それ行け広島カープ
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第四章
「そして有望な若手をどんどん入れようかしらね」
「高校野球からなの」
「そうね、近場の愛媛とか山口とかね」
他県の話にも及んだ。
「津久見高校とか。松山商業とかね」
「野球の強いところね」
「そう、そうした学校も囲い込んで」
「高校生のいい人を入れていくのね」
「そうするべきかしら」
「どうかしら、この考え」
「それやったらいいと思うけれど」
クラスメイトも千佳のこの提案には反対しなかった、プロ野球と高校野球の間の協定は二人共まだ小学生なので知らない。
「ライバルいるわよ」
「巨人?」
「ソフトバンクよ」
このチームだというのだ。
「あそこよ」
「パリーグじゃない」
「パリーグでもよ。ソフトバンクは巨人並に選手獲るチームよ」
「あっ、そうなの」
「お金もあるから」
「じゃあうちがそうしたら」
「ソフトバンクが福岡からね」
そこを拠点として、というのだ。
「山口や愛媛、そして遂にはね」
「広島にも魔の手を及ぼすのね」
「それで広陵も広島商業もね」
「鷹の手に落ちるのね
「あそこお金巨人以上に持ってるから」
親会社の資金力が違う、このチームの資金力は相当なものだ。
「まずいわよ」
「じゃあ岡山とか徳島は」
「阪神傍にいるじゃない」
千佳の兄が応援、いや信仰すらしているこのチームがだ。よりによって。
「阪神はお金は湧いて出るから」
「親会社お金持ちじゃないでしょ」
「日本一の人気球団だからね」
それだけに、なのだ。
「ファンも多いしテレビやネットの視聴率もグッズの売上もいいから」
「甲子園はいつも満員ね、そういえば」
「千佳ちゃんのお兄さんもよく甲子園に行くでしょ」
「阪神グッズで完全武装してね」
ちなみに千佳も阪神広島戦では甲子園に行く。赤いグッズに身を包んで三塁側で応援するのである。一塁側に入る兄とは別になって。
「暇があれば行ってるわ」
「あそこはまた別だから」
「阪神は」
「そんなことやったら岡山も徳島もね」
大阪は言うまでもない。大阪こそは阪神の大票田である。
「簡単に阪神の手に落ちるわよ」
「西に鷹、東に虎なの」
「シュミレーションゲームの弱小勢力そのままよ」
「こっちは毛利元就さんよ」
千佳は今度は安芸、即ち広島の戦国大名を言葉に出した。
「それでも駄目なの」
「相手が悪いからね」
「ううん、じゃあカープが強くなることは」
「地道に練習しかないでしょ」
「だからそれで強くなってないのよ」
千佳は口を尖らせて反論した。
「万年Bクラスなのよ」
「そこを何とかしないと」
「そう、したいけれど」
「難しいわね」
「今年もどうなるか」
千佳は難しい顔で言うしかなかった、だがこのシーズンのカープは。
後半調子をあげた、それでだった。
何とだ、千佳も信じられないことに。
Aクラスに入った、つまりそれは。
「十六年ぶりのAクラス、つまりは」
「クライマックス出場ね」
「夢じゃないわよね」
体育の授業の合間にだ、千佳は体育の授業の時に着る体操服と半ズボン姿でクラスメイトにこう尋ねた。
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