とある物語の傍観者だった者
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14話:途中退場
前書き
ふぅ……
オレは世界に10人としかいない聖人であるねーちんにケツをぶたれ、現在公園のベンチで休んでいた。
「忠告しておきますが、私は聖人です。いくら貴方が能力と魔術を使えるからといって私に敵うはずがありません。これ以上ふざけるのは貴方ご自身身のためになりませんよ」
いや、もうケツがおじゃんしてるじゃん?と思ったり。
忠告が遅いよ!絶対に骨盤損傷している!お願い、病院に帰して!
でも、ここはオレのケツのために素直に忠告を聞いておこう。
「わかったよ、ねーちん。もうふざけたマネはしないさ、ねーちん」
「いや、ふざけるなと言ったはずですが、何故二回もその名で……」
私の忠告を聞いてましたか?と睨んできた。
「つ、土御門の奴がそう呼んでいたんだから仕方が無いさ。それともまだお互い自己紹介もロクにしていないのに、相手の名前を呼ぶのは失礼だろ??」
「明らかに『ねーちん』と呼ぶ方が失礼だと思いますが……」
はぁ、とため息を吐き、ねーちんでもういいですと諦められた。
そんなことよりも、といった感じだ。
「『カミやん』について話してもらえますか? あの少年は何者なのですか?」
なんかねーちんが『カミやん』言うのに違和感を拭えないがな。『ねーちん』の仕返しにしてはズレているけども。
オレがカミやんいうからテスラもカミやんて言って、そのまま伝染したんだろうか……土御門から何も聞いていないのかな? あいつはこの件には関与していなかったんだよな。
何にしてでもだ、
「別にどうってことない、ただ変な『右手』を持った不幸なだけの、この街に住む普通な学生で一般人Aさ」
「もう普通じゃないし一般人Aでもないと思うのですが……」
まぁ、物語の主人公だしな。一般人Aというところだけ訂正しておこう……
「で、そんなカミやんに会って何か言われたか??」
「はい。もうそれでムカついたので叩きのめしました」
もう既に手遅れだったか、カミやん。
たぶん、意見してねーちんの逆鱗に触れてフルボッコされたんだろうな。
「……私達はどうすれば良いのでしょうか」
「………」
唐突に、オレにそんなこと聞くな。
まぁ……ねーちんは、今までの行いが禁書目録を守るためだと無理やり言い聞かせて、彼女の記憶を奪ってきた消去してきた。
でも、それをカミやんに否定された。指摘された。痛いところを突かれた。結局は彼女のためではなく自分達のエゴでしかないとか言われたんだろうよ。
だから、禁書目録をこのまま回収していいのかどうか判断ができないのだ。いや、この物語の真実を知らない彼女らからすれば、回収するしか手がないんだけども。
「まぁアレだ。当事者でもない余所者なオレはなるべくこの件に関与したくないし、テスラにも邪魔するなと言われているから何もしないけども」
「………」
オレが関与して知っている物語が大きく変更されても困るしな。それに関していうならテスラも邪魔だけども。
とりあえずは、だ。目下の問題は、
「ねーちん達が今まではどうだったかは知らないが、カミやんがインデックスと出会い、ねーちん達のやり方に問いかけたアイツに協力を求めるか排除するかは、結局はねーちん達次第だ」
「まるであの少年なら彼女を救えるように聞こえるのですが……」
「そこまで深い意味でもないさ。ただ、言いたいのは、インデックスがもし救われるのなら、今の現状に終止符を討つ者はオレじゃないってことだけは確かだ」
「貴方は、本当に協力してくれないんですね。リリィ(・・・)の時と違って……」
「それはこれとは関係ない話だろうが……」
「……そうですね。すみません」
関係ない話を持ち出してもオレは協力しない。変な期待はしないでくれ。
「言っておくがオレはマゾじゃないぞ? 毎回血を流してまで悲劇のヒロインを救うヒーローになるつもりはないし、でもオレが命を懸けてでも守りたいとそう思えたのがリリィ(・・・)だっただけだ」
本当に今は関係ない話だ。
