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Sword Art Online~星崩しの剣士~

作者:黒翼
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06:Alive

 
前書き
今回はサチ視点となります。
途中からメテオ視点に戻りますがw 

 
現在、私は窮地に陥っていた。
第27層の小さな隠し部屋は、私と溢れかえったモンスターで一杯···もう、「死」以外の選択肢はないの?
···ううん、私以外にも1人いる···長く蒼い髪をなびかせた、男性···と言うより女性なのかな···?
武器は、このSAOではない筈の鋼拳(ナックル)···おそらく、数少ないユニークスキル。
その人は、ただ静かに、私を守るように立っている。

「···下がっていろ、こいつ等は僕がしとめる」

その人は私にそう言うと、少し微笑み敵へと向かっていった。
一瞬、その笑顔にどきっとしてしまった···。

「···い、今はそんな事より、身を守らないとっ···!」

私はすぐに壁の端へ移動し、大きな盾でその身を潜ませる。
こう言う時、盾持ち片手剣士にjobチェンジしておいてよかったと思う。
私は盾の隙間から顔を出し、様子を伺う。

「···セイッ!」

その人は体を捻らせ、回転しながら拳を前につき出す。
Mobは一気にその数を減らすが、数は一向に増えるばかりだ。
この戦闘は、いつまで続くのか···。
終わらない恐怖と不安に抱かれながら、私はその戦闘の終わりを待った―――。

* * *

「···これで、ラストだっ······てやっ!」

その人の拳が唸り、敵の体を貫き、そして敵は体をポリゴンの欠片へと変えた。
戦闘は数10分で片付いた。
一方的なもので、その人が拳を振るえば敵は吹き飛び、すぐさま数を減らした。
その人は驚く事にソードスキルを一度も使用していない。
ただ殴る、蹴ると言う動作だけで殲滅した。
私がただただ立っていると、扉が開き、外から黒猫団の皆が入ってきた――。

* * *

遡って少し前、俺達は開かぬ扉の前で話し合っていた。

「どうするんだよ、サチはまだこの中だってのにっ···!」

「知らないところでサチが死んだなんて知ったら、ケイタが可哀想だろっ···」

口々にそう言う黒猫団の皆。
確かに、中にいるのはサチと大量のモンスターだけ···。
―――否、中にはもう1人···誰も気付いてはいなかったが、この中にはサチとモンスター以外に誰かがいるのだ。
それが誰なのか···正体は定かではないが、敵でない事は確かだ。
敵であるなら、こんな危険な場所に自らすすんで入る訳がない。
俺はそれを皆に伝えるべく、無理に思考を遮断して口を開く。

「皆、聞いてくれ。······おそらく、中にはサチとモンスター以外にも···誰かいる」

「本当か!?」

キリトが、驚き目を見開きながら俺に訊いてくる。

「こんな状況で嘘はつかねーよ。···剣が折れて、扉が閉まる瞬間···誰かが凄いスピードで入って行ったのが見えた。多分、かなりのLVだ」

「だ、だったら、サチが助かる可能性がまだ残ってるんだよな!?」

「···絶対じゃないけど、50%ってとこだ」

俺がそう言うと、皆は安心したような顔になった。
俺達はそのまま、扉が開かれる瞬間を待った―――。

* * *

数10分経過したところで、扉がゆっくりと開かれる。
全員が一斉に立ち上がり、扉の中へなだれ込むように入る。

「サチ、無事かっ!?」

キリトが、へたりこむサチに駆け寄る。
俺はと言うと、その光景を少し離れたところで眺めている男性(てか女性?)を見る。
長く蒼い髪は丁寧にケアされていて、光っている。
左の肩からそれを垂らしている···いわゆるおさげだな。
······どう見ても女だろ。
俺がそんな事を考えていると、サチが口を開く。

「あ、あのっ、助けてくれてありがとうっ···」

サチがお礼を言うと、その人はこちらに向き直り、一度頭を下げた。

「自己紹介が遅れた、僕はエース。ユニークスキル《壊撃拳》の使い手だ」

「ユニークスキルだと!?」

俺はそう、大声で言った。
ユニークスキルとは、唯一1人だけが持つスキルの事だ。
つまり、オンリーワン···自分だけのスキルだ。
――俺にも、本当は······。

「おい、メテオ···何で黙り込んでんだ?」

「あ、ああ、悪い悪い···」

その声で思考を中断し、目の前の事に集中する。

「えっと···サチを助けてくれてありがとう、エース。一緒に街まで戻らないか?」

「ああ、そうだな」

俺達は一度街まで戻る為、その場を後にした。

* * *

俺達が街まで戻ると、ケイタが俺達を出迎えてくれた。
俺達はあった事を全て話した。

「そうか···でも、メテオ。君はどうして扉が閉まるって分かったの?」

くそ···やっぱりきたか···。
···もうそろそろ、潮時なんだろうな···黒猫団の皆を欺き続けるのも。
俺は顔を上げ、本当の事を告白した。

「···それは、俺が元ベータテスターだから。···いや、"ビーター"だから」

「何っ!?」

ケイタは驚いたように叫ぶ。

「よく聞け。俺のLVはとっくに50。そして、そこにいるキリトも既に40後半だ。····けど、キリトは俺が脅して嘘をつかせたんだ。だから、悪いのは俺···悪のビーターだけだ」

「···っ、ビーターのお前が僕達に関わりさえしなければ、皆が危険になる事もなかったんだ!!」

ケイタはそう言うと、俺をギルドから脱退させ、キリト達を連れて何処かに行ってしまった。
俺はそれをただただ見つめ、そして見えなくなってから逆方向に歩き出した―――。

* * *

誰かが俺の後ろを歩いている。
振り向くと、そこには青年――エースが立っていた。

「よっ、エース」

俺が軽い口調で話しかけると、エースは少し重い口調で話す。

「君は···メテオは、わざと自分が敵になるようにしたんだな」

「···まあな」

「···ふっ、君は優しいな。···僕も、メテオに同行しても構わないだろうか?」

エースは唐突に訊いてくる。

「構わないぜ、エース!」

その後フレンド登録をし、俺達は歩き出す。
―――また新たに敵を作った···生き抜く上では仕方ない事だ···けど、少し辛いな···。
俺は顔を上げ、次なる試練への道へと一気に駆け出した―――。 
 

 
後書き
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