ヘタリア大帝国
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TURN131 二度破られるものその十一
「それはわかっているつもりだ」
「随分高く評価されているな」
「そうは思わない」
妥当な評価だというのだ。
「貴様を知っているつもりだからな」
「それは何よりだな」
「しかし武士道はだ」
話が戻った、そのことを言うのだった。
「これから衰えていくだろう、軽薄才子ばかり出る様になる」
「それでもだな」
「武士道は必要なものだ」
日本、山下達の国にだというのだ。
「私はそれをこれからも貫く」
「これからもか」
「若しセーラ女王がここに来てもだ」
そして戦うことになってもだというのだ。
「私は生きる」
「約束してくれるか」
「武士道のまま戦い生きる」
ここで何としても、と言わないのが山下だ。武士道から外れることは何があってもしないというのである。
「日本の為にな」
「今は死ぬべき時ではないか」
「人は必ず死ぬ」
このことは絶対だ、誰であろうと人ならば避けられない。
しかしそれは今ではないからだ、生きるというのだ。
「その時になればな」
「そういうことだな、さて」
「うむ」
正面のエイリス軍の気配が変わった、そしてだった。
彼等は左右に分かれた、姿勢は起立だった。今も東郷と共にいる秋山がその整然とした彼等を見て言った。
「来られましたね」
「うむ、間違いなくな」
「あの人がな」
山下と東郷が応える。
「来られた」
「今ここにな」
「ではだ」
山下は再び言う。
「今からだ」
「健闘を祈る」
「ご武運を」
東郷と秋山はそれぞれ山下に告げる。
「生きるんだ、いいな」
「武士道を見せて」
「そうする、ではな」
山下は紙を出し刀身を拭いた、そして目の前では。
エイリス軍がだ、口々に叫んでいた。
「女王陛下万歳!」
「女王陛下万歳!」
これが何よりの知らせだった、その言葉の中で。
左右に分かれている彼等の間を影が進んできた、その影は次第に色を見せてきていた。
日本軍の将兵達、陸軍の者も海軍の者も息を呑む。見事なブロンドに澄んだ緑の目、エイリスの緑と白の服に身を包んだ彼女を見て。
「あれがか」
「エイリスの女王か」
「噂には聞いていたが」
「あれが」
そしてその名は。
「セーラ=ブリテン」
今その勇姿を現わした。毅然とした姿を戦場に出したのである。
TURN131 完
2013・8・14
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