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少年と女神の物語

作者:biwanosin
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第五十五話

「はぁ・・・やっぱり無理か」

 俺はそう呟きながら、学校の正門から出る。
 とはいえ、そうもしていられないので、次の手段に移すためにも一番近くのバス停まで向かい・・・

「お、氷柱。何やってるんだ?」
「そう言う兄貴こそ」

 バス停で氷柱にあった。
 今日は土曜日なんだが・・・なんで制服でこんなところにいるんだろう?
 もう夕方だし。

「とりあえず、俺は生徒会の仕事と、図書室で調べ物をな」
「ああ、そういえば兄貴は生徒会だったわね」
「そういえば、じゃねえよ。中二のころからずっと会計やってるよ」
「お疲れ様。私は、恵那さんに頼まれていくつか確認してた」
「ああ、あの仕込みか」

 氷柱に言われて、俺はすぐに理解した。
 恵那が頼むとしたら、まず氷柱だろうしな。

「はぁ・・・あれ、間違いなく面倒ごとになってるよな」
「なってるでしょうね。私のところに霊視が降りてきたくらいだし」
「やっぱりか・・・ま、何とかうまいこと収まるだろ」

 護堂の権能はまだ一個だけとはいえ、様々な場面においてに優れている。
 それに鋼同士だからそこまで相性も悪くないだろうし。

「で?何でわざわざバス停にいるのよ。歩いて帰れる距離でしょ?」
「それは氷柱もだろ」

 ま、俺のほうから説明するか。

「俺は、午前中は生徒会やってて、午後からは学校の図書室ひっくり返す勢いで文献あさってた」
「ああ・・・それでも分からなかったから、今度は図書館に行こう、って算段?」
「お、正解」

 何でばれたのか・・・

「いや、その話とここにいることをあわせれば分かるわよ・・・」
「なるほど・・・じゃあ、何で氷柱はここに?」
「それは・・・兄貴と同じよ。時間が空いたから、図書館に行こうと思ったの。武将が顕現したんなら、鋼の神様だからアテ姉様も危ないし。そうよ、アテ姉様のためよ」

 一体誰に説明しているんだ・・・?

「だから、勘違いしないこと!いいわね!?」
「いや、何がだよ・・・」

 俺相手の説明だったみたいだが・・・結局、その意図が分からない。

「ま、目的地は同じ、ってことか。じゃあ一緒に探すか?」
「え?なんでそんな、非効率的なことをするのよ。別々に色んな文献を探った方がいいに決まってるじゃない」

 あっさりと、正論で返された・・・

「|《しまった・・・》|《一緒に図書館で》|《すごせたかもしれなかったのに・・・》」
「じゃあ、帰るときは連絡してくれよ。一緒に帰りたいし」
「・・・・・・・・・」

 俺がそう言うと氷柱は顔をそらして・・・

「仕方ないわね。いいわ、一緒に帰ってあげる」
「ありがとうございます、氷柱」

 何故だか、そんな氷柱の表情が可愛らしくて、俺は氷柱の頭を撫でた。
 氷柱も、撫でられるままになっている。

 こうやって氷柱の頭撫でるの、何年ぶりかなぁ・・・

 と、そんな事を考えていたらバスが来た。
 ・・・あれ?

「ほ、ほら!バス来たわよ!」
「あ、ああ・・・って、ちょい待ち」
「急ぐ!」

 俺は気になることがあったので乗りたくなかったのだが、氷柱に腕を引っ張られてそうも行かなくなる。
 このまま氷柱だけ乗せるよりは・・・仕方ない。このままのろう。

「・・・って、誰も乗ってないわね。この時間帯にしては珍しい・・・」
「確かに、珍しいな。ついでに、本来のバスの時間にはまだ後十分はあるぞ」

 俺が携帯で調べながらそう言うと、氷柱が怪訝そうな顔をする。

「何いってんのよ・・・」

 そう言いながら氷柱が席についたので、俺はその隣に座る。

「そんなに早くに来るはずないでしょ?どうせ兄貴のことだし、平日用のでも見たんじゃないの?」
「そうじゃねえよ。ほら」

 俺が携帯を渡すと、氷柱もそれを確認したらしい。
 怪訝そうな顔をして・・・ふと、何かに気付いた。

「そういえば、兄貴。さっきからカンピオーネの気配が出すぎてて、結構辛いんだけど・・・」
「ん?・・・ああ、霊視が降りてきかねないのか」

 といわれてもなぁ・・・

「悪い。俺、これを抑えれそうにない」
「なんでよ?」
「勝手に、体が戦うための準備をしてる」

 そう、体が勝手に戦うための準備をしているのだ。
 つまりは・・・

「まつろわぬ神が近くにいる、ってこと?」
「そういうこと。・・・って、その表情は」
「・・・見たくない現実から、目をそらしてたのに・・・」

 氷柱もまた、その気配は感じていたらしい。

「そうよ。さっきからずっと、前に話した内容が霊視されてるのよ」
「なら、近くにいるのは問題になってる神なんだろうなぁ・・・ついでに、このバスも」

 俺はそう言いながら、窓の外の光景を見る。
 そこは、見覚えのある場所ではなかった。

「ちょ・・・ここどこよ!?」
「どこかの山の中、又は異空間」

 恐らくは後者だろう。
 こんな短時間での移動で、どこかの山に向かえるとは思えない。

「・・・ゴメン、兄貴。つい焦ってこのバスに乗り込んじゃった」
「いいよ、もう。それより、今はこの状況をどうするかなんだけど・・・」
「兄貴の好きなようにして」

 俺の問いに、氷柱はノータイムで答えた。
 神と神殺しとの戦いで口を挟むのは、どれだけ無駄か分かっているのだろう。
 だからこそ、全部を俺に託してきた。

 そして、話がつくと同時にバスのスピードが落ちで行く。
 後はこのまま、止まるのを待って・・・

「っ!氷柱!!」
「え、ちょ、きゃああぁぁぁ!」

 俺は反射的に、氷柱の手をとって開けた窓から投げ出す。

 次の瞬間、俺の視界は巨大な布でみたされ、そして・・・
 
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