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魔道戦記リリカルなのはANSUR~Last codE~

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Epos16彼らもまた主が為に決意する~Auswahl der Evolution~

 
前書き
Auswahl der Evolution/アオスヴァール・デア・エヴォルツィオーン/進化の選択 

 

円卓と、その周囲に設けられている椅子が13脚と在る本局のある一室。13脚のうち8脚には人のホログラムが投影されており、別の3脚上には時空管理局のエンブレム、そしてローマ数字のⅠ、Ⅱ、Ⅲが表示されたモニターが浮いている。残り2脚は空席のようだ。
彼らは時空管理局評議会。管理局運営とはまた違った事柄を決めるための組織で通称、権威の円卓。今回もまた誰にも知られる事なく秘密の議会が行われていた。

『聞いたかパラディース・ヴェヒターの正体! かの有名な闇の書、その守護騎士ヴォルケンリッターだったそうだ!』

ホログラムの1つ、年端もいかない少年が愉快痛快とでも言うように大笑いしている。その笑い声を聴いている他10人は沈黙を保っている。

『フンッ、やはり犯罪者は犯罪者と言うわけだ。これでスカウトは出来んな』

ホログラムの1つ、ミッドチルダ地上本部の実質的なリーダー、レジアス・ゲイズ中将が鼻で笑う。スカウトを提案した管理局の暗部、1111st航空隊隊長ロッキー・サブナック一等空佐、固有スキルで以って捜査を行う特別技能捜査課、その課長クー・ガアプ一等陸佐が苦い表情を浮かべた。

『しかも、何を間違ったか新人の嘱託魔導師とその使い魔、そして管理外世界の民間人を襲ったそうじゃないか。当然、指名手配されたぞ。それだけじゃあない。ロウダウナーとかいうガキどもが局施設を襲撃し強奪したロストロギア、征服剣フェイツ・コンクエスター。連行されてきたガキども5人、誰も持っていなかったそうじゃないか』

『守護騎士が征服剣をロウダウナーから横取りしたと?』

『取り調べではそう言っているようです』

ここで新たな参加者。最高評議会の世話係である女性局員だ。いつも通りモニターにも表示されず、声の身が権威の円卓のメンバー全員に届く。

『ですが取り調べでは供述内容に若干の乱れあり、との報告を受けています。事実、守護騎士に征服剣を奪われたのかどうかは不明です』

『だそうだが? しかし局員と民間人に手を出したのは事実。そしてロストロギア、闇の書の守護騎士であることもまた事実。最高評議会の御三方、スカウトの件はどうする?』

管理局創設より存命している最高評議会、議長デュランゴ、書記トレイル、評議員リョーガの返答を、他のメンバーは無言で待つ。

『闇の書は御しえる代物ではない。完成前もその後も、だ』

『ではスカウトの件は』

『現時刻を以ってパラディース・ヴェヒターのスカウト案を破棄する』

議長デュランゴのその有無を言わさぬ一言を以ってパラディース・ヴェヒター、守護騎士ヴォルケンリッターのスカウト案が白紙に戻された。少年は『ま、俺の目的はランサーだけだ。問題はない』と誰にも聞こえぬほどの声量で呟きニヤリと口端を上げた。彼はすでに気付いていた。ランサーが消えるべき守護騎士ではないことを。“闇の書”事件の終結後も消えることなく存在することを。ゆえに少年は笑う。必ずランサーを手に入れてみせる、と。

『闇の書の捜索、どこの部隊が担当することになっているんだ?』

『確か、アースラスタッフだったのでは・・・?』

『アースラ?・・・・あぁ、先の闇の書事件にて殉職したクライド・ハラオウン提督の婦人と息子の居るチームか』

『おいおい、どこのどいつだ、アースラに捜査担当を指示した奴は? 運用部には随分と面白いことを考える奴がいるじゃないか、夫の復讐でもさせるつもりか?』

少年は終始楽しそうだ。運用部、人員や艦船の配置の決定権を持つ部署だ。彼は運用部の何者かに拍手を贈る。ハプニングやサプライズといった予想外の出来事がよほど嬉しく面白いらしい。

