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魔法少女リリカルなのはANSUR~CrossfirE~

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Ep2レヴィちゃんの日記帳~Leviathan’s diary 2~

――4月12日

海上隔離施設にペッカートゥムが襲撃を仕掛けてきた。わたしは、わたしをこの世界に留める核・“生定の宝玉”の力を使って戦った。でも、1つの代を重ねた新しいペッカートゥムは強かった。そもそも始めから戦力差が違い過ぎていて敗北は必至だった。殺されるのを覚悟した。でも生き残れた。ベルゼブブから伝えられたテルミナスの命令が、わたしを助けてくれた。

――もうしばらく生きるがいい。ルーテシアの死という絶望を抱いた後で消してあげる――

そこでわたしの意識が落ちた。心身ともにボロボロというのだろうか。指一本動かせなかった。
次に目を覚ました時、ルーテシアがシャルロッテと戦っている場面を見た。ルーテシアと繋がっていることで得られる情報の1つのようだ。

痛む身体を引き摺って、ルーテシア達の居る場所を目指して移動した。そこで白天王を召喚しようとしていたルーテシアを発見。気配を消して接近。当て身を食らわせて気絶させた。
そこからテルミナスの操作から解放するために、“生定の宝玉”の神秘と、わたしに残された僅かな神秘を流し込んだ。わたしの自滅覚悟の策は上手くいった。
ルーテシアはテルミナスの存在干渉操作から解放された。でも、こんな簡単に上手くいくなんておかし過ぎた。きっとこうなることをテルミナスは読んでいたに違いない。趣味の悪い。

結果的にシャルロッテとルシリオンは、この戦いを乗り越えた。わたしとルーテシア、アギトは六課に案内されて、シャルロッテの治療を受けた。わたしはルシリオンと少し話をして、それから海上隔離施設に戻った。
それから少しして、テルミナスが滅んだ事が判った。シャルロッテとルシリオンは上手くやったらしい。さすがとしか言いようがない。もう会うことが出来ない2人に、心からありがとうと、わたしはミッドの空に向かってお礼をした。


――4月14日 曇り

姉妹たちに全て話した。わたしの正体、シャルロッテとルシリオンの事。当然信じてもらえるとは思っていなかったけど・・・

「アレだけの事を実際に体験したんだ。信じないわけにはいかないだろうな」

チンクがそう言うとみんなも頷いた。

「今まで嘘をついててごめんなさい」

「気にすることはないっスよ。昨日のことがなかったら今でも信じないと思うっスから」

「にしてもテスタメントって・・・凄過ぎだろ?」

「まぁ、シャルロッテが何であっても友達には変わりないかな」

ようやく隠し事が無くなった。なんかスッキリした。


――4月20日 晴れ

高町なのはさんが面会に来た。そして少し話をした。
ルシリオンがこの世界に残る予定だったという事、シャルロッテが還った事。そして艦が戦場となった世界にたどり着けなかった事。なのはさんがわたしに会いに来た理由が、その原因を知る為だった。

「たぶんだけど、界律が何らかの理由で拒んでいた・・・と思う」

「界律・・・、世界の意思のこと、だよね・・・?」

「そう。なのはさん達を世界が拒んだ」

理由はいくつか考えられたけど、もう全てが手遅れだから何も言わなかった。
なのはさんは「ありがとう」と言って帰っていった。とても辛そうな表情で。
次元世界の住人であるなのはさん達を戦闘に巻き込まないためか、それともルシリオンを世界に留めさせないためか。どちらにしてもルシリオンは残れなかった。


――〇月×日 晴れ

アギトが今日、ここ海上隔離施設から出る。機動六課の部隊長、八神はやてさんの家に引き取られるからだ。

「ルー、レヴィ。あたし行くわ」

「うん。またね、アギト」

「管理局の仕事、頑張って」

「おう!」

涙は出なかった。3人にあるのは笑み。必要なのは笑顔だけだから。

「寂しくなったっスねぇ」

「でもまぁアギトさんのこれからを思えば良いことだと思うよ」

「そうだな」

姉妹たちも寂しそうだったけど、でもどこか嬉しそうな顔をしていた。


〇月×日 晴れ

今日、ルーテシアのお母さん、メガーヌ・アルピーノさんが来た。
母子の再会。わたしは邪魔したらダメだと思って、面会しないようにしようとしていたら・・・

「レヴィ。レヴィも一緒に来て」

半ば強引にルーテシアに連れていかれた。
面会室には、すでにメガーヌさんが居た。スカリエッティのラボのカプセルに入っていたときにも会ったけど、こうして目を覚ましているメガーヌさんとは初めてだ。
ルーテシアとメガーヌさんの会話を聞きながら、わたしはただずっと黙っていた。

