美しき異形達
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第三話 怪人と炎その八
「あと横浜も裏通りが多くてさ」
「複雑なのね」
「そうなんだよ、川崎とかも」
「じゃあ大阪の入り組んだ道も」
「いやいや、一回行っただけだと駄目だよ」
わからないというのだ、道が。
「そんなの最初に行ってすぐにわかるとかさ」
「そういうのはないのね」
「ある程度はいけるけれどさ」
「いけるの?」
「何か直感でな」
薊の持ち前の直感でだ、道を通れるというのだ。
「行けるけれどさ」
「そうなのね」
「けれど大阪なあ」
興味と不安を入り混じらせつつだ、薊はまた言った。
「行ってみるか」
「うん、じゃあその時はね」
薊が大阪に行くならとだ、裕香は申し出た。
「私も一緒に行っていい?」
「あっ、裕香ちゃんも来てくれるんだな」
「だって薊ちゃん大阪に行ったことのないのよね」
「一度もな」
「だったらね」
それならとだ、裕香はパンを食べつつ微笑んで薊に話す。
「一緒に行こう」
「そうか、じゃあその時はさ」
「大阪はいい街よ」
「食いものが美味いんだよな」
「滅茶苦茶美味しいのよ、特に難波がね」
「あそこか」
「そう、難波は最高よ」
こうまで言う裕香だった、明るい笑顔で。
「道は結構汚れてるけれどね」
「おいおい、それは駄目だろ」
「逆にそれが難波の味なのよ」
道の汚れ、それすらだというのだ。
「綺麗なのは大阪じゃないっていうかね」
「そういえば大阪って綺麗なイメージないな」
「ないでしょ」
「ごちゃごちゃしてるイメージがあるよ」
「飾らないからね」
大阪は飾らない、あけっぴろげと言っていい。大阪を知らない人はそれがどうも、と思ったりもするらしいが。
「あと色は黒と黄色よ」
「縦縞だよな」
「人口の九割五分が阪神ファンだから」
「優勝したら道頓堀に飛び込んで」
「それもあるから」
大阪はパリーグはともかくセリーグは阪神だ、とある予備校でどの球団のファンか尋ねたところ本当に九割五分以上が阪神ファンだった、尚人類普遍の敵読売ジャイアンツのファンは極めて少ない。いいことである。
「面白いのよ」
「大阪なあ」
「そう、美味しいお店巡ろうね」
「具体的にどの店が美味いかだな」
「それならね」
これまで二人で喋っていたがここでだった、智和が再び参加してきた。彼は知的な微笑みと共にこう二人に行った。
「僕が紹介しようか」
「ああ、先輩大阪好きなんだよな」
「だからですね」
「一つ言っておくけれど大阪は庶民の街だから」
だからだというのだ。
「高級なお店もあるけれど」
「安いお店がいいんだな」
「そう、庶民とかいうとマスコミの悪質な言い回しみたいだけれど」
庶民でない者達がやたらと庶民の為と言う、左翼政党や左翼マスコミのこの言い回しには注意すべきであろうか。
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