『偶然だろう。後にアースラに配属されるであろう新人と、その友人が標的にされた。流れ的にそうなってもおかしくない』

『とにかく闇の書は破壊すべき毒だ。アースラから助力を求められた場合は可能な限り受けるように』

デュランゴがそう告げ、今回の議会は閉幕した。

†††Sideイリス†††

「いってきます」「いってきまーす♪」「いってくるよ」

「それじゃあクロノ、エイミィ、イリス。少しの間、よろしくお願いね」

「はい、いってらっしゃい、母さん。それにフェイトとアリシア、アルフも」

「いってらっしゃい、フェイトちゃん、アリシアちゃん、アルフ♪」

「いってらっしゃい」

これからフェイトとアリシアは、保護者のリンディ艦長と付き添いのアルフを伴ってこれから通う聖祥小学校へ向かう。今日は転入初日で、フェイトは静かに興奮していて、アリシアは「早く早くっ♪」ってフェイトとリンディ艦長の手を取って急ごうとする。
ちなみにフェイトはなのは達と同じクラスになるって話。で、アリシアもフェイトと一緒になのは達のクラスに転入することになっている。し・か・も。アリシアはフェイトの双子の姉ってことになってるんだよ。ありえねぇ~。ちくしょう、31歳め。

「ねえ、イリスちゃん。恐いよ?」

エイミィがわたしを見てそんなことを言ってきた。今のわたしはギリギリ歯軋り中。だって「わたしだけ居残りってあんまりじゃない」わたしだってなのは達と学校に通いたいんだよぉ~。わたしは学校に通わず、聖王教会の中でも指折りの学士たちを家庭教師として勉学に勤しんだ。
騎士としての魔法の腕や戦術は、偉大なご先祖様であるシャルロッテ様の刀、“キルシュブリューテ”・オリジナルのおかげで労することなく手に出来て、知能は父様のスパルタでそれなりだ。でもそこには楽しさは無かった。だから学校に通うということがすごく羨ましい。

「しょうがないだろ。君はフェイトとは違って正式な局員だ。学校に通っている暇なんてない」

「じゃあ局員辞める」

「馬鹿を言ってないでほら、仕事を始めるぞ」

クロノにはバッサリと切り捨てられ、「イリスちゃん。頑張ろ?」エイミィにも応援されなかった(当たり前な事だけど)わたしは本気じゃなかったとは言えちょっぴりヘコんで「りょ~か~い」渋々仕事を始めることにした。リビングに戻って来たわたし達はソファに座って、展開した空間モニターを眺める。表示されているのは守護騎士ヴォルケンリッターの面々だ。

「全員、聞こえているか?」

『うん、聞こえてるよクロノ君』

『あたしも問題ないわ』

『うん、私の方も大丈夫だよ』

通学前のなのは、アリサ、すずかにこちらからの通信を念話って形で繋げる。そして『私も問題なし』今しがた出て行ったフェイト、『うん、聞こえる聞こえる』とアリシア、『ええ、問題ないわ』とリンディ艦長、最後に『あたしも聞こえるよ』ってアルフが応じた。

「まずは、だ。先日、君らがランサー達から聞き出した情報だ」

「闇の書の主は闇の書の呪いによる何らかの病を発症していて、それを治すために彼ら守護騎士はリンカーコアを蒐集して完成させようとしている、と」

先日、図書館から帰る時に向こうから接触してきた守護騎士たち。“闇の書”の完成を目指す理由を聴いた、主の未来を民間人の憎しみや血で穢さないために犯罪者だけを狙っていることも聴いた。優しい主を助ける為に、罪を償う事になろうともことを起こした、とも。ランサーから語られた話が嘘じゃなければそういうことになるわけだけど。でもランサーの声からは真剣みを感じて、どうしても嘘とは思えないのよね。

「それにしてもやっぱりテスタメントちゃんのことを思い出しちゃうよね、その動機は」

彼らの目的はテスタメントに似ている。まぁテスタメントの場合は救いたい相手は自身で、相手が民間人だろうがなんだろうが関係なくなのは達と対立したけど。あとそれと、死に間際の独白に出てた、色々と罪を犯した、ってやつ。結局あれは立証できなかった。

『・・・うん。あの時のランサーさんの話を聴いて、私、変身できないとか関係なく呼び止められなかった』

エイミィがポツリと漏らすと、なのはがそれに同意を示した。アリサも『あたしもよ。しかも応援しそうになったわ』なんて言い出す始末。なのはとアリサと来れば、『本当に蒐集をやめさせないとダメなのかなぁ』すずかまでそんな事を言いだした。

