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精霊と命の歌

作者:蒼鈴六花
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Disc1
  祭り華やぐリンドブルム

 
前書き
ちょっと遅くなりました。
……華やぐはちょっと変なタイトルだったかな?まあいいや。

また、ラタトスクが……まあ、ラタトスクも主人公だけども……出番が多いなぁ。
 

 
操縦室に集まった皆は僕も含めて沈んだ雰囲気だった。
ジタンが明るく皆に声をかけてダガーとスタイナーさんは覚悟を決めたみたいだけれど……ビビは……
人形のように作られていた黒魔道士という人達と自身が同じなのかな? とジタンに問うけれど、僕達は答える事が出来ない。
しかし唯一事情を良く知らないスタイナーさんは答えた。

「ビビ殿はビビ殿であって彼らは彼ら、ではありませんか?」

「おっさん、良いこというな!」

「うん! スタイナーさんすごい!」

ジタンは何があろうとビビはビビだと言い、その言葉でビビは元気を取り戻す事が出来たみたい。
僕はビビが元気になって良かったと思いつつジタン達と甲板に出ようとする。

(……俺は俺、エミルはエミル……だが、エミルと同じ存在……俺達は、どうなんだろうな……)

(? ……何か言った? ラタトスク)

(いや、なんでもねぇ)

僕はラタトスクの事を少し不思議に思いつつも見えてきたリンドブルムに少しだけわくわくした。
沢山の飛空挺が飛び交う賑やかな町、巨大な城。
見た事も無い光景が広がる国。
僕達の乗る飛空挺は城の中へと進んでいく。



城内。

「こんな大きな城、初めてだよ……」

「ボクも……」

僕とビビは思わず城の中をきょろきょろと見てしまい、同じくリンドブルムの城が始めてのスタイナーさんも驚いていた。

それからリンドブルムの騎士の人がやって来てダガーの事を疑っていたけれど、偉い人がダガーを知っていて何とか城の中に入れてもらえた。
オルベルタって言う人に連れられて王様であるシドって人の所へ行くものの、玉座には人がいない。

(あれ? いないよ?)

(いるだろ、そこの虫だ)

(え、ええ!? 王様は人間じゃないの!?)

(いや、気配は人間だ。おそらく姿を変えられでもしたんだろう)

(ええー!? そんな事ってあるの!?)

(ここは俺達のいた世界とは違うし、実際あるんだからあるんだろう)

ラタトスクとそう話している間にスタイナーさんが馬鹿にしているのかと怒ったりビビが虫も大きいねと言ったり場は混乱したけれど、オルベルタさんが王様の姿について話してくれて混乱は治まった。
その後、王様が疲れただろうから話は明日にしようと食事を用意してくれた。
城での豪華なご飯にビビと一緒に喜んだものの……

(ちょっと緊張するかも……)

(味わって食わないと後悔するぞ……少しは落ち着きな)

(そうだね……よし、味を覚えて料理に生かそう!)

城での食事の後はジタン、ビビと一緒に城下町の宿屋で泊まった。
さすがに城で寝るのはどうかと思ったし、ジタンは寝れそうに無いからと断った。


夜。
ジタンとビビが寝たのを見てからラタトスクに話しかける。

(そういえばラタトスク。黒のワルツ2号と戦った時、どうやって攻撃を当てていたの?)

(あれは空間の歪みを読んで当てただけだ)

(え、そんな事できるの?)

(……昔、雷の神殿で次元を操ってデクス達を地の神殿に飛ばしていただろう。一応俺達は限定的ではあるものの次元を操れる。空間の歪みくらいは感覚でわかるさ)

そういえば……
あの時の僕はラタトスクと入れ替わっていた記憶はなかったけれど、一度一つになったせいかラタトスクの記憶がある。
あの時は色々あって……思い出すのが少し恥ずかしいけれど……

(僕には全くわからなかったけどなぁ……)

(……お前はどうやら精霊としての力が使えないみたいだな)

(そうみたいだね……)

(まあ、精霊の力が必要になれば俺が出れば良いだけだ。気にする事はねぇ)

(頼りにしてるよ。ただ、頼りっぱなしは嫌だから僕も頑張るよ)

(ふん、当たり前だ)

こうして僕達は会話を終えて寝た。


そして次の日。

僕はビビと町を回ろうとしたけれど、ビビは一人になりたいみたい。
やっぱりあんな事があったから……

「ビビ、僕にできる事があったら言ってね。できる限り力になるよ」

「エミル……」

「僕なんかじゃ、頼りないかも知れないけどさ……」

「ううん……そんな事ない。ありがとう……エミル。じゃあ、ボク行って来るね」

「気をつけてね」

そうしてビビと分かれ、ジタンに少しだけ声をかけてから僕達は町へと向かう。

(うわああああ、大きな町だね! 飛空挺からも見えたけど、実際に歩くとすごく広いし迷っちゃいそうだよ)

(あんまきょろきょろすんな。……それで、これからどうするんだ?)

