魔法少女リリカルなのはANSUR~CrossfirE~
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。
ページ下へ移動
サヨナラじゃなくてアリガトウとキミは ~Testament~
前書き
作中のTesですが、テスタメントとお読みください。お願いします。
VS終極テルミナス イメージ戦闘BGM
TALES OF XILLIA 2「互いの証の為に」
https://youtu.be/hBpxZ16v2F0
†††Sideシャルロッテ†††
無人世界軌道上――宇宙空間で、なのは達の乗る艦が来るのを待つ。
「いい? どんなまずい状況になっても絶対に自分を犠牲にするような真似はしないこと」
宇宙空間に漂いながら隣に居るルシルに注意しておく。折角フェイトと結ばれるというのに、こんなところで斃されてしまっては意味がない。テルミナスの計画からしておそらくルシルを斃そうとはしないはずだけど、万が一もある。
「了解だ。私とてフェイトに誓ったからな」
「・・・信じるよ。絶対に無理はしない」
「誓おう。絶対に無理はしない」
ルシルの目を見る。その目に宿るのは、テルミナスを斃すという決意と、生き残るという覚悟だ。
「・・・うん。あ、そうだ。ねぇ、ルシル」
「ん?」
「私ね、テルミナスに1つだけ感謝している事があるんだ」
そう言うと、ルシルも笑みを浮かべて「私も、奴には1つ感謝している」って私と同じことを言う。たぶん同じことを考えているに違いない。絶対そう。
「テルミナスに言ってやれ。どんな顔をするか楽しみだ」
「あはは。そうだね」
格上のテルミナスとの決戦前だけど、私たちは落ち着いている。
『ルシリオン様、シャルさん』
位相空間内で待機しているマリアからのリンク。どうやらテルミナスのお出ましのようだ。
「なのは達の艦、到着まであともうしばらく。それまで耐えるよ」
大体17、8分くらいか。かなり際どい時間だ。あのテルミナス相手に約20分も稼がないといけない。でも、絶対に稼いでみせる。ルシルとフェイトのためにも、ね。それ以前に、作戦の成功のためにもそれくらいは稼がないといけないんだし。
「ああ。それでは作戦通りに頼む」
「よっし! 見せてあげようか、アイツのシナリオを超える私たちのシナリオを。とことん後悔させてやろうじゃないの!」
純白の葡萄十字・“第三聖典”と“断刀キルシュブリューテ”を合成する。そうすることで両方の特性を持った武器が出来るからだ。ルシルから教えてもらったことだけど、これはかなり便利だ。
「シャル、全ての複数術式、武装の制限を解いた。どれでも使ってくれ」
「ん。必要になったら使わせてもらうよ」
“聖典キルシュブリューテ”を振るいながら答えるながら守護神の外套を消す。動きを制限されるような物は必要ない。
「行こうか。シャル、マリア」
「うん。準備はいい、マリア?」
『はい、シャルさん。いつでもどうぞ』
位相転移。一瞬で無人世界の大気圏内に進入。一面荒野で本当に何も無い。無人というより無命世界だ。でもその方が良い。必要のない犠牲は出したくない。隣に浮遊しているルシルと顔を見合す。ルシルも漆黒のケルト十字・“第四聖典”と“神槍グングニル”を合成した“聖典グングニル”を手にしている。そして私と同じように外套を外した。マリアはいない。あの子にはあの子の役目がある。それに、テルミナスにその存在を知られてはいけない。バレればそれで終わる。
『来るぞ!』
リンクを通してルシルが叫んだ。それと同時に聞こえてくるアイツ特有の「クスクス」っていう笑い声。
「ルシリオン、シャルロッテ。さぁ、語り合おうよ」
テルミナスがその姿を現した。アイツが手にしているのは、ルシルと同じ漆黒のケルト十字。堕ちた聖典の“第四偽典”。元守護神テルミナスの固有武装だ。
「行くぞ、シャル」
「ええ。・・・・・行こう!!」
位相転移を行い、上空へ移動。そこからテルミナスに向けて干渉砲撃を無数に放つ。この世界での最後の戦いが始まった。
・―・―・―・―・―・
VS・―・―・―・―・―・―・―・
其は霊長の審判者が終極テルミナス
・―・―・―・―・―・―・―・VS
無人世界の黄昏の空を飛び交う無数の閃光。現実に干渉する“実数干渉”ではなく、幻想に干渉する“虚数干渉”による攻撃。正に幻想に生きる2柱と1体に見合った攻撃だった。
「はぁぁぁぁぁぁぁぁッ!」
Tesシャルロッテの振るう“聖典キルシュブリューテ”が、終極を処断せんと奔る。位相転移の連続から放たれる、数万分の1秒という間隔を空けての万を超える全方位からの剣閃。それを“第四偽典”と己の干渉能力、位相転移によって余裕で回避していくテルミナス。
「クスクス。剣戟の極致に至りし者、ね。その程度の腕でよく言う。剣とはこういうものよ」
“第四偽典”を剣のようにして構え、Tesシャルロッテへと肉薄するテルミナス。黒の一撃がTesシャルロッテに迫ろうとしたが、「お?」それより早くテルミナスを拘束する蒼の鎖。Tesルシリオンの干渉によるものだ。すぐさま自らの干渉能力で切断していく。一瞬とはいえ動きを抑えられた彼女を襲う力。