「ダメに決まってるしょうが」

『『『やっぱり』』』

まったく、情に流されちゃったら局員は務まらな――って、なのは達3人は局員じゃなかったんだ。3人とも管理局に就職しないかなぁ。そうしたらいつでも連絡を取り合ったり休日に遊んだり出来るのに。

『あのさ、テスタメントってさ。わたしとフェイト、ママを助けるためにその・・・死んじゃった子だよね・・・?』

アリシアが沈んだ声で確認するかのように訊いてきた。それに『うん。色々あったけど、良い子だったよ』フェイトが悲しげに答えた。

『そっか。ありがとう、だね』

『うん』

フェイトとアリシアが体を寄せ合ってる光景が目に浮かぶ。

「コホン。話を戻すぞ。君らの話を聴いて、僕は少々疑問を持ったんだが・・・」

『何に?』

「これまでの守護騎士のデータを取り寄せて閲覧したんだが、どうも今回の騎士たちは人間臭い。今までの連中は機械的な受け答えしかしなかったはずだ」

なのはに訊かれたクロノが苦い表情で答えた。“闇の書”。初めてこの名前を聴いた時、わたしは例の懐かしさ、そして僅かな切なさを覚えた。ジュエルシードの時と同じ。きっと悲しい結末が待っているのかもしれないなんて思ってしまっている。まぁそれは置いといて。

『人間臭いも何も人だよ、クロノ君』

「・・・僕たち管理局組はすでに知っていると話だが、闇の書の守護騎士は厳密に言えば人間じゃない」

「え? 私知らないよ」

エイミィだけがそう言うけど、クロノはスルーするようでエイミィをチラッと見ただけ。わたしは「資料、ちゃんと見た?」って小声を掛ける。と、「全部はまだ見てない」ってエイミィはしょんぼり。うん、見ようねちゃんと。

『え、人間じゃないって・・・?』

『どこをどう見ても――あー、確かに顔は動物だけども、アレは魔法での変身なんでしょ? それなのに人間じゃないってどういうわけ・・・?』

「そうだな。じゃあまずは闇の書についてまだ話していない事を話そう」

なのは達に伝えているのは、“闇の書”はリンカーコア――魔力を食らって666ページを埋めていく物で、守護騎士ヴォルケンリッターはその実行部隊だって簡単なもの。そこにまた“闇の書”の情報を追加していく。

「まず闇の書の呪いというものが何なのか判らないが、病を治すなどという機能は有していないはずだ」

『待ってクロノ。それじゃあランサーの話が嘘だって言うの? 私、判るよ? ランサー、きっと嘘を言ってない』

『うん、真剣だったよ、あの人たち』

フェイトとすずかもわたしと同じ思いみたい。遅れてなのはとアリサ、アリシアもそれに同意を示していく。もしこれで全部が嘘っだらランサー、大した演技者だよ。あと捕まったらなのは達から大顰蹙を買うこと請け合いだ。

「僕は直接聞いていないからそれについてはノーコメントだ。が、僕の言ったことは事実だ。闇の書に何かを治すという機能はない。アレは破壊だけを撒き散らす。だから何が何でも連中の蒐集行為を止める必要がある。もし万が一にも完成した場合、ジュエルシード暴走クラスの次元災害が引き起こされるだろう」

『『『『『っ!!』』』』』

なのは達が息を呑んだのが判った。わたしも資料を見たけど、11年前、22年前、29年前、37年前、管理局の捜査資料で一番古い42年前も、それは酷いことになった。特に11年前。クロノやリンディ艦長にとってとても辛い結末になってしまっていて。コレをなのは達に伝えるかどうかをクロノに訊いてみたんだけど。

――下手に気を揉ませるような言動はしない方が良い。彼女たちはまだ、僕らの日常・彼女らの非日常(こちら)側じゃないんだ。いつでも離れられるよう、退路を残しておかないといけない――

わたし達にとって荒事は日常だけど、なのは達にとってはまだ非日常の域だ。“闇の書”の主たちへの同情やクロノ達の抱く悲しい因縁の板挟みになって苦しまないように。クロノのなりの気遣いだ。

「闇の書はね、完成前・完成後、そのどちらでも破壊特化なの。破壊以外に闇の書が使われたって話は残ってないわけ」

「それ以前に闇の書は制御が不可能とされている。さらに、だ。完成したらしたで自滅の一途を辿る。しかも周囲に散々破壊をもたらしながらだ。どれだけ危険な代物か、判るというものだろ?」