(え? 町を見て回ろうと思うけど)

広いから一日で回りきれそうに無いけれど。

(そういう意味じゃねぇ、あいつらとの旅の事だ。俺達は力が貯まるまで待てばいいだけであいつらに付き合う義理はない。姫を送り届けたジタンも役目を終えてビビも巻き込まれただけだ。何時までも一緒って訳じゃねぇんだぞ)

(あ……)

ラタトスクに言われて初めて気がつく。
大きな町で浮かれていたのかな?

(目的を達した今、俺達の旅は終わった。成り行きで旅をしていたが、これからどうするか今のうちに決めておく方が良いだろう)

(そう、だね……)

僕達が、これからどうするか……
すぐに頭に浮かばない。
色んな事が頭の中を渦巻いて、どんどん考えが纏まらなくなる。

(考えが纏まらねぇならせめてこの時間を楽しめ。うだうだ考えて時間を潰すな)

(……うん)

僕達はそれから町を巡った。
エアキャプって乗り物に乗ったりお店を見て回ったり。
暗い気持ちも少しずつ無くなっていくけれど、どこか心に引っかかりを覚える。

それから町でジタンと会い、狩猟際というお祭りがあるから一旦城に来てくれと言われて僕達は城へと向かう。

城の客間にはビビやスタイナーさん、それにダガー……あ、もう偽名を使う必要はないからガーネット姫だ。ガーネット姫がいた。それと、知らないネズミのような女の人。

「エミルもジタンに呼ばれたの?」

「うん、ビビも?」

「うん……でもジタン、来ないね……」

僕達を呼んだはずのジタンがまだ来ない。
どうしたのかな?
そう思ってから数分後にジタンは現れた。
どうやら装備を整えてきたみたいだけれど……なんで? と思っていると城の騎士の人が説明を始めた。

なんでも、城下町に放たれたモンスターを狩るお祭りみたい。
狩るモンスターは大きければ大きいほど高いポイントがもらえて、最終的に一番ポイントの高かった人が優勝するお祭り。
制限時間があり、エアキャプの移動は自由。バトルに負ければリタイア。
優勝者は望みの品とハンターの称号が与えられる。
ジタンはギル、お金を望んでネズミの人はアクセサリーを望んだ。

「ビビ選手とエミル選手は何にしますか?」

「えっ!? 僕達も出るの!?」

僕とビビが驚く。エントリーした覚えないのにどうして!?
と思ったらジタンが勝手にエントリーしちゃったみたい。
ジタンがこっそりとビビに何か言ってビビが驚いて叫んだ。お姫様がどうかしたのかな?

(おい、エミル。出る気が無いんなら俺に変わりな)

(え? 良いけど……どうしたの?)

(ずっと体動かせないのも退屈でな。暴れるには丁度良いじゃねぇか)

(……あんまり、暴れすぎないでね)

僕とラタトスクが入れ替わった時、騎士の人が僕達に望みの品を聞いた。
ビビはカードにするみたいだけれど……

(僕達って考えてみたら欲しい物無いよね?)

(ないな。……だが、望みの品は王様とやらが叶えられる範囲の物をくれるんだろ?)

(な、何を頼むの?)

僕は嫌な予感を感じた瞬間、ラタトスクは口を開く。

「俺はモンスターをもらう」

「え!?」

「はぁ!?」

その場にいた人全員が驚いた表情でラタトスクを見る。

「狩猟際でモンスターを捕まえてくるぐらいだ。いるんだろ? なら、好きなモンスターをもらっていく」

ラタトスクの言葉に一同絶句するものの復活した騎士の人は王様に聞きに行くと部屋を去り、ジタンはラタトスクに質問する。

「お前、ラタトスクだな! なんだよ望みの品がモンスターって!? それと、お前が何者か答えろ!」

(ラタトスク!)