――天地乖離す開闢の星――
動きを止めたテルミナスの左側面、距離にして5m弱。波打つ空間の先、位相空間内からTesルシリオンの放った一撃が迫る。Tesシャルロッテは「我が手に携えしは確かなる幻想」と詠唱しつつ、テルミナスから距離をとる。対するテルミナスは、先に拘束を解いた右手を迫る攻撃へと翳す。同時に彼女の右手と破壊の渦が衝突した。涼しい顔で受け止めるテルミナスへとさらに追撃が入る。
――約束された勝利の剣――
――真技・飛刃・翔舞十閃・無限刃――
未だに佇んだままのテルミナスへと黄金の極光と桜色の無数の刃が迫る。テルミナスは決して余裕の表情を変えることなく、左手に持つ“第四偽典”を地面へと突き刺した。
――Linguisque animisque favete――
引き起こされるのは虚数干渉による銀色の光の波。テルミナスの干渉防御だ。その波が一瞬でTesシャルロッテとTesルシリオンの攻撃を掻き消す。予想通りの展開に表情を変えないまま戦闘を続行する2柱はテルミナスから距離を取り、干渉砲撃や干渉斬撃を放つ。
「おっと♪」
Tesシャルロッテの干渉斬撃とは違い、Tesルシリオンの干渉砲撃は中れば致命的とは言えないが相応の被害をもたらす。それを知っているテルミナスは、Tesルシリオンの干渉砲撃にのみ集中して回避していく。
「舐めてる・・・!」
「気を悪くした? でも、これが事実。あなたの干渉能力は私とルシリオンを下回る。その剣の能力で干渉能力を上手く高めているけど、でもまだ足りないの」
落ち着いた様子で迫り来る干渉砲撃群を回避していくテルミナス。Tesシャルロッテは「上等よ」と呟き、絶対切断の能力を持つ“聖典キルシュブリューテ”を鞘に納めて位相転移を繰り返す。テルミナスの索敵能力を誤魔化すためだ。その間、Tesルシリオンの干渉能力が付加された攻撃がテルミナスを襲撃する。
――軍神の戦禍――
――銃軍嬉遊曲――
万を超える完全解放された神器群が一斉にテルミナスを強襲する。さすがのテルミナスも一瞬とはいえ目を見開き驚愕した。だが、すぐさま余裕のある表情へと戻す。
「どうしてそこまで頑張るの・・・?」
――Omnia vanitas――
“第四偽典”を横に構え、一気に振り抜いて干渉攻撃が広範囲に放った。目に見えないテルミナスの迎撃とTesルシリオンの攻撃が衝突。互いの干渉を食い破ろうと拮抗している。そこに第2波を繰り出すテルミナスとTesルシリオン。
――Omnia vanitas――
――真技・神徒の剣閃――
干渉能力を付加された“神剣グラム”の虹色の剣閃と、再度放たれたテルミナスの干渉攻撃。未だに拮抗している第1波を後押しするかのように放たれたその第2波が、その拮抗を破る。
「っぐッ!!」
敗れたのはTesルシリオンだった。万を超える神器群と干渉砲撃が薙ぎ払われ、神器群の破片が舞い散る中、彼の放った第2波が無効化された。一瞬の無防備状態となった彼に当たるテルミナスの干渉攻撃。咄嗟に位相転移したことで消滅は免れた彼だが、回避しきれなかった下半身が根こそぎ吹き飛んでいた。
しまった、という表情になったテルミナスに迫る位相空間からの攻撃。
――真技・牢刃・弧舞八閃――
タイミングは完璧。Tesルシリオンを消すわけにはいかないにも拘らず、つい一撃を与えてしまったテルミナスが動きを止めたその一瞬。その一瞬の隙を狙ってのTesシャルロッテの攻撃。8つの絶対切断の刃がテルミナスを閉じ込める牢のように展開された。その8つの刃がテルミナスへと吸い込まれ直撃した。
「邪魔しないで」
しかし、浅く刃が入ったところで刃は停止していた。斬り裂くことなく途中で止められた刃。
「くっ・・・!」
Tesシャルロッテが瞬時にテルミナスから距離を取る。“キルシュブリューテ”の能力・絶対切断。その特性は、自らの神秘を下回るものなら全て斬るというもの。その刃が止められた。それはつまりテルミナスは“キルシュブリューテ”を上回るということだ。当然の結果だ。相手はあまりにも格の高い存在なのだから。たとえ“第三聖典”と合成させようともTesシャルロッテの干渉斬撃は、テルミナスに決定打を負わせられないほど弱かった。
(判っているとはいえ辛いな。やっぱりルシルの作戦じゃないと無理か)
やはり与えられた役割通りに動くしかないと思い知ったが少しばかりの悔しさを胸に秘め、“聖典キルシュブリューテ”を構え直す。
「ねぇ、ルシリオン。あなたの居場所は玉座じゃないの。愚かな人間を護る立場はあなたには相応しくない。というより、罪人を護るということ自体がそもそもの間違い」
テルミナスは、姿を隠したTesルシリオンに語りかけ始めた。Tesシャルロッテと彼は、時間稼ぎにはちょうどいいと判断し耳を傾ける。
「どういうこと・・・?」
「本当に解らないの? あなたも見てきたでしょ。人間という存在がどれだけ罪に塗れた愚かなものか」
今まで余裕だけを浮かべていたテルミナスの表情が一変する。そこにあるのは憤怒、憎悪、憐憫などといった負の感情だった。