「だから、まだ顔も声も知らない少女のためにオレができることなんてないし、救えるのはオレじゃなく、カミやんか、もしくはねーちんかもしれないし、ステイル=マグヌスとかいうオレんちを全焼させたクソ野郎かもしれないし、テスラかもしれない。または土御門か、イギリス清教の誰かだろうよ」
「………」
まぁテスラはないか……
こいつが厄介か。今回の一件で一番邪魔なのはオレじゃなくテスラだろうかと思うのだが。
テスラは仕事を遂行しなくてはならない。そうじゃないと、また監獄送りだろうか。
だから『回収』以外の他の解決法は許されないと、オレは思うのだ。
だから、何をしだすかも分からないオレを病院で監視して仕事に支障を出さないようにしていた。
でも、これからのシナリオはテスラにとって好ましくないから、カミやんを排除するかもしれない。
そういう不安が心の隅にあった。
だから、オレが取る行動は……
「ねーちん、オレをテスラの元に連れってくれ。テスラを連れて病院へ帰る」
オレの知っているアニメには存在しないオリジナルキャラ。
それがオレ達だとすれば、この一件に終わりまで関わっては本当に碌なことになりそうにないからな。無駄に血を流すのも嫌だ。
だから、たとえオレの社会的地位が抹消しても、病院でテスラとイチャイチャしておこう……これでいいんだ。
あとはカミやんやねーちんたちで何とかなるのだから。
「あぁ、お尻が痛いのですね……わかりました。責任持ってお連れします」
何かを察してくれたねーちんがオレをお姫様抱っこする。
「「………」」
何故に背負ってくれないのか……恥ずかしいわ、羞恥プレイもほどほどにしてーーー。
ねーちんのおっぱいが当たっているが、そこには触れないでおこう。黙っておこう。
「私もそろそろ、リリィほどの幼き少女を誘拐するようなロリコン野郎とお喋りするのにうんざりしていたので丁度いいです。しっかり捕まっててください」
だから関係ない話をするなよ! ロリコン野郎って言わないでーーー!!
ねーちんはオレの言葉などもう聞く耳持たず、その常人離れした脚力で街を跳んだ。
跳んでは、子萌先生のアパートだと思うが先を急いだ。
「あと一つ……本当に別件ですが。リリィが貴方に会いたがってましたよ。お礼も言いたいそうです。土御門からも言われてると思いますが、今度会ってやってください、近簿一二三(・・・・・)」
「……考えておくよ、神裂火織(・・・・)」
本当に別件だな。でも、それはまた今度のお話で。
こうして、オレは男なのにねーちんにお姫様抱っこされて夜の街を、もうほぼ空を飛んでいるような感覚で移動し、目的地まであっという間だった。
子萌先生の住んでいるオンボロアパートに到着する。
アパート前には2人の魔術師、ピンクのパジャマと赤髪ノッポの2人がそこにはいた。
「……なんで公園で待ってなかった?ラブホ行く予定は?お兄ちゃん………つーか、なんで神裂にお姫様抱っこされてんだ、こら」
もう禁書目録の治療は済んだであろうか、外で待機していたテスラが一瞬にして不機嫌になっていた。
「テスラ…たとえ血が繋がっていない義兄妹であっても、世間の風当たりは強くなるからその歳でラブホは不味いよ」
と論する神父たん。タバコ吸ってる14歳だけども。
「そもそも学園都市にラブホなんてあるのかい……ないよな?そこの一般人A」
一般人Aって言うなや!まぁ、一般人Aで在りたいんだけども!!
でも、自分で在りたいと思ってるのと、言われるのとでは別だ。
つーか、こいつ、まじムカつく!!初めましてなのに超腹立つ!!
「それに神裂も、こんな時に君は何をしているんだい? ブ男を抱っこする趣味があったとはね……」
やれやれと、ステイル。なんかいちいちイラっとくるな。
「い、いえ、これにはいろいろ事情がありまして、主に私のせいなのですが……」
「でも、男であるお兄ちゃんをお姫様抱っこはナイわ」
逆に私がお兄ちゃんに抱っこされたいとか言っているよー。
「だ、だったら、お姫様抱っこしてやるから病院戻ろうぜ。つーか、オレはもうお前ら魔術師共の問題に付き合うのはこりごりだ。なんだかー、急にー、病院に帰ってー、テスラとー、イチャイチャしてー、癒しがー、欲しくなってきたーーー」
「「「………」」」
いや、喜べよ自称・妹。
お前まで無言とかヤメテ!
