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機動戦士ガンダムSEED DESTINY~SAVIOUR~

作者:setuna
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第二十一話 譲れない想い

 
前書き
ジブラルタルに向かうミネルバ。
しかし、ミネルバは再び、連合、オーブ軍とぶつかることに。
 

 
ジブラルタルに向かう最中、突然のアラームにアレックス達は一瞬顔を合わせ、すぐさまパイロットスーツに着替えるべく更衣室に向かった。

メイリン『コンディションレッド発令、パイロットは発進準備に入ってください』

メイリンの緊迫した声がミネルバ艦内に響き渡る。
敵は分かっていた。
オーブ、地球連合艦隊だろう。
連合艦隊は圧倒的な戦力差があったにも関わらず、フリーダムとオーブ首長国代表というイレギュラーな存在とザフトレッドの底力というべきか。
決着をつけるどころか撤退という形を取らざるを得ない状況に追い込まれた。
上層部がそんな撤退を許すはずがない。
アレックス達は近いうちに再び相対するだろうとは思っていた。
何せこっちはザフトの新艦なのだ。討ち落とせば勲章ものだ。


































パイロットスーツを着て、MSデッキに向かうシン達。

シン「網を張られてたのかよ…」

レイ「そのようだ。どうしてもミネルバを討ちたいらしい」

ルナマリア「毎度毎度、人気者は辛いわね…」

ルナマリアが愚痴るように言うとクレアが口を開く。

クレア「何言ってんの?僕もいるんだから大丈夫だよ」

シン「すぐガス欠を起こす機体で何言ってんだよ?」

クレア「うっさい!!」

ステラ「…喧嘩、駄目……」

シンとクレアの喧嘩をステラが仲裁する。

ナオト「シン」

シン「何ですか?」

ナオト「シンは指揮のノウハウはある程度知ってるよね?」

シン「え?はい。アカデミーで習いましたけど。」

ナオト「じゃあ、シン。今回の戦闘の指揮、やれるよね?」

シン、クレア「「ええ!?」」

ナオトの爆弾発言にシン、クレアが驚愕。
ルナマリアとレイも意外そうにナオトを見ている。
当然納得出来ないのもいるわけで。

クレア「ま、待ってくださいよフジワラ副隊長!!」

ナオト「呼び捨て」

クレア「…ナオト、シンに戦闘指揮なんて出来るわけないよ。考えるより身体が動くタイプなんだもん」

ステラ「…そんなことない」

クレア「君はアカデミー時代のシンを知らないからそう言えんの」

ナオト「でも、それを言ったら君だってアカデミー卒業後のシンのことは知らないでしょ?」

クレア「それは…」

ナオト「大丈夫。私やアレックスが戦闘指揮を取るようになったなんてシンと同い年の頃だし。シンは今が一番伸びる時期だからね。シン、やってくれる?アレックスとも相談して決めたんだ」

アレックスもナオトも自分を信頼してくれている。
だからこそ今回の戦闘指揮を自分に任せてくれたのだ。
2人の信頼に応えなくては。

シン「…分かりました。」

クレア「大丈夫かなあ?」

ルナマリア「シン、指揮の腕前を見せてもらうわよ」

ステラ「シン…頑張って」

シン「ああ」

全員が搭乗機に乗り込むと出撃する。

シン「シン・アスカ、コアスプレンダー。行きます!!」

アレックス「アレックス・ディノ、セイバー。出る!!」

ステラ「ステラ・ルーシェ、ガイア。行くよ」

ナオト「ナオト・フジワラ、ストライク。出るよ!!」

クレア「クレア・トワイライト、コアスプレンダー。行くよ!!」

レイ「レイ・ザ・バレル、グフ。発進する!!」

ルナマリア「ルナマリア・ホーク、ザク。出るわよ!!」

インパルス、セイバー、ガイア、ストライクE、デスティニーインパルス、グフ、ザクの順で出撃する。
因みにルナマリアのザクは他の機体に遅れないように出力を強化したグゥルに乗っての出撃だ。

タリア『シン、アレックス。』

シン「はい?」

アレックス「…?」

タリア『もし、前回のように彼らが現れたら…頼んだわよ』

もしAAとフリーダムが現れたら、シンかアレックスに抑えて欲しいのだろう。
アレックスと今のシンならもしかしてフリーダムを墜とせるのではないかとも艦長は思っている。