「いつまで経っても争いをやめない、やめようともしない。どれだけ根絶やしにして、更生させようと努力しても、やはり争いを始める愚者。抑えようと思えば抑えられる欲で同族たる人間を襲い、奪い、殺める。その理由が、ただ誰でもいいから殺したかった? 世の中つまらない? ムカついたから? 相手にされなかったから? 金銭が欲しかったから? クスクスクス」
テルミナスのエメラルドグリーンの両目に妖しい光が宿る。その瞳に見詰められたTesシャルロッテが僅かに後ずさる。
「何て罪深いことなの。その果てには赤の他人を殺すどころか、血の繋がった実の親を、子をも殺めるなんてことも増えてきた」
テルミナスの体が僅かに震えだす。それは抑えきれない憤怒からのものだ。
「~~~~っ! 愚かなッ!」
「なっ・・・!?」
テルミナスの激情から放たれたのは実数干渉能力。Tesシャルロッテは咄嗟に位相空間へと退避した。実数干渉である以上、ダメージを負うことはないが、彼女は僅かに生まれた恐怖から退避を選択してしまっていた。
「なんだ、そのふざけた理由は!?」
テルミナスを中心として半径100kmのクレーターが第28無人世界に生まれた。その巨大なクレータの中心で、怒りと憎しみの限り叫ぶテルミナス。
「何たる身勝手か! 愚か愚か愚か愚か愚かッ! その頭脳はそんなくだらないことのため用意されたものじゃない! 世界をより良い形に持っていく権利を与えられておきながら、自らを生かす自然を破壊し、終には世界を滅ぼすまでに至る!」
テルミナスの憤怒と憎悪の叫びは止まらない。今の今まで抑えてきた人間への感情が、今となって溢れだす。
「だから護る価値なんて無いッ! ルシリオン! シャルロッテ! 界律の守護神となってから、何度も見てきたでしょ!? そうでしょ!?」
「確かにそうだ、テルミナス」
怒り狂うテルミナスの近くに姿を現したTesルシリオン。彼に続いて、Tesシャルロッテも少し離れた場所からその姿を現す。彼の言葉に少し眉を顰めるTesシャルロッテだったが、彼を信じて何も言わずに沈黙を保つ。
「クスクスクス。ルシリオン♪ 解ってくれたの? 良かったぁ❤ じゃあ、待ってて! すぐにこの世界を滅ぼしてあげるから♪ そうしたら一緒に行こう、霊長の審判者の座へと!」
さっきまでの負の感情が入り乱れた表情が一気に歓喜の表情へと変わる。軽くはしゃぎながら、瞳を輝かせているテルミナス。その彼女へとTesルシリオンが口を開く。
「だが、綺麗事だと解っているが、それでも私は人間を信じている。テルミナス、お前が挙げた人間は全体の一握りなんだ。確かに人間は罪深い。許されるような軽いものばかりじゃない罪を幾つも、どんな時代でも、どんな世界でも犯す。正直救いようのないことだってある。私も幾度もこの身に味わってきたからな」
それを聞き、テルミナスの表情に再び影が差す。
「そこまで解っているなら、どうして神意の玉座にいるの!? 一握り! その一握りが存在する時点で、すでに存在する価値は無い! 信じる!? 私だって信じてた! これでも元はテスタメントだから! いつかきっと人は変わる。今はダメでも、いつかは、いつかは、いつかは! けど、いつかは、と信じたその結果が今の私だ! 人は変わらない! 殺し殺され、奪い奪われ! 何万年と見てきた! どんなに護っても、争いを始めて滅んでいく!!」
人間を愛し信じていたからこそ、狂い壊れ堕ちた元第四の力・“儚き永遠を憂う者”。何万年と苦悩し、しかしその度に人は変わる、いつか争いは止む。そう信じた。だが結局は変わらないと諦め、人間、霊長を断罪する“絶対殲滅対象アポリュオン”となった。
「もう護るに値しない! 信じるに値しない! 愚かな罪人は霊長の審判者が粛清する!」
テルミナスはTesルシリオンへと干渉攻撃を放ち始める。しかしどの攻撃も彼の脇を通り過ぎていく。始めから当てるつもりは無いかのように。
「テルミナス」
Tesシャルロッテはテルミナスの心情を少し理解していた。どれだけ護っても滅んでいく人間社会。終わりの見えないお守のようなものだ。その度に人間の本性を知り、心が冷めていく感覚を味わってきた。それでも彼女は、テルミナスのように人間全て滅ぼそうとは考えない。彼女が出逢ったなのは達を始めとした、良い人がいるのもまた事実だと思うからだ。
「テルミナス!」
Tesシャルロッテはテルミナスの名を叫んだ。彼女の視線がTesシャルロッテへと彼移る。
「人の未来を諦めるにはまだ早いんじゃないの?」
「はぁはぁはぁ・・・。諦めるのが早い、ですって? クスクス。私はあなた達の何倍という時間の中で人間を見てきた。過去、現在、未来、どんな世界でも、その全てにおいて人は変わらないとすでに知ってる。そんな私に、諦めるのが早い? クスクス。馬鹿を言わないで、シャルロッテ」
冷笑を浮かべ、Tesシャルロッテの瞳から視線を逸らさないテルミナス。その彼女の冷たい視線から瞳を逸らさないTesシャルロッテ。互いの信念を張り合うために。
「そう。ならいい。どっちにしてもお前を斃すのだから、。お前が私たちと人間を否定するなら、お前もまた否定されても文句は言えない。そうでしょ」
