戦国†恋姫~黒衣の人間宿神~
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十章 幕間劇
竹とんぼ×恋心
「これでここを・・・・・こうすればいいのか?」
「そうそう。そんな感じで」
壬月の手元を覗き込んで作業の具合を確認しつつ、俺も自分の分の竹をナイフで削って行く。作っているのは、昔懐かしの竹とんぼだ。道具や火も用意できるなら現代風に作れるが、ここではそうもいかない。ライターとかガスバーナもあるが、ここでは使いたくない。子供の目の前だ。最も俺にとってみれば懐かしいのだが、戦国時代の子供達にとって、竹とんぼは見た事ないようだ。俺と壬月の周りを取り囲んでいる子供達が、何ができるのか目を輝かせて作業を見守っている。
「よし出来たぞ」
「お、ちゃんとバランスが取っているからいいな」
「ばらんす?」
「左右の羽根の釣り合いが取れているという事」
「よく分からんが、とにかくこれでいいのだな?」
「うむ」
壬月に待ってもらい、俺のも仕上げる。俺は手先も器用だからな、たまに工作もよくする。
「よし。じゃあ、実際にやってみせるよ?」
「うむ」
壬月には事前説明したが、こんなものが飛ぶのか半信半疑だったけど。実際に見せれば文句はあるまい。俺は竹とんぼの軸を両手で挟み、勢いをつけて回転させる。
「そりゃー!」
「おおっ!」
「すっげーっ!ホントに飛んだっ!!」
「あんなのが飛ぶ何てっ!うわぁぁっ!」
空に飛び上がった竹とんぼを目で追い、壬月と子供達が感嘆の声を上げた。結構飛距離が出たな。竹を削って作った物が、こんな風に空を飛ぶ事には子供達も興奮する。
「何と不思議な・・・・」
「壬月もやってみれば?」
「うむ。では・・・・。せやっ!」
「こっちもすげぇっ!待てぇっ!!」
「僕も僕もっ!わぁぁいっ!!」
壬月の作った竹とんぼも同じように飛ぶ。子供達は、声を上げてその後を追いかけて行った。すぐに落ちた竹とんぼを拾うと、子供達はそれを拾い、俺や壬月のように真似して飛ばそうとする。だがどうにもコツが分からないようで、飛ばそうとしてもすぐに落ちてくる。子供達は話し合っていたけど、試行錯誤の様子を見ていたら、壬月が俺の肩をガシッと腕をまわして笑いかけた。
「面白いものを知っているんだな、一真様は」
「まあな、それなりには知っているし」
俺にしては珍しい物ではない。飛行機やヘリの原型みたいなもんだし。でも説明しても分からないから笑って誤魔化す。そうして俺と壬月は残りの材料で新たな竹とんぼを作り始める。しゅっしゅっとナイフで竹を削りながら、黙って作業をしていた。何となく壬月と喋った。
「壬月は子供好き?」
「ん?藪から棒に何だ?」
「この前の相撲もだけど、何だか懐かれているというか好かれていると言った方がいいのかなって」
「好きか嫌いかで言うなら好きという事になる。構ってやるとたまにムキになって食らいついてくる奴もいるから、そういうのを相手にしていると息抜きになって楽しくはあるがな」
そんな風に答える壬月だが、子供達に向ける視線はとても優しく見える。照れ隠しではなさそうだけど案外、自覚してないのかもしれんな。まるで鬼子母神みたいだな。
「例えばそうだな、自分の子供が欲しいとか思った事ないか?」
「ふむ・・・・考えた事もないな。相手などおらんし、それ以前に今は戦に追われてそれどころではないわ」
まあ確かに。今の世は戦乱だしな。
「子供といえば、一真様の方はどうなんだ?」
「どうとは?」
「久遠様と子作りをしておるのか?」
「あー、そういう事ね。俺と久遠は恋人でいつ夫婦になってもおかしくないと?」
「まあそうだな。最も今子作りをして、孕んでしまっては困るがな」
ははは。そうなんだけどね。竹を削りながら、行為はしたけど孕む様子はなさそうだ。浄化したし。
「まあ、知ってると思うけど俺には本妻がいるという事は知ってるな?」
「もちろんだ。確か結菜様が愛妾になった後、挨拶に来たと聞いた」
