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IS-最強の不良少女-

作者:炎狼
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邂逅

 学園祭が近づくにつれ、段々と学園内にも慌しさと学園祭の待ち遠しさが入り混じったような雰囲気に包まれていた。

 響達のクラスでもそれは同様であり、クラスの女子達は嬉々とした表情を浮かべながら学園祭の準備を着々と進めていた。

 そして、一日の授業が終わった放課後もそうであり、あちらこちらから活気のある声が聞こえる。

「ったく……。なんで私がこんなことを……」

 その中で響は一人大きな荷物を持ち、廊下を歩いていた。学園祭の準備など毛頭やる気がなかった響であるが、どうにもクラスの女子たちは結構大掛かりな飾りなどをするようであり、使う機材や当日着る衣装のための布など、様々なものが必要なのだという。

 普通であれば重い荷物を運ぶのに最適といえるのは男の一夏だ。しかし、一夏は楯無との訓練で学園祭の準備どころではない。

 そのため白羽の矢が立てられたのが響と言うわけだ。

「まぁ衣装作れとかいわれねーぶんまだ楽だけどなぁ……それにしたって使うもん多すぎだろ」

 大きく溜息をつく響だが目的の教室はすぐそこだ。

「うぃー、持ってきたぞと」

 器用に足を使い教室の扉を開け放つと、待ってましたとばかりに女子達が殺到した。

「お疲れ様ー鳴雨さん! 後は楽にしてていいよー」

「最初っからそのつもりだっての。あーだるかった」

 床に荷物を置いた響はやれやれといった様子で適当な椅子に座った。女子たちは響が持ってきたダンボールをあけ、中から衣装となる布を取り出し、皆それぞれ自らの作業へと戻っていった。

「お疲れ様ですわ響さん」

「おーぅセシリアか。つーかよぉ私帰っていいかな?」

 気だるげにだらりとしながらセシリアに問う響だが、セシリアはそれに首を振った。

「ダメですわ、だって響さんまだ学園祭の衣装の採寸をしておりませんもの」

 そういうセシリアの手には巻尺が握られており、なぜか彼女は頬が緩んでいた。それに対し、響は一瞬顔を引きつらせると椅子から跳び起き、目にも止まらぬ速さで教室を飛び出した。

 セシリアもそれに一拍遅れるが、すぐに響を追いかけた。

「響さん!! 逃げないでください!!」

「逃げるに決まってんだろーが!! そもそも私はクラスの出し物に付き合うつもりはねーって言ってんだろ!! けどそれよりも、今はお前のその笑みが怖い!!」

 追ってくるセシリアの笑みはなんとも恍惚とした感じで、なにかやたら興奮しているように見えた。

「何も怖いことなんてありませんわ!! ただちょっと服を脱いでもらって体の隅々まで採寸して……ムフフ。じゅるり」

「だから、その気味悪い笑い方をやめろってーの!! あと舌なめずりすんな!!」

 明らかに異常な興奮状態のセシリアから逃げる響が全力で走っているためか、セシリアは引き離されてしまう。しかし、彼女はニヤリと笑うと、高らかに告げた。

「行きましたわラウラさん!!」

 叫ぶと同時に響の前方にラウラが現れる。彼女の手にはロープの束が握られており、更にロープの先端にはゴム製と思われる鍵爪が取り付けられていた。

「お前もかよ!?」

「あぁ、学園祭は皆で楽しむべきだと言われたのでな」

「また例の副官か!!」

 目の前に立つラウラに向かって速度を緩めずに駆ける響はあきれ返った表情をするものの、廊下を力強く蹴ると、ラウラの頭上を飛び越え、彼女の後ろに華麗に着地しまたしても一気にかける。

 しかしラウラもこれは想定していたようで、冷静に響を見据えると持っていたロープを回し、鍵爪を響に向かって全力で投げる。

「そんなもんが効くかってぇの!!」

「それぐらいわかっているさ。時に響、前方はよく見たほうがいい」

 投げられた鍵爪つきロープを軽々と避けた響に対し不敵な笑みを浮かべたラウラ。それに怪訝な表情を浮かべた響は前方を見る。

「……おいおい」

 頬を引きつらせる響の瞳には、ロケットランチャーを構えるシャルロットの姿があった。

「ゴメンね響。けど、今回はおとなしくつかまって欲しいかな!!」

「学校でそんなもん撃っていいのかよ!!?」

「心配するな。織斑教官からは許可状はもらっている」

 響の後ろで誇らしげに胸を張るラウラに内心で舌打ちをしながらも、響は逃げ場がないかと辺りを見回す。

 すると、シャルロットの少し手前の窓が開いているのに響は気がついた。

 ……一か八か!!