何がいけなかったんだ? 絵的に問題だったのか? ねーちんに未だにお姫様抱っこされている状態で妹の癒しが欲しいと発言したのがいけなかったのか!!
「はぁ、土御門から聞いていた君の人物像とはまるで別人のようにキモさだね。テスラもこんな奴を兄と呼ぶのは考え直した方がいいと僕は思うがね……」
「おい、ステイル。私のお兄ちゃんは確かにシスコンでロリコンでどうしようもなくアレだが、お兄ちゃんがこいつだから我慢できる!」
我慢できるとか言われた!?? 我慢しているのはこっちだよバーロー!!
つーか、なんでステイルはさっきから喧嘩腰なの??
やっぱ殴っていい?? もうそろそろ大人しくしていれる保障はないぞ??
「ステイルもテスラも彼をイジメるのもほどほどにしてあげてください」
ねーちん、庇ってくれてありがとう。
「じゃあ、病院戻ろっか、お兄ちゃん。今夜も寝かせてあげないんだから♪」
「お、おう……」
今夜も悪夢が始まる。理性を保つことが果たしてできるのか!
「あぁ、禁書目録の治療はとっくの昔に終わってるからな、神裂。あとは『カミやん』を説得させて『回収』しとけよ」
「……わかりました」
「……言われなくてもそうするさ」
「………」
え、なにこの変わり身。
一瞬にしてシリアスに??
元からシリアスな回だったっけ??
何はともあれ、テスラをこっから離れさすことに成功した。
あとは、病院で数日。彼女をなんとかして説得するだけだ。
それだけで、インデックスは救われる。と思う。
あ、でも、その前に……
「ステイル=マグヌス!! オレんち全焼させたんだから賠償金出せよ!! 払えよ!! マジで!!」
「はぁ? 何でこのボクが?? 覚えがないね、そもそも本当にボクが君んちを嫌がらせで燃やしたという完全な証拠でもあるのかい? なければ、とっととテスラと行った行った」
聞き耳ももたないって感じで一蹴された。
しっし、と追い払われた。
もうそれだけで十分だった。
「よかろう、ならば戦争だ。能力をフルに使って世界中の兵器をお前に集中砲火させてやる!! 数年後に覚悟しとけよ!!」
「今すぐ、じゃないんだね……??」
「彼は今お尻を負傷していますから」
ねーちんにぶたれたこのお尻がね、もの凄く痛いからロクに動けないのだ。
現在、ねーちんに代わってテスラがオレを抱っこしている構図になっているのは内緒だがな。
「お兄ちゃん、あと数年かけて下準備する暇があれば大人しく私と毎日イチャイチャしようね。わかった?」
「……はい、もうそれでいいです」
「「………」」
うん、今は大人しく病院に帰ろう。
あと、シリアスな雰囲気ぶち壊して本当にごめんなさい。
こうして、ここでオレは禁書の物語から退場することになる。
あとは、オレがテスラをなんとか説得して、カミやん達がアニメ通りにインデックスを救ってバットエンド(・・・・・・)で幕を降ろすことになるのだが。
内容が内容だけにオレの出番は全然なかったが、物語の主人公じゃないからこんなもんだろう。
とりあえず、後日談とかはまた次の機会に。
もう、やだ……
後書き
第一章はこんな感じで禁書の物語にちょくちょく絡んでいくだけのサイドストーリー的な展開になります。
余談になるのですが、前話辺りから書いている途中で、違う案が生まれ、「テスラが上条当麻の『右手』のせいで禁書目録を『回収』できなくなり絶望してブチギレての近簿一二三との戦闘パートへ」みたいな展開とかも考えたのですが、それをすると第一章がそれだけで完結する勢いだったりそれでは困ったりするので、中途半端な形で終わらせていただきました。
そもそも、長くするつもりなかったんです・・・
とりあえず、次回も暖かい目でよろしくお願いします
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