「織斑奏という。無論俺には息子がいる」
「ぶっ!?息子!いたのか?」
「ああそうだ。織斑優斗という。歳は俺と奏と同じく23歳。なぜかは知らんが、歳はそこで止まっている」
「歳が止まっているという事は、妻も息子も神仏の類なのか?」
「いや、妻も優斗も人間だが、人間らしくない技の持ち主だな。体術とか剣術とかね」
と言いながら、俺は竹削って出来上がった竹とんぼを飛ばしたら、子供達は走り回る。で俺はまた同じ作業に戻る、壬月も完成したらまた作り始めた。
「そういえば、久遠様もだが他にもたくさんいるが、そういう事はしてるのか?」
「何が?」
「いくら妻と離ればなれであれば、欲望も溜まるという事だ。それに一真様は若いのか年長者なのかは分からんが」
「ふむ。まあ発散したいってのはあるけど双方の承諾をした上でのなら、やってあげてもいい。今はな」
「そうか。ならそうだな。麦穂にでも頼んでみれば、意外と承諾してくれるかもしれんぞ」
「麦穂が?」
「あれは随分、一真様の事を気に入っているようだし、誠意を込めて頼めばきっと」
「きっと、ねえ。俺から見ても麦穂はいい女だとは思うけど」
「あの乳といい、腰つきといい、私が男なら放っておかんがなぁ」
まあ麦穂は、ボンキュボンでナイスバディーだしな。壬月もだけど、でもまあ自覚してないからな。今はよそう。
「それにあれは惚れた男には尽くす女と見た。きっと褥でも・・・・くくく」
ん?後ろに気配を感じるな。この気は麦穂かな?壬月は気付いていなさそうだけど。
「よし。さっそく今夜にでも頼んでみろ!麦穂なら必ず・・・・」
「おいおい。勝手に話を進めるなよな?俺はいいけど、もし麦穂が嫌なら俺はしないつもりだ」
「では、私が隣で見張っててやるから、安心して励むがいい」
俺はだからと言おうとしたら、麦穂が近付いて来たためやめた。
「壬月様。一体何の話をしていらっしゃるのですか?」
「あ、やっぱ麦穂か」
そこにいたのは、凄みのある笑みを浮かべていた。麦穂は俺達の背後に立っていた。
「全く。当人のいないところで、話の種をする何て感心しませんよ」
「何だ、盗み聞きしておったのか?」
「たまたま通りかかったら、私の名を呼ぶ声が聞こえたから来てみただけです。そしたらもう何て話をしてるんですか」
「どの辺りから聞いてたんだ?麦穂」
「あの・・・・あれは随分一真様の事を気に入っているようだし・・・・の辺りから」
最初からか。通りで、遠くから麦穂の気があったからな。気にはしてた。わざと泳がしていたけど。
「でも、一真様の事を気に入っているのは確かだろう?」
「た、確かに一真様には、好意も持っていますし、信頼もしております。ですが先程の話とは別の話で・・・・」
「何だ、まどろっこしいなぁ。お前も聞いていたであろう?一真様は承諾があればの事だったか」
「まあ、あちら側から求められたら素直に受け止めるしかなかろうな。それに俺がもし言ったら断る事も出来るけど出来なさそうかな?」
「っ、それは・・・・」
あ、赤くなった。そういう所も可愛いんだよな。恋姫世界のお姉さんだと紫苑だけどここだと麦穂だもんな。
「そうだ一真様。いい事を教えてやろう」
「いい事?」
「ああ。こないだ、一真様達が黙って鬼退治に行った時の事だ」
「壬月様!?その話は・・・・」
「一真様が出かけて行ったのを知ってから、麦穂の奴がどうにも心配だったらしくてな、失敗を繰り返して大変だったのだぞ」
「え、そうなのか?」
麦穂は赤い顔を横に向けた。恥ずかしそうに目を伏せていた。
「なら、謝罪させてくれ。心配させた事をな」
「いえ、一真様が謝る必要はありません。一真様はあの森一家よりもお強いと聞きました。ですので私が勝手に心配してるだけで」
「そうか。まあ強いのは認めるし、半分戦闘狂だけどな」
「それに、心配な事は心配なのですが、何といいますか・・・・充実感のようなものも同時に覚えているのです」
「充実感?」