 内心で覚悟を決めた響はラウラのときと同じく速度を一切緩めず突き進む。シャルロットは響をしっかり射程内に納め、引き鉄をひいた。

「終わりだよ!!」

 打ち出された弾は実弾ではないが、それは響に向かうにつれ形状を変化させ大きな網になった。

 やがて響に着弾する頃には網は廊下いっぱいに広げられ、逃げ場がないように見える。

「なんのこれしきぃ!!」

 響は叫ぶと、スライディングの要領で廊下の端を沿うように網を潜り抜けた。幸いにも網の形が丸だったので廊下の隅に僅かながら隙間が生まれていたのだ。

 すばやく立ち上がる響はシャルロットのギリギリ手前で止まると、窓の桟に足をかけ二階から飛び出した。

 そのまま地面に着地した響は上で悔しがっているであろう三人を見るため振り向こうとするが、背後に殺気じみたものを感じた。

「残念。引っかかってくれてありがとう響ちゃん!」

 人を試すようでありながら、お茶らけたようでもある聴きなれた声にすぐさま退避行動をとろうとするが、既に時遅く、次の瞬間響は先ほどの網と同じようなものを頭からかぶせられた。

「くっそ! なんでテメェがここにいんだよ楯無!!」

 網の中に捉えられ、完全に身動きをとることができなくなった響は悔しげに声の主である楯無に問う。

「今日は一夏くんに自主連課題を置いてきたからね。今彼はそれの真っ最中だと思うから、暇つぶしに遊びに来たの。……これでいいかしら、オルコットさん!」

 響の問いに答えた楯無は上の窓から顔を出すセシリア達に告げると、セシリアもそれに大きく頷く。

「ばっちりですわー! ありがとうございます生徒会長!」

「はいはーい。……それじゃあ響ちゃん、クラスに戻って採寸をしてもらいなさい。大丈夫よ私もいるから」

「お前がいる時点で全然大丈夫な気がしねぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!!」

 無残な響の絶叫も楯無は軽く受け流すと、彼女はそのまま響をひょいっと担ぎ上げクラスまで連行して行った。

 数分後、一年一組から響の断末魔が聞こえたのは言うまでもない。







「あー……ひでぇめにあった」

 寮の廊下を背中を丸め猫背で歩く響からはいつもの覇気が感じられず、かなりげっそりとしていた。

 あの後クラスに連行された響はシャルロットに羽交い絞めにされ、ラウラに足を拘束され、セシリアの巻尺による採寸で散々いろいろなところを測られたのだ。

「つーか、あいつ等途中から楽しんでたな……。今度締めとく必要があるか……」

 拳を握り締め光の灯っていない瞳で呟く響からは黒いオーラのようなものが溢れ出ているように見えた。

 しかし、響は大きな溜息をつくと軽く頭を振った。

 その時、響の隣を眼鏡をかけた少女が通り抜けた。同時に少女の制服のポケットからボールペンが落ちた。それに気がついた響はペンを拾い上げ、少女に声をかける。

「おい、そこのお前」

 呼び止められた少女は一瞬ビクッとしたが、おずおずとした様子で響の元までやって来た。

 ……なんか、久々だなこの反応。

 最近になってあまり自分のことを怖がらなくなったクラスの連中のことを思い出していると、少女のほうが声をかけた。

「あの……なにか?」

「お、おぉわるいわるい。ペン落としてたからな、ホレ」

 拾い上げたペンを差し出すと、少女は少々慌てた様子でそれを受け取った。

「あ、ありがとう」

「おう、じゃあな」

 響はそのまま踵を返し、自分の部屋へと戻っていくが、少女のほうは暫く響の後姿を見つめていた。






 そして、いよいよやって来た文化祭当日、賑わう校舎を他所に、響は寮の自分の部屋で鏡を前にしながらある作業をしていた。

「ったく……本当に落ちるんだろうなこの黒染めスプレー」

 その作業とは響の金髪を黒く染めることであった。これはセシリア達が所望したことであるのだがクラスの大半の女子は見たがっていたとかいないとか。

 スプレー自体はシャルロットが調達してきたものなので信用は出来るのだが、今までずっと金髪だった響にとっては違和感しか感じられなかった。

「……よし、だいたいこんなもんか?」

 櫛を使い斑がないか確認する響だが、鏡の中に写る自分に内心面白がっていた。

 ……なるほど、黒髪にするとイメージ違うな。

「ふむ……。この際だから髪型もきっちり決めてみるか」

 響は机の上に置いた櫛を再度掴むと、髪を梳き始めた。元から完全ストレートではなく、クセがついていた部分もスプレーのおかげでストレートにすることができ、はたから見ると不良生徒ではなく、いいところのお嬢さまのようになった。