「うるさい、答えてやるから静かにしろ。ッチ! 頭の中もうるせぇな」

誰のせいでうるさいと思ってるの!
ラタトスクは少しうんざりした顔をしながらも説明を始めた。

「……つまりエミルは防衛本能から生まれた人格って事か?」

「……ああ、大体はそうだ。そうなった理由まで話すと長いからしねぇ」

今回は時間が無いから本当に簡単な説明だ。それでも少し暗い雰囲気になる。
僕達の旅の話はしていない。僕の記憶も姿も他人のものだった事はまだ、ジタン達は知らない……

「で、モンスターを望みの品にした理由は?」

「試してみたい事があったから望んだ。それだけだ」

「試してみたい事ってなんだよ?」

「試しに成功したら教えてやるよ」

話が終わった所で騎士の人が戻ってきて僕達の賞品について話してくれた。
どうにも狩猟際のために捕まえたものを一匹だけならと言う事になった。
そして、狩猟際をやる前に賞品として別に別けて置くためにモンスターを見せてもらった。

「こいつにする」

もらうモンスターはあっさり決まった。
それから狩猟際に参加するためにそれぞれの場所に配置につく。

場所は城下町。
開始の合図が城から響き、ラタトスクは駆ける。

「っは! 瞬連刃! 飛燕瞬連斬! 次!」

連撃を魔物に叩き込み倒していったり蹴り上げて空中で倒したり。
観客としてみている人達には好評みたいだけれど……ちょっと暴走気味のようにも見えるので心配。
ハラハラとしているうちに時間は過ぎ、もうそろそろ時間だろうか? と思った時、今までのファングなどとは違う大きなモンスターが出てきた。

「っは! 面白しれぇ! かかってきな!」

「おいおい、そいつの相手を一人でするつもりか?」

ラタトスクが凶悪な笑みを浮かべて大きなモンスターへと向かおうとした時、後ろからジタンの声がする。

「ああ? そのつもりだが? 邪魔すんじゃねぇぞ」

「さすがにそいつの相手は一人では無理じゃ、それにこれは狩猟際。早い物勝ちじゃ」

屋根の上からやって来たネズミの人、フライヤって名前だと先ほどの説明の時に聞いた。
あんな高い所から落ちても大丈夫なんてすごい……

「それなら俺がこいつを倒す!」

そうしてラタトスク達は戦闘を始めた。
槍を持ったフライヤさんは高く、それこそ建物よりも高く飛び上がり、落ちる勢いを利用して槍で戦う独特な戦い方を披露し、ジタンは相変わらず攻撃しながら敵のアイテムを盗んでいた……なんでこんな時までと思うけれど、後で聞いたら癖だと言っていた。さすが盗賊……なのかな?
ともかくラタトスク、ジタン、フライヤさんの三人にぼこぼこにされるモンスターがちょっとかわいそうだった。

そしてモンスターにトドメをさした時、時間切れとなり狩猟際は終わった。


謁見の間。
王様に直接望みの品をもらうために皆と集まった。

「望みの品とハンターの称号を与えるブリ!」

王様がそう言い、オルベルタさんがラタトスクにモンスターの入った檻のような籠を渡す。
中にはファングに似ているものの真っ白な毛並みで尻尾が三本あるにんねこくらいの小さなモンスターがいて威嚇している。

「それにしても……モンスターをなんに使うブリ?」

不思議そうにしながらも若干厳しい雰囲気を出す王様。

「そう警戒せずともお前の思っているようには使わないさ」

ラタトスクはそう言って籠を地面に置き、片手を籠に向ける。
周りが訝しみながらもラタトスクを見ているとラタトスクから力が溢れ、床に魔方陣が浮かび上がる。

(まさか!?)

「俺に従え!」

モンスターが一瞬光って僕達の間に繋がりができた事が少しだけ分かる。
光と共に魔方陣が消え、溢れた力で暗くなっていた部屋が明るくなる。

「半分成功ってとこか……まあいい」

「い、いったい何をしたブリ!?」

「成功した時は教えてくれるんだろう? ラタトスク」

「モンスターと契約しただけだ」

王様とジタンの質問に答えるラタトスク。
ああ、やっぱり……と思いながらも、何もここでやらなくてもとも思う。
というか、この世界のモンスターとも契約できたんだ……

「モンスターと契約? そんな事ができるブリか!?」

「俺は屈服させたモンスターと契約する事ができる。ただ、今回の契約は中途半端だから操れはしないと思うが人に危害をくわえる事はなくなるだろう」

「モンスターを操るブリ!? お前はいったい……!」

「だからそんなに警戒せずとも人に危害をくわえる様なマネはしねぇよ。そもそもここじゃあ完全に契約できないから操る事はできねぇし、せいぜい大人しくさせるくらいが限界だ」

ここでは……この世界では魔物との完全な契約は無理なんだ……
でも、契約で魔物が大人しくなるんなら契約した方がいいのかな?