「よく言う。あなた達もまた人殺しのクセに。界律からの契約だから、なんて言い訳はダメよ? テスタメントもユースティティアも結局は同じ事をしているの。罪深き愚かな人間に粛清を、断罪を、審判を。愚者の身勝手で世界が滅ぶ前に罪人を滅する」
Tesルシリオンは首を横に振り、“聖典グングニル”に力を込め始める。それに気付いたテルミナスの表情が曇る。そして、「どうして解ってくれないの?」と悲しそうに漏らした。
「もういいよ。もういい。もう知らない。ルシリオンなんか知らない。あとで後悔しても知らないんだから。だからもう消えろ」
完全に戦う気になったテルミナスから放たれる強大な虚数干渉砲撃。位相転移で回避して難を逃れるTesシャルロッテとTesルシリオン。
『なのは達が来るまでもう少し! ルシル、そっちの準備はあとどれくらい!?』
『まだだ! テルミナスを一撃で斃すにはまだ時間が足りない!』
2柱はリンクを通して、作戦の経過状況を確認した。その間にもテルミナスが2柱を討とうと干渉攻撃を仕掛けてくる。位相転移を繰り返すことで回避し、100km以上離れた別の荒野へと戦場を変えていく。
「さっきはああ言ったけど、ルシリオン、シャルロッテ。もう夢を見るのはやめよう。真実を潔く受け入れて、現実を見て。どれだけ信じても、人はあなた達を裏切る。裏切り続ける。今ならまだ間に合うよ」
――Da dextram misero――
2柱を拘束せんとテルミナスの干渉能力で編まれた、貫いて拘束するという効果を持つ無数の杭が2柱を襲う。
「悪いがお前の提案は却下だ、テルミナス。私はこの世界を、愛おしい彼女を護る。護り抜く」
「残念だよ」
――雷神の天罰――
遥か上空に展開される9つのアースガルド魔法陣。それに気付かないテルミナスがTesシャルロッテへと接近しようとした。
「な・・・!?」
テルミナスへとピンポイントで落ちる蒼雷。それは上空で展開されたアースガルド魔法陣から降った落雷だった。対地攻性術式コード・トール。上空から地上へ向けての急襲魔術。その突然の奇襲に、テルミナスは余裕とは言えないがしっかりと跳び下がることで回避する。
「そらぁぁぁぁぁぁぁッ!!」
そこに裂帛の雄叫びをあげながら迫るTesシャルロッテ。彼女が持っているのは魔造兵装第1位である“戒剣・覇統天星”。魔界最下層支配権の第1位にして、最古の魔族・最古四種の生き残り、“魔統の総主ウィズ・アタナシア・フィンデッド”の固有武装。
その神秘は計りしれず、Tesルシリオンの持つ“神槍グングニル”と同等かそれ以上。そこに彼女自身の干渉能力を付加させ、その威力を何十倍へと増加させた。テルミナスは直感で危険な物だと判断し、干渉防御を張る。衝突。防がれはしたが完全な防御ではなかった。徐々に刃がテルミナスの干渉防御を裂いていく。
「っ! クスクス。そんなモノがあるなんて・・・驚き!」
――Omnia vanitas――
Tesシャルロッテを覆うように放たれる干渉攻撃。彼女はすぐさま攻撃を中断し位相転移で離脱。
――真技・神断福音――
テルミナスへと“神槍グングニル”が迫る。彼女は防御ではなく回避を選択。位相転移をし、射線軸から離脱。そこにまた、テルミナスに降り注ぐ蒼雷――コード・トール。
「小賢しい真似を・・・!」
上空にアースガルド魔法陣を視認したテルミナスは位相転移でその場へと移動し、腕を振るって放った干渉で魔法陣を破壊した。そこにまた迫る“神槍グングニル”が・・・15。完全解放された必中必殺の“神槍グングニル”が全方位からテルミナスへと迫る。
――最高神の神槍――
――Linguisque animisque favete――
銀の波が無人世界の黄昏の空に拡がる。15本の“神槍グングニル”が瞬く間に消滅していく。上空に気配が残っていないことを確認したテルミナスは位相転移し、地上へと舞い戻った瞬間・・・
――真技・時空穿つ断罪の煌き――
迫る黄金の大火力砲撃。その威力は正しく時空を穿つに値するほどのもの。殲滅姫カノンの誇る最強にして、大戦時において最大射程を持つ砲撃魔術。迫る砲撃に気付き、再び位相転移で回避しようとしたテルミナスだった。
――闇よ誘え、汝の宵手――
「っ!?」
両足首を宙から生えた影の手で掴まれて動けなくなっていた。干渉能力が付加されているそれを外すには時間が掛かると判断し、迎撃に変更する。
――Fata viam invenient――
“第四偽典”の先端から銀の干渉砲撃を放つ。魔術の神秘、神器の神秘、そこに付加されたTesルシリオンの干渉能力。対するは、干渉能力のみのテルミナスの砲撃。衝突。虚数干渉が付加されているはずが、現実に存在する地面を吹き飛ばす衝撃波が発生する。
「くそ・・・!」
黄金の砲撃が次第に押され始める。それほどまでに強力無比のテルミナスの干渉能力。十数秒と拮抗していた砲撃戦が終わろうとしている。終わる直前、Tesシャルロッテが様々な神器を合成させた“聖典キルシュブリューテ”を構え、テルミナスの頭上へと出現。
「これでどうだ! 吼えろッ!!」