「なかなか面白いな。っと……そろそろいかねぇとダメか」

 時計を確認した響は部屋を後にした。

 部屋を出て学園に近づくにつれ、響は妙に見られていることに気がついた。しかし、響は特に気にすることもなくクラスへの道を急いだ。

「オイッスー」

 クラスへ到着した響は勢いよく扉を開け放つ。ほぼ同時に皆がそちらを見るが、皆一様に首をかしげた。

「え、アレ誰?」

「鳴雨さんの声がしたと思ったんだけど……」

「いないね。もしかしてサボっちゃってる?」

 クラスメイトから聞こえてきたのは地味に傷つく言葉だった。

「お前ら……人に黒染めしてくれって言ったのはどこのどいつらだったけなぁ!!」

 若干声を荒げ、指をゴキゴキと鳴らす響の行動にやっと気付いたのか、クラスメイトたちは声を上げた。

「え、うっそマジで鳴雨さん!?」

「黒髪かわいいー!」

「ちょっと髪型も変わってるよね?」

「金髪鳴雨さん×黒髪鳴雨さん……イケる!!」

 口々に驚きや賛美の声を上げクラスメイトの中におかしな発言をしているものもいたが、響はそれに溜息をつきながらも近場のクラスメイトに問う。

「なぁ私の衣装ってどれだ?」

「あぁうん。鳴雨さんの衣装はこれ!」

 そう言って取り出したのは長めのスカートにフリルがいっぱいついたメイド服だった。他のクラスメイトはメイド服であるものの、中には短めのスカートのものもいる。

「うまいもんだな」

「でしょー。クラスのみんなで作ったからね。因みに鳴雨さんのエプロンスカートにはちょっとしたおしゃれがしてあるんだよ」

 そういって彼女はエプロンスカートのエプロンの部分をたくし上げる。そこには『喧嘩上等』とでかでかと刺繍が施されていた。

「おぉう……さ、サンキューな。じゃあちょっくら着替えてくるわ」

 若干苦笑いしながらも響はメイド服に着替えに行った。

 数分後、メイド服に袖を通した響が再度皆の前に姿を現すと、またしてもクラスメイトから様々な言葉が飛んできた。

「黒髪メイドよし!!」

「鳴雨さんグッジョブ!!!!」

「後で写真取らせて!! ファンクラブの画像掲示板にUPするから!!」

 その光景に響は頭を抱えながら大きく溜息をついた。

 喧騒が止んだ頃、響はフラフラしている本音に聞いた。

「おい本音。セシリア達はどっかいったのか?」

「うん。すこし見てまわってくるってさー。多分そろそろ帰ってくるんじゃないかなー?」

「ただいま戻りましたわー」

 本音が言い切るとほぼ同時にいろいろと満喫してきたのかホクホク顔のセシリアとシャルロット、ラウラが戻ってきた。

「おう、おかえりさん。楽しんできたか?」

「えぇ響さんそれはもう――」

 そこまでセシリアが行ったところで三人の顔が固まり、一拍置いて予想通りの言葉が帰ってきた。

「「「誰っ!?」」」

「お前らもかよ!! いや、まぁ予想はしてたけどね!!」

 ツッコミを入れながら響はまたしても大きく溜息をついた。

 その後、一夏も合流しいよいよ学園祭も本番となり、クラス中は一夏に接客してもらおうという女子で溢れかえった。

 因みに、一夏や箒も響を見たときはセシリアたちと同じ反応を見せたと言う。






 いまだクラス内の活気は冷める事はなく、今は執事服一夏との写真撮影が行われている真っ最中だ。それを頬杖をつきながら眺める響はなんとも暇そうである。

「なぁシャルロット」

「なに?」

「私らいなくてもアイツ一人で機能すんじゃね? この出し物」

「……まぁそうかもねぇ」

 響の的を射た発言に同じくメイド服のシャルロットは微妙な表情をする。まぁ実際本当に一夏がいれば殆ど事足りているので特に響達が出る幕はないのだ。

