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戦国†恋姫~黒衣の人間宿神~

作者:黒鐡
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八章
  間者と俺独自の報告

麗らかな日差しに包まれた部屋で、真剣な眼差しで書見台に向かっている久遠。エーリカは、庭で剣を抜いて、精神を集中している。技の鍛錬でもしているのだろう。俺はノーパソを出して、衛星から越前についての情報収集してた。本当は剣の手入れをする所だろうが、越前に放たれた草が帰ってくるか分からないからな。念のために衛星カメラで、越前情報をデータ化してトレミーで保存しているのを見ていた。

「そういえば、この剣も切れ味いいよな。まあ普通の剣ではないのだけど」

そういえば、結衣が見たというエーリカの技でも聞いてみるか。

「エーリカ、一つ聞いていいか?」

「はい。何でしょうか」

「結衣からの報告によると、鬼の大将みたいなもんを倒した時に技を出したそうだが、どんなもの何だ?」

「あれは技というより、天より降り注ぐ神の御力を、私という媒体を通して剣に流し込んでいるだけのものです」

神の御力という事は、デウスの力を貸し与えているという事かな?エーリカのは天守教だし、その神はデウスだ。

「久遠。エーリカのは神の御力らしいが、他の皆のはどうなの?」

「お家流の事か?」

「そうだ。そのお家流ってのは修業して得るものなのか?」

「ふむ。お家流にはいくつか種類がある。一子相伝のものもあれば、修業をすれば誰でも会得できるものもある。それに、その氏族しか使えない秘術というのもある。・・・・人それぞれだな。それにお家流は御留流だからそう簡単には教えられんだろう。だが、一真は既に何らかの力があるではないのか」

「まあな。ただお家流っていうのは何なのか聞きたかっただけさ」

「お姉ちゃん!お兄ちゃん!越前に放っていた間者が戻って来たよー!」

「来たか・・・・!うむ。眞琴と共に聞く。報せ、苦労」

「うん!じゃあ評定の間でまこっちゃんと待っているから、早く来てね!」

「やっと来たか。どういう状況か気になるな」

「うむ。越前がどうなっているのか。・・・・先に上洛ではあるが、気に掛かる」

俺はそうだなと言った後、トレミーからの情報をリンクしたままの状態でノーパソを閉じてから評定の間へと行った。評定の間に足を踏み入れると、広間の中は緊迫した空気に包まれていた。

「お待ちしていました」

「待たせた。・・・・話を聞こう」

「はい。待たせたな、報告をしてくれ」

「はっ!小谷を発した我らは、越前の国境を越え、各所に分散して情報を収集しました。数は五十。しかしながら戻ったのは、私を含めて三名のみ。その内の一人が、越前一乗谷まで侵入をし、重大な報せを持ち帰って参りました。越前一乗谷は既に鬼共により落城している由。周辺には鬼が満ち溢れ、さながら地獄と化しているとの事です!」

「事態はそこまで進んでいるのか」

「鬼共は一乗谷の城を中心に巣喰っている様子で、そこにいる鬼共は、まるで誰かに統率されているかのような秩序があったとの事です」

「なるほど。こりゃ偵察機と同じ事を言っているな」

「どういう事だ、一真」

俺は部屋を暗くしてくれ、と言ってから映写機を取り出した。ノーパソから繋げてから、映した映像は城を巣喰っている鬼の映像だった。更に、俺の説明にて衛星カメラで映したのと、小型偵察機で映した映像を元に説明をした。

「これは凄い!どういう原理で出来ているんですか。兄様」

「俺達の技術だと言っておこう。で、偵察機が城内部に行ったら鬼ばかりであった。幸い小型偵察機は破壊されないで戻ってきた。鬼を指揮している鬼もいたけどこいつらだ。こいつらが下級の鬼を指示している。これは俺の推測だが、朝倉の主かその側近だと思われる。そしてこれが越前全体の画像だ。人の姿有らずだな。鬼ばかりだ」

「という事は、鬼も知恵を付けたという事になるな」

「それだけで済めば良いのですが・・・・」

「何か懸念でもあるのか?」

「・・・・鬼には幾つかの階級があります。本能のままに動く下級の鬼。その下級の鬼を統率する中級の鬼。その上に居るのが・・・・」

「全てを統率する上級の鬼、という訳か」

「はい。悪魔・・・・鬼は素体の質によって、その能力が大きく変わります。運動能力に優れた者が鬼になれば、運動能力の高い鬼になる。知力についても同じですが、もしも武士だったの場合、それも士官級の武士が鬼となったならば・・・・鬼達は軍隊として機能し始めるでしょう」

「しかん、ってなん何の事ー?」

「ここでいうなら、侍大将とか組頭とかな。軍を統率出来る者は先程説明した通りであって、越前には上級の鬼が生まれた。もしくは先程のこいつか、・・・・こいつが越前の国主だった者が鬼となったと推測できるだろうな」

「嘘だっ!義景姉様が鬼になったなんて・・・・!」

「眞琴、事実を受け止めろ。この鬼に関してだが、素体は女であると推測される。そしてこいつがいるところは、評定の間か国主がいる部屋にいる。という事は・・・・」

「あの気の良い義景姉様が、鬼になった何て。信じられないけど、兄様が言ってる事なら信じよう」

「ねえ、エーリカさん。助ける方法とかって無いの?」

「・・・・残念ながら」

「そんな・・・・」

「・・・・浅井と朝倉は、浅からぬ縁であったな」

「はい。六角より独立した後、弱小であった浅井に力を貸してくれたのが朝倉家でした。以来、同盟を結び、親しくさせて頂いたのですが・・・・」

「その越前が、鬼に乗っ取られちゃっただなんて・・・・」

「それに気付けなかった自分自身が、一番悔しいんだ、僕は!」

「・・・・今はおけぃ」

「しかし!」

「悔しいと思うのならば、その想いを刀に乗せて、義景を鬼ではなく、人として成敗してやれ。それが貴様の出来る、一番の恩返しであろう」

「はい!必ずや!」

「さてと、明かり付けていいぞ。一般人や足軽は下級の鬼とすれば、武士だと中級の鬼と認識していいよな」

映写機を片付けながら俺はエーリカに言った。そして部屋が明るくなった所で、そう認識で良いとの事。鬼単体で考えれば楽だ、人より強い・素早い・しぶとい、とだけでもここの兵や仲間達とでやれば討伐は可能。だが、こちらで考えれば司令官クラスの者や部隊長の者が鬼となれば組織として行動するだろう。鬼が軍隊として動けば、団体戦として動く。そして知能を持つ軍師クラスとなれば、面倒な相手となるだろう。  
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