アレックス「はい…」

シン「大丈夫、前のようにやられたりしませんよ。いいか!?今回の目的はあくまで敵包囲網の突破だ!!無用な戦闘は極力避けるんだ!!」

アレックス「了解した!!」

ナオト「OK、了解!!」

ルナマリア「了解!!」

レイ「了解」

ステラ「うん、じゃなくて…了解」

クレア「………」

シン「どうしたクレア?」

クレア「え?あ、何でもない…了解。」

シンがオーブを憎んでいることを知っているクレアはシンの指示に目を見開くが、シンに尋ねられ、慌てて答える。

クレア「(丸くなったのかな…。でも敵がいるのに討たないなんて…)」

クレアはシンの指示に不満そうにしながらもライフルを向け、アストレイを撃墜する。
周りを見るとセイバーもストライクEもグフもガイアもザクも反撃は必要以上の攻撃はしていない。
1機のダガーがデスティニーインパルスに背を向けて逃走しようとするが、デスティニーインパルスのビームブーメランを投擲し、ダガーを真っ二つにする。

シン「おいクレア!!逃げる奴は攻撃するな!!無用な戦闘はするなって言っただろ!!」

シンのその言い方にカチンときたのか元々シンに対して沸点が低いクレアは声を荒げる。

クレア「うるさいな!!目の前の敵を討って何が悪いの!?そんな生温いやり方じゃあ、あいつらを付け上がらせるだけだよ!!」

シン「だからって命令違反をするな!!俺の言うことを聞け!!」

クレア「何さ!!FAITHの2人に気に入られてるからって調子に乗っちゃって!!」

シン「何だと!?」

クレア「こんな奴ら、僕が全滅させてやる!!」

シン「あ、おい!!」

デスティニーインパルスは翼を広げ、一気に敵MS隊に突っ込んでいく。

アレックス「待て!!クレア!!」

シン達もデスティニーインパルスの援護をするために前に出る。
デスティニーインパルスは非常に燃費が悪い機体だ。
このまま放置していてはエネルギー切れを起こして撃墜される可能性が高い。

シン「あいつ…」

ステラ「クレア…シン嫌い?」

レイ「元々あいつらは犬猿の仲だからな。顔を合わせるだけで喧嘩することも多々あった。そんなシンがFAITHであるアレックスやナオトに認められ、指揮を任されたことに嫉妬しているのだろう。それよりシン」

シン「ん?」

ルナマリア「何か敵の動きが変よ?積極的に攻撃してこないというか…」

シン「何!?」

ルナマリアの言葉にシンは敵MS隊を見遣る。

シン「(確かに…撃って来ない。こっちが出れば退く…一定の距離を…)ん?敵機の中にムラサメがいない!?まさか!!?」

背後を見遣ればミネルバから遠く離されていた。

シン「しまった!!前の敵は囮か…MS隊全機転進!!ミネルバへ戻れ!!」

ナオト「罠!?」

クレア「え!?」

MS隊は直ぐさま転進し、ミネルバに向かう。

シン「(くそっ!!俺は何をしてるんだ!!こんな子供騙しの作戦に引っ掛かるなんて…こうなるなら強引にでも連れて戻ればよかった…!!)畜生!!」

ナオト「シン!!ミサイルが!!」

敵MS隊からミサイルが放たれる。

シン「くそ!!」

シンはライフルを向け、ミサイルを迎撃する。
敵MS隊がシン達を戻らせないように攻撃を仕掛ける。

クレア「この…っ、次から次へと…いい加減に…!!」

エクスカリバーを連結し、敵機を切り裂くデスティニーインパルス。
しかし次から次へと敵機は襲い掛かる。

クレア「しまった…エネルギーがもう…!!」

レイ「クレア!!」

デスティニーインパルスを狙おうとしたムラサメをレイのグフイがビームソードで切り裂いた。

クレア「レイ!!」

レイ「何をしている!!早くミネルバに戻れ!!」

クレア「で、でも…」

レイ「デュートリオンビームを受けてこい!!このままでは墜とされる!!」

クレア「…分かった」

デスティニーインパルスはミネルバに戻る。

クレア「ミネルバ!!デュートリオンビームを!!」

ミネルバにデュートリオンビームでのチャージを要請し、補給を終わらせる。
一瞬だけ無防備になるとはいえ、そもそも補給時は隙を曝させることになる以上、リスクが多少上がっても一瞬で補給できるデュートリオンビームは非常に便利な代物なのは変わりない。