――真技・雷神放つ天罰――
合成した神器の中にあった“天槌ミョルニル”の力を引き出し、雷皇ジークヘルグの真技を放つ。放電する“聖典キルシュブリューテ”を、干渉防御を張った右手で受け止めるテルミナス。その衝撃で地面にクレーターが生まれた。
「風牙裂千 空帝 双嵐掌!!」
拮抗が崩れる直前、位相転移によってテルミナスの目の前に現れたTesルシリオンの一撃。テルミナスは足を未だに影の手に取られ、右手はTesシャルロッテの対処で使用中。左手に持つ“第四偽典”を振るうには遅すぎる状態。干渉能力もまたTesシャルロッテの一撃を防御するのに回している。結果「ぅぐッ!」直撃を許すほかなかった。強力な竜巻を纏った左右の掌底を受け、テルミナスが後方へと吹き飛ばされる。体勢を整えられる前にさらに追撃をかけようとした2柱だったが・・・。
――Quid enim stultius quam incerta pro certis habere, falsa pro veris?――
逆に一瞬で追いつめられた。それはあまりにも理不尽な干渉攻撃。その効果は対“テスタメント”。守護神特有の神秘に反応して炸裂する攻撃だった。
「「ぅぐ・・・っ」」
TesシャルロッテとTesルシリオンの2柱は、頭と胴体だけを残して地面に倒れ伏しており、側には2柱の武装である“聖典キルシュブリューテ”と“聖典グングニル”が突き立っている。テルミナスは難なく着地し、地面に倒れる2柱を見て嘆息する。
「これが結果。信じる信じない、護る護らない以前の問題。あなた達がどう足掻こうとも終極には勝てない」
「まだ・・・終わっていない・・・ぞ」
「そう、だよ・・・まだまだ・・・」
砕かれていた部分を修復し、立ち上がるTesルシリオンとTesシャルロッテ。突き立つ各々の武装を手に取り、再び戦闘行動に移ろうとしている。
「何度やっても同じ事よ。諦めてさっさと消えてちょうだい」
「やってみないと判らないでしょ!」
先に仕掛けたのはTesシャルロッテ。無数の神器の神秘が込められた“聖典キルシュブリューテ”を脇に構え、位相転移でテルミナスの右側面へと移動する。位相空間から出たその瞬間、彼女は目の前の光景に目を見開き、その動きを止めてしまった。
――Nemo fortunam jure accusat――
「止まるなッ!」
Tesルシリオンの叱咤が飛ぶがすでに遅く、Tesシャルロッテは“第四偽典”の一撃を受けて上空へと吹き飛ばされた。
「クスクスクス。高町なのはの姿には攻撃できないみたいね」
テルミナスの右隣りに立つのは、干渉能力で創られた高町なのはの偽者。
「性質の悪い真似を・・・!」
上空で体勢を立て直し、地面に降り立ったTesシャルロッテがそう零す。Tesルシリオンも歯噛みしながらテルミナスを睨みつける。
『ルシル。あとどのくらい時間を稼げばいい? 時間からしてなのは達の艦はもう軌道上に着いてるはず。あとはテルミナスをぶん殴ってやるだけだから』
『もう少しだ。あと数分、いやあと1分ほしい。それで間違いなく斃せるはずだ。現にテルミナスは気付いていない。私たちの策を』
『了解。あと1分。死ぬ気で頑張るよ。だからミスらないでよ』
『了解だ。すまない、これで最後だ。耐えてくれ』
『マリアももう少しだけ頑張って』
『はい、大丈夫です。頼られた以上は、期待以上の働きをするつもりですから』
リンクを通して再度作戦の状況を確認する守護神3柱。Tesシャルロッテが“聖典キルシュブリューテ”を構え直し、Tesルシリオンもまた“聖典グングニル”を構え直す。
「・・・はぁ」
テルミナスが大きくため息を吐いた。小さく一歩右足を出す。TesシャルロッテとTesルシリオンはそれを合図として、自らの足で駆けテルミナス相手に接近戦を挑む。残り1分。その間逃げに徹すれば怪しまれると判断しての接近戦だった。
「近接戦・・・!?」
テルミナスは“第四偽典”を前方に浮遊させ、その中心に左の掌を叩き付けた。
――Cognosce te ipsum――
“第四偽典”より放たれる銀の無数の帯状の光線。
――原初の神壁――
Tesシャルロッテの前に出、迫る干渉攻撃を防ぐためにTesルシリオンは保有する防性術式第1位を展開する。それは、かつての魔道世界アースガルドを覆っていた障壁だ。アースガルド四王族に伝えられる最大に最高、そして最古の防性術式。
「なに!? この・・・!」
儀式魔術として分類され、発動するには数週間の儀式が必要となる。が、今は“テスタメント”の干渉能力があるため、その前準備を必要とせずに発動させた。唯でさえ強力な障壁に干渉防御が加わったことで、テルミナスの干渉攻撃を完全に防いだ。驚愕に染まるテルミナスの顔。すぐさま対“テスタメント”用干渉攻撃を放とうとする。
――真技・誘いたる復讐神の魔手――
そこに、呪侵大使フォルテシアの真技が発動する。漆黒の影が地面に広がり、その影から無数の腕が伸びる。
「なにこれ・・・!?」