クロノが厳粛に告げる。なのは達は無言。管理局に残された情報とランサーの語った動機、そして自分たちが抱いたランサーの話が事実だという直感、その3つの感情で言葉が無いみたい。

「フェイト、なのは、アリサ、すずか。君たちは闇の書捜索を手伝いたいと僕たちに申し出た。正直、君たちの戦力を当てにした。だが迷いがあるのならここで引いてくれ」

少しの沈黙。なのは達がどんな答えを出したとしてもわたしはいい。一緒に戦えたら、って思うけどやっぱりなのは達の身の安全が第一だ。

『私はこのまま手伝う。負けたままで終われないって前は言ったけど、それは変わらないし。クロノの話を聴いて、あの騎士たちが本当は何を目指しているのかも知りたくなった』

『私も手伝う気持ちは変わってないよ。フェイトちゃんも言ったけど、ランサーさん達とちゃんとお話しして、あの人たちの事を知りたい』

『あたしもよ』

『私も』

なのは達の決意は変わらなかった。それどころかさらに強くなってる。なのは達もそうなんだよね、誰かの為に、って。自分たちが持ってる力に溺れることなく、それを役立てようとするその思い。だからわたしはみんなのことが大好きだっ。

『本当にいいの、なのはさん、アリサさん、すずかさん。あなた達はやっぱり民間の子たちだから・・・。フェイトさんも。嘱託とは言えまだ子供だし』

これまで静かに話を聴いていたリンディ艦長がなのは達に確認した。それは管理局員としてじゃなく、まるでお母さんのような優しい声色で。

『『『はい、手伝います!』』』

『私も問題ありません、リンディ提督』

リンディ艦長からの確認でも変わらないなのは達の意志。これでもうわたし達はなのは達を止めることは出来なくなった。

『ねえ、クロノ。さっきの続き。守護騎士は人間じゃないってやつ!』

「ああ、そうだった。闇の書には大まかに分けて3つのプログラムがあると判っている。1つは闇の書全体を統括する管制プログラム、1つは闇の書防衛を担う防衛プログラム、そして君たちが遭遇し、次元世界を席巻した騎士であるヴォルケンリッターを生み出す守護騎士プログラム、だな」

「うん。守護騎士は魔法技術で創られた疑似人格を実体化させたものなんだよ。意思疎通の会話くらいなら以前から見せていたらしいけど、感情を見せることはなかったって話。ただ主の命令に従って蒐集行為をする人形――プログラムだった、はずなんだけど・・・」

実際に会ったことでそれは間違いだという事は判った。

『何度も言うけど、それでもちゃんと意思のある人たちだったよ』

なのはがそう言ったところでわたしはクラっと眩暈がした。脳裏にピカッと強烈な光が生まれて、「なに・・・?」妙な既視感を憶えた。プレシアと言い争った時にも感じたものだ。以前にも似たようなやり取りをしたようなした事ないような、って感じ。

『たぶんなんだけど、今回の主って人の力じゃないかな。優しい主だ、って言っていたし』

『あ、それはあるかもしれないね。これまでの主って問答無用で蒐集させていたそうだし。だから感情なんて要らなかった。でも今回、良い主と出会うことが出来た。優しくされたら優しくし返すと思う。それを繰り返して、きっと人らしくなったんだよ』

『おお、なのはもすずかも良いこと言う! きっとそうよ!』

『私も2人に賛成。・・・私もそうだったから。なのは達と逢えて、私は変わることが出来た。きっとあの騎士たちも変わったんだと思う、その主と会ったことで』

「そうね。たとえ感情が無かったとしても、人と深く関わり合えば人格・意思を持つ者なら必ず感化されると思う。プログラムであってもきっと心は育つ」

わたし達から話を聴いたクロノは腕を組んで唸って、そして「その辺りは接敵して行けば判るだろう」って後回しにすることを決定させた。

「いや、調べればいいのか。ユーノ辺りに頼んでみよう」

『『ユーノ君に?』』『『『ユーノに?』』』

ユーノは今、セレネやエオスの通うザンクド・ヒルデ魔法学院で結界魔法の外部講師として2人と一緒に通ってる。確かにユーノは遺跡発掘を生業としてるスクライアの魔導師。調査系の仕事に優れてる、はず。