「それでねレヴィヤタンちゃん。もしよかったらだけど、私たちの家族、私の娘にならないかしら?」

「え?」

メガーヌさんがわたしに視線を移して、そんな事を突然言い出した。反応に困っていると、メガーヌさんはさらに話を続けていく。

「あなたのことは機動六課の隊長さん達に聞いたわ。ルーテシアのことを護ってくれたって。ずっと仲良くしているって。だから、あなたも一緒に私たちと暮らさない?」

「でも・・・わたし、人じゃない」

「それがどうかした?」

「邪魔じゃない?」

「そんなことはないわねぇ」

「あの・・・家族なんて勿体ないです。わたしには従者くらいがちょうどい――」

「レヴィヤタンちゃん、私の娘になりなさい」

有無を言わせないメガーヌさんの言葉。娘になっていいの? わたしは人じゃないのに?
グルグルと頭の中をいろんな言葉が駆けまわる。

「レヴィ、わたしと家族になろう。わたし、レヴィのお姉ちゃんになりたい」

わたしはルーテシアと一緒にいられるだけで十分だった。その形が従者でも友達でも何でも。それが家族になる。嬉しかった。

「お、お願いします・・・・お、お母さん」

「ええ、これからよろしくね、レヴィ♪」

今日この時、わたしは、レヴィ・アルピーノになった。


〇月×日 晴れ

今度はルーテシアとわたしがここを出ていく番だ。ルーテシアに言い渡された刑である“辺境世界隔離”の執行のために。
姉妹たちと挨拶を何度も交わして、それから管理局の人たちに連れていかれた。着いたのは無人世界の1つで、自然に溢れた綺麗な世界だった。ここからわたし達の新しい生活が始まるんだ。


〇月×日 快晴

久しぶりに日記を書きます。ここ1年半は本当に忙しかった。無人世界だから何も無い。
お買い物できる店も何もかも。そう、全て一からのスタート。でも充実した毎日だった。わたしは今すごく幸せです。


〇月×日 少し曇りかな

ルーテシアが徐々に自分を取り戻しつつある、というより取り戻した・・・らしい。
スカリエッティ(名前を出すのも億劫)のところに居た時とは全然違う。うん、ビックリするほど。
元気だ。明るい。ていうか、ホントに生まれ変わったかのような全くの別人と錯覚する。

「レヴィーーーーーー!!」

そんな大声も平気で出すようになった。どっから声出してんの?
いつも可愛いらしい笑顔で、わたしとガリューを振り回す。嫌じゃない。すごく楽しいけどメッチャ疲れる。
でもそんなルーテシアも良い。わたしの大好きなお姉ちゃん。そう呼ぶのは少し恥ずかしい。でもそう呼ぶと嬉しそうにしてくれるから、わたしはこれからもお姉ちゃんと呼び続ける。


〇月×日 雨

姉妹たちから連絡があった。みんな施設から出て、それぞれの居場所で頑張っているとのことだ。
チンク、ノーヴェ、ディエチ、ウェンディの4人は、ナカジマさんのお家へ。
セイン、オットー、ディードの3人は、聖王教会のカリムさんとシャッハさんのところへ。
みんなはそれぞれを始めて頑張っている。わたしも頑張って強くならないと。


〇月×日 晴れ

久しぶりに日記を書く。
最近はどうも眠い、激しく眠い、超眠い、どうしようもなく眠い。
成長期じゃない?とか、いろいろとお姉ちゃんとお母さんに言われた。
そんなバカな、って思った。だってわたしは生きているけど人じゃないんだから。
成長だなんて有り得ない。そう、わたしは今の姿のままで時を過ごす。ちょっとつまらない。
成長して、大人になって・・・。わたしにもそんな時間があれば良かったんだけどな~。


〇月×日 晴れ

日記を書く作業が毎日じゃなくなってきた。ごめん、シャルロッテ。
今日も友達が遊びに来た。最近はヴィヴィオとそのお友達が多いかな。
リオとコロナという子だ。でも残念、今日は予定が合わなくて来られないらしい。
今回はヴィヴィオと、元六課のなのはさん達を始めとした、元六課の前線組の人たちが来てくれた。

そして今日も勃発する世界一小さい闘い、お姉ちゃんとキャロの軽いじゃれあい。
歳の割には小さいだの何だのという。どうでもいいような事。口にはしない。飛び火は勘弁なのだ。
そしてキャロはいつも決まってやられ役。少し可哀想。お姉ちゃんがご迷惑おかけします。

「うちのレヴィだって少しは大きくなっているのに。キャロは全然成長してないね。ちゃんと食べてるの?」

「なんですとおぉぉぉぉぉぉ!!?」

ルーテシアの言う通り、わたしはなんだか成長している。
背だって伸びたし、おっぱいも大きくなった。ちょっと邪魔。これではまるで人間のようだ。
シャマル先生に調べてもらったところ、今のわたしは人と変わらないということだった。
ちゃんと肉体を得ている人そのもの。これも“生定の宝玉”のおかげなのかな?

