MS Operative Theory
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MS戦術解説
遠距離狙撃①
——早期に確立されたMSによる遠距離狙撃術——
旧世紀において、遠距離狙撃(以下、狙撃)とは、特殊な訓練を積んだ兵士によって行われる、言わば「職人芸」であった。
彼らの行う訓練は、射撃だけでなく潜入や潜伏、さらに追跡や偽装といったことが含まれ、それらを習得した狙撃手は一般の歩兵とは一線を画す特別な存在であった。
また、狙撃手は「スナイパー」と呼ばれるが、その語源は旧世紀の英国において、タシギ(スナイプ)という鳥をうまく仕留める事が出来る者を「スナイパー」と呼んだことがその始まりである。これが転じて、敵兵を狙撃する兵士のことを「スナイパー」と呼ぶようになったと言われる。
狙撃兵は旧世紀の戦場において特別な存在であったが、宇宙世紀においては人間の兵士による狙撃はほとんど見られなくなった。
MSが闘歩する戦場において、狙撃手は活躍する場所を失っていったのである。しかし、一撃で敵を葬り去る「狙撃」という攻撃方法は、的に与える心理的な影響の大きさから、MSの戦闘方法の一つとして研究され、実用化されることとなった。
MSによる狙撃という戦闘方法に最初に着目した軍隊は、地球連邦軍であったと言われる。MSの開発に出遅れた連邦軍は、公国軍のように複数のタイプの局地戦用MSを開発・運用するのではなく、最初の量産MSであるジム・タイプをベースにバリエーション機を開発したり、汎用タイプのジムに専用装備を携行させることで特殊仕様機としたりする手法を採用した。
この手法に則って開発された狙撃仕様のバリエーション機が「RGM-79SC(ジム・スナイパー・カスタム)」であり、携行装備の変更で生み出された機体が「RGM-79[G](ジム・スナイパー)」である。
MSに狙撃能力を付与するメリットは、ビーム・ライフルをはじめとする大出力火器を用いて、アウトレンジからMSや艦艇を攻撃できることである。これはミノフスキー粒子の影響によって交戦距離が短くなった宇宙世紀の戦場において、大きなアドバンテージとなった。
また、狙撃用MSに近い特性を持つ機体として、大口径長砲身のキャノン砲を固定装備した砲戦用MSが知られる。ここで言う砲戦用MSとは、近~中距離支援用に開発されたキャノン系MSではなく、長距離支援用のタンク系MSなどを指す。
これらの砲戦用MSは主に地上戦で運用され、さまざまな弾種を使い分けることで、小は歩兵から大は基地施設などの固定目標までのあらゆるターゲットに対して効果を発揮した。
砲戦用MSは自走砲の延長線上にある兵器と考えられており、狙撃用MSとは開発系譜も異なっているが、実戦では狙撃用MSに近い運用がなされた。このため、砲戦用MSと狙撃用MSは、その存在が確認されると優先攻撃目標となった。
敵から見れば、アウトレンジからの攻撃を行う狙撃用MSと砲戦用MSは同等に危険な存在であったのだ。
——消えゆく「長距離狙撃」仕様のMS——
目標をアウトレンジから攻撃するMSの「狙撃」や「砲撃」は、旧世紀のそれと同様に絶大な威力を持つ攻撃方法であった。
だが、このような「遠距離狙撃」仕様のMSは時代が経つにつれて少なくなっていく。MS関連技術の向上や戦術の変化により、そうした機体は存在価値を失っていったのである。
➀MSの大型化と万能化
「狙撃」用のスナイパー・タイプMSが開発されなくなった理由の一つとして、グリプス戦役から第1次ネオ・ジオン戦争期に出現した可変MSや重火力MS、つまり「第三世代MS」と「第四世代MS」に代表される新世代MSの出現があげられる。
これらの機体の特徴である高機動力や大火力により、特殊な機体でなくとも「遠距離射撃」が可能となったためである。
➁ビーム兵器の使用による、機体位置の露呈
「狙撃」タイプのMSが多用するビーム兵器も問題となった。ビーム兵器の持つ威力や高い命中精度などは「狙撃」任務に適しているが、ビームの光跡から機体の位置を特定されてしまうという欠点もあった。
これはカモフラージュなどで機体の位置を隠匿する必要のある「狙撃」任務用MSにとって、重要な問題となった。位置が特定された場合、スナイパーの優位は著しく低下してしまうからだ。
➂機動歩兵への回帰と戦術の転換
➀とは反対であるが、U.C.0090年代に入るとMSは開発当初の「白兵戦用機動歩兵」として見直され、特殊仕様のMSは減少することとなった。
当然、「狙撃」用MSも例外ではなく、戦場から姿を消した。さらにU.C.0100年代における第五世代MSの出現と、ビーム・シールドの一般化によって、遠距離攻撃の命中と撃破率が低下したことも「遠距離狙撃」仕様機の価値を低下させる一因となった。
補足事項
——非狙撃使用MSによる「狙撃」——
MS用火器の中でも、特にビーム・ライフルは長射程を誇り、さらにMSに搭載された光学機器の精度も高いため、狙撃仕様でないMSであっても狙撃任務を行うことが可能であった。
実際、一年戦争後期、連邦軍極東方面軍機械化混成大隊の第08小隊のMS2機が、10kmもの距離から敵MSに対して狙撃を行い、公国軍のザクⅡを破壊している。なお、この任務に投入されたMSは、RX-79[G](陸戦型ガンダム)であった。
——最強の狙撃兵器メガ・ランチャー——
メガ・ランチャーは艦艇などを撃破するために開発された大型火器である。その全長はMSよりも大きく、MS用火器というよりも管制にMSを使用するメガ粒子砲といった方が適切であろう。ランチャー本体にジェネレーターを併用する場合もあった。
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