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鬼灯の冷徹―地獄で内定いただきました。―

作者:achi.
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壱_その日、わたしは死にました?
  二話


 さて、と若干重い腰を上げる。
時々、思う。自分の人生の最初から最後まで全部、誰かにきっちり決めてもらえればどんなに楽かと。
自分で選択して、失敗するのが怖いのだ。だから誰かに任せたい。
そんなことは現実的に皆目無理なことではあるけれど、そんなことはわかっているけれど、ミヤコはふとそんなふうに考えてしまうことがあった。

「よし、行くか」

心の中で言う。しかし、就活にこんなに悩まされている自分が少し嫌でもあった。
カフェの外に出ると、一気に足元から冷たくなった。
雪がちらつく寒空の下、これから心も寒くなるのかと思うと、憂鬱だった。
圧迫面接をする面接官など、みんな箪笥の角に小指をぶつけまくればいい。
まだ学生のぺーぺーな自分たちを弄んで、困らせて楽しんでいるのだ。鬼だ!
これから採用していただくために行くというのに、酷い文句である。彼女は滅入っていた。
自身も何がそれほど精神的にガックリきているのか説明できなかったが、就活を甘く見ていたことは事実だと認めざるを得なかった。


さっきも来た横断歩道。信号待ちをする。
面接官よ、小指の件は謝りますからどうか手応えをください。
むしろ採用よりも、今は手応えをください。
ミヤコは目的地を前にして、またもそんな身勝手なことを思っていた。
信号が青に変わる。よし、勝負の時だ。
彼女は前へ進む。

「・・・・・・えっ」


横断歩道の真ん中辺りにいた加瀬ミヤコ。
彼女は息を呑むのと同時に、そう呟いた。衝撃で、自分に雷でも落ちたのかと錯覚した。
空を切り裂くような鋭いブレーキ音と、悲鳴。
ミヤコに見えたのは、逆さまになったこの世界と、赤い乗用車。
世界がスローモーションになっている。

「お、おい!君、しっかりしろ!!」

人形のように宙を舞う、とは上手い表現らしい。
ミヤコは頭がぼんやりしていて、言葉が出てこなかった。
どこも痛くなんかないし、血だって出ている感覚はわからない。
ただザワザワと聞こえる人の声。男の人が肩の辺りを叩いて声をかけてくる。

「早く、救急車!」

は?救急車って。止めてよ、ただ転んだだけじゃないのわたし。
フッと蝋燭の火が消えるように、ミヤコの意識はそこで途絶えた。

 
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