どす黒くおぞましい腕が幾つも伸び、テルミナスを捕えようと迫る。直感的に危険を察知したテルミナスは、地面を覆う影へと攻撃の矛を変えた。実数・虚数両干渉攻撃を撃ち込み、地面に巨大な穴を開けた。そこでTesルシリオンとTesシャルロッテを見失ったことに気付く。周囲を警戒し、索敵に力を注ごうとした。
――真技・飛刃・翔舞七四閃――
遥か上空から降り注ぐ絶対切断の桜色の刃、その数74。普段の7倍もある圧倒的な破壊の渦。無数に合成された神器の力を借りて初めて成った術式だ。
――Linguisque animisque favete――
防御効果の銀の波がテルミナスの頭上を流れるように展開され、降り注ぐ刃が次々と無力化されて消滅していく。
――真技・牢刃・弧舞四八閃――
「フッ!」
至近へ位相転移してきたTesシャルロッテから放たれる8倍となった剣閃。魔術師なら回避も防御も出来ずにただ斬殺されるだろうが、相手は人間ではない。剣閃が到達する前に位相転移で回避するテルミナス。
「チッ、外した・・・!」
計算したタイミングでの回避に彼女は舌打ちし、テルミナスを睨みつける。テルミナスは気に留めることなく、姿の見えないTesルシリオンを探す。
「クスクスクス。そんなところに隠れて何をするの・・・!」
「しまっ・・・!」
――Fata viam invenient――
Tesシャルロッテの脇を通り抜け、干渉能力によって姿を隠していたTesルシリオンへと銀の干渉砲撃が迫る。必殺のための攻撃態勢に入っていたTesルシリオンは防御も回避も出来なかった。気休め程度の干渉防御は張られていたが、テルミナスの干渉砲撃の前には紙も同然のものだった。
「くそ・・・!」
直撃。干渉能力が解け、胸から下が消滅しているTesルシリオンの姿が現れ、ドサッと地面へと落ちた。明らかに危険な状態。これ程のダメージは、その存在の存続に関わるものだった。
「ルシル!」
振り返ったTesシャルロッテの顔が青褪める。そのままテルミナスに背を向け、彼に駆け寄ろうとする。しかしその背後から迫るテルミナスは憫笑を浮かべている。
「くっ! 行かせな――!?」
迫るテルミナスに気付き、すれ違いざまに互いが一撃を振るうがTesシャルロッテの両腕が吹き飛ぶ。それと同時に胴体部分にもいくつかの切り傷が現れ、ゆっくりと崩れ落ちる。冷たい地面に倒れ伏し「やめろぉぉぉぉぉッ!!」と叫ぶ。
「天秤、天秤、天秤、天秤。今なお天秤の狭間で揺れ続けるあなたへの引導、しっかりと受け止めるがいい!」
ローズピンクの長髪を翻しながら、倒れているTesルシリオンの元にたどり着くテルミナス。“第四偽典”が振りかぶられる。狙うは唯一原形を留めた彼の胸部――心臓付近。空を切る音と同時に彼の胸部へと振り下ろされた“第四偽典”。ドォンッ!という轟音。テルミナスは彼をこの世界から跡形も無く消滅させた。
「呆気ないものだね・・・。あれ程恋い焦がれたというのに、今じゃ何も感じないの。どういうことかしら・・・?」
「ルシル・・・。貴様ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁッ!」
身体を修復して立ち上がったTesシャルロッテは泣き叫びながらテルミナスへと特攻する。手には“戒剣・覇統天星”。最強の魔造兵装だ。その力には警戒しているテルミナスは、“戒剣・覇統天星”にのみ注意を払う。“第四偽典”を構え、迫りくる彼女に干渉攻撃を放とうとした。
「ぁがっ・・・!?」
途轍もない急な衝撃に襲われ、テルミナスの細く華奢な体が反り返る。自分の身に何が起こったのか解らないからこそ困惑の表情を浮かべている。そして今の自身に何が起きたのか解ると、その表情が驚愕に染まった。
「バカな・・・!?」
彼女の胴体を貫くモノが3つ。1つは“聖典グングニル”。1つは“聖典キルシュブリューテ”。そしてもう1つ。それこそがテルミナスを驚愕させた原因だった。
「桃色・・・第五聖典!? 何故5th・テスタメントがいるの!?」
胴体の中心を貫くのは桃色のラテン十字・“第五聖典“だった。破壊しようとするが、3つの“聖典”による干渉能力で、さすがのテルミナスもその体の支配権を制限された。
「どう、私の迫真の演技は?」
頬を伝う涙を拭い、勝利を確信したTesシャルロッテは微笑を浮かべる。
「確かにルシリオンは斃したはず! なのに、どうして!?」
何とか顔だけを上げ、Tesシャルロッテへと問い質しつつ干渉能力によって、自らを貫く“聖典”を破壊しようとする。
「テルミナス、お前は偽者創りが得意なのに、真贋を見極める目を持っていない。さっきまでずっと戦っていたルシルは、マリアの干渉能力で創られた偽者よ。お前の犯したミス、それは真贋を見極める目が無かったこと。そして自らの存在の強大さを自認していても、そこに何の対応策を考えていなかったこと!」
テルミナスは目が見開き「ありえない!」と叫び、“聖典”を破壊しようとさらに干渉能力を発揮する。
「マリアは干渉においての戦闘能力は確かに弱い。でも、だからこそこういう一芸に長ける。お前はルシルを偽者と気付かず、ひたすら本物だと思い込み戦っていた。本物のルシルが、お前を斃すためにずっと攻撃の準備を行っていることも知らずに・・・ね!」
