稲荷の祟り
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第三章
「夜になるとか」
「ああ、狐の鳴き声が聞こえるってな」
「狐が集まってる?」
「その中心には人がいるのか」
「それは本当かね」
「嘘じゃないのか?」
こうした不気味な噂話が出ていた、そしてだった。
工事を担当していた業者の間からもだ、不安がる声が出ていた。
「まさかな」
「ああ、祟りじゃないのか?」
「お稲荷さん壊したからな」
「だからな」
「俺達にしてもな」
「何かあるんじゃないのか?」
「祟りな」
それの不安を感じての言葉だった。
「それがな」
「俺達に来ないか?」
「やばいよな、それ」
「ああ、かなりな」
「何が起こるかわかったものじゃないぞ」
「そうだな、霊木も切ったし鳥居とかも壊したからな」
だからだとだ、ここでだった。
その業者の社長も真顔で言った、ここはどうするかをだ。
「全員であの神社に行くぞ」
「はい、そしてですね」
「お祓いをしてもらうんですね」
「揚げも一杯持って行くからな、お布施もな」
その両方もだというのだ。
「いいな、そうしてな」
「そのうえで、ですね」
「許してもらうんですね」
「これはやばい」
社長は本能的にこのことを察していた、それで社員全員に言ったのだ。
「そもそもこの仕事はな」
「受けるべきじゃなかったですね」
「まずいですね」
「ああ、知事さんの依頼だったがな」
それでもだというのだ。
「神様だからな」
「じゃあすぐにですね」
「全員で行きましょう」
こうしてだった、工事を担当した業者は社長以下全員がその神社に行きお祓いとかなりのお布施を行った。それで神主に言うのだった。
「あの、俺達は」
「その、許してもらえますか?」
「神社を壊しましたけれど」
「それでも」
神社はかなり狭くなっていた、ついこの間までの面影は何処にもない。その神社で神主に対して問うたのだ。
「いいですかね」
「大丈夫ですか?」
「はい、ご安心下さい」
神主は落ち着いた顔で社長達にこう答えた。
「お稲荷様は優しい神様なので」
「だからですか」
「許してくれますか」
「心から謝れば」
その時はというのだ。
「ご安心下さい」
「そうですか、じゃあ俺達は」
「許してもらえるんですね」
「そうです、貴方達は心から反省していますので」
彼等は大丈夫だというのだ、それでだった。
神主は彼等にだ、この話をした。その話はというと。
「実はこのことに関わった県庁の方もどの方もです」
「ここに来てですか」
「お祓いを受けてるんですか」
「揚げとお布施を持って来て」
そのうえでだというのだ。
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