「はい。無事を願い一真様を思い浮かべると、こう、胸の奥が熱くなるような感じがして。誰かを想うという事が、こんなにも気持ちを高ぶらせ、心を豊かにしてくれるものだという事を、私は初めて知りました。だから感謝をしているのですよ、一真様には」
「それは単に俺に恋をしているとしか聞こえないな。胸の奥からというのは、恋の証だ。そしてこれは愛の告白ともいうが」
「そうだな。一真様の言う通り、そういう話をするのなら時と場所を選んだ方がいいぞ」
「あっ・・・・」
横から聞こえた壬月の声に、麦穂は周辺を見ると子供達が興味を示していた。やれ、愛の告白だのこの前姉ちゃんに告白した兄ちゃんもこんな感じだの。
「っ、違います!告白だなんてそんな・・・・」
麦穂は涙目になって黙り込み、うつむいてしまった。俺が素直な感想を言ったから止まったけど、一歩遅かったようだ。で、不意に勢いよく顔を上げると、赤く染まったまま顔を俺に向けてきた。
「とにかく、心配をするのは私の勝手なので一真様が気に病む必要はありません。だからと言って、あまり無理されても困りますけどね。では私はこれで」
麦穂は一方的にまくし立てると、逃げるようにその場から小走りに去って行った。追いかけない方がいいかなと思い、作業に戻ろうとした。
「全く。一真様の勘なのか鋭いですな」
「そうじゃないと妻はいないよ。それに女心は分かっているつもり何だが」
「しかし、麦穂とも付き合い長いが、あのように初々しい乙女のような姿を見るのは初めてだ。いや、麦穂だけではないな。一真様が現れてからというもの、久遠様や結菜様、他にも色々な者達が今まで見せた事のない一面をさらけ出しておる。全く。飽きぬな、一真様といると」
壬月はそう言いながら、にかっと郎らかに笑い、俺の頭をくしゃくしゃと掻き混ぜるように撫でてくる。あーあ、一応セットしてあるのに、こりゃあとで直さないと。
「柴田様、早く新しいの作ってくださいよー」
「あいつら、僕達に貸してくれないんです」
「何だよ。お前らは先に飛ばしたろ」
「そうだそうだ。順番でやっているだけじゃないか」
「あー、分かった分かった。すぐに人数分作ってやるから、こんな事で喧嘩するな」
壬月は呆れたように笑いながら、作りかけだった竹とんぼを素早く仕上げて立ち上がる。
「それっ!」
「わぁぁぁぁぁいっ!!」
壬月が飛ばした新たな竹とんぼを追って、子供達が再び走り出した。その様子を少しだけ眺めた後、壬月が笑顔で俺を振り返る。
「一真様、早く作ってやれ」
「はいはい。すぐにやりますよ」
俺ならともかく麦穂を散々振り回した後なのに、そんな事はなかったかのようにしていた。良くも悪くもマイペースのようだ。そして俺も作り終えた竹とんぼを飛ばした。そしてそれを眺めていたら本物を出すかと思い俺は、空間の中にあるスナイプ・ゼロをヘリにした。大人が十人位乗れるのを。で、空間から出したら、子供達もそうだが壬月も興味を出して俺に聞いてきた。
「これはそうだな、・・・・竹とんぼみたいに飛べるものだ」
と言ったら、こんな鉄の塊が飛ぶのか?と聞いてきたから試しに乗ってみるか?と聞いてみたら、全員乗ってみたいと言った。壬月もだったけど、で、俺は乗った後に後ろに乗った壬月と子供達。それでヘッドフォンをしろと言ったら、俺みたいになと言ったら全員した。子供用もあったから、ヘッドフォンしたら俺の会話が聞こえる事も驚いてた。で、ヘリのエンジンをオンにさせてからローターが回りそして浮いた。そのまま浮いてから、高く飛んだ。正確に操縦しているし、自動操縦もあるけどね。下を見てみろと言ったら岐阜城があんなに小さくとか、尾張の清州の城も見えたとかで興奮していた壬月だったけど。しばらく飛んだ後に、元の場所に降りて行きヘッドフォンを外した後に子供達は喜んでいた。空間に戻してから、壬月はまたいつか乗せてくれだとかな。
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