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ふざけた呪い

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第五章

「折角八十五年再びやったのにな!」
「あんな助っ人何で獲得したんや!」
「うちのフロントは何や!」
「まだケンタッキーのおっさんの祟りか!」
「それが続いてるんか!」
「何ちゅうしつこい呪いや!」
 今もまたこの話だった、とにかくグリーンウェル事件は痛恨だった。
 それからもマスコミを落胆させ失笑させる外国人補強が続いた。それは野村克也が監督になっても変わらない。
 野村が監督になってもだった、彼等は希望を見た。
「知将が来てくれたなあ」
「ああ、今度こそやってくれるで」
「阪神を優勝させてくれるわ」
「これで暗黒時代脱出や」
「優勝や」
 ここからすぐに、本当にすぐに優勝となるのが阪神だ。だがあの呪いは強力だった、それで野村になってもだった。
 最初は強い、シーズンがはじまると。
 だが春が終わるとだった、毎年。
 あれよこれよと負ける、ピッチャーが踏ん張っても打たない、とにかく打線が呆れる程打たないのだ。攻撃時間の短さは異様なまでだった。
 毎年負けて負けて負けまくり、助っ人は所謂スカタンで。
 野村は遂に達成した、ある逆偉業を。
 同じ監督で同じチームで三年連続最下位、最早希望はなかった。
「あかんわ・・・・・・」
「また最下位や」
「あれが阪神を十九対三で破った人かいな」
 九十一年のことだ、十連敗の後やっと一勝出来たと思えばその後でまた七連敗、しかも最後はヤクルトに十九点取られて負けたのだ。暗黒時代そのものだった。
 そしてそのヤクルトの監督が野村だった、だが。
 野村を以てしても勝てなかった、今の阪神は。
「誰がなっても同じか?」
「首相みたいなもんか」
 実際は首相も誰がなっても、ではない。日本人は左翼政権が誕生した時にこのことを嫌になる程味わった。
「阪神の夜は明けへんのか」
「暗黒時代は続くんか」
「新庄はアメリカに行った」
 頼みの綱のだ。
「中継ぎ課は頑張ってるけど打たへん」
「しかもシーズンオフはお家騒動や」
 阪神恒例のだ。
「野村さん辞めたなあ」
「次は星野さんか」
「今度こそ大丈夫か?」
「いや、あかんやろ」
「流石にな」
 幾ら阪神ファンでもだった、この状況ではだった。
 希望を見いだせなかった、暗黒時代は永遠でしかも。
「あのおっさんも健在やしなあ」
「絶対甲子園に常駐しとるわ」
「道頓堀やなくてな」
「甲子園におるわ」
「魔物と一緒にな」
 甲子園には魔物がいると言われている、しかも魔物に加えてだった。
「あのおっさんもおる」
「幾ら星野さんでもなあ」
「阪神あかんやろ」
「このまま負け続くで」
「来年も最下位やろな」
「そうなるやろな」
 流石の阪神ファンも諦めていた、だが。
 星野はやってくれた、阪神を立ち直らせてくれた。就任一年目は主力の怪我が中盤に続き息切れしてしまった。しかし。 
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