とある女性の非日常
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そして…
先に来ていたらしいてっちゃんと椎名は文字通り 血まみれになった私の左腕の傷を見てぶっ飛んだ。
それを横目に オヤジさんのところに向かう。
『「断章」を使うことが出来ました…』
断章は 過去のトラウマを痛みとして具現化するもの。
あの小説のヒロインは 赤いカッターナイフを使っていたけれど 私のポケットに入っていたのは青い柄のカッターナイフだった。
「ヒヒヒ…ずいぶん派手にやったのぅ…てつし 傷薬を持って来い。椎名。お前は包帯を」
血に弱いリョーチンは とりあえず明後日の方向を見ながら左腕の止血を手伝ってくれている。
一通り手当てが終わり 包帯でぐるぐる巻きになった左腕を見ながら 私は複雑な気分になった。なんで断章が使えたんだろう…。
「それも お前さんがそう出来るようにあったのだろう」
トラウマらしいトラウマなんて 過去には覚えのない私だったが それも「いじられた」結果なのだろうか。
「ねーちゃん…痛くない…?」
涙目で私の左腕を見るリョーチンのふわふわの癖っ毛を撫でた。
『みんなが手伝ってくれたから大丈夫。もう痛くないよ』
柔らかく笑んでやると 彼もやっと笑顔になってくれた。
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