「それに、僕の知人に声を掛けてみよう。以前に闇の書事件に関わったことがあるし」

『グレアム提督とリーゼ達ね』

「はい。母さん」

『って、誰?』

「ギル・グレアム提督、その使い魔のリーゼアリアとリーゼロッテ。グレアム提督は、かつては艦隊指揮官、執務官長を歴任していたんだけど、現在は現場からは退いて顧問官として勤めてるのね。リーゼアリアとリーゼロッテは、クロノ君のお師匠でもあるんだよ。アリアには魔法を、ロッテには格闘を。だよね、クロノ君?」

アリシアの疑問に答えたエイミィ。グレアム提督は“時空管理局歴戦の勇士”って通り名を与えられるほどの人だ。リーゼ(2人を同時に呼ぶときはコレ)も見た目は若い女性だけど、実はかなりのおばあちゃん(って言ったら、笑顔で、お・ね・え・ちゃ・ん♪って脅迫された)で、グレアム提督の若い頃から生きている歴戦の実力者。

「ああ、まぁ、そうだ」

『なんか歯切れが悪いわね』

『お師匠さまだから、辛い修業時代を思い出したとか?』

『なるほど~』

違う。そうじゃないよ、フェイト、みんな。クロノはリーゼが――というかロッテが若干苦手なんだよ。いっつもロッテに玩ばれるもんね、クロノってば。それを知ってるわたしとエイミィが「ふふふ」小さく笑い声を漏らす。と、「何か?」ってクロノに睨まれた。

「「ううん、なんでも♪」」

「ふぅ。とにかく、だ。こちらはまず情報を集めることに専念するつもりだ。君たちのデバイスはまだ直りきっていないしな。それまでは日常を楽しんでくれ」

『『『はーい!』』』『ええ』『うん』

なのは達との通信はこれで終わり。あとは「あ、マリエル? わたし、イリス」なのは達のデバイスの修復状況だ。本局・技術部の技官マリエルに通信を入れる。

『あ、イリスちゃん? あっ、それにエイミィ先輩にクロノ先輩も、こんばんは』

「ああ」

「こっちはおはようだよ、マリー」

マリエルがモニターに映る。どうしてクロノとエイミィを先輩って呼ぶかって話だけど、マリエルは聴いたところ元々執務官志望だったみたい。でも執務官になるのが難しいって判断して、技術士官コースに進路変更して、士官学校を出た。これが2人を先輩呼ばわりする理由。ちなみに今は装備部に所属。
そんなマリエルは今どうやらメンテナンスルームに居るようで、早速修理に取り掛かってくれているんだって嬉しく思えたから、「もう修理始めた?」って訊いてみた。

『それなんだけど・・・。第零技術部のスカリエッティ技術部長たちの助けもあって全機の修復はほぼ完了したんだけど・・・』

「ドクターの?」

第零技術部。管理局のみならず次元世界屈指の技術が生み出される奇跡の箱庭(ガーデン・オブ・スカリエッティ)。ドクターって言うのはその技術部の部長であるジェイル・スカリエッティのニックネームだ。
ドクターに抱いた第一印象は最悪だった。例の感情の出現で、ドクターは敵☆、ていうか死ね♪、つうか殺す❤、みたいな物騒な思いが脳裏に過ぎったしさ。あれは危なかったね、うん、マジで。あとクアットロにも似たようなものが。
でもま、トーレやチンク、クアットロ達シスターズに向ける父性愛からの親馬鹿っぷりにとうとうわたしは警戒を解いた。実はと言うと、“キルシュブリューテ”にAIを搭載してくれたのは他ならぬドクターだ。

(元の強度を殺すどころかさらに強くして搭載したその技術力と腕は信頼できるんだよね)

そのおかげでこれまでの使用で“キルシュブリューテ”は壊れるどころか刃こぼれ1つとしてない。それからのメンテナンスはマリエルに頼むことにしたけどさ、なんとなく。

『フレイムアイズとスノーホワイトは強度強化や処理速度の改善などなど、問題なく終わったんだけど、レイジングハートとバルディッシュからちょっと私じゃ判断できないリクエストがあって・・・』

「リクエスト?」

『はい、どうしてもあるエラーが消えないんです、エイミィ先輩。レイジングハートからはベルカ式カートリッジシステムCVK792-Aを、バルディッシュからは同システムCVK792-Rを組み込んでくださいって』

