| 携帯サイト  | 感想  | レビュー  | 縦書きで読む [PDF/明朝]版 / [PDF/ゴシック]版 | 全話表示 | 挿絵表示しない | 誤字脱字報告する | 誤字脱字報告一覧 | 

季節の変わり目

作者:naya
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。 ページ下へ移動
 

佐為の訪問

 ヒカルは明日から復帰するらしい。記憶を戻す手助けになるかもしれないと、ヒカルのお母さんもすぐに了承したそうだ。今、ヒカルは自宅のベッドですやすやと眠っている。昨日、ヒカルは退院したのだ。ヒカルの部屋のカーテンは開け放され、晴れた空が見える。光が燦々と広がり、ヒカルの前髪をさらにきらきらさせている。まるでヒカルの復帰を祝っているようだった。

「応援していますからね」

私は小さく言った。すると、ヒカルの瞼がぴくぴく動いた。

「ん・・・」

そのまま目を覚まし、身体を起こしたヒカルは、ベッド脇にいる私を見て後ろにのけぞった。

「うわあああー!ふ、藤原さん、何でここにいるの!?」

「何となく、来てしまって・・・。ちゃんと今日ヒカルのお母さんに電話したんですけれど、ヒカルが全然起きなくて」

まさかそんなに驚かれるとは思っていなくて、私は目をぱちくりさせた。時刻は11時30分だ。ヒカルは落ち着こうと溜め息をつき、「おはようございます」と挨拶をした。

「おはようございます。いえ、こんにちはかもしれませんね。今日の気分はどうですか」

「元気です・・・」

ヒカルは恥ずかしそうに俯き答えた。寝顔を見られたのが嫌だったのだろうか。

「ちょっと顔洗ってきます」

ヒカルはそのまま一階に。私はヒカルの部屋に一通り目を通した。何だか初めて来る気がしない。こうしてここにずっと居た気がする。私は外からの光に目を閉じてしばらくの間瞑想していた。

「佐為さーん。ご飯できたわよー」

ヒカルのお母さんが下から呼ぶ声がしてすぐに一階に向かった。下にはヒカル、ヒカルのお父さん、お母さんが揃っていて、一緒にご飯を食べた。お昼ごはんはヒカルの好物のラーメンで、ヒカルははふはふと勢いよくラーメンを口に運んだ。そんなヒカルが可愛くて、私が微笑むとヒカルと目が合った。ヒカルは赤くなって目を逸らし、水をごくごく飲み始める。まだヒカルには警戒されているのかもしれない。
 
ページ上へ戻る
ツイートする
 

感想を書く

この話の感想を書きましょう!




 
 
全て感想を見る:感想一覧