テルミナスを抑え込んでいる“聖典”が激しく揺れ動き、破壊されようとしているのを見、Tesシャルロッテは“戒剣・覇統天星”でさらに貫こうとしたが、刺さる程度で止まる。“聖典”でない以上、致命傷は与えられない、斃せない。精々“聖典”が破壊されるまでの時間稼ぎ程度でしかないが、それで今は十分だった。
「愚かなッ! ここで終極を斃したところで何も変わらない!」
「それは判らない。この先に人は変わるかもしれない」
「そんな刻は来ない!! あなたも! ルシリオンも! きっと真に諦める刻がッ! 必ず完全なる絶望の刻が来る!!」
テルミナスの干渉能力が外部に漏れ出す。Tesシャルロッテは「どこまで強いの」と呆れ、テルミナスを抑え込むために“聖典グングニル”と“聖典キルシュブリューテ”を掴んで干渉能力を流し込む。
「「ぐっ!」」
1柱と1体の顔が苦痛と不快感に歪む。
「ねぇ・・テルミナス・・・。私たちはね、お前に・・・ひとつだけ・・・感謝してる」
途切れ途切れに言葉を紡いでいくTesシャルロッテ。
「感謝・・・だと・・・?」
「ええ・・・。それは・・・なのは達と・・・出逢わせてくれた・・・こと・・・。どんな理由・・・でも・・・、あの子たち・・・と出逢え・・・た・・・。そこだけは・・・感謝・・・してる・・・」
「・・・クス。クスクスクス。とことん・・・愚かな。これだから・・・人間から・・・守護・・・神になった・・・者は・・・嫌い」
テルミナスが最期に微笑を浮かべる。ローズピンクの髪が垂れて顔が隠れていて見えないが、その表情は安堵だった。全てから解放されることからの安堵。数万年と存在してきた彼女の旅路が今終わろうとしている。Tesシャルロッテは、テルミナスの干渉能力が治まりつつあるのを確認し、叫ぶ。
「ルシルぅぅーーーーーーッ!」
・―・―・―・―・―・
――位相空間内。
「ルシルぅぅーーーーーーッ!」
Tesシャルロッテの声が位相空間内に響き渡る。
「ルシリオン様!」
「ああ!!」
Tesルシリオンの背後に浮かぶTesマリアが合図する。
「準備は整った。これで終わりだ・・・!」
Tesルシリオンの背後には、十字架を形作るように魔力で構成された6つの幾何学模様の歯車が展開されている。その8方から同様の幾何学模様で構成された、全長5mはある蒼の大剣が伸びている。“孤人戦争形態”。彼の最奥たる術式。
その背の歯車がさらに唸りを上げて回転する。それと同時に、彼の前面に展開されている巨大なアースガルド魔法陣が輝きを増す。さらに前面へと展開されていくアースガルド魔法陣。その周囲にも幾何学模様の剣翼が展開。
「ありがとう、シャル。君のおかげで、私たちはテルミナスに勝てる・・・!」
――真技――
次元世界において、後にも先にも存在しえない最強の一撃が放たれようとしている。
「再――」
さらに輝きを増す魔法陣。圧倒的な光量で位相空間内が光で満ち、視界が蒼に閉ざされる。
「誕」
一瞬にして光が収束。魔法陣によって構築された光の砲塔から放たれるは人類最強の一撃。真技・再誕アポカリプティック・ジェネシス。最大禁呪“ラグナロク”の術式を応用した真技。そこに、“神々の宝庫ブレイザブリク、“英知の書庫アルヴィト”に貯蔵されている神器や術式を合成させる。そして今回、さらにTesルシリオンとTesマリアの干渉能力を付加させた。
「くらえぇぇぇぇーーーーーッ!」「いっっけぇぇぇぇーーーーーーッ!」
Tesマリアは、この真技の準備をするための時間稼ぎを任せられていた。テルミナスに悟られないように偽者を創りだすため、真技に干渉能力をさらに付加させるために、Tesルシリオンに呼ばれた。制限された“界律”が呼べないのなら、“テスタメント”が召喚する。
本来はあり得ず、また為したことすらも無い策。しかし、相手があの”絶対殲滅対象アポリュオン“の中でも最強クラスである終極のテルミナスだからこそ許されたことだった。光は奔る。位相空間から現実世界へと、テルミナスを討つために。
†††Sideシャルロッテ†††
来た。ルシルの真技だ。あと数秒で、私はこの世界を去る。
――シャルちゃん――
士郎父さん、桃子母さん、恭也兄さん、美由紀姉さん。
たとえみんなに忘れられていても、私は忘れない。お世話になりました。
――シャルロッテ――
最初は敵だったけど、最後は仲良くなれた姉妹たち。
ウェンディ、あなたとはもっとバカなことを話したかったかな。チンク、ノーヴェ、セイン、ディード、オットー、ディエチも、元気でね。
――シャルロッテ――
――シャルロッテさん――
レヴィ、ルーテシア。
あなた達ならこれからもきっと大丈夫。ルシルも残ることだし、困った事があったら頼りなさい。
――シャル――
――シャルちゃん――
――シャルロッテさん――
クロノ、エイミィ、リンディさん。
3人には本当にお世話になったよね。これからも家族みんな仲良く過ごしてほしいな。
――シャルさん――
スバル、ティアナ、エリオ、キャロ、ギンガ。
輝かしい未来の待つあなた達を、いつでも、いつまでも応援するよ。だから、これからも自分の信じる道を進んでね。
