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少年少女の戦極時代Ⅱ

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オリジナル/未来パラレル編
  第9分節 "ミッチ"と"光実"

 今日の咲は紘汰と一緒に、電車で沢芽市の隣町に来ていた。

 電車を降りて駅を出てすぐ、咲は紘汰に尋ねる。

「ここがミッチくんと舞さんが今住んでる町?」
「そうだよ」

 ぐるりと首を巡らせてみる。沢芽市よりはビル群が全体的に低い。やはりこの町の道も至る所にヘルヘイムの植物が蔦を絡ませ、マスクを着けた老若男女がそれを気にするふうもなく歩いて行く。

「本当に沢芽市だけじゃなかったんだ……」
「――今は国中どこの場所もこんなもんだよ。だから俺たちみたいな仕事が食ってけるんだけどさ」

 歩き出した紘汰に咲は続いた。まるで自嘲したような紘汰に面食らって少し歩き出すのが遅れたが。

「この町、あたしも来たことあるの?」
「2回だけな。1回目は舞に会いに行くついでにこっちで初詣しに行ったんだ。こっちの地元じゃ結構有名なとこだから参拝客も多くて、二人してぎゅうぎゅうに客の波に押されたの」
「舞さん、神社にお勤めなんだ」
「巫女兼神主見習いでな。で、ぎゅうぎゅうなままカウントダウン始まって、二人してノッて数かぞえてさあ――」

 楽しげに語る紘汰の横顔から目を逸らし、俯いた。
 咲が覚えていない「咲」。「咲」を覚えていない咲。紘汰に申し訳なかった。

(あたしがちゃんと記憶あったら、恋人っぽく、腕とか組んであげられたのかな。あ、むしろ今からでもそうしたら、紘汰くん……嫌がる、かな)

 想像すると心臓が高鳴ってきた。
 咲はそろりと手を、前を行く紘汰の手に伸ばそうとして、引っ込めてはまた伸ばし、をくり返した。

 冬なのに頬がぽかぽかする。
 ついに手が伸びる! という時だった。

 キャアアアアアアァァ――ッ!!

「ぴゃっ」
「悲鳴――?」

 咲は紘汰と顔を見合わせ、同時に走り出した。12歳(いつも)ならぜいぜい息を荒げながらどうにか付いて行くのに、手足の長くなった咲は紘汰とほとんど同じスピードで走れた。



 案の定、悲鳴の元に駆けつけると、インベスが暴れていた。逃げる通行人に逆行して開けたその場所に出る。

「クラック、ないのにっ」
「また“こっち側”のインベスかよ……ッ」

 咲も紘汰もとっさにドライバーを構えた。

 だが、二人が変身するより速く、インベスを横から紫の光弾が打ち払った。
 インベスはその光弾によって爆散した。

(この色って、まさか!)

 横を向く。そこには案の定、チーム鎧武の二人目のアーマードライダー、龍玄がブドウ龍砲を構えて立っていた。

『紘汰さん!』

 彼もこちらに気づいて駆け寄って来た。

「よう、ミッチ。悪いな、非番なのに」

 龍玄がロックシードを閉じて変身を解除した。
 呉島光実の服装は私服でチームユニフォームではないし、紘汰やザックと同じく9年分の年齢が顔に出ている。

「紘汰さんならいつでも。舞さんも喜びます。――咲ちゃんも、いらっしゃい」
「こ、こんにちは。ミッチ、くん」

 光実はキョトンとして咲を見返した。

「電話で話したろ。今の咲は覚えてないんだ」
「本当だったんですね……いえっ、疑ってたわけじゃないんですけど」
「分かってる」
「あの、あたし、変なこと言った?」
「いや、懐かしい呼ばれ方したなって。咲ちゃん、僕のことは『光実くん』って呼んでたから」
「じゃああたしも光実くんて呼ぶっ」

 すると光実と、さらに紘汰までおかしげに笑った。

「な、何よっ」
「や、そういうとこ、咲ちゃんだなーって」
「記憶がなくても咲ちゃんは咲ちゃんですね。その切り替えの早さ」
「……なんか悪口言われてる気がする」
「褒めてんだよ」
「むぅ」

 唇を尖らせながらも、屈託のない光実の態度は心地よかった。
 記憶喪失になってから、咲の顔を見るとザックも晶も哀れむ表情をしたから。こういった明るい会話が初めての気がした。


 ふと咲は視線に気づいて周囲を見回した。
 逃げていた通行人が遠巻きにこちらを指差し、興奮気味に囁き合っている。囁きが自分たちに向けられたものか、はたまた先ほどのインベスにかまでは、咲でも分からなかった。

 その様子に、光実が溜息をついた。
 光実は少しばかり離れた場所へ行き、路上に放り出されていたエコバックらしき物を肩にかけて戻ってきた。

「立ち話も何ですから、僕んちに行きましょう」 
 

 
後書き
 ひそひそはアレですよ、テレビのロケ見て自分からカメラに映りにはいけないけどきゃーってなる心理。そんな暗いばっかじゃないですよぉ(*^^)v

 そして、アーマードライダー龍玄、健在です。
 もっとも彼は紘汰・ザックのように9年間連続で戦ってきたわけではありません。戦い続けられない事情があったんです。そこんとこは次回次々回をお読みいただければお分かり頂けるかと(*^^)v 
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