シン「クレア!!ミネルバの後方からミサイルが来る!!迎撃を!!」

クレア「分かってる!!」

デスティニーインパルスのテレスコピックバレル延伸式ビーム砲塔をミサイルに向けるが、迎撃される前に上空からのビームに貫かれた。

クレア「え!?」

ナオト「奴が来た!!」

ステラ「フリーダム…」

カガリ『オーブ軍!ただちに戦闘を停止して軍を退け!!オーブはこんな戦いをしてはいけない!!これでは何も守れはしない!!地球軍の言いなりになるな!オーブの理念を思い出せ!!それなくして何のための軍か!あの艦を討つ理由がオーブのどこにある!!討ってはならない!!自身の敵ではないものをオーブは討ってはならない!!』

アレックス「カガリ…そんなことをしても無意味だというのがまだ分からないのか!!?」

ナオト「アレックス…」

クレア「フリーダム…!!」

クレアの手に力が入る。
父を殺した悪魔が今、目の前にいる。
フリーダムの姿を認識したシンは急いでクレアに視線を向ける。
クレアがフリーダムに憎しみを抱いているのは知っている。
クレアの父はヤキン戦でフリーダムに四肢と武装等を破壊され宇宙空間を漂い、酸欠で死んだのだ。
父親の仇であるフリーダムがいるということは…。

クレア「フリーダムッ!!!!」

デスティニーインパルスが翼を開き、凄まじい機動でフリーダムに向かう。

シン「っ、あの馬鹿!!」

フリーダムと曲がりなりにも戦った自分はフリーダムとそのパイロットの強さが分かる。
クレアとデスティニーインパルスも強いが、分が悪い。
デスティニーインパルスの性能はフリーダムを凌駕するが、燃費が悪すぎるために長期戦になれば負ける。

シン「っ、たく。世話が焼ける!!」

シンはインパルスのバーニアを吹かしてデスティニーインパルスの援護に向かう。

クレア「フリーダム!!父さんの仇!!」

キラ「え?仇……?」

クレアの言葉にキラは目を見開く。
棒立ちになるフリーダムにエクスカリバーを振り下ろすが、フリーダムは瞬時にビームサーベルを抜き、両腕を切り裂いた。

クレア「なっ!?この!!」

デスティニーインパルスの背部のビーム砲が放たれるがフリーダムには当たらない。

クレア「そんな!?」

キラ「お願いだから僕の邪魔をしないで」

クレア「…っ!!」

完全に舐められている。
クレアはそのことに歯ぎしりする。
あんなに訓練して、デスティニーインパルスを託されたのに、それでも全く通用しない。

シン「クレア!!」

インパルスがフリーダムにライフルを放つが、かわされ、フリーダムがビームサーベルでインパルスを切り裂こうとする。

クレア「危な…」

クレアが言い切る前にインパルスはそれを回避する。
自分が全く対応出来なかった攻撃を容易く回避したシンの技量に驚きを隠せなかった。

キラ「なっ!?」

フリーダムのパイロットからも驚愕したような声が聞こえた。
お返しとばかりにインパルスもビームサーベルを繰り出すがフリーダムはそれを回避する。
フリーダムはインパルスにビームライフルを向け、放つがインパルスはそれを回避しつつ接近する。

シン「いつもそうやってやれると思うな!!」

クレア「す、凄い…シン」

アカデミー時代は自分と大差なかった彼がフリーダムと互角の戦いを演じている。

キラ「どいてくれ!!僕達はこの戦闘を止めなきゃいけないんだ!!」

シン「止める?悪化させるの間違いだろう!!」

ライフルを放ち、フリーダムの左肩に掠らせる。

キラ「うっ…強い…?あの時とは全く違う…」

シン「人は成長するんだよ!!昨日の俺は、今日の俺じゃない…。俺はようやくアレックス達に追いつけたんだ!!」

キラ「それでも!!僕には守るものがあるんだ!!」

シン「守るものがあるのはこっちも同じだ!!舐めるなフリーダムッ!!!!」

インパルスとフリーダムがぶつかり合う。
全く互角の攻防だった。




































アレックス「ん?」

スティング「新型!!今日こそ墜としてやる!!」

緑色のウィンダムがセイバーに向かって来る。
ウィンダムはライフルをセイバーに向けて放って来る。
セイバーはそれを難無く回避する。
ウィンダムのジェットストライカーはリミッターが解除されているのか中々の機動だった。