――フライハイト――
――シャルロッテ――
――フライハイトちゃん――
――フライハイト――
――シャルさん――
シグナム、ヴィータ、シャマル、ザフィーラ、リイン。
出会いからしていろいろあったけど、仲良くなれて良かった。これからもはやてを支えてあげてね。あの子、なんでも背負おうとするから。どっかのおバカさんみたいにね。すごく楽しかったよ。
蒼の極光が落ちてくる。
「さよなら、テルミナス。あなたの来世が輝かしいものでありますように」
真技に巻き込まれないために、閃駆を使ってその場から離脱する。もう干渉能力は使い果たしたから、そうすることでしか離れられなかった。
「クスクスクス。やっと、やっと眠れるよ・・・」
背後から聞こえたテルミナスの落ち着いた声。それが、テルミナスが残した最期の言葉だった。その次の瞬間、ルシルの真技・アポカリプティック・ジェネシスが落ちた。あれ程までに手強かったテルミナスが呆気なく一瞬で消滅した。
――絶対殲滅対象がナンバーⅩⅥ終極、消滅――
終わった。これで、あとは私が消えるだけだ。着弾点から拡がり始める圧倒的、絶対的な力を秘めた蒼の極光。
――シャル――
――シャルちゃん――
アリサ、すずか。
きっと私のことを忘れていると思うけど、それでも私は2人を忘れない。私の大切な親友。2人のこれからの未来、幸せであるように願ってる。じゃあね。
――シャルさん――
ヴィヴィオ。
始めは私に怯えていたけど、懐いてくれて嬉しかった。なのはやフェイト、ルシルとこれからも仲良くね。まぁ、その辺りは全然心配していないけど。それじゃヴィヴィオ、素敵な女の子になってね。
――シャル――
アルフ。
アルフにも世話になったね。いろんな意味で。フェイトとルシルのことはお願いしたし、もういいかな。でも、この私が頼りにしているんだから、そこのところは誇ってもいいんじゃないかな?なんてね。
――シャルちゃん――
はやて。
すごく頑張り屋な子。それは良いところでもあるけど、無茶はダメだよ? 頼れる家族、友達がいるんだから、独りで背負おうとしないでね。これからもなのは達を支えてあげて。あの子たちもまた無茶するから。
――シャル――
フェイト。
フェイトには、ルシルのことをお願いするよ。この世界に残ることで、ルシルはきっと今まで以上の無茶を平気でするようになるはずだから、そこを適度に止めてあげて。だからと言って、自分も無茶はしないように。
蒼の極光が背後に迫る。
――シャル――
ユーノ。
この世界で、2番目に私の友達になってくれた。そんなあなたといろいろ話が出来て面白かった。あーそれと、なのはのことは諦めたらダメだよ? なかなかお似合いなんだしね。なのはは激しく鈍いけど、そこは頑張り次第だよ。
――シャルちゃん――
「なの、は・・・なのは・・・なのは!」
なのは。
私の一番の友達――ううん、大親友だね。思えば全てはあなたとの出会いが始まりだった。一緒に過ごしてきて、私はすごくすごくすごく楽しかった。ヴィヴィオとこれからも仲良くね。無茶だけはしないでね。困った時は友達を頼ってね。私は願ってるよ。そんななのは達の幸せを。
「忘れないって約束してくれて嬉しかった」
楽しかった10年をありがとう。
「みんなのこと、絶対に忘れないよ」
友達になってくれてありがとう。
「だから、私は笑って行ける」
素敵な思い出をありがとう。
「大好きだよ、みんな!」
幸せをくれたみんなにありがとう。
「うん。さよならじゃなくて・・・」
だから、私のいま一番の想いを告げて、この世界を去るよ。
「ありがとう!」
最高の笑みをつくる。
「契約執行・・・完了っ♪」
――界律の守護神・白き第三の力・剣戟の極致に至りし者
3rdテスタメント・シャルロッテ・フライハイト
10年という、彼女からしてみれば永遠の中での一瞬の契約が今、終わった
彼女の輪郭が崩れ、その姿が桜の花弁の如く舞い散った
彼女は“神意の玉座”へと帰還した。それはとても可憐な笑みを浮かべたままで――
†††Sideルシリオン†††
「ありがとう、シャル」
シャルとの契約で生まれた契約証が切れた。それが示すのは、この世界からシャルがいなくなったということだ。彼女は還った。“神意の玉座”へと。走馬灯のように彼女との思い出が脳裏を過ぎり去っていく。
「テルミナスの消滅を確認。お疲れさまでした、ルシリオン様」
「ああ。マリアも。あのテルミナスに勝てたのは君のおかげでもある。ありがとう、感謝している」
「はい♪ では、私も還りますね」
マリアがそう告げて、その姿が陽炎のように揺れて消えた。
「さぁ、あとはフェイトを待とうか」
位相空間から出て現実世界へと降り立つ。私の元へと来ていいという合図は、真技の蒼の極光だと教えている。軌道上から見えるはずだから、もう来るだろう。テルミナスとの戦闘で作られた瓦礫の山に腰かけ、背を預ける。フェイトから貰った指環を見つめ、私を好きになってくれたフェイトを待つ。
「シャル、君には本当に感謝しているよ。私はこの世界で生きる。フェイトと、そしてみんなと共に・・・」
ページ上へ戻る