「モンスターを大人しくさせられるならラタトスクが契約していけばモンスターは人を襲わなくなるのかな?」

ビビも同じく疑問に思ったみたいでラタトスクに聞く。

「それは難しい。モンスターを屈服させて契約していくのにも時間がかかるうえに契約の効きが悪い。モンスターによっては契約が効かない者もいるだろう。モンスターが懐いていれば契約もしやすいが……契約するよりは倒した方がまだ楽だな」

「……しかし、契約をすれば多少はモンスターが大人しくなるブリ? ならば、こちらとしては契約していって欲しいブリ。国から離れるとモンスターの被害も危険度も増す。少しでも危険は減らして欲しいブリ」

「出来そうだと判断した時しかしねぇぞ」

「それでもかまわないブリ」

「……分かった」

そうして会話が終わった時、苦しげな声が謁見の間に響く。
声の方を見ると今にも死にそうなネズミの兵士がいて、フライヤさんに支えられ王様に自身の国が謎の軍に襲撃を受け、危うい状況にある事を伝えた。

敵は、とんがり帽子の軍隊……
その軍団って、アレクサンドリアに送られていた人達なのか?
ネズミの兵士は王様に伝える事を伝えて返事をもらった後に死んでしまった。
どうして、こんな事に……

それから王様はネズミの兵士の国、ブルメシアへ増援を送ろうとするものの、狩猟際で城には僅かな兵しかいない。
アレクサンドリアを警戒していた兵を呼び戻して増援させるみたいだけれど……

「私は失礼する、飛空挺団を待ってはおれん」

そう言って出て行こうとするフライヤさん。
それを聞いてジタンは自分も行くと言い始めた。仲間の故郷が攻撃されて黙っていられないと。
さっきの兵はフライヤさんと同じ種族みたいだったし、襲撃されたのはフライヤさんの故郷なんだ……

ビビも自分の目で確かめたいとついて行く事になったけれど……僕は……

(……俺は特にこの世界でやりたい事はないが、お前にはあるんじゃないのか? お前のやりたいようにやれ)

(ラタトスク……)

ラタトスクは僕と入れ替わる。

(さあ、早く言いな。置いてかれるぞ)

「僕もついていくよ」

「エミル? お前は別についてこなくても良いんだぜ?」

ジタンは少し厳しい目で見る。
これから先は覚悟を決めなきゃいけない。
さっき、ネズミの人が死んだように人が死んでいくかもしれない。
自分も、死ぬかもしれない。
それでも、途中で投げ出すのは嫌だ! 
友達が辛い状況になりそうなのに黙ってみていられない。

「最初は成り行きだったけれど、このまま途中で投げ出すのは嫌なんだ。それに……友達が危険な場所に向かうのを放って置く事は出来ないしね」

「エミル……」

ビビを少しだけ見て再びジタンに目を向ける。

「……分かっているのか?」

「うん、覚悟はできてるよ。戦力は多い方が良いでしょ?」

「そうか、ならオレは何も言わない」

そうして僕がついて行く事が決定した。

新たな覚悟を持って、僕は旅を続ける事を選んだ……
それが、良い選択肢か悪い選択肢かは分からない。
でも、後悔はしていない。
後悔だけは、したくないから……



 
 

 
後書き
今回もラタトスクの出番多し。エミル、もっと活躍の場を増やせないだろうか?
というか、皆のいる前で契約させちゃったよ……最初はそんなつもりなかったんだけどなぁ……
優勝賞品が思いつかなくて……

契約した魔物を今後出すかは考え中。一応名前は考えているけれど、どう言ったポジションで出すか悩みます。
野に放すのか?それとも連れて行くのか?
まあ、連れて行くならマスコット2匹以上になるかな。

長いものの何とか纏まった?リンドブルム編。次はサブイベ回収になっちゃうかもです。
黄色いあいつの登場です。

 
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