アレックス「この操縦技術…カオスのパイロットか?」

ウィンダムの攻撃を回避しながらミネルバに向かうムラサメを墜とす。

スティング「野郎…俺のことは眼中に無いってか!!?」

ウィンダムの攻撃を回避しつつ、ムラサメ、アストレイを墜としていく。







































ナオト「数ばかりゴチャゴチャしてていい加減嫌になるんだけど!!」

アナザートライアルソードストライカーのパンツァーアイゼンを両腕に装備したストライクEがビームライフルショーティーの連射でムラサメを数機墜とす。
するとストライクEにストライクルージュが向かって来る。

カガリ「ナオト・フジワラアアアアア!!」

ナオト「ん?」

ストライクルージュがストライクEにビームサーベルで切り掛かるが、咄嗟にパンツァーアイゼンでビームサーベルを受け止める。

ナオト「いきなり何するの!?あなたに斬り掛かられる覚えなんてないんですけど!!?」

カガリ「アスランはっ!!アスランは私の物だああああ!!」

ナオト「はあ?」

何言ってるんだこの馬鹿姫は。
アレックスを物扱いしていることに腹が立ち、とりあえずストライクルージュを蹴り飛ばす。

カガリ「くっ、お前が現れるまでは全部上手く行っていたんだ!!お前さえいなかったら、私達はっ!!」

ナオト「……変わるものって、無いの。でもね、変わらないものも無いの…あなたがアレックスのことが好きなように私も…彼のことが好き。これだけは譲れない。」

カガリ「なっ!?」

ナオト「譲れないし、譲る気もないから!!」

ストライクEのバーニアを吹かして、一瞬でストライクルージュのエールパックを切り裂き、ストライクルージュは海に墜ちた。
それを見たオーブのMSがストライクEに向かって来る。

ナオト「アレックスを痛め付けてくれたオーブ軍…徹底的にぶちのめしてやる!!ミネルバ!!アナザートライアルソードストライカーを射出!!」







































アレックス「カガリ…」

ストライクEに墜とされたストライクルージュを見て僅かに胸が痛んだがそれだけ。

アレックス「(カガリのことは…本当に過去になってしまったんだな……)」

自嘲しながら内心で呟くアレックス。










































キラ「どいてくれ!!」

シン「どくわけないだろうが!!」

キラ「僕は撃ちたくないのに!!どうして僕の邪魔をして撃たせるんだよ!!?」

シン「最初に攻撃をしかけたのはあんただろ!!じゃあ何か?俺達に何の抵抗もしないで沈められろってのかよ!!撃ちたくないとかいいながらあんたは何なんだよ!!?」

キラ「どうして君は!」

シン「撃ちたくないってんならとっとと帰れよ!!俺達はあんたなんかに構っている暇なんか無いんだ!!」

キラ「分かるけど、君の言うことも分かるけど、でもカガリは、今泣いているんだ!!」

シン「はあ!?」

キラ「こんなことになるのが嫌で、今泣いているんだ!何故君にはカガリの気持ちが分からない!!なのにこの戦闘もこの犠牲も仕方がないことだって、全てオーブとカガリのせいだって、そう言って君は討つのか!!今カガリが守ろうとしているものを!!」

シン「アスハが泣いてる?みんな泣いてるんだよ!!アレックスもナオトもステラも…みんなみんな泣いてる…辛いのを必死に耐えてるんだ!!アスハだけが辛いわけじゃない!!」

キラの言葉を切り捨てるシン。

キラ「なら僕は君を討つ!!」

シン「あんたは俺が討つ!!」

フリーダムとインパルスが再びぶつかり合う。
キラは思った。
このインパルスの攻撃は手加減出来ない。
自分はまだ死ねない。
キラは無意識にインパルスの胴体を狙った。

シン「っ!!」

ふいに、シンを取り巻く世界が遅くなる。
フリーダムのまだほんの僅かな動き。
だが……。

シン「見える!!」

“種”が割れる。
咄嗟にインパルスの下半身を切り離す。
重量が軽くなったインパルスの上半身はフリーダムのビームサーベルを下にかわし、フリーダムの両腕を切り裂いた。

キラ「あ……?」

キラは呆然とした。
信じられなかった。
フリーダムが。
自分が負ける事など。

ステラ「シン!!」

ガイアが追撃とばかりにフリーダムにライフルを放つ。
フリーダムはそれをかわしながら撤退した。
いつの間にかAAもいなくなっていた。

クレア「っ………」

シン「………」

無言のクレアをシンは冷たく見つめていた。 
 

 
後書き
インパルスがフリーダムに勝利。
ちなみにルナマリアは無事ですよ 
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