「暇そうね響ちゃん」

 ふと、後ろから楯無の声が聞こえたかと思うと、彼女はそのまま響の首に手を回し抱きついた。

「いきなり出てくんな。あと抱きつくな熱い」

「あら、残念。まぁそれよりも……」

 楯無は言うと、更に響に深く抱きつく。それを隣で見ていたシャルロットがうらやましそうな表情をしているものの、楯無は響耳元で小さく告げる。

「……ちょっとばかし嫌な予感がしてきたから響ちゃん。一夏くんの監視お願いね……」

「……了解……」

 響もまたそれに頷くと、口角を吊り上げ面白そうに笑みを零した。

 ……さぁて夏以来のおもしれー喧嘩が出来そうだ。

 内心でもしかしたらこれから起こるかもしれない戦いに胸を高鳴らせる響だが、楯無は響を解放すると、一夏の方へ歩を進めた。

 それを見送りる響の後ろには黒いオーラを纏ったラウラとセシリア、シャルロットが控えていた。

「……響さん、今のは一体どういうことですの?」

「……納得のいく説明をしてもらいたいものだな」

「……ちゃんと答えてね響?」

 後ろから感じる威圧感にまた別の意味で口角をヒクつかせた響だが、ふとそこで楯無が合図を送った。一夏が休憩に入ったのだ。

 彼はそのまま教室を出て行く。恐らく先ほどの合図は追えということなのだろう。

「悪いお前ら。ちょっとばかしまわってくる。その話はまた後でな」

 響はすぐさま椅子から跳ね起きると、三人の返事を聞かないまま一夏の後を追った。






 一夏の後をつける響は同時に周囲にも気を配る。今のところ特に何もないようだが、その瞬間は突然やって来た。

 一夏が階段の踊り場へと差し掛かったところで、彼に声をかけるスーツ姿の女性がいたのだ。

 尾行していることがばれないように響は降りることはせず、階段の影から二人の姿を見張る。

 女性のほうはなにやら名刺のようなものを一夏に渡しているようである。はたから見れば一夏へIS用の武装の提供などと言った勧誘だろう。

 しかし、響はその女性が纏う雰囲気を無意識のうちに感じ取り、ギラリとその歯をむき出しにし笑みを浮かべる。

 ……うまい感じに隠してるつもりなんだろうが……。それじゃあ私の目は誤魔化せねぇ。

 女性が纏っている雰囲気では一般人では感じ取ることも出来ないであろう闘争心だ。戦いたくてたまらない。相手を潰したくてたまらない。弱者を捻り潰したい。などと言った狂気にも満ちた雰囲気をその女性は持っていたのだ。

 すると、話が終わったのかそれとも一夏が強引に切ったのかわからないが、一夏は踊り場から降りた。

 その後を追い、響もまた階段を下りるが、彼女は先ほど一夏と話していた女性の隣を通り過ぎる時、彼女に向け以前ラウラにしたときと同じように殺気を放つ。

 瞬間、女性が反応するが、既にそこに響の姿はなく彼女は僅かに首をかしげた。

 階段の影でそれを確認した響はもう一度ニヤリと笑みを浮かべ、小さく言い放った。

「……いい反応じゃねぇか亡国機業。それがハッタリじゃねぇことを祈るぜ……」

 響はそのまま一夏の尾行を続けるため人の波へと消えていった。 
 

 
後書き
お待たせしました
久々に書いたから変なところもありますね……申し訳ない。

ついに亡国機業との邂逅でございます!
次の話辺りで一夏がオータムに襲われる辺りまでいけたらと思います。

途中で出てきた眼鏡女子はあの子でございます。

感想などありましたらお願いします。 
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