ヘタリア大帝国
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TURN134 ジブラルタル会戦その十
だから両軍睨み合いに入った、間合いは双方の攻撃範囲外だ。余裕がある状態での対峙を続けていたが。
その状況を見た貴族の一人がここで言った。
「おい、今だぞ」
「そうだな、今だな」
「今攻めるべきだな」
他の貴族達も言う。
「敵軍を横から攻めれば勝てる」
「我等が手柄を立てる時だ」
「ここで手柄を立てれば王室への発言力も増す」
「そして植民地を奪い返すことも出来る」
「ではな」
「今ここで」
「よし、全軍でだ」
貴族艦隊全てでだというのだ。
「敵を横から攻めるぞ」
「うむ、そうして奴等を叩き手柄を挙げようぞ」
「今からな」
「そうして勝つぞ」
彼等はそれぞれ動きだした、左翼は全て動いた。
しかし彼等には司令官がいない、しかも素人ばかりだ。その動きはばらばらでしかもかなり遅いものだった。
その彼等を観てだ、イギリスは顔を顰めさせて呟いた。
「馬鹿か、あいつ等」
「ここで動けば」
「相手の思う壺だろ」
こうイギリス妹にも返す。
「それがわかってねえな」
「そうですね、全く」
「負けるぞ、これは」
イギリスはその顰めさせた顔で言う。
「あの連中こそやられてな」
「そうなりますね」
「ったくよ、どうする?」
「ここは前に出るべきでしょうか」
イギリス妹が言う。
「そうすべきでは」
「ああ、いや」
イギリスが自身の妹に応えセーラに言った瞬間にだった、既に。
枢軸軍は動いていた、それでだった。
その鈍重な貴族達に向かっていた、その動きはエイリス軍正規軍のものより速い、それもかなりである。
艦艇の質だ、それが出ていた。
「今追いかけてもな」
「間に合いませんね」
「そこまで読んでいるな」
「どうしますか、ここは」
イギリス妹はセーラに判断を仰いだ。
「陛下は」
「本来ならばここで枢軸軍を追い貴族艦隊との挟み撃ちにすべきですが」
貴族艦隊が攻撃を受けている間に敵の後方に回る、戦術のセオリーである。
だが、だ。セーラは今はそのセオリーは出来ないと判断した。その判断の根拠はというと。
「しかしそれは」
「出来ませんね」
「彼等が納得しません」
その貴族達が、というのだ。
「決して」
「挟撃という戦術よりも」
「自分達への救援を要請してきます」
そうしてくることは予想出来た、それも容易に。
「ですからここは」
「彼等の救援に向かうのですね」
「そうです、枢軸軍への攻撃ではなく」
そちらを採るというのだ。
「そうしましょう」
「わかりました、それでは」
「全軍左翼に向かいます」
セーラはすぐに全軍に指示を出した。
「今から」
「了解です」
「それでは」
「この戦い、どうやら」
セーラは沈痛な顔で一人呟いた、全軍に指示を出した後で。
「我が軍の」
こう呟く、しかしこの言葉を聞いた者はいなかった。エイリス軍の心ある者達はこの戦いでの敗北を悟らざるを得なかった。
TURN134 完
2013・9・5
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