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少年少女の戦極時代Ⅱ

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オリジナル/未来パラレル編
  第15分節 態度のナゾ

 晶お手製のおにぎりを平らげた咲は、熱いお茶を飲んでようやく一息ついた。

「ぷはっ――ごちそうさまでした」
「はい、お粗末様でした」

 いつのまにか晶が隣の席に座っていて、笑顔で言った。

(満腹になったら、自分がおなか空いてたんだなあって自覚するなあ)

「落ち着いた?」
「はい」

 今度は素直にはっきりと肯くことができた。

「よかった。紘汰も安心するわ」

 紘汰の名が出て、咲の心臓が一つ大きく跳ねた。

 ――咲はいつも背中を見つめるだけだった紘汰。咲は後ろから付いて行くだけで精一杯だった紘汰。
 その紘汰が咲をふり向いて、体調の変化まで見抜いてくれた。

(やばい。顔熱い)

 咲は冷えた両手を熱い頬に当てた。

「咲ちゃんは本当に紘汰が好きなのね」
「はい……あ、いえ! いや、いえじゃなくてあの…っ――()()

 遠回しとはいえ咲は初めて他人に対して、紘汰への想いの種類を認めた。

「あたし、そんなに分かりやすいですか?」
「今の咲ちゃんはね。思ってることが顔に出やすくなってるかな」

 今の咲は。つまり21歳の「咲」は思っていることが顔に出ない人間ということになる。12歳の咲からは想像もつかない未来像だ。よく考えや悩みを顔に出してはナッツに頬を抓られていた自分が。

「晶さん、は」
「なに?」
「紘汰くん――弟さんに彼女が出来たって知って、イヤじゃなかったんですか? しかも、あたしみたいなちんくしゃで」
「ん~、イヤというか、心配はしたわね。紘汰ったらずいぶん若い子と付き合うことになって、相手の子、つまり咲ちゃんね、咲ちゃんに悪い影響がないかしらって。紘汰が先走ったりしたら、咲ちゃんじゃどうにもならないでしょ?」
「あ、あはは」

 先走るって何を、とは咲には聞けなかった。

「でも、だからかしらね。小さなあなたと若い紘汰がちょっとずつ前進するの、ずっと見てたから、紘汰に彼女が出来たって寂しがる暇なかった気がする」
「そう、ですか」
「何か思い出したの?」

 咲は首を横に振って答えた。

「そう――」

 残念がられたかと咲は恐る恐る晶を窺った。しかし予想に反し、晶はどこか安心した様子だった。

「……今日、思い出せないかなって思って、家にある写真とかデータとか探してみたんです」

 探るように切り出すと、晶は整った目元に驚きを浮かべた。

 咲は疑問を覚える。この1週間、晶も、ザックも、咲が何かを思い出した様子になると張りつめ、思い出せないと答えると安心する。

「でも、途中でやめちゃった。怖く、なったん、です。12歳のあたしが、考えてもないようなことばっかしてる自分見て、自分じゃないような気がして」

 着ようとも思えなかったスカート。進もうとも思っていなかった進学先。仲間との別れてまでそうした動機。何もかも咲には理解できなくて。

 咲はスマートホンをポケットから出し、きつく握りしめた。 
 

 
後書き
 2014/3/17 改題しました

 晶さんがごはんをくれてすっかり落ち着いた咲でした。
 要するにパラレル咲は12歳でも21歳でも紘汰が大好きってことですよ。  
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