方なく僕が出張っただけ。本来は僕の役目じゃない」
「だとしても……今回だって最後まで付き合ったって良いでしょう! シン君は、ティミーさんやアルルと違って頼りないのだから、多少の手助けをしてあげようじゃないですか!」
ビアンカさんの発言を阻んでまで拒絶しようとしているリュカさんの説得は大変だ……俺で説き伏せられるだろうか?
「気に入らないんだ……ヒゲメガネの思惑通りに動くのが!」
確かに……ここでシン君達に協力し、この世界の平和を取り戻したら、喜ぶのは俺達をこの世界へ送った神様連合だ。だがしかし……
「俺達をこの世界に送る切っ掛けを作ったのは、貴方の娘さんですよ! 貴方の娘が隙だらけの余計な事を言わなければ、ヒゲメガネも下手な事が出来なかったんです! 本来なら、その責任は本人がとるべきなんですが、とてもこのアホには無理そうなので、父親が代わりに責任をとる……のが親と言う物ではないのですか?」
「ふざけんなよ……何で僕だけが……」
「勿論リュカさんだけではありません! 母親のビアンカさんも、腹違いとは言え姉妹のリューノ・リューラも、惚れたという弱みを持ってる俺も一緒に責任をとります!」
そこまで言い終えると俺は、リュカさん以外の家族をシン君達の方へ集め家長を孤立させた。
「あれ、お前……口が巧いね。どうした、昔はもっと素直な良い子だったのに?」
「はい。尊敬するお義父さんに鍛えられましたから!」
リュカさん以外の皆が世界を救うムードになっている。
すると一人がリュカさんに近付き、深々と頭を下げて懇願し始めた!
「リュカさんお願いします! シンは見ての通り勇者としては未熟者です……彼だけでは、世界を救ったとしても命を落としかねない! 折角蘇ったのに、私は孤独を味わうかもしれません……どうかリュカさんの様な頼りになる方のサポートを、未熟なシンに与えたやって下さい!」
服装と耳の長さ以外では全くビアンカさんと区別の付かないシンシアさんが、涙ながらに訴える。
「ちょ……な、泣かないで!! お願い、一緒に行くから! お願いだから、その顔で泣かないでよ! だ、誰だよ……この娘にこんな事させたのは!? ぶっ殺すぞコノヤロー!」
誰も何もさせてない。きっとこれまでの流れで察し、シンシアさんが自ら動いたのだと思う。
「言質とりましたぁ~!」
サッと涙を拭うと、右腕を高らかと掲げ明るい笑顔で勝利宣言をするシンシアさん。
やるなぁ~……
ウルフSIDE END
(天空城)
ブライSIDE
シンの彼女というから、もっとお淑やかな女を想像してたが、随分とアクティブな女の様じゃ。女の涙……特に嫁の涙に弱いと見抜くなんて、感服の極み!
「ズルイ……ズルいよみんな……大体さぁ勇者が弱いって如何な物なのさ!?」
「何を言いますお義父上! 以前貴方が仰ってたではないですか……勇者は何でも出来る反面、一人では何も出来ない存在だと! 勇者を中心に猛者が集まり結束する。その猛者の一人であるリュカさんを最大限に利用するのは、団体行動として至極当然の事!」
弱った獲物は見逃さないとばかりに、ウルフがリュカを追い詰めて行く。
どうやら以前に格好を付けて言ったのだろう。
何も言い返せなくなり、ただ頬を膨らませ不機嫌そうにするリュカ……
偶には奴もそんな目に遭って良いじゃろう!
「安心せよ。私からも強力な助っ人を出すぞ。ルーシア、ドランを呼んできなさい!」
「は、はいマスタードラゴン様!」
リュカを中心にウルフ・シン・シンシアがコントを繰り広げていると、マスタードラゴン様から助っ人を派遣すると仰ってくれた。
「はぁ? 助っ人を出すくらいなら、全知全能なる神様のお前が一緒に来い! 何でも他人に丸投げすんじゃねー!」
何でこの男は神に対して無礼な口調を貫くんだ!?
折角の申し出なのに、取り止めてしまうかもしれないだろうに!
「ですがリュカさん……ドランはお利口で、とっても強い子なんですよ。きっと皆さんのお役に立ちます!」
「ふ~ん……ルーシアが言うんなら大丈夫なんだろうなぁ」
神の言う事には反発し、その部下の言う事は鵜呑みにする……何なんだコイツは!?
「……どうやら時間はそれ程多くは無いようですね。この天空城の真下……天空への塔の北側にある『闇の洞窟』から強く禍々しい波動を感じます。奥にある『結界の祠』で何やら良からぬ事が起きているのでしょう。闇の洞窟へ直行できるリフトを用意します……早急に結界の祠へ赴き、魔族の野望を阻止してくれ!」
確かに、先程からザワつく様な気配を感じていたが、魔族が何かを行っていると言う事なのじゃな。
ワシ等は全員、リーダーであるシンと視線を交わすと、自分の装備品を握りしめ気合いを入れ込む。
だが……
「ふざけんなよ~……僕等は、あの無意味に長い天空への塔を登ってきたんだ! 少しくらいは身体を休ませろっての!」
確かに疲れてはいるが、世界の一大事に……
「そうですよマスタードラゴン様ぁ! 一晩休んで、元気ビンビン状態になれば魔族なんてリュカさんが全部倒してくれます! このままじゃリュカさんは『疲れたの~!』とか言って戦おうとしませんから、休息してから旅立つべきですよ」
「あ~ウソウソ! 僕は大丈夫だから! 世界の一大事に休んでられないから! 直ぐ行こう、今行こう……時間を無駄にしてはダメだよ!」
駄々をこねるリュカを突き動かしたのは、弟子であるウルフの言葉だ。
戦わない理由を打ち消されない為に、ルーシアと共に新戦力ドランの下へ駆け出すリュカ。
苦笑いしながら奴の後を追いかけるのは嫁さんと娘達。
我らも連中の後を追う様に動き出す。
マスタードラゴン様の部屋から出る直前に、チラリとマスタードラゴン様見たのだが……ウルフの行動に賞賛の思いを視線で送っていた。
あの男の我が儘にウンザリしていたのだろうて……
ブライSIDE END
後書き
美女復活。
リュカさんたじたじ。
偶には良いよね?
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