実際に今のわたしはキャロより大きい。いろいろなところで大きい。それを自慢するお姉ちゃん。そしてヘコむキャロ。顔を赤くしてここから離脱しようと試みるエリオ。それを止めるルーテシアとキャロ。

わたしはそれを横目に離脱。助けを求めるような視線を向けてくるエリオを放置(エリオは涙目)して、その場を後にした。
そしていつも通りの練習会と称した模擬戦訓練。今回はわたしも半ば強制だけど参戦することになった。いつもはガリューと同じ見学組なんだけど・・・(トホホ、です)

「では、いきます・・・!」

わたしが今回担当することになったのはガードウィング。前衛、若しくは中衛だ。
一応今回は・・・だけど。わたしはフルバック以外ならどこでもいける。もっとも得意なのは最前線のアタッカーだけどね。
わたしだって毎日欠かさずに訓練している。お姉ちゃんとお母さんを害する全ての敵から護るために。
だからそれなりの力を付けているつもり。今日はそれを実戦で試すいい機会だ。

「手加減はしない、レヴィ・・・!」

対するのは同じガードウィングのエリオ。
さっきわたしが見捨てたことを、エリオが根に持っていないことを祈るばかりです。
そして始まる練習会。思っていた以上にエリオは速く、なにより強くなっていた。
昔のわたしなら余裕で撃墜できていたと思うけど、今じゃあまり上手くいかない。いつの間にか後ろを取られて、攻撃しようとしてきたエリオに一言。

「い、痛くしないでね?」

「なっ!?」

振り向きざまに上目遣いでそう言ったら、エリオが顔を真っ赤にしながら停止。
チャンスだ。わたしの射撃魔法・集中砲火の刑リンチ・ストライカー(仮)を放つ。
すみれ色の魔力弾が、顔を赤くして機能停止していたエリオに降り注いだんだけど、それをギリギリで躱したエリオ。
再度攻撃しようとしてきたから・・・

「や、優しくしてね?」

「だぁぁぁぁぁぁぁぁ!?」

そう叫びながらわたしの目前で再停止。再びチャンス到来。もう一度リンチ・ストライカーを放つ。
それをまた回避したエリオ。肩で息をしながら恨めしそうにわたしを見てくる。そのすぐ後にまた攻撃に転じてきた。わたしの連続砲撃や牽制射撃を上手に回避したエリオ。

「ホントに痛くしちゃダメ、だよ?」

「レヴィーーーー!! もうそんな事を言うの本当にやめてぇぇぇぇーーー!!」

二度あることは三度ある。またエリオがわたしの目前で動きを止めて叫んだ。
なんだか知らないけど、ルーテシアの言う通りに言ったらエリオを無効化できた(少しの間だけど)。
頭を両手で押さえて思いっきり頭を振るエリオに向けて、特大砲撃・紫光掃破ハーツイーズ・ドライヴを放つ。今度こそエリオは避けられずに直撃、ようやく撃墜した。

「エリオ・・・」

「エリオ君・・・・」

「優しいバカだな」

哀れんだ視線が、気を失って倒れているエリオに集中する。
結局、練習会は負けたけど、充実した時間で楽しかったのは言うまでもない。
そんな楽しい日々が続いている。これもルシリオンとシャルロッテのおかげ。本当にありがとう。


〇月×日 今日も清々しいほどの快晴です❤

お姉ちゃんが目覚めたよ♪ すごいね、ハイテンションが限界のレベルじゃなかったんだ!
建築設計だとか、デバイス開発なんていうのもお手の物。
物すごい勢いで家の隣に建てるべく、宿泊ロッジの設計を組んでいくしビックリなの☆
今はわたしとお姉ちゃんとガリューで、お手製のアスレチック施設を作ってるんだ❤
すっごく楽しい!! でもでも、お姉ちゃんのハイテンションにはいつまでもついていけない。
はぁ、今日も疲れた。元気いっぱいなのは嬉しいけど、限度というのも知ってほしいかも・・・。


〇月×日 今日もハ・レ♪

温泉が出た(ホント唐突だけど)。お姉ちゃんの掘ってみようという突拍子もない提案。
あぁ、元気になり過ぎてとうとう頭がおかしくなったのか・・・・。
自信満々に馬鹿笑いしている残念なお姉ちゃんにちょっと憐憫の目をやった。
出るわけがないと思いつつもガリューと頑張って穴を掘っていると、温泉が出た。

「な、何で・・・温泉が出るって・・・・?」

濡れないように穴から離れながら、目を輝かせているお姉ちゃんに聞く。

「夢に出てきたから♪」

すごいと思った。
お姉ちゃんは夢で見たことをただ信じて、わたし達に穴を掘らせたらしい。
予知夢というやつだ。何ていう行動力・・・。驚きを通り越して少し呆れるよ・・・。
そもそも出なかったとき、わたしにはどんな謝罪をするつもりだったんだろう。
そんな風にわたしの毎日は輝いている。これからも、もっともっと楽しい日々が続くと思うと、すごくドキドキする。

シャルロッテ、ルシリオン。2人は今、どんな世界で、どんな契約で、どんな戦いを繰り広げてるんだろう。何年か、何十年か後でもいい。もう一度会って、ちゃんとお礼を言いたいよ。 
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