「「カートリッジシステムを!?」」

クロノとエイミィは驚いて見せたけど、「そっか。そうだろうね」わたしはなんとなくこうなることを予想してたから大して驚きはなかった。守護騎士は単純に強い。何せ対人戦特化の戦闘者だもん、騎士は。その中でもきっとトップクラス。そしてデバイスにも性能差があったと思う。
アームドデバイスの隠れた特徴はその強度だ。ミッドの魔導師が使うデバイスはあくまで杖。殴り合ったりするような物じゃない。だけどアームドデバイスはそれを行う武器としての魔導端末。そこにカートリッジシステムなんてドーピングを行えばミッドのデバイスが負けるのは必然のこと。

『フレームやコアの強度補正に加えて、カートリッジシステムを搭載。相手はベルカ騎士で武装はアームドデバイスだから、確かに搭載すれば正面から渡り合えるかもしれないけど・・・』

「ストレージデバイスならともかく、インテリジェントデバイスのような繊細なデバイスに後付けで組み込むような代物じゃないよね、カートリッジシステムって」

そう。エイミィが言ったそれこそがマリエルを困惑させてる理由。インテリジェントデバイスは魔法の発動の手助けになる高度な処理装置、状況判断を行える人工知能も有してる。どれもが繊細で、殴り合いなんてしたら一番エラーを起こしやすいデバイスになる。
わたしの“キルシュブリューテ”は元々アームドデバイスで優れた強度が有ったから、AIを搭載させてインテリジェントデバイス化することが出来た。打ち合いしてもいいように始めから造られてる“バルディッシュ”ならまだしも、完全な魔導の杖である“レイジングハート”に搭載するなんて、限界線を1歩も2歩も踏み越えちゃってる。

『そうなんですよ。それなのにあの2機は、組み込むように、っていうメッセージだけを送って来て。ドクターに相談してみたんですけど、それはマスターとデバイスの決めることだ、って言って。どうします?』

「ドクターの言う通りかも。最終的に決めるのはその子たちのマスターであるなのはとフェイト。お互いに力を求めるんだったら叶えさせるべきじゃない?」

「そんな無茶な・・・」

『イリスちゃん、なんか乱暴な考え』

わたしはそう断言する。それを聴いて困惑するエイミィとマリエル。でもクロノは「そうかもしれないな」ってわたしの意見に賛成してくれた。

「とにかく訊いてみよう。クロノ。なのはとフェイトに通信を繋げて」

早速訊いてみよう。なるべく早く答えを出した方が、より守護騎士たちと出会えるから。

†††Sideイリス⇒なのは†††

『――というわけで。レイジングハートとバルディッシュから、ベルカ式カートリッジシステムの追加搭載をリクエストされたんだけど』

通学バスでアリサちゃんとすずかちゃんと合流したところで、シャルちゃんから聴かされた話は、私とフェイトちゃんの相棒である“レイジングハート”と“バルディッシュ”からの以外な申し出についてだった。

『カートリッジシステムって、アリサちゃんやシャルちゃん、守護騎士の人たちも使ってる物だよね』

『ええ。レイジングハートからはCVK792-A。アリサのフレイムアイズと同じ、オートマティックタイプのカートリッジシステムね。そしてバルディッシュからはCVK792-R。コレは、ランサーの槍と同じリボルバータイプになる』

『ランサーの物と同じ・・・』

先に学校に着いて校長先生や担任の先生に挨拶をしているはずのフェイトちゃんから、少し迷ってる風の声色な返事が届いた。

『どうする2人とも。OKを貰えればすぐにでも搭載するための作業を始めるけど・・・。正直言うとね、カートリッジシステムを搭載しないと守護騎士に勝てないかもしれないって思ってる。向こうは本当に戦闘のプロ。経験や戦闘力の差を埋めるには、やっぱりデバイス強化しかないと思うんだ。それが判るからこそ、レイジングハートもバルディッシュも、この道を選んだ』

本当は“レイジングハート”や“バルディッシュ”のような繊細なインテリジェントデバイスにカートリッジシステムを組み込むのはとても危険なことなんだって。本体の破損とか扱いの難しさとか。それが判っていながら2機とも、どうしても、って聴かないって。シャルちゃんは言った。悔しかったんだろうって。私たちを守りきれなかったこと、私たちの信頼に応えられなかったことが。

『シャルちゃん。私はお願いするよ、カートリッジシステムの搭載を。バスターちゃんとお話しするためにはまず、並ばないといけないから』

お話しするためにもし戦うことが必要になっちゃったりしたら、今のままじゃ絶対に何も出来ないで逃げられちゃうし。

『判った。フェイトはどうする?』

『・・・私も、お願いする』

『ん、判った。じゃあ早速連絡を取るから、手元に帰ってくるまでもう少し待っててね』

シャルちゃんとの通信が切れる。ずっと黙って通信が終わるのを待っていてくれたアリサちゃんに「シャルはなんて?」そう訊かれたから、“レイジングハート”と“バルディッシュ”に、アリサちゃんの“フレイムアイズ”や守護騎士の人たちが持ってるデバイスのようなカートリッジシステムを組み込むことを伝えた。

「シャルちゃんは、カートリッジシステムって扱いが難しい、って言ってたけど。そうなのアリサちゃん?」

「え?・・・えーと、あたしは始めからカートリッジシステムを使ってたから気にはなんないわ。まぁでも、カートリッジをロードした直後は魔力がドカンと膨れ上がるから、意識しておかないと振り回されるかも知んないわね」

アリサちゃんから役立つアドバイスをもらうことが出来た。なるほど。カートリッジの使用直後は意識しておかないと振り回されちゃうんだね。覚えておかないと。

「なのはちゃん、アリサちゃん。私のスノーホワイトにはカートリッジシステムが搭載できないからなのはちゃん達のように前で戦えないけど、その分パワーアップしたスノーホワイトと私で精いっぱい補助するからね♪」

「うんっ」「ええ」

私たちは手を重ね合って「頑張ろう、オー!」気合いを入れた。
そうして私たちは通学を終えて、教室に。教室に入るとざわざわと少しざわついているのが気になったからみんなの会話に耳を澄ませてみると、このクラスに転入生が来る、っていう話題でざわついているみたいだった。

「フェイトちゃん達のことだね」

「みんな、どんな反応するだろうね、アリシアちゃんを見て」

「飛び級!?とか、え、そっちが姉!?とか、あとやっぱり、可愛い!とか、じゃない?」

見た目は小学1年生くらいだけど、仮死状態だった時間を合わせるとその年齢は31歳。でも精神年齢は外見相応な不思議ちゃん(シャルちゃん談)。そんなざわつく教室の中で真実を知ってる私たちは、何も知らないクラスメイトが転入生に期待を膨らませているのを微笑ましく見守る。

「はーい、みんな席に着いてね~」

担任の道俣(みちまた)先生が入って来て、教室の所々でお話ししていたクラスメイトが席に着いていく。みんなそわそわしながら教室の前の入り口をチラチラしているのが判る。

「えー、あはは。転入生の事はすでに知られているようだから早速、みんなの新しいお友達を紹介しよう! 入って来て~」

先生が呼ぶと、ガラッと引き戸がスライドして行って、フェイトちゃんとアリシアちゃんが姿を見せた、んだけど・・・。アリシアちゃんはニコニコ笑顔でフェイトちゃんの左腕に自分の腕を絡ませて体を寄せていて、フェイトちゃんは人前でそんな状況だからか顔が赤い。

「はい、2人とも。仲が良いのは判りますから、分かれて入って来てください」

先生にそう言われたことでアリシアちゃんはフェイトちゃんから離れて教卓の隣に。フェイトちゃんも遅れて教卓の、アリシアちゃんの隣に並んだ。

「さ、自己紹介をお願いね」

「あ、はい! は、はじめまして、フェイト・テスタロッサ、です」

「はじめましてー♪ フェイトのお姉ちゃんの、アリシア・テスタロッサで~す♪」

元気よく挙手したアリシアちゃん。すると「そっちが姉ぇぇぇーーーーっ!!??」みんなが盛大に驚愕して見せた。とそこで『ほらね』ってアリサちゃんから念話が。ついさっき言ってたもんね。

「ブイっ☆・・・っと、ほら、フェイトも一緒に!」

「え? あ、えっと、ブ、ブイ」

ハイテンションなアリシアちゃんと恥ずかしさやら戸惑いやらでドギマギしてるフェイトちゃんがみんなに向かってピースサイン。このあと、転入生・転校生の洗礼である質問の嵐を、アリシアちゃんとフェイトちゃんは受けた。

 
 

 
後書き
アロハ・カカヒアカ。アロハ。アロハ・アヒアヒ。
なんとビックリ。今回はエピソードⅡの主役である八神家が一切出て来ない話となってしまいました。まぁその代りに次話、守護騎士のみんなに頑張